月刊労働運動-Home> 組合運動の基礎 > | 連載 >

■労働組合運動の基礎知識 第7回

月刊『労働運動』34頁(0302号06/01)(2015/05/01)



■労働組合運動の基礎知識 第7回

小泉義秀(東京労働組合交流センター事務局長)

年間変形労働時間制を使った不当労働行為-組合弾圧

 3月2日に小竹運輸株式会社の小竹和江代表取締役から、中村信幸委員長、野澤英人副委員長、植田和実書記長の3人に対して「注意指導書」が提出された。いずれも「平成27年2月10日以降、当社からの出勤時刻の指示に従わずに出勤した行為について、下記の通り注意指導する」と記され、末尾には「引き続き当社からの業務上必要な指揮命令及び注意指導に従わない場合には、貴殿に対し、懲戒処分を科さざるを得なくなることを付言する」とある。
 しかし上記の「当社からの出勤時刻の指示」が違法不当なものだ。「注意指導書」は「1年単位の変形労働時間制を採用し」という就業規則を根拠としている。しかし、年間変形労働時間制は必ず労使協定が必要である。従業員を過半数以上組織する労働組合がある場合はその労働組合、ない場合は従業員代表選挙で選ばれた従業員代表との間で労使協定が結ばれていなければならない。しかし、小竹運輸においては、これまで従業員代表選挙が行われたことがなかった。また仮に、「年間変形労働時間制」が正当な労使協定の下で結ばれたとしても、今回の「出勤時刻の指示」は違法であり、組合三役だけにかけられた不当労働行為だ。

使用者が業務の都合によって任意に労働時問を変更するような制度は許されない

 「一年単位の変形労働時間制を採用する場合には、労使協定により、変形期間における労働日及び当該労働日ごとの変形期間における労働日及び当該労働日ことの労働時間を具体的に定めることを要し、使用者が業務の都合によって任意に労働時問を変更するような制度は、これに該当しないものであること」(『労働基準法解釈総覧』厚生労働省労働基準局編第10版 基発168号326頁)とある。
 定時の労働時間が8~17時となっていて、これまでは7時に出勤すれば早出1時間、18時まで仕事をすれば1時間の時間外手当がついていた。にもかかわらず明日は10時出勤して19時まで働け、明後日は9時に出勤して18時まで拘束し、時間外手当を支払わないというのは許されない。
 更に、1年単位の変形労働時間制をとった場合の労働時間の上限は1日10時間、週52時間である。小竹運輸において現在はそのような残業が配車差別によって行われていないが、かつてはこれを超える残業時間で仕事をしていた。年間変形労働時間制の労使協定を結んでいるのなら1日10時間、週52時間以上は労働してはならない。
 小竹運輸のみならず、同グループ会社のK-ロジテック、つくばトランスポート、トランスーコ、関東物流も同様の就業規則である。そうするとグループ会社全部が労働基準法違反をしていることになる。
 懲戒処分の恫喝に対して、小竹資本には「抗議並びに要求」を叩き付け、茨城県労働局に対して数項目にわたる労基法違反の申告を行い反撃し、現在労基署から指導・調査が入り攻防になっている。