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ちば合同労組 「すき家」で5・29ストライキ決起!

月刊『労働運動』34頁(0292号08/01)(2014/07/01)



ちば合同労組 「すき家」で5・29ストライキ決起!


 ちば合同労組は5月29日、大手牛丼チェーンすき家でストライキを決行しました。全国で唯一、正式にスト権を行使したことに予想を超える反響と応援を受けました。心から感謝を申し上げます。
 5月29日の「肉の日」ストの直接の発端は、すき家で2月中旬に発売された「牛すき鍋定食」でした。すき家はワンオペ(ワンオペレーション)が問題になっており、深夜帯に注文・調理・配膳・レジ・片付けに加え、店内の清掃や翌日の仕込み、売上管理までたった一人でこなす過酷な労働実態が焦点となっていました。
 ひときわ手間のかかる牛すき鍋定食の登場によってすき家店舗は完全に破綻しました。下膳が追いつかず空席に食器が放置されたまま――地獄のような労働にネット掲示板に「もう限界」「みんなが辞めるなら俺も」「同時退職しよう」などの書き込みが拡大、アルバイト店員が大量退職し、「鍋の乱」と報道されました。2000店舗のうち250店舗が閉鎖に追い込まれ、ついに牛すき鍋定食は販売中止となったのです。
 しかし、すき家は4月1日の消費増税にも関わらず牛丼の値下げを強行し、5月には牛すき鍋定食の再開を打ち出したのです。5月23日から一部店舗で牛すき鍋定食が再開するとの情報が広がる中、21日ごろからツイッターで「5月29日に全国のすき家で一斉ストライキを」という呼びかけが始まりました。

●委員長が先頭に立ちストライキを決断

 諸町委員長がすき家の工場で働いており、3月ごろから組合ニュースでこの問題をとりあげ、チラシも作成していました。私たちは5月23日にストの動きを把握し、組合員で手分けして早朝5時に起床して、店舗へのチラシ配りを始めました。
 26日からはすき家の船橋工場の最寄り駅でチラシ配りを始めました。場所は弁当や冷凍食品などの工場が集積する食品コンビナートです。食品工場に向かう労働者が早朝から送迎バスを待って並んでいます。しかし行列の労働者は見知らぬ顔の私たちに警戒感を示し「お前たちは何者だ。何がしたいのだ」という顔。ほとんど誰もチラシを受け取ってくれませんでした。翌日からほんの少しずつ受け取る人が増えていきました。
 スト決行日まで残り2日。報道やネット上では「スト騒動」が過熱していました。いくつかの労働組合が「ストライキをするなら組合に加入を」と呼びかけていました。しかし、どの組合もスト実施を表明しません。27日、ある組合が「違法なストはやめましょう」と声明。これが瞬く間に拡散し「肉の日ストライキは不発か」という観測が濃厚となっていきました。
 この段階で私たちの組合もスト実施を決断できていませんでした。組合員が緊急に集まって真剣に議論しました。いろいろな議論になりました。葛藤もありました。しかし「中途半端な対応はできない」。団体交渉を申し入れ、ストを正式に通告しました。
 最初に〝変化〟を感じたのは工場にスト通告に行った時のことです。管理者に通告し、休憩中の同僚に話をして工場の外に出た瞬間、階上から拍手と歓声。正直、予想外でした。前日28日のことでした。
 ちば合同労組の次の4つを要求しました。
①店舗の要員を増やし、ワンオペを廃止する
②5月29日のストライキ(すべての形態)参加者を処分しない
③店舗閉鎖や減産などに伴う従業員の不利益をすべて補填する
④アルバイト・パートの時給を一律1500円に
 29日当日、早朝から最寄り駅で「すき家スト決行中」の横断幕をもって宣伝活動を行いました。食品コンビナートに向かう労働者の波にチラシが吸い込まれていきました。「もっと早く話してくれればよかったのに」と、諸町委員長の同僚も笑顔で声をかけてきました。組合員の一人が写真を軽い気持ちでツィート。「ちば合同労組、すき家スト決行」の報はツイッターで注目ワードのベスト10に入る驚異的な注目を集めます。「ちば合同労組はストに入ります」という前夜の宣言が「違法なストはやめましょう」と並んで大きな話題になっていたのです。多くの人びとが〈ストが本当に決行されるか〉と注目していたのです。この日、組合事務所には深夜まで問い合わせと取材が殺到しました。
 少しずつ全国での閉店や営業時間短縮の情報も入ってきました。「違法なストは損害賠償」という恫喝にもかかわらず多数の労働者が「スト」を決行したのです。

●労働者の声が社会を動かす力を持っている

 ちば合同労組のストを報じたニュースがヤフーニュースの国内アクセスランキング1位になり、2000人近い人がコメントを寄せました。一般的にネット上のコメントは眉をひそめる内容も多いのですが、今回のストに対しては好意的なコメントが相当ありました。賛成も反対も評価も批判も含めて、このコメントは私たちにとって財産です。
 「これで肉の日ストは正式なものに」「千葉県内はストに入っても大丈夫らしい」「スト慣れしていると思ったら動労千葉がバックに」などの反応がありました。たった1人の、しかも工場でのストでしたが決行して本当に良かったと思います。
 4つの要求項目をめぐって興味深い論争が起きました。2番目の「5月29日のストライキ(すべての形態)参加者を処分しない」が予想外に評価されました。労働組合は既得権擁護ばかりという批判は強いのですが、サボタージュを含むあらゆる形態のストについて不利益な処分をするなという要求が強く支持されました。
 時給1500円の要求も論争になりました。私たちは「時給1500円は世界の労働者の標準要求。8時間労働制と同じように世界の標準(最低)賃金にすべき」と訴えました。
 要求の内容、決断の時、戦術なども含め、どれが欠けても情勢や労働者の気持ちとかみ合わずにぶっ飛ばされていました。地域合同労組として模索の連続ですが、動労千葉をはじめ全国の仲間の闘いから学び、励まされてのストでした。労働者の声が社会を動かす力を持っていることを示したことは情勢の一つの転換点だと思います。
 (ちば合同労働組合)