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■私の職場 第2回 国鉄分割・民営化型の首切り許さない!

月刊『労働運動』34頁(0303号07/01)(2015/06/01)


■私の職場 第2回

国鉄分割・民営化型の首切りを許さない!


柴田利博 (自治労福岡県国保労組組合員)

※国民健康保険の職場です

―どんな職場ですか
柴田 国保連合会という医療機関への審査支払を行う職場で、41年前に18歳で入りました。200人ほど働いていますが、今年は県移管が迫っているためか早期退職者が多数出ました。
 家が貧しかったこともあり、高校を卒業すると働き始めました。国保連は労働条件が公務員に準じていましたので、入った当初は働きやすかったです。
 私が働き始めた頃は、労働組合がストライキで闘い、要求を勝ち取る時代でした。国労、総評も健在でした。
―仕事はどんなことをされているんですか。
柴田 医療機関から出されてくる診療報酬明細書を審査点検し、集計する仕事です。病院からの請求に疑問があれば、質問付箋を貼り、査定(医療費を削ること)します。僕たちの時代は紙請求が主でした。
 今は国保労組が首切りにつながると導入に反対していたレセプト電算処理システムが入り、医療機関からの請求が紙ではなくCDやメール請求となりました。そのため今はパソコンとにらめっこする毎日です。点検する事項も、多岐にわたり仕事が煩雑化しています。メンタル疾患も増えています。
 安倍政権は、高齢化社会を迎え、膨らむ医療費を抑えるためと称し、福祉と医療費の削減を行い、労働者に対して保険料負担増、消費税引き上げなどの攻撃をかけています。そして、入院日数を減らし患者を病院から追い出しています。新自由主義は人間が生きることに必要な医療すら金儲けの対象にします。
 国保の職場も民営化が狙われています。これを機に自民党安倍政権は国民皆保険制度の解体も目論んでいると思います。

※県移管へ悪質キャンペーン

―2018年度からの国保の県移管に向けて今職場で起きていることを話してください。
柴田 昨年、朝日新聞が医療機関の診療報酬の審査支払業務を行っている2団体、国保連と支払基金に対する悪質なキャンペーンを行いました。「国保連と支払基金の統合問題を政府・厚労省は3年間放置している」「国保連と支払基金は毎年1200億円もの医療費手数料を稼いでいる。それが市町村財政を圧迫している」「国保連は手数料を二重取りしている」「支払基金は公務員より賃金が高い」など、読者が「こんな職場は合理化されて当然だ」と思わせる記事の書き方でした。「韓国は日本の10分の1の人数で、医療費削減に日本よりもずっと大きな成果を上げている」と。だから県移行を前にして、この2団体を早く合理化しろと!
 このキャンペーン以降、基金との医療費削減競争にさらに拍車がかかり、競争に負けたら職場の存続すら危ぶまれると言われるようになりました。
―職場の現状に対する今の思いを話してください。
柴田 今、県移管を前にして、国保連と支払基金に国鉄分割・民営化型のリストラ攻撃がかけられてきています。自治体職場への攻撃でもあると思います。
 私は昨年組合大会で国保と基金の労働者は生き残りのために競争するのではなく団結して、安倍政権の規制改革会議と闘おうと訴えました。組合員に「良かった」「貴重な提起ありがとう」と共感が広がりました。
 国保の県への移管は単なる移管ではありません。国保の仕事であっても医療費削減に成績の良い方に仕事を任せる、基金に持っていかれ国保に仕事が来ないことも想定されると当局は言います。私はこんな理不尽なことに労働組合は怒らなければいけないと思います。

※職場から反撃が始まった

―労働組合の状況について話してください。
柴田 労働組合が一番にやるべきことは、資本の首切り攻撃と闘うことです。国保の県移管は労働組合つぶしの攻撃です。「競争に負けたら仕事をやらないぞ」「争議を起こすところには仕事をやらない」「先行き不透明だから人員は減らす」と言うんです。「労働組合も今は要求すべきじゃない」と思わせるんです。国鉄分割・民営化の時もそうだったのではないですか。「闘うな!」「国労を脱退しろ!」「新会社に行けないぞ!」と。
 それが行き着いたところが、「トイレに行くときも周りに言って行け」という管理職のパワハラ攻撃でした。今は昼休みも45分しかないんです。数年前まで昼1時間、3時に15分の休息時間がありました。
 私は怒りを込めて抗議の声を上げました。この問題を巡って会議が開かれ、何人かの人が私と同じ思いの声を上げてくれました。人事課は管理職の指示を否定しました。
 自治労本部の指導で国保労組も動いています。自治労本部は「国保改革に自治労と厚労省の考えは一致している」と言い、厚労省幹部を講師に呼んで「自治労地域医療全国集会」を開催しました。だから厚労省の理不尽なやり方に抗議もしない。これでは労働組合足りえない。
―労働組合が当局と同じなら意味がないですね。
柴田 国保の市町村から県への移管は、市町村財政が破綻したからです。国保の財政が破綻したのも非正規で働く若者が増え保険料を収められないからでしょう。誰がそうしたんですか。経団連でしょう。国鉄分割・民営化で労働組合が闘わなくなったからです。動労本部の裏切りも激しかったが、それと闘わなかった既成指導部も同じです。
あの攻撃は将来、自治体関連職場である自分たちにもかけられてくると思っていました。だから自治労、教組を始め様々な産別が1047名を職場に戻せと支援したんです。
 安倍政権が労働組合をつぶし、戦争を始めようとしている今、労働組合が頑張らなければいけないと思います。戦争突入情勢だから労働組合・労働者に対する攻撃が激しくなっていると思います。
 動労千葉、動労水戸の闘いをもっと広げ、全国に動労総連合を建設しましょう! 国鉄解雇撤回裁判に勝利することで、日本の労働運動を変えることができると確信しています。

※交流センターの組織拡大を

―労組交流センターへの思いを話してください。
柴田 国鉄分割・民営化時に連合ができました。連合は労使協調路線で許せないと思っていました。交流センターは「反連合・反全労連」を掲げていたので、これに賭けようと思いました。
 韓国はパククネ政権打倒で、沖縄は辺野古新基地建設阻止でゼネスト情勢です。九州になんとしても動労千葉のように闘う拠点をつくらなければと思います。組織拡大に大きく飛躍する時だと思います。
 (羽廣 憲さんのインタビュー)