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時代を解く 2 アジアインフラ投資銀行とは?

月刊『労働運動』34頁(0304号08/01)(2015/07/01)


時代を解く 2
藤村 一行(動労千葉労働学校講師)

アジアインフラ投資銀行とは?


 アジアインフラ投資銀行(AIIB)とは、中国が2013年秋に「シルクロード構想」と結びつけて打ち出した国際金融システムのプラン。中国・習近平政権が、米・オバマ政権のアジア・シフト政策(11年~)と第2次安倍政権の登場(12年末)を前提に、ASEAN諸国とのギクシャク、とりわけ南沙諸島をめぐる対立が深まる中、アジア諸国を取り込む戦略として打ち出した構想。
 このプランに4月15日段階で、イギリスや独・仏を含むEU諸国など合計57か国が参加を表明した。ドイツなどEU帝国主義は、中国市場を含むアジアにおける経済争闘戦とEU周辺諸国への開発投資の面から動いた。イギリスは老舗の金融帝国主義の地位確保と実利の両面から、アメリカの制止を振り切って参加に踏み切った。それが、IMF(国際通貨基金)や世界銀行、ADB(アジア開発銀行) などを中心とする、第二次世界大戦後に形成された米主導の国際金融秩序を根幹から崩壊させると、世界に「衝撃」を与えた。

没落するアメリカ世界支配

 この構想が広がった第一の条件は中国の「経済大国」としての台頭だが、もう一方で重要なのは、ソ連崩壊後「一極支配」とまで言われた基軸帝国主義アメリカの没落である。今、政治軍事的にも経済的・金融秩序的にも、米による世界支配の枠組が大きく崩壊しつつある。そうした世界的大転換が進行しているのだ。
 最近、中国主導で形成された国際金融機関としては、別にBRICS銀行がある。11年に打ち出され、今年(15年)正式に発足する。BRICS諸国(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカの五か国)を中心に、
開発金融と同時に通貨の貸し出しも行う機関としてつくられた。その上にAIIBを作った。
 米・日は6月サミット(ドイツ)で、ウクライナ問題にも絡めて南中国海での中国の軍事的「挑戦」を許さないと打ち出し、AIIBにも協力して対応すると確認した。帝国主義間の対立も含めてAIIBをめぐる攻防はさらに本格化する。
中国の危機と東アジア戦争情勢
 中国経済にとってAIIBは、鉄道や道路、空港・港湾の建設、電力・原発などのプロジェクト輸出、さらに資源獲得のための投資として位置づけられている。中国の「過剰資本・過剰生産力」を外に持ち出し、国際争闘戦の武器とする。それが東アジアとヨーロッパをつなぐ「一帯一路のシルクロード構想」という形で打ち出されている。
中国スターリン主義指導部は今、国内支配的にも軍事外交的にも行き詰まり、立ち往生している。米・日帝国主義はTPPも含めて、中国を抑え込もうと必死だが、それは中国の内部危機(体制破綻と労働者階級人民の大反乱)の爆発を促進させる。安倍は、米よりも突出したかたちで、戦争国家化と新たな侵略・戦争突入のコースに踏み込んでいる。日本帝国主義は差し迫った危機として南中国海の軍事的衝突と朝鮮半島の大激動を見ている。