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■特集 JR四国 国鉄分割・民営化の最大の破綻点がJR四国だ

月刊『労働運動』34頁(0302号02/08)(2015/05/01)



■特集 JR四国 国鉄分割・民営化の最大の破綻点がJR四国だ

■特集 第二の国鉄分割・民営化は全面外注化攻撃だ! 今こそ動労総連合を全国に!

(写真 多度津工場【香川県】でビラをまく動労西日本)


JR四国 国鉄分割・民営化の最大の破綻点がJR四国だ
山田 和広(岡山労組交流センター・動労西日本書記長)

JR四国の社長は「上下分離」を要求

 四国は、香川・愛媛・徳島・高知の4県の合計人口が387万人で、横浜市をわずかに上回る程度だ。新自由主義による地方切り捨てで過疎化と人口減少は進む一方だ。
 その上、予讃(よさん)線(松山―高松間)、土讃(どさん)線(高知―高松間)、高徳(こうとく)線(高松―徳島間)の鉄道幹線と並行して高速道路が建設され、鉄道は自動車やバスとの競合にさらされている。ピーク時の1996年度に370億円だったJR四国の運輸収入は、2015年度に226億円台へと落ち込む見込みだ。
 社長の泉雅文自身が「四国のような地方は上下分離(*)しないと生き残れない。国に上下分離を求めていく」と言い出している(週刊東洋経済2月19日発行号)。
 そもそも国鉄は、全国一律の運賃で公共交通機関としての鉄道を成り立たせてきた。それは首都圏や大都市間の大量輸送による収益を地方に再配分することで可能になっていた。だが、国鉄分割・民営化で鉄道は切り分けられ、国家権力中枢と結びついた葛西敬之(JR東海名誉会長)らは、収益の上がる東海などを私物化したのだ。
 13年度のJR東海の営業収益(売上高)1兆6525億円に対し、JR四国は488億円、経常利益(利潤)は東海の4042億円に対し四国は46億円だ。この46億円も「経営安定基金の運用益」と称する国の補助金によるもので、実際の経常利益は毎年90~100億円規模の大赤字だ。

合理化と外注化を強行

 JR四国は完全に破綻している。だが、どんなに破産的でも「完全民営化」に向けて極限的な合理化・外注化へ突き進むしかない。それが、第二の分割・民営化攻撃だ。北海道の2割強ほどの面積しかない四国には切り捨てるローカル線もなく、JR四国はどこよりも激しく合理化と外注化を進めている。
 JR四国の「中期経営計画2012―2016」は「自立経営の確立」を掲げ、「新たな輸送体系の実現」「グループ一体となった業務の効率化」「鉄道の抜本的な高速化」を打ち出した。特急を増発する一方で生活路線は縮小し、徹底した人件費削減―外注化・非正規職化を強行するとともに、何の展望もない四国新幹線構想にすがりつくということだ。
 施策の筆頭には「少数精鋭化(総額人件費削減)」が挙げられた。実際、発足時に4452人だった社員数は現在、2600人台に減少した。その分、外注化・非正規職化も拡大している。
 JR四国の大量退職問題は、JR各社の中でもきわめて深刻だ。2013年時点で50代以上の労働者が過半数を超えており、退職者が抜けた穴を外注会社の非正規労働者の低賃金・過重労働で埋めている。
 JR四国は2010年、JR各社で初めて、車掌業務を契約社員の客室乗務員に行わせる施策に踏み切った。当時の社長・松田清宏(現会長)は「接客に興味がある人に来てほしい」と言った。列車安全運行の要をなす車掌を「接客業」にするというのだ。2009年度末時点でJR四国に在籍していた300人の車掌のうち170人が2023年度までに退職するが、それに相当する人員が次々と期間5年以内の契約社員にされていくのだ。
 「中期経営計画」は恐るべき安全崩壊をもたらしている。保線・検修などの鉄道事業の根幹部分が丸投げ外注化され、その結果「鉄道運転事故」は毎年20件を超えている。この数値はJR四国の車両保有台数から見て異常に高い。またJR四国の全259駅のうちすでに80%が無人化されている。JR四国唯一の工場である多度津工場では、発足時に600人いた労働者が今は200人に削減され、うち100人は外注会社の社員だ。
 このままではJR四国での「尼崎事故」「伯備線事故」は不可避だ。
 一昨年秋には「56本の橋を補修せず、点検記録に不備があった橋は1100本超」という事態が暴かれた。さらに昨年秋には、2013年度に実施された線路点検のうち328カ所で検査が適切に行われていなかったことが、会計検査院の検査で明らかになった。
 JR体制打倒は、鉄道労働者、全労働者人民の命がかかった課題だ。

今こそ動労西日の組織拡大へ

 JR四国の矛盾の根源は国鉄分割・民営化体制=JR体制そのものにある。社会の公共物である鉄道を私的利潤獲得の道具として資本家が私物化していることに根本問題がある。だから鉄道と鉄道労働者の労働の社会性・共同性の奪還に向けて階級的団結を形成し、動労総連合を建設することが求められている。
 2013年2月8日のJR四国労組第26回本部委員会では、次のようなやりとりが行われた。「(愛媛支部)動労西日本は、今年1月に開催した第6回定期大会において組合規約改正により、組合員の範囲を拡大し、JR四国も対象となったとの情報がある。詳細な情報があれば教えていただきたい」「(浅岡書記長)動労西日本の組織拡大行動は今に始まったことではなく、2年ほど前から運転所前でビラ配布するなど活動している。......JR四国労組の組合員は動労西日本のビラ配布等に関わりを持たないようにしてほしい」(JR四国労組新聞13年3・10付)
 「動労総連合を全国に」の方針は、JR四国の最大労組=御用組合を恐怖にたたき込んでいる。動労神奈川の決起に続き、動労総連合を四国に建設しよう!
 さらに、動労水戸の被曝労働拒否の闘いが決定的だ。伊方原発再稼働攻撃と対決する四国の鉄道労働者の課題そのものである。伊方原発で事故が起きれば四国全体が被曝する。愛媛県職労とともに伊方原発再稼働阻止・被曝労働拒否を闘おう。動労水戸支援共闘を四国に広げよう。
 新自由主義と闘う団結の砦=動労総連合を四国につくろう!

*「上下分離」  線路や駅などの施設を保有する事業者と列車を運行する事業者を分離する経営方式。実際には施設を自治体が保有する形をとって、列車を運行する民間会社に補助金を出す場合が多い。