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時代を解く5 郵政民営化攻撃の新段階

月刊『労働運動』34頁(0308号06/01)(2015/11/01)


時代を解く 5

(写真 「週刊エコノミスト」より)
藤村 一行(動労千葉労働学校講師)

株式上場をテコとした郵政民営化攻撃の新段階

 11月4日、郵政4社のうち3社の株式が新規公開株(IPO)として上場される。郵政グループ全体を束ねる日本郵政の株は、政府の持ち分が3分の1になるまで、日本郵政が保有するゆうちょ銀行とかんぽ生命の株は50%程度まで売却される。だが、総労働者数約39万人のうち35万人(うち約15万人が非正規)を占める日本郵便会社の株は今後も日本郵政がすべて保持し、売却されない。3社合計で14兆円くらい、今回はそのうちの約1割程度を売りにだす。
 今後の売却プランは明確にされていない。できないのだ。本体ともいえる日本郵便会社は赤字を続け、ゆうちょ銀行も15年度、前年比13%減益。全体として事業破綻的なのに上場に踏み切るのは常識的にはありえない。「前代未聞の上場」と言われている。安倍政権はこれを「成功」させるためにピリピリしている。証券会社だけでなく、みずほや三菱UFJ、三井住友銀行などメガバンクの店頭でも、直接応募を受け付ける異例の体制をとっている。8月半ばから下がり続けている株式市場との関連でも、また郵政民営化の今後を決めるものとしても、絶対に失敗させるわけにはいかないと必死である。安倍政権の命運がかかっているともいえる。

※郵政民営化は新自由主義の柱

 05年の小泉政権による郵政解散で強行された郵政民営化は、07年「17年までの全株売却」を目標に掲げてスタートした。だが、すぐに破綻的状態に陥り、民主党政権下で揺れ戻しを受けた。なによりも、みじめに屈服したJP労組本部への怒りをも含めて、現場における労働者の反抗・反乱が大きかった。だが12年末、「震災復興資金を生み出す」という口実のもとに、郵政株上場の目標が復活した。
 ショックドクトリン的に、労働者人民の「災厄」につけ込んで新自由主義攻撃を推進しようとしたのだ。この郵政問題は、第二次安倍政権のスタート時からTPP交渉とも結びついていた。日米同盟の強化、改憲・戦争国家化の推進とも表裏一体だった。郵政が混乱し破綻したままでは日米関係の飛躍やアジアへの展開などなりたたない。

※戦争と民営化に対決する郵政労働運動を

 小泉が「郵政民営化こそ改革の本丸」と言ったのは、生半可ではなかった。80年代の中曽根の国鉄分割・民営化攻撃を日帝の新自由主義攻撃の第一の戦略的柱とするならば、小泉の郵政民営化攻撃は、第二の戦略的柱としての意味をもっていた。郵政・郵便事業と国の財政・金融制度のあり方そのものを一体的に「改革」しなければならないから、一筋縄でいかないのは当たり前だ。そのくらい大きなテーマなのである。
 今回の株式上場自体が、今後の民営化攻撃推進にとって決定的なテコとなる。敵は、破綻的でありながら「民営化の完成」に向かって後戻りできない、待ったなしの一歩を踏み出したのだ。その一切が、部分的株式上場すらできない郵便会社の現場における総非正規職化・殺人的労働強化を倍加させる。
5年目に入った郵政非正規ユニオンの存在と闘いが、日本の労働運動の戦略的柱としていよいよ決定的となってきた