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私の職場第5回 非正規と一体で組合を結成!

月刊『労働運動』34頁(0308号03/01)(2015/11/01)


私の職場 第5回
正規と非正規が一体で組合を結成した!

菊池 晴知 (ユニオン習志野委員長)

―どんな職場ですか。
菊池 習志野市役所(人口約17万人)の教育委員会事務局の事務をしています。市役所の仕事は多岐で、意識も職域によりばらばらですが、団結をつくる上で面白みがある職場です。
 就職したのは1973年、当時は共産党系、社会党系、反戦系が一緒になった執行部で、私は教宣部長や職場の分会長をやりました。当時の組合は共産党系が強く、自治労千葉県本部も共産党系でした。総評解散・連合結成後、共産党系は自治労を割って自治労連を結成しましたが、習志野市労連もその傘下に入り、共産党系以外を執行部から排除するようになりました。
 今の仕事は窓口での受付で、転入学受付や生活が厳しい家庭への学用品の援助、学校の子供のデータ管理をしています。
 ものすごく忙しいです。今は、再任用で週3日勤務ですが、3日で終わるような仕事量ではなく残業も多いです。

※新組合結成の経緯

―今年、組合を結成した経緯を話して下さい。
菊池 長年、有志の形で動労千葉を支援し、物資販売に取り組んできたのですが、数年前に「動労千葉を支援する会・習志野」を職場や地域の仲間十数人で結成しました。開店休業状態の習志野市労連とは別に、組合らしい組合運動をつくっていきたいというのが動機でした。当時は有志で雇い止め問題などに取り組みましたが、有志での運動には限界があり、やはり労働組合として取り組みたいと結成することにしました。

―きっかけは何ですか。
菊池 この間、雇い止め、下請け労働者の死亡事故など職場問題が次々と出てきたのですが、既存の指導部は全く取り組まないどころか、組合ビラにも一言も書かない中で、職場の仲間が苦しんでいる状態が続いたので、新組合結成に踏み切りました。
 6年前に、学校で働く給食受取調理員全員の雇止め攻撃がありました。受取調理員は、給食センターから送られてくる給食をクラスに配膳するのが仕事ですが、長い方は10年以上働いていました。本来は正規にしなくてはいけないのにずっと非正規でこき使い、当局が人件費カットのため雇止めにして、短時間パートに置き換えるという攻撃をかけてきたのです。受取調理員たちの意見は聞かず、問答無用で一方的に通告するだけの「説明会」をやったのです。受取調理員たちは、目の前が真っ暗、これからどうすればいいのか途方に暮れました。私たちが市労連執行部に撤回闘争を取り組むよう要請しましたが、一切取り組まない。これは受取調理員たちだけの問題ではなく全体に広がっていくと考え有志で当局とかけあいました。受取調理員制度廃止の攻撃をひっくり返すことはできませんでしたが、同じ労働条件の他の職場に異動させるという形で仕事を確保し、一定程度勝利しました。
 その後、定年後の再任用の職員に対して、本来は1年更新で5年間勤務できるのに、ある職員だけ6か月雇用、次に3か月雇用にするいじめ攻撃がありました。その年は猛暑で夜眠れず仕事中にコックリしている管理職もたくさんいたのに、「仕事中居眠りをした」という理由で嫌がらせをしたのです。ビラで訴えると「なぜ一人だけに嫌がらせするんだ」と職場の声が巻き起こり、有志で人事課に乗り込んで撤回を要求しました。メチャクチャな攻撃だったので、当局も1年更新にすると改め、勝利することができました。
 さらに昨年10月、市役所の清掃下請けの委託業者が、収集車で資源ゴミを回収中、下請け労働者が車から振り落とされて頭を強打し死亡する事故がありました。事故を起こした請負業者は市長の後援会長であり、習志野市防犯協会の会長でもあったため、市はこの事実をひた隠しにしていました。しかし新聞にも報道され、私たちは「労災隠しは許せない」とビラで何回も訴え、議会でも取り上げられました。当局は労災隠しを断念し、業者は労災手続きをとらざるを得なくなりました。しかし、市長は「事故の原因を警察で調査中だから市としても業者を処分できない」と答弁し、1年も経つのに(!)未だ「警察で調査中」としています。原因が明らかなのに、市と業者と警察が一体で労災隠し、本当に許せません。

―その過程で組合結成ですね。
菊池 そうです。問題が次々と起きて「闘う組合があれば、犠牲を出さずに済んだ。パワハラ、雇い止め、死亡事故などが横行する職場をほっとけない」と、みんなで気持ちを一つにし結成しました。

※人事評価制度を事実上粉砕!

―今までの習志野市での30年を超える闘いを話して下さい。
菊池 就職した頃は、スト権スト(75年)とか労働者の力が強かった。総評も力を持ち自治体でも春闘でストを構える力があった。スト破りに対してピケ隊を編成して阻止する力もありました。組合執行部には共産党系や社会党系もいましたがストをやるのは当たり前で、春闘になればみんな鉢巻や腕章をつけて職場を闊歩(かっぽ)していました。
 1987年、中曽根が「国鉄分割・民営化で国鉄労働運動をつぶし、総評を解体して改憲をする」という攻撃をかけて労働運動が力を失っていきました。特に自治労連はスト迷惑論で闘いを抑え込もうとしました。みんなが職場放棄して処分覚悟でストを闘っている時、当時の共産党系の執行委員が「今日は仕事が忙しいから」とスト破りをして職場に入って行き、みんなあ然としました。結局ストに参加した組合員たちは処分され、ストを指令した側の執行委員は処分されなかったのです。こうした中で執行部に対する信頼が完全になくなっていき、その後はストも決起集会やデモもやらなくなり、職場委員会にも一般の委員は来ず、執行委員が数名集まるだけになったのです。
 私たちは共産党系に対抗して何度も執行委員に立候補しましたが、16人の定数に対して共産党系は16人立候補、私たちの名前を投票用紙の17番以降にするという操作を行い「17番以降には○をしないように」というビラをまくという信じがたい選挙違反を公然とやりました。こうしたやり方に愛想をつかし更に組合離れが進んでいきました。
 そして、全国的に人事評価制度が問題になるようになる10年も前に、習志野は先取り的に人事評価を打ち出してきました。執行部が反対運動を取り組まないので、私たち有志で「人事評価は諸悪の根源」と人事評価反対のビラを何回も出しました。ビラが絶大な効果を発揮し、「おべっかを使う奴を昇進させ、仲間をバラバラにするのはやりたくない」とみんなが言うようになりました。当局が人事評価のための研修をやると乗り込んで行って「こんなのやめるべき」と言うと、「実は私も反対です」と手を上げる係長が出たり職場の反乱が広がっていきました。誰もが「人事評価=悪」と確信するようになり、人事評価につながる自己申告をみんなが出さないという事態が広がって、当局も「強制はしない」となり、事実上粉砕したのです。今も人事評価による賃金差別を当局が行えない状態が続いています。
 こうした中で、民間委託攻撃も激しくなりました。給食、清掃、公民館などに指定管理者制度を導入し、市の業務を外注化し、労働条件を切り下げる攻撃に対して、執行部が全く取り組まない中、有志で民営化絶対反対を訴えてきました。やはり力ある組合が職場にないといけないと思うようになりました。

※政府の側ではなく、地元住民の立場に立つのが自治体労働者

―三里塚闘争や動労千葉を支援する過程を話して下さい。
菊池 三里塚空港問題は、地元農民が国の暴力で長年耕した土地を奪われる大攻撃で、全国の人たちが農民に共感を寄せました。地元の労働者として、習志野でも一緒に闘おうと、一番多い時は職場の仲間25人くらいで三里塚集会に行きました。1985年10・20三里塚闘争で職場の仲間2人が不当逮捕されました。市議会で自民党系と共産党系の議員が「国に逆らう公務員はクビにしろ」と当局に迫り、日本共産党習志野市議団の名前で「不埒な公務員はクビにすべきだ」と新聞折り込ビラが各戸配布されたのです。しかし屈することなく「国の言いなりになるのではなく、住民(農民)の立場に立つのは自治体労働者として当然。立派なことだ」と職場の団結で跳ね返し、2人とも職場に復帰しました。しかし、組合員2人は不当逮捕なのに6か月停職処分を受けたのですが、執行部は処分撤回を求めるどころか、組合大会当日に突然「6か月停職処分は正当である」という決議を提案し強行採決したのです。組合員が処分を受けた時、当局と一緒に組合員に襲いかかるのは組合としてあるまじきことです。そして誰も執行部を信用しなくなっていきました。
 その過程で、動労千葉のジェット燃料貨車輸送阻止闘争がありました。組合が自分たちの生活や権利を守るために闘うのは当たり前ですが、農民に対する国の攻撃に加担できない、空港開港のためのジェット燃料貨車輸送はやってはいけないと、農民のためにクビまでかけて闘う組合があるのには本当にビックリし、すごいなと思いました。「労働者は私利私欲ではなく正義のために闘う」と見せてくれた。国の圧政に抵抗する労働者の闘いに、地元の労働者として連帯していこうと有志で集会やデモに参加するようになりました。当時は、ペンキで「ジェット燃料輸送阻止」と書かれたスローガン列車が千葉や都心を走る時代でした。今の安倍の攻撃を見ても、当たり前の声が表現できる時代をつくらなくてはいけないと思います。

―当時の指紋押捺拒否闘争について話して下さい。
菊池 1985年、外国人登録で指紋押捺を強制するのは、在日の方たちを犯罪者扱いする人権侵害だと全国で反対運動が起こりました。習志野市は指紋押捺しない人には外国人登録済証を発行しないと最後まで突っ張っていたため、全国の注目の的になりました。機動隊の車が何台も来たり、市役所ロビーを私服刑事が埋め尽くしたりと大変な事態になり、新聞にも出ました。当局は職員に、在日の方が「指紋押捺を強制しないでほしい」と申入れに来た時、市役所に入らせないため当局側のピケを張らせたり、窓口での対決をやらせようとしたのです。しかし職場の仲間は、市内在住の指紋押捺拒否の方たちと食事会などで交流しお互いを知りあうようになっていました。市民課窓口の職員が「これは本来の仕事じゃない」と窓口業務を拒否し、窓口には管理職が出て行くという事態になりました。在日の人たちと行動を共にしたということで私ともう一人が賃金カット処分を受けました。しかし、当局も、指紋押捺を拒否した人にも外国人登録済証を発行するようになりました。闘いがあったからです。

―今の組合の当局に対する要求項目は何ですか。
菊池 ①3月31日を雇用期間から外すことをやめ、継続して勤務した非正規労働者を正規にすること、②非正規職員の賃金を改善すること、③残業代不払いをやめること、などを要求して闘っています。

※組合運動の醍醐味

―組合を結成して組合員の思いや課題があれば話して下さい。
菊池 非正規の仲間は低賃金、労働条件がメチャクチャです。正規の人と同じ仕事をしているのに、給料は半分以下。一生懸命働いても結婚もできないし、子供も産めない状況に置かれ、官製ワーキングプアと言われています。人間らしく生きていける労働条件にしろというのは当然の声です。清掃労働者の死亡事故や雇い止め問題を通して、労働者は自分の利害だけで動く存在ではない、仲間がひどい目にあわされたらみんなで守ろうとする義侠心があると学ばせてもらいました。これが組合運動の醍醐味ですね。だから一度始めたらやめられない。労災隠しや雇い止め、人を人とも思わないパワハラ、こんなことがまかり通る職場であってはならないと思います。みんなで怒りをぶつけるだけではなく、攻撃を跳ねのけていく力をもった組合が大事だと思っています。

―職場の人たちの組合に対する反応があればお願いします。
菊池 新しい組合ができたと期待している人もいるし、様子見の人もいる。悪い反応はないです。「ユニオンに入りませんか」と声をかけて「ああ、いいですよ」と入ってくれ、私の方がビックリすることもありました。みんな闘う組合の必要性を感じているんです。労働運動の経験を持った方もいて、大きな力になっています。
 ユニオンを結成する前、職場の仲間がある事件で逮捕されたことがありました。完全なデッチあげだとわかって職場のみんなが「解雇するな」と署名に取り組み、解雇を阻止したこともありました。どんな攻撃があってもアンテナを高くして対応すれば絶対勝てると思います。油断していい加減な対応すると勝てる闘いも勝てなくなる。勝利の経験を大事にし、きちんと取り組んでいきたいと思います。

―ほかに組合のことで話しておきたいことはありますか。
菊池 今までの組合、市労連は正規の人しか入れない、いわゆる「職員団体」ですが、ユニオン習志野は、市役所関係で働いている人なら正規も非正規も入れる組合です。「働いている人はみんな仲間」というシンプルなあり方が、これからの労働運動の主流になっていくのではないでしょうか。

―最後に交流センターについて意見があればお願いします。
菊池 交流センターの仲間も長年頑張ってきて、今、時代に合った組合らしい組合が全国にできています。労働者が笑って暮らせる社会をつくるためにも本物の労働運動を広げていく。まずはユニオン習志野の運動をしっかりやっていきたい。