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労働組合運動の基礎知識 第9回

月刊『労働運動』34頁(0304号09/01)(2015/07/01)


労働組合運動の基礎知識 第9回


小泉義秀(東京労働組合交流センター事務局長)

IJBS労組の闘いと労働者派遣法改悪

 現行労働者派遣法は政令で定められている26業務については期間制限がなく、それ以外のいわゆる自由化業務については原則1年、最長3年の期間制限が設定されている。ただ、業務区分の境界が、法律や政令だけでははっきりしてはいない。曖昧なのだ。
 2012年改正派遣法は、3年間の猶予期間が設けられた「労働契約申込みみなし制度」を定めた。その施行は今年の10月1日である。労働契約申込みみなし制度とは、派遣先企業が「違法な派遣」であることを知りながら派遣労働者を受け入れている場合、その違法状態が発生した時点において、派遣先企業が派遣労働者に対して、当該派遣労働者の派遣会社における労働条件と同一の労働条件を内容とする労働契約の申込みをしたものとみなす制度。ここで言う「違法な派遣」とは、(1)偽装請負(又は偽装出向)の場合、(2)無許可若しくは無届の派遣会社から労働者の派遣を受け入れた場合、(3)労働者派遣禁止の業務に派遣労働者を従事させた場合、(4)派遣受入可能期間を超えて労働者の派遣を受け入れた場合。なお、当然のことだが、派遣労働者は派遣先企業の労働契約申込みを受諾する義務はない。
 安倍政権は、この「みなし制度」が施行されると、派遣先が派遣労働者に直接雇用を申し入れなければならない違法状態が蔓延しているため、派遣法改悪を急いでいる。派遣先の直接雇用を回避するために、大量の派遣切り解雇が10月を前にして起こる可能性がある。

IJBS労組の闘いは派遣法の違法性を撃つ!

 日本IBM・ビジネスサービス(IJBS)労働組合の仲宗根光洋君の行っていたテレマーケティングは26業種のうちの一つである届出制の特定労働者派遣事業。この派遣事業の場合は「常時雇用されている労働者」であり、期限の定めがないのが原則だ。雇い止め解雇にされやすい有期労働契約の雇用契約とは異なるというのが特定労働者派遣事業の特徴とされる。しかし、仲宗根君は、3か月、6か月、3か月、9か月、6か月、6か月、6か月、1年と7回の契約更新を行い約4年働いてきた。厚生労働省の定義では有期労働契約でも1年を超えて契約を更新してきた労働者は「常時雇用されている労働者」であるとされている。
 仲宗根君は、「日本コンセントリクスビジネスサービス株式会社」(略称JCBS)を派遣元会社として、「あいおいニッセイ同和損害保険株式会社」(略称AD)を派遣先企業として、派遣労働者として働いてきた。しかし、この派遣元と派遣先の関係は一般的な派遣労働とは異なり「JCBSが雇用する派遣労働者を自社のコールセンターにおいてADが外注した業務を行うという特異な業態」となっている。業務請負労働を労働者派遣という形でごまかしてきたのだ。
 今回の派遣法改悪は、このような様々な違法派遣、特定派遣事業では一般的にはあり得ない雇い止め解雇の横行を開き直り、違法状態を合法化するためになされようとしている。IJBS労組の闘いは、この派遣法の違法性と矛盾を根本から撃つ闘いなのである。派遣法そのものを廃絶しなければならない。