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'16春闘で労働法制改悪を粉砕しよう!派遣労働は臨時的一時的業務から基幹業務へ 総非正規職化攻撃だ!

月刊『労働運動』34頁(0311号05/01)(2016/02/01)


'16春闘で労働法制改悪を粉砕しよう!
派遣労働は臨時的一時的業務から基幹業務へ 総非正規職化攻撃だ!


労働法制大改悪との闘いは2016年決戦の重大な課題
 民主労総はゼネストで労働法改悪を粉砕した。日本では韓国以上の労働法制改悪攻撃が激化している。国鉄決戦と一体で、労働法制大改悪との闘いを16年の重大な課題にしていこう。
 労働法制改悪は、労働者派遣法改悪、 残業代ゼロ法、 金銭解雇攻撃、戦略特区攻撃の大きく四つの攻撃だ。
 労働法制改悪との闘いは、1917年ロシア革命以後、日本の戦後革命で勝ち取った労働法制定以来の闘いになる。労働法制改悪との闘いは世界中の闘いになっているが、日本でも労者の権利が100年前に戻るような大攻撃だ。

労働法改悪の中心は派遣法改悪

 労働法制改悪の中心は労働者派遣法改悪だ。安倍政権は2015年9月の戦争法攻撃と一体で派遣法改悪を強行した。
 労働者派遣法は国鉄分割・民営化と一体で1985年に成立した。この二つの攻撃で戦後の労働者の権利、労使関係が一変した。総非正規職化が始まり、労働者はいつでも首を切られ、超低賃金の2000万人の非正規労働者が生まれた。
 戦前回帰そのもので、派遣労働は、戦前の蟹工船や女工哀史に示される人材派遣、仲買人を通した人身売買だ。超労働過重で1日16~18時間労働させられる。職安法の「間接労働禁止」という「雇用主と働く場所は同じでなければならない」という直接労働規定で出発した戦後的労使関係を一変させる攻撃だ。
 制定当時は13業種に限定し、臨時的例外的規定だったが、1996年26業種に拡大した。1999年に対象業務の原則自由化が行われ、2004年に小泉政権下で製造業への派遣が解禁された(港湾運送業務、建設業務、警備業務などは禁止)。そして2015年9月にすべての業種に拡大した。マスコミは「1985年以来の改悪」と報じた。抜本的改悪だ。
 労働者派遣法改悪の中身は、全業種に派遣法を適応できるとしたことだ。今までは26業種に限定した臨時的、例外的規定で、3年経過すると正社員にしなければいけなかったが、今後は、3年で首を切り3年ごとに人を入れ替えれば生涯派遣を継続できる。「正社員ゼロ」攻撃とマスコミは報じた。全正社員を派遣労働者に置き換えることができる。今は派遣労働者は全労働者の6%だが、派遣法改悪が、総非正規職化の推進力になる。
 日経連1995年「新時代の『日本的経営』」にある「9割非正規職化」の中身そのものだ。

派遣労働は総非正規化と団結破壊

 ある学者は「雇用身分社会」と規定している。正規は限定的で、非正規職が蔓延し、全労働者の4割になった。パート、アルバイト、契約、派遣などの労働者だ(別掲の表参照)。
 2008年に派遣村が問題になった。リーマンショックの煽りも受けて大量の労働者が派遣切りにあい、日比谷公園に野宿した。派遣労働は間接労働で、雇用主は人材派遣会社だが、日常的に労働者を支配しているのは派遣先の使用者。使用者が別なので、団交してもどちらも受けない。資本にとってこれほど使いやすい労働者はいない。いつでもクビを切れて思い通りに使える。しかもこれほど団結できない雇用形態はない。団結すること、団交することが困難だ。
 団結が困難、奴隷労働は、蟹工船や女工哀史などで戦前の労働者の実態で明らかになっている。総非正規職化と団結破壊の二つが、派遣労働攻撃の核心だ。

残業代ゼロ法や金銭解決、戦略特区などの攻撃
 職場の実態はすでに進行し、JRや郵政をはじめ職場ではいじめや奴隷労働など100年前の現実が再現している。「派遣法体制」とも言える職場実態に対し、職場生産点から闘いを開始することが求められている。

■残業代ゼロ法案

 2015年4月3日、安倍政権は、労働基準法など労働関連法の改悪案を閣議決定した。長時間働いても残業代や深夜手当が支払われなくなる制度の新設が柱だ。政府の成長戦略の目玉の一つで「高度プロフェッショナル労働制」という名称だが、「残業代ゼロ」と批判されていて、16年4月施行をめざしている。
 新しい制度の対象は、金融商品の開発や市場分析、研究開発などの業務をする年収1075万円以上の働き手。「時間でなく成果で評価する」という。対象者には、①年104日の休日、②終業と始業の間に一定の休息、③在社時間などに上限――のいずれかの措置をとる。しかし労働時間の規制が外れるため「働きすぎを助長し過労死につながりかねない」と言われている。
 改悪案には、決めた時間より長く働いても追加の残業代が出ない「企画業務型裁量労働制」を広げることも盛り込んだ。厚生労働省によると、企画業務型の裁量労働制で働く人は推計で約11万人いる。事業場の45・2%で実労働時間が1日12時間を超える働き手がいる。
 安倍政権は、8年前の第一次政権の時に「戦後レジームからの脱却」を掲げて労働法制改悪を進めようとしたが、悲願を昨年4月に閣議決定した。労働者代表がいない産業競争力会議で「残業代ゼロ」導入など労働法制改悪を打ち出し、「成長戦略」や「規制緩和計画」の閣議決定に盛り込み、厚労省の労働政策審議会に導入を迫ったのだ。
 年収1075万円と言っているが、実際には年収300万~400万円の労働者も含めて適応し、やがて全労働者に適応となる。長時間労働の強制が行われていく。昨年は「残業代ゼロ法」との批判が強く、戦争法成立を急いだために強行できなかっただけだ。
 闘いの火種はある。8時間労働制はメーデーのテーマであり産みの親でもある。労働法制をかちとった核心は8時間労働制であり、世界の労働者の血と汗の結晶だ。改悪派遣法と一体で8時間労働制の地平―労働基準法を解体する攻撃を絶対に許すことはできない。ゼネストで闘うテーマだ。

■金銭解決法案

 安倍政権の規制改革会議が2015年6月16日、裁判で解雇が不当と判断された場合に、労働者が申し出れば金銭補償で退職を受け入れ、紛争を解決する制度の導入を記載した答申が出された。「解雇無効時において、現在の雇用関係継続以外の権利行使方法として、金銭解決の選択肢を労働者に明示的に付与し(解決金制度の導入)、選択肢の多様化を図ることを検討すべきである」という内容だ。
 2015年12月には厚生労働省の検討会で「解雇の金銭解決制度」導入の議論が始まっている。現行の裁判所での地位確認訴訟では、解雇が不当だと訴えて「解雇無効」の判決が出ると、「原職復帰」しかない。それに対して会社が一定の水準の金銭を支払うことで解雇ができるようにするものだ。

■戦略特区攻撃は民営化攻撃

 これまでに指定した国家戦略特区は、以下の通りだ。
 〈第1次指定〉2015年
5月1日に、東京圏(東京都、神奈川県、千葉県成田市)、関西圏(大阪府、兵庫県及び京都府)、新潟県新潟市、兵庫県養父市、福岡県福岡市 、沖縄県を指定。
 〈第2次指定〉2015年8月28日に、秋田県仙北市、宮城県仙台市、愛知県を指定。
 〈第3次指定〉2015年12月15日に、広島県、愛媛県今治市、千葉市 (東京圏の拡大)、北九州市 (福岡市に追加)。
 国家戦略特区とは何か。「民間・地方公共団体と国が一体となって取り組むべき事業を推進するため、国が自ら主導して、大胆な規制改革を実現」と称して、「民間の進出に対する『岩盤規制』解体のために国家戦略特区を活用して突破口を開き、世界で一番ビジネスのしやすい環境を整備し、経済成長につなげる」とうたっている。さらに、「2015年6月に閣議決定した『日本再興戦略』改訂2015に盛り込んだ規制改革事項を実現するために所要の法案の次期国会への提出を目指す」と打ち出した。
 これは、資本の「自由な活動」のために、雇用や労働法、教育や医療・福祉などの分野の規制を全部撤廃し、その地域だけ先行的に資本の活動を自由に展開し、それを全国的に拡大するというもので、これは社会丸ごと、地域丸ごとの民営化攻撃だ。

国鉄闘争を軸に、安倍政権の労働法改悪攻撃と闘おう!

 派遣法改悪、残業代ゼロ法、金銭解決法、国家戦略特区の四つの攻撃との闘いを柱に、国鉄闘争を軸としてこれを打ち破る闘いを作り出していこう。労働法改悪との闘いは、国鉄闘争全国運動のテーマであり、日本の労働者階級全体の闘いのテーマである。
 すでに現実は先行しており、貧困、格差、分断の中に労働者は置かれている。まずは職場の現実を共有することから始めていこう。その中から闘いの展望は生まれてくる。
 それは韓国民主労総の闘いから学ぶことでもある。

職場生産点から闘いを起こそう

 時代認識と路線をしっかりすえよう。第三次世界大戦の導火線に火がついた情勢だ。米日中各国の危機が深まり、特に米帝の没落は激しく、世界支配が危機に突入している。中東石油支配が崩壊し、各国が勢力圏争いに入り、第三次世界大戦の危機が進行している。日帝は、朝鮮侵略戦争を推進する只中にいる。北朝鮮が「水爆実験」に踏み切った。労働運動は今、戦争反対を正面課題にすえて闘う時が来た。民主労総のようにゼネストを起こすことが求められている。
 しかし、時代認識と路線があれば闘えるわけではない。職場生産点から闘いを作りだす必要がある。労働者の怒りの先頭に立って闘う。職場に怒りは満ちている。労働法制改悪の現実は、職場に満ちている。現場の労働者と結合して職場から闘いを起こすことこそ1000万労働者と結合する闘いだ。かつての「工場テーゼ」を作りだすような取り組みが今、必要ではないか。
 労働者自身が職場の現実を自ら対象化して語れるようにすることが大事だ。
 そして闘いと一体で、労働学校が不可欠だ。職場闘争と労働学校を一体で取り組むことだ。

国鉄決戦を軸に闘おう

 そして、なによりもJR資本と対決し、国鉄闘争を闘うことが求められている。
 JR東日本の清野会長と冨田社長は、社内報の年頭所感で、「新年を迎え、2015年はJR東日本管内で事故が続発した」と「山手線電化柱倒壊、東北新幹線郡山近くでの事故など一歩間違えば乗客の命に関わるような事故が起きた」と言っている。しかし何も解決していない。2016年に入っても事故は続発している。「経営構想Ⅴ」では、「事故の原因は外注化にある」と認めたが、それは「グループ会社とその担当の労働者に責任がある」と主張し、「JRに責任はない」と開き直った。
 さらに、「水平分業」を打ち出して外注化をさらに推進し、「グループ会社はしっかりしろ」と独立させて責任をもたせるなどと言っている。
 動労千葉は2016年を「組織拡大」の一点にかけて闘おうとしている。具体的闘いの課題は以下の四つだ。
①1047名解雇撤回闘争を全力で取り組む。最高裁決定に基づいてJR資本に解雇撤回と採用を求める署名運動を開始する。
②外注化阻止闘争は、検修職場を先頭にして16春闘にむけて闘う。
③安全崩壊に対して、反合理化・運転保安闘争に決起する。
④16春闘をCTS春闘を中心に労働法制改悪と対決し、組織拡大春闘として闘う。
 動労総連合も昨年の大会で2016年に3桁の組織拡大を実現しようと打ち出した。
 国鉄闘争全国運動は、動労総連合建設と一体で、JR各資本に1047名全員の解雇撤回と採用を求める署名運動をよびかけ、最高裁署名を超える大きな署名運動を展開していく。
 総じて今がチャンスだ。安倍政権、資本家階級が労働法制を改悪する攻撃に、職場の労働者の怒りを一つにして真正面から闘う時が来た!
 労働法制改悪との闘いは16春闘だけのテーマではなく、2016年を貫く労働運動の最重要のテーマだ。国鉄決戦と一体で、労働法制改悪阻止の闘いで、安倍政権を打倒しよう!
 2・14~15国鉄集会に結集しよう!
 中田一夫(国鉄闘争全国運動事務局)