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「11・13パリ事件」に際して訴える米仏ロのシリア空爆弾劾! 労働者の国際連帯で戦争を止めよう!

月刊『労働運動』34頁(0309号02/01)(2015/12/01)


「11・13パリ事件」に際して訴える
米仏ロのシリア空爆弾劾! 労働者の国際連帯で戦争を止めよう!

(写真 11・14韓国民主労総と共に闘う動労千葉)

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 フランス・パリで11月13日夜(日本時間14日早朝)、コンサートホールやサッカー場などを標的とした銃撃や爆破が起こり、数百人にのぼる死傷者が出た。オランド仏大統領は「イスラム国」による犯行だと断定し、国境を封鎖。フランスは非常事態宣言下におかれた。16日にはベルサイユ宮殿において上下両院合同会議が行われ、オランドは「フランスは戦争状態にある」「テロを粉砕する」と演説し、原子力空母「シャルル・ド・ゴール」を地中海に派遣した。
 「イスラム国」との闘いを口実に、全世界が一挙に戦争に突入している。アメリカ・オバマ大統領は直ちにシリア空爆の拡大を発表。ロシア・プーチン大統領は「自衛権の発動」をもってシリア空爆を強化することを宣言した。また、キャメロン英首相は17日、「自国民を守るための負担を他国に頼るべきではない」と述べ、英軍をイラク空爆に加えてシリア空爆に参加させる意向を表明している。

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 自衛の名の下に、中東の労働者の大虐殺が行われていることを許すことはできない。
 全国労働組合交流センターは、中東、全世界の労働者と固く団結し、戦争を阻止するために全力で立ち上がる。
 なにより、今回の事態は、帝国主義が新自由主義政策によって世界中に貧困と格差を蔓延させ、労働者を食わせられなくなり、戦争をする以外に延命できなくなっていることに根本原因がある。
 戦争の本質は、米仏をはじめとする帝国主義国による中東石油の争奪をめぐる強盗戦争だ。「テロとの戦い」を口実に、各国が自らの石油権益の確保の思惑を持って「有志連合」に加わり、空爆や軍事支援に参加してきた。独自に空爆を開始したロシアも同じだ。そのもとで子どもを含むイラク、シリア人民の多くが無差別に殺され、膨大な難民がうみだされていることこそ弾劾されなければならない。

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 そして、安倍政権もこの戦争に積極的に参戦しようとしている。
 安倍は、「中東からの石油輸送ルートが封鎖されることは日本の存立にかかわる」として安保法制を国会で強行成立させた。安倍は、集団的自衛権を持ち出し、アメリカやヨーロッパと並んで、国益のために中東侵略戦争に参戦することを狙っているのだ。
 また、安倍は「パリ襲撃事件」をもテコに改憲へと向かっている。安倍は中東と並んで、朝鮮有事=侵略戦争に全力で身構えている。すでに米韓は核兵器を含む北朝鮮への先制攻撃を想定した軍事演習を行った(「作戦計画5015」)。安保法制の核心は朝鮮侵略戦争への参戦だ。「パリ襲撃事件」をきっかけに、日本も各国と市場や勢力圏を奪い合う戦争へと突入しようとしているのである。
 この外へ向かった侵略戦争の動きは、内に向けた労働者への「戦争」とひとつだ。
 安保法制と一体で労働者派遣法の抜本改悪が進められ、非正規職労働者の割合はついに4割を超えた。加えて安倍は、解雇の自由化、社会保障制度の解体、教育、医療等、生きる権利そのものへの激しい破壊攻撃を狙っている。
 さらに安倍は、改憲と徴兵制を掲げる労働組合であるUAゼンセンを使って連合をも分裂させ、戦前のように、労働運動を解体することで労働者の戦争動員をたくらんでいるのだ。

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 労働運動がどうするかが問われている。
 1%の資本家たちによる99%の労働者に対する戦争を終わらせることができるのは、労働者の団結した闘い以外にない。そのために、職場から闘う労働組合を甦らせることだ。労働者は労働組合に結集して闘う中で、自分たちだけの狭い利害をこえ、国境や民族の壁を越えて全世界の人民の利害を守る立場に自らを立たせて闘う存在だ。
 その立場から、今回の「イスラム国」の行為を許すことはできない。どれほど怒りが激しくとも、彼らの行為は戦争や民族抑圧をなくすために立ち上がる労働者階級への敵対であり、国際連帯を破壊するものであるからだ。
 フランスの労働者は、中東からの移民労働者と連帯し、難民と共生しようと闘っている。今回の「イスラム国」の行為は彼らと共に闘うものではない。また「イスラム国」が、中東の労働組合の闘いに敵対していることは、帝国主義の中東支配に与するものとなる。
 同時に問題は、フランスの労働運動を体制内勢力がねじ曲げてきたことにもある。さらに「イスラム国」が生まれ出た根拠は、ソ連スターリン主義のイスラムに対する弾圧と戦後のアラブの解放闘争に対する裏切りがある。「11・13」の事態は、労働者階級の闘いが革命や民族の解放に発展することを体制内の枠内に押しとどめ、絶望を組織してきた社会民主主義やスターリン主義の存在と切り離すことはできない。
 日本では、「国民連合政府」を掲げる日本共産党が、「テロを根絶することは急務」「日米安保条約撤回を求める方針を凍結し自衛隊を活用する」と言いだした。フランスでは社会党のオランドが中東侵略戦争にのめり込んだように、日本では日本共産党が改憲と戦争の手先となって労働者に襲いかかろうとしているのだ。

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 しかし、全世界での戦争の激化は、労働者の新たな国際連帯を生み出している。
 イラクやトルコの労働者たちは、労働組合の団結で、帝国主義、自国政府、「イスラム国」の支配と不屈に闘っている。
 そして、韓国労働運動を組織する民主労総は、「パリ襲撃事件」が起こった次の日に、戦争と非正規職の拡大を一体で強行しようとするパククネ政権打倒のゼネラル・ストライキへ15万人総決起闘争に立ち上がった。
 国鉄分割・民営化に30年間反対して闘い続け、JRが進める外注化と非正規職化に反対してストライキで闘う国鉄千葉動力車労働組合(動労千葉)が呼びかけた11・1全国労働者総決起集会では、民主労総、トルコ、ドイツの労働者が、ともに戦争を止めるために自国政府と闘い、職場生産点において資本と闘うことを土台とした国際連帯を固く誓い合った。
 ここに希望がある。労働運動を甦らせ、日本でも安倍打倒のゼネストを! 日本から世界へ、労働者の団結した闘いこそが歴史を動かし、社会を変革する力だと示そう。万国の労働者の団結で新自由主義を打ち倒し、戦争も貧困も差別もない社会をつくり出そう。
 (全国労組交流センター事務局長 飯田英貴 11月25日)