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労働組合運動の基礎知識 第16回 労働条件の一方的不利益変更との闘い

月刊『労働運動』34頁(0311号09/01)(2016/02/01)


労働組合運動の基礎知識 第16回 労働条件の一方的不利益変更との闘い


小泉義秀(東京労働組合交流センター事務局長)

労働条件の一方的不利益変更との闘い

会社がいきなり賃金の3分の1をカット

 合同・一般労働組合全国協議会さいたまユニオン大石運輸分会では、36協定締結の問題を巡り、賃金を7万~8万円カットし続けている。同群馬合同労組中央タクシー分会も賃金の3分の1にあたる8万円の賃金を一方的に下げてきた。同小竹運輸グループ労働組合に対しては、これまで支払われてきた年末一時金を1円も支払わないという通告を新社長が行ってきた。大石運輸、群馬中央タクシー分会の場合は36協定をめぐる配車差別と一体であり、小竹運輸の場合は業績悪化を理由にしている。いずれも組合つぶしの不当労働行為意思の下に行われている攻撃であり、労働委員会で不当労働行為をめぐる闘いを行っている。群馬中央タクシー分会においては「少額訴訟」で賃金の一部不払いを取り戻す闘いに勝利している。

労働者の同意ぬきに賃金の一方的引き下げはできない

 「労働契約は労働者および使用者が対等な立場における合意に基づいて締結し、または変更すべき」(労働契約法3条)とされ、「労働者および使用者は、その合意により、労働契約の変更をすることができる」(同法8条)とされている。出向・転籍、正社員を契約社員やパートタイマーにするなどの採用区分の変更、所定労働時間の延長、賃金額の引き下げなどの労働契約の存立自体にかかわる労働条件の変更には労働者の同意が必要だ。使用者が契約の変更を告知して、労働者が黙って就労を継続した場合は「黙示の変更合意」とされてしまうことがあるが、そういうことにも慎重であるべきで、明示の合意が必要とされている。
 業績悪化を理由に使用者が一方的に賃金を引き下げ、嫌なら辞めろという攻撃がかけられる場合は「変更解約告知」(従来の労働契約の解消と新たな労働契約の申し込みを同時に行う)というが、このような場合も労働者の合意抜きに賃金を一方的に引き下げることはできない。
 労基法11条は「賃金とは賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのもの」と定義している。したがって年末一時金も賃金であり一方的通告でそれをゼロにするなど許されない。一時金・賞与の場合その支給が使用者の裁量に委ねられていて恩恵的に支給される場合は賃金とみなされない場合がある。しかし、小竹運輸の賃金規定には「賞与は原則支給しない。会社の業績により支給する場合がある」とある。原則支給されないはずのものがずっと支払われて来た事実、業績に変化はないわけだから、従来支払われてきた一時金は賃金以外の何ものでもない。