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11・1日韓労働者理念交流

月刊『労働運動』34頁(0298号03/06)(2015/01/01)

11・1日韓労働者理念交流

韓国の新自由主義、公企業民営化とパククネ政権
キム・スンホ(サイバー労働大学代表)


韓国の新自由主義、公企業民営化とパククネ政権
キム・スンホ(サイバー労働大学代表)


 現在のパククネ政権の下で新自由主義、公企業民営化はどのように進められて来たのか、お話したいと思います。
 まず韓国での新自由主義がどのようなものか、三つに分けて話します。
 第一に、新自由主義は危機に瀕した資本主義が反動的に対応する、衰退期の資本主義の姿だということです。新自由主義が悪辣な形態の資本主義であるのですが、寿命がそんなに長くはないことを示しています。
 第二に、韓国の新自由主義は韓国資本主義の内的必要性によって登場したものではない。帝国主義が自己の必要によって、それに従属する韓国に開放を要求して、利害を貫徹するために生じたものだということです。
 韓国での新自由主義は資本が労働を搾取するということだけではなく現代帝国主義が従属資本主義韓国の労働者市民を搾取し収奪するという二重の反動性を持っています。
 ここが韓国の新自由主義が日本の新自由主義と異なる点だと思います。
 第三に、韓国では政治的に軍事独裁を継承する保守派と軍事独裁に反対する自由派が対立しているのですが、二つの分派がどちらも新自由主義を受容して推進する上では軌を一にしています。

①韓国の新自由主義

 新自由主義は世界の普遍的な潮流になっています。新自由主義は第2次世界大戦以後、30年間のケインズ主義の代替物だと言えます。私はケインズ主義は国家独占資本主義のパラダイムの一つだと思います。
 国家独占資本主義は1930年代の大恐慌と1940年代の第2次世界大戦を経て登場した国家と独占(金融)資本の融合関係が戦後もそのまま持続して、不可逆的な一つの段階として位置を占めたものです。国家独占資本主義は資本主義の衰退期を反映していると言えます。
 ところで国家独占資本主義は第2次世界大戦当時、労働者階級の革命的高揚に対処しようとする資本側の妥協、ケインズ主義と足並みをそろえます。改良主義的側面も反動的形態があるということです。
 資本主義固有の矛盾である「利潤率低下傾向」に直面、石油ショックの1970年代の資本主義の危機でした。
 これに対する資本の解決方法はマルクスが資本論で言及したとおり利潤低下傾向を相殺することでした。その代表的手段は資本の労働に対する搾取度を高めることと、資本や商品の輸出を増やして高い利潤率を実現し、価値を実現することでした。
 その中で新自由主義はケインズ主義を排除し、福祉国家は解体され始めました。
 一方、世界化は商品、資本、全て全面的に国家の障壁を除去するものでした。
 国家独占資本主義自体が廃止されるかのように見えました。
 私が強調したいのは、新自由主義になったからと言って資本主義から帝国主義が無くなったりするものではなく、国家独占資本主義が無くなったりするのではないことです。
 国家独占資本主義自体がすでに資本主義の衰退を示しているとすれば、新自由主義はその衰退期の中でも、その反動性を露骨に示していると言えます。

②韓国での新自由主義と公共部門改革:民営化と労働市場柔軟化

 次に韓国の新自由主義と公共部門改革の問題を見てみます。
 韓国における新自由主義がまだ充分な準備状況が無いなかで導入されたこと、そしてその中で公共部門の改革ということが非常に否定的形で現れたということがポイントになると思います。
 韓国では新自由主義を以下のような四つの制度・政策が束ねられたものとして理解することが一般的です。
 第一に、「規制緩和」あるいは「脱規制」です。
 第二に、労働市場柔軟化です。
 第三に、公企業民営化です。
 第四に、市場の対外開放です。
 先進資本主義の新自由主義では福祉国家の解体が重要な部分をなしています。韓国では、公務員年金のように、特権的労働者にだけ保障されていた福祉さえも解体され、公共医療保険も攻撃にさらされています。
 労働市場柔軟化、開放は高い強度で進められました。規制緩和も大幅な変化がありました。しかし公共企業部門は他の部門と比べて改革が不振だったと言えます。キムデジュン政権当時、IMF下で11の公企業民営化がありましたが、それ以後は大きな動きはありませんでした。
 一番典型的なのは韓国通信の民営化でした。
 96~97年労働法改正大ストライキがあり、97年財閥大企業らの連鎖不渡りとIMF事態が起きました。
 1998年初めに整理解雇法が施行され、1998年7月1日から勤労者派遣法(派遣勤労者保護等に関する法律)が施行されました。
 公企業民営化と労働市場柔軟化が一緒に押し寄せたのです。
 1999年から2000年末まで2年間、契約職労働者たちの契約廃止と請負転換強要が進められました。
 このような資本の労働市場柔軟化攻撃に、労働組合は効果的な対応ができませんでした。正規職労働組合は契約職労働者も組合員になれるという規約があったにもかかわらず非正規職労働者の組合加入を受け入れようとはしませんでした。これに対して契約職労働者は独自の労働組合を作りましたが、当時の複数労組禁止条項によって、その合法性は認められませんでした。2000年10月14日、契約職労組が合法化され交渉権を持つことになりました。苛烈な闘争を行いましたが資本と政権に勝てずに労組を解散してしまいました。一方、正規職労働組合は、契約職労働者たちとの共闘を拒否し、御用労組に指導権が渡ってしまいました。

③パククネ政権の新自由主義と鉄道民営化

 鉄道は公企業民営化のトップバッターと目されています。
 パククネ政権になり、経済危機を克服するための代案として新自由主義に基づく公企業の民営化が大々的に進められようとしています。そうなれば韓国経済は資本主義のパラダイム転換がほとんど完成すると思われます。そうなれば韓国は日本のように長期複合不況に陥ると思います。そこへもってきてパククネ政府は核マフィアと同盟を結びんでいます。日本の福島原発事故のようなものが起こらないという保障は何もありません。
 破局に向かってひたすら走りつづける点では日本の安倍政権も韓国のパククネ政権もまったく同じです。韓日労働者は固く団結して共に闘わなければなりません。