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歴史が動き始めた! 国鉄闘争を基軸に階級的労働運動の新たな挑戦を始めよう!

月刊『労働運動』26頁(0286号02面01)(2014/01/01)



歴史が動き始めた! 国鉄闘争を基軸に階級的労働運動の新たな挑戦を始めよう!
 

 


田中康宏(動労千葉委員長/全国労組交流センター代表運営委員)

「3・11」以降の怒りが新たな闘いに

 2013年の奮闘、本当にお疲れさまでした。切り開いた地平の上に、2014年は決意を新たにして新しい闘いに入っていきたいと思います。
 私自身、特に、東日本大震災、原発事故以降、国家とは何なのかということを考えるようになりました。それとやはり、12月の国会を見ていて国家の本質が見えてきた。秘密保護法のあれだけ強引な形での成立を見てそう思いました。マスコミも言っている通り、もう新しい戦争への一歩が始まっている。こういうとんでもないことが、数を頼りにして行われる。マスコミから国民から、みんながどれだけ声をからして反対したって強行する。「資本家を守るためにはいざとなったら戦争だってする」――こういうことが今むき出しになってきています。本当は明らかになってはいけないことがむき出しになってきているということは何なのかということです。この社会の仕組みが危機に立っているからむき出しにならざるを得ないんだと思います。
 だから私が訴えたいことは、この時代の動きに目を凝らして欲しいということです。そして今、自分がなすべきこと、やるべきことは何なのかということを本当に考えないといけない。そういうことを強く感じています。この30年来の新自由主義社会のあり方が本当に限界に来ています。このままいけば全部が崩壊するよね。そのときに労働者が本当に団結して立ち上がるということが歴史を動かす力にならなきゃいけないというふうに思っているわけです。
 例えばつい最近起きたことですが、政労使会議(安倍政権と連合と日本経団連の会議)の中で、「賃上げを合意した」ということが報道されました。こんなことは表向きで、本当は大変なことが始まろうとしています。ここで合意されたことは何かというと、「労使は正規・非正規の働き方を固定させずに、多様な形態の正規労働者の実現・普及に向け努力をする」ということです。「多様な形態の正規雇用労働者の実現・普及に向けて」いろんなことを進める。これは新聞の報道によると、このかん安倍政権が導入しようとしている限定正社員制度のことだそうです。限定正社員制度というのは、雇用契約の時に、「この職場」「この仕事」という契約をするということです。その職場や仕事がなくなれば、その時点で自動的に解雇になる。つまり、解雇が自由になるということ。こういうことが賃上げに合意したということの名の下に現実には進もうとしているんです。
(写真 外注化粉砕・組織拡大の新たな闘いへ!動労千葉総決起集会を開催【昨年12・18】)
(写真 厚労省の派遣法改正案を報ずる東京新聞12月12日付夕刊)
 それと先日、厚生労働省の労働政策審議会が、派遣法の改正案をまとめたということが発表されました。来年の通常国会で法案にするとのことです。この中身は、いまは26業種という専門性の高い業種は派遣労働をずっと使って良いことになっていました。それ以外は3年間という限定が付いている。だけど今度の法律は、人さえ入れ替えれば、どんな業種であろうとずっと派遣を繰り返してもいい。つまり、派遣労働者を3年でクビにすることを促進するということです。それとこの改悪案は、派遣元で期限の定めのない雇用とされていれば、派遣先は3年の期限なくその労働者を派遣で使っていいとしています。こういうことがもし法律化されたらどうなりますか? 私が資本家だったら自分の企業に労働者を派遣する会社を作るよね。そうすれば全員派遣労働者になるじゃないですか。こういうところまでやろうとしている。
 だから、何でここまで来ちゃったのかということをもう一度原点に返って総括しなきゃいけない。ここまで労働者を犠牲にして、この国の政府とか資本が生き残るために何をやったか。徹底して労働組合を弱くするということをやったわけです。そのためにあらゆる手段を尽くした。総評を解散に追い込み、連合をつくって、闘う部分は徹底的に叩いた。そうした結果、労働組合が力を失い、労働組合が力を失ったら、社会的な力関係がひっくり返っちゃった。何でも通るようになった。こうして約30年でここまで来た。だとしたらもう一回労働者が団結した力を取り戻さないといけない。闘う労働組合を復権しないといけない。労働運動の復権こそが今一番求められている課題であると思います。
 ここまで来た状況の中で、来年からそういう気運が絶対に高まってくると思っています。この数年間、自分は、そういう怒りの声が社会に満ちているということをすごく感じます。この変化は、福島の原発事故以降の社会の大きな変化だと思います。来年、先ほど言ったような労働者派遣法改悪案が通ろうとした時に、怒りの声は間違いなく噴き出すよね。そして秘密保護法の次は集団的自衛権です。
集団的自衛権というのは、「日米安保同盟なんだから日本も一緒に戦争をやる」ということですよ。これはどんなにごまかしたって、今の憲法というものと社会のあり方が完全に矛盾する。やっぱりこんなことは日本の労働者は許さないよね。怒りの声は間違いなく爆発します。
 それと、労働者がこれから食えなくなっていくということです。いま、学校の先生でメンタルで休職になっている人が去年は5000人だそうです。おそらく休職というのは3ヶ月以上休んでいるケースなんだと思います。小中学校の先生は70万人だそうです。70万人の教育労働者の5000人。5000人ということは去年一年間で休職した人で、その背後には短期で休んでいる労働者は数倍いるということです。去年は何とかぎりぎり持ちこたえて休職にならなかったけれども、その前に休職していたとかいう労働者は膨大にいるということです。
 こうした現実はある種当然だよね。自分たちの生徒の半分は親がワーキングプアなんだよ。教育崩壊という特集で載っていましたが、昨日の夜からご飯を食べていないという子なんか一杯いるんだってね。そういう中で、上からは「日の丸」だ、「君が代」だとがんじがらめに締め付けられて。教育なんか出来ないですよ。教育する前提条件が崩壊しています。教育の前に飯を食わせなきゃいけないってね。それで文科省から言われて自由に教育は出来ない。そりゃ誰だって病気になるよ。こういう社会を生み出したんですよ。医療だって崩壊しているじゃないですか。だからもう限界。それで戦争の危機ですよ。
 この時代に危機感を持っている人はたくさんいます。たくさんいるけれども、何でこんなことになったのか、その本質が明らかにされていません。だけどそのことを職場で真剣に話していけば必ず分かってくれると思います。

国鉄闘争勝利で新自由主義をひっくり返す!

 そのときに、自分としては、あらためて2013年は、国鉄分割・民営化から始まったことについてもう一回、絶対に曖昧にしないで、ここに決着をつけてやろうと決意した年でした。
 「解雇自由」というのは国鉄分割・民営化から始まったんですよ。俺たちはあの時どれだけ悔しい思いをしたか。国鉄で働いていて、JRになった。職場も何もかも全く変わっていないんですよ。それで働いている人間だけが、あなたは採用されなかったと言って膨大にクビになった。それが国家的不当労働行為であろうとなんだろうと、これは「採用の自由」なんだってね。そういうふうにして26年間容認されてきたんですよ。しかも26年間容認されてきた過程で何が起きたか。それ以降で2000万人近い労働者が非正規に突き落とされた。民営化され、非正規の労働者が増え、正規の労働者は過労死するしかない長時間労働に駆り立てられ、ブラック企業は蔓延しました。こういうことが社会の隅々まで蔓延して当たり前になった。だから根本の問題に返って、ここから決着をつけたいと思いました。
 それで26年間闘い続けた結果、国鉄分割・民営化の時の不採用ということ、その基準そのものが不当な動機と目的に基づく不当労働行為意思であったことを裁判所に認めさせるところまで来ました。これで手がかりをつかんだと思いました。労働者を犠牲にして成り立つこの社会のあり方を根本から覆すことができるきっかけのようなものをつかんだと思ったんだよね。だからここに全力を尽くして、すべての力を集中して、9月25日に高裁でもそういった判決を勝ち取ったから、最高裁ではそれをもう一歩進める。不当労働行為だったら解雇撤回だろうってね。ここをひっくり返せたら「すべてが間違っていました」って奴らに言わせることが出来るんじゃないかってね。「競争がすばらしい」って言っておきながら、みんなが貧乏になっただろうがってね。もう一回全部をひっくり返せるというきっかけをつかんだ気がしました。

下請け会社を攻め、外注化粉砕へ新たな闘い

 それともうひとつです。それは、鉄道のあらゆる業務を外注化するという形で民営化は継続されて、労働者を突き落とし続けてきたことと十数年間闘ってきました。これと闘うことは本当に困難で、ある意味、すべて「仕方がない」と説明されて物事が進むわけだよね。「年金が出ないんだから60歳以降働き続けないと生きていくことが出来ないでしょう」ってね。だけど会社はそんな高い賃金を払えない。だから非正規で下請け会社で働いてくれと。「業務と一緒に外注化するんだ」ということでね。それは高齢者だけの問題ではなくて、何年かしたらすべての業務が外注化される。これに対して僕らは徹底的に抵抗することを決断して十数年間闘ってきました。そして、去年10月、十数年間の闘いの末、外注化が強行されたわけです。それから一年間、外注化が強行されたことに対する怒りと悔しさの中で、ここで闘いをやめてはいけないと、この世の中に蔓延する外注化や偽装請負とかを粉砕する、つまり、新自由主義的な労働者への攻撃ということを粉砕するまで絶対に闘い続けないといけない、そう思いました。
 じゃあ、どうしたらいいのか。決意は簡単だけど、具体的にどう闘い続けたら良いのか。これまで何度もストライキを構えたり、職場討議をしてきて考えてきました。それで、2014年を期して新しい闘いに入ることを決意しました。それは、外注化という形で、非正規職化とか、下請け会社に全部突き落とされていく、資本の大もとの意思というものが、下請け会社を通して貫徹される現実がある。労働者も強制出向で下請け会社に行かされている。そうなったらJRと闘っているだけでは済まない。下請け会社とも全面的に闘いを構えようってね。そうすることで、JR本体でも、もう一回動労千葉の組織を拡大し、団結を作り上げる。下請け会社の中でも動労千葉の組合員を組織し、JR本体とか下請けとか関係なく、ひとつになって闘えるという新しい労働運動のあり方をつくり出さないといけないと思ったんです。
(写真 JRとCTSの「清掃不正」疑惑を暴く『日刊動労千葉』№ 7624【12月20日付】)

ブラック企業=CTSを許さない!

 そのためにもう一回下請け会社の労働実態などを真正面から闘いの対象にしようということで現状を調査し始めました。結局、行き着いたことは、検査・修繕業務などが下請けされた千葉鉄道サービス(CTS)という会社は、今で言ったら最悪のブラック企業だということです。
 CTSには約1000人の労働者が働いています。その9割以上が非正規なんだよ。残りの1割のほとんどがJRからの天下りなんです。つまり、CTSの会社そのもので、正規社員になっているのはほとんどいません。みんなパートか契約社員です。時給は860円、870円の世界です。そういう企業が電車を検査・修繕していたらJR北海道になるに決まっているじゃないですか。
 しかもひどい労働条件だよね。現実に8月には成田空港駅の掃除をしていた63歳の組合員が職場で亡くなりました。同じ職場には別の組合員もいて、その後何ヶ月かかけて職場の実態をつぶさに調査したら、泊まり勤務で電車の掃除をしながら5万歩歩くということが分かった。一歩50㎝としたら25キロ歩くことになります。それが退職後に高齢者が行く職場であって良いのかって。夕飯を食う時間帯に休憩時間は10分刻みしかないんですよ。10分じゃ飯は食えないから、掃除をして半分飯を食って、また掃除をして残りを食うという現状です。あまりにひどい現実を見過ごしていたという感じですよね。こうした現実と徹底的に闘おうと、こんなブラック企業は潰して、掃除で働いている人も検査の人たちも全部JRに戻そうという闘いを始めなきゃいけないと決意しています。
 そうしたらJRとCTSの間にとんでもない不正が行われていることもつかみました。幕張車両センターで、JRは1ヶ月間で百数本の列車の全般清掃を委託しています。大規模な清掃で1本に140分かかる清掃です。しかし、8月に行われたのは23本だけ。後はやらないままやったということにしてJRからCTSに金が支払われているんです。こんな企業に外注化の資格はないです。こういう不正を暴き出して、働く者の権利を守ろうという意志統一を組合員と行いました。
 これは大変な闘いになると思います。だけどそこまでやって、この30年間吹き荒れた新自由主義攻撃が、この社会にもたらした歪み、間違いを正さなければいけない。労働者だけが突き落とされて、資本家どもは汚いことを平然とやっている。猪瀬も同じだよね。こうしたことを徹底追及して外注化を粉砕しようという決意を固めました。
 ですからここで訴えたいことは、労働者が団結を固めさえすれば、この社会の不正を突いて闘うことはいくらでも出来るということです。そのために、各職場で知恵をしぼり、闘いを作るということを真剣になって訴えれば出来るんだと思うんだよね。自分たちはそういう闘いを示したいと思っています。

10万署名と最高裁包囲で解雇を撤回させる

 最後に、来年の春の過程のイメージについて少し話します。1月22日に、動労総連合の外注化と強制出向の無効を訴える裁判があります。この日を外注化粉砕・解雇撤回の総行動の日として位置づけ、東京地裁で裁判が終わったら、全体で最高裁に押しかけて、第一波の最高裁弾劾闘争をやろうと思っているんだよね。署名を提出し、最高裁を包囲して、解雇撤回を要請していく。これを出発点にして、国鉄分割・民営化に決着をつけていく闘いに立ち上がりたいと思います。
 そして2月16日はJRへの採用差別が通告されてから27年目なんですね。ここで1047名解雇撤回の総決起集会を開いて、もう一回、本気で解雇撤回に向けて10万筆署名を集めきるということを全力を尽くしてやり抜いて、渾身の力を込めて勝利に向かって進んでいきたいと思います。
 それと、2月23日には、動労水戸が中心になって、福島のいわきで、JR常磐線を現在の広野から竜田まで延伸することに反対する闘いをやります。福島の現実はどういう状況かというと、竜田まで延伸してもその地域に住むなんていうことは全く不可能な状況です。広野だってほとんど人は住んでいないんですよ。しかしJRは、延伸のために何をやるかというと、「ポケモン・トレイン」という形で子どもを乗せて列車を走らせるイベントをやるんだよ。こんなことまでやるかよってね。こんなことを絶対に許しちゃいけない。それと3月11日には郡山で現地闘争ですね。これも絶対に成功させたい。
(写真 3・11 福島へ【写真は2013 年のデモ】)

派遣法粉砕!「生きさせろ」の14春闘へ!

 それと春闘です。いま、合同・一般労働組合全国協議会が3月に春闘行動を予定しています。14春闘は、派遣法改悪反対も含めて、通常国会の過程で怒りの声は間違いなく噴き出します。
 動労千葉は、貨物の労働者が分割・民営化の破綻でメチャクチャな賃下げを強制され続けているから、この春の過程でJR貨物本社をガンガン攻め立てて、特に日貨労の裏切りを絶対に許さず、日貨労の中から「何でこんな賃下げを飲むんだ」という怒りの声が噴き上がって、反乱が起きるところまでもっていきたい。そういう春闘として構えたいと思っています。
 動労千葉としてはそうした闘いの過程で、2014年はどんなに困難だろうと絶対に組織拡大をJR、CTS双方で実現したい。この情勢の中で、動労千葉が組織拡大を始めたら、情勢は大きく動き始めると思います。
 労働運動をやっている人なら知っている通りですが、昔から本工の労働者と下請けとか非正規の労働者がひとつにならないといけないということは言われてきたことです。だけど具体的に実現できた例はありません。今回僕たちが新しく始めようとしている闘いは、それがひとつになって、両方からひとつの労働組合が全面的に両方の資本と正面から立ち向かうことです。これが成功したら労働運動にとって初めての経験です。そういう運動のもとに組織拡大が実現できるということが具体的に自分たちの実践を通して示すことが出来たら、情勢は大きく動き出すと思っています。
 そういうことを含めて、新鮮な気持ちで新しい決意を込めて、人間が生きていけない現実を団結という力に変えることが出来たらこの時代は間違いなく動く、歴史は動くということに確信を持って、2014年も進んでいきたいと思います。みなさんも職場からの奮闘をお願いしたいと思います。
(昨年12月21日に行われた動労千葉労働学校のあいさつをもとに編集したものです)
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外注化粉砕・1047名解雇撤回の1・22総行動

 ◆動労総連合・出向命令無効確認訴訟 1月22日10時30分開始(10時裁判所前集合)
 ◆最高裁署名提出行動
国鉄分割・民営化で不当解雇から27年

2・16労働者集会

 2月16日(日)午後6時(開場5時半) すみだ産業会館8階サンライズホール