月刊労働運動-Home> 記事 >

部落解放の闘い―階級的労働運動と部落解放闘争

月刊『労働運動』34頁(0314号06/01)(2016/05/01)


部落解放の闘い
労働者階級の解放をめざす部落解放闘争― 階級的労働運動と部落解放闘争 ―
新自由主義と闘う狭山闘争に決起を!

(写真 植木団地追い出し絶対反対! 11・22一周年闘争)

平沼和典(全国水平同盟事務局長)

先月から教育、自治体、郵政、医療など各産別の闘い、及び「労働者階級と諸戦線の闘い」を掲載しています。

(1)新自由主義と最前線で闘う狭山闘争へ決起しよう! 

 階級的労働運動にとって狭山闘争は決定的な闘いです。昨年の全国水平同盟4回大会では、部落解放闘争の正面課題に非正規撤廃を掲げ、労働組合建設を軸に、住宅闘争と狭山闘争を闘う方針を確認しました。狭山闘争を、新自由主義との闘いの最前線の闘いとして改めて位置づけなおし、国鉄闘争と一体でゼネストに向かう階級的労働運動の闘いとして積極的に確認しました。

①労働者階級の総決起を生み出した狭山闘争

 狭山闘争とは、50年以上にわたる石川一雄さんの無実を訴える権力との非妥協の闘いです。狭山闘争についてはいろんな思いがあると思います。狭山闘争の最大の核心はなにか。70年代の日比谷公園を埋め尽くす決起をはじめ、労働者階級の総決起を生み出したことにあります。狭山事件は、労働者階級を分断するための国家権力によるでっち上げ差別裁判であり、差別・分断と団結破壊の攻撃です。しかし、大事なことは、労働者階級とは差別・分断の攻撃に屈服するのではなく、決起する存在であることです。差別・分断攻撃は、人間らしく生きたいという労働者の階級的怒りに必ず火をつけ、階級的覚醒と団結をいっそう促進するものに転化する。労働者階級とはあらゆる差別に反対し、人間的共同性の中で、すべての人間的解放を実現する歴史的階級なのです。狭山闘争は、70年安保・沖縄、国鉄闘争をより発展させる闘いとして爆発しました。それは決して歴史的過去の闘いではなく、今、新自由主義との最前線の攻防としての狭山闘争と部落解放闘争の決定的な意義がここにあります。
 新自由主義の攻撃の核心は団結解体攻撃であり、その究極の姿が総非正規職化攻撃にあります。差別の本質は、階級に対する分断攻撃であり、非正規職撤廃こそが部落解放闘争の本質です。新自由主義攻撃の中で今、改めて労働者階級とは団結の中にしか生きられないし、歴史的にそういう存在であること、労働者は必ず決起するし、革命的存在であること。それが狭山闘争の核心です。

②石川さんの絶対反対の闘い

 狭山闘争の階級決起をつくり出したものは石川さんの50年を超える不屈・非妥協の決起にあります。彼の絶対反対の闘いなしに狭山闘争の爆発はありませんでした。日共や既成解同の公正裁判要求を打ち破って闘いを貫いた、石川さんの絶対反対の闘いが階級の魂を揺さぶり、決起を生み出しました。石川さんの闘いは星野闘争と並ぶ闘いです。今の新自由主義攻撃にさらされ、青年層が世代を超えて狭山闘争に感動をおぼえる理由はここにあります。

③解放運動絶滅を狙った国鉄分割・民営化と地対協攻撃

 74年の寺尾判決は、その階級決起に対する恐怖と反動としてかけられました。しかし、狭山闘争と労働者は寺尾判決に屈服したわけではありません。
 狭山闘争が厳しい局面を迎えたのは、80年代の解放運動絶滅と同和事業打ち切りという地対協攻撃に、既成解同が屈服し、解体したことにあります。地対協攻撃は国鉄分割・民営化と一体で、労働組合と団結解体、闘いの絶滅を狙う攻撃でした。既成解同は地対協攻撃を、労働者階級全体に対してかけられた攻撃としてみることができずに、部落民の既得権と利益だけの防衛に切り縮めました。その結果、闘えなくなっただけでなく、逆に階級分断の先兵になりはて、結局は残された利権あさりにまで転落していきました。国鉄分割・民営化攻撃こそが狭山闘争の最大の破壊攻撃でした。
 しかし、動労千葉の決死のストライキ闘争はその攻撃を破綻させ、絶対反対の闘いとその反動をぶち破り、階級的団結を守りました。階級闘争の一掃の下で、戦争と改憲をやろうとした攻撃の狙いは破綻し、総非正規化による団結の解体も未だ実現できていません。逆に階級情勢は激しく動き、敵の攻撃は逆に階級の決起を作り出す情勢に来ています。
 絶対反対を貫き、階級の決起を実現してきた狭山闘争と石川さんの闘いは、はじめから国鉄闘争と同じ闘いで、先頭を切って体現してきた闘いです。労働者は一つという闘いは、国際連帯の闘いとして、発展してきました。

④ゼネスト革命をめざす狭山闘争

 狭山闘争は、はじめから部落解放闘争を体制内改良主義に押しとどめようとする日共、既成解同との激しい党派闘争として闘われてきました。石川さんの権力に対する非妥協の闘いは、行政依存、改良などの曖昧(あいまい)さのない根底的闘いです。戦後革命期に労働者階級の先頭で生きさせろの闘い、ゼネストに向かった部落解放闘争を復権させる闘いでした。それは、戦後歪められてきた部落解放闘争を根底からつくり変える闘いです。しかしそれにとどまらず、差別・分断に対する怒りが、労働者階級全体の闘いと、戦後の社民・日共支配を根底からひっくり返す闘いでもあったのです。

⑤朝鮮侵略戦争情勢と狭山闘争をめぐる局面

 今、安倍政権は、連合そのものの解体に向かって、派遣法、同一労働同一賃金を口実にUAゼンセンを使って連合そのもを右から分裂させ、解体しようとしています。昨年6月の連合の人権フォーラムに、北朝鮮拉致問題とセットで狭山闘争を持ち込み、狭山闘争の変質解体を狙ってきています。これは狭山闘争だけの課題ではなく、部落解放闘争を担ってきた自治労、日教組を変質させ、解体しようという攻撃です。朝鮮侵略戦争情勢の中で、部落解放闘争を分断と戦争の先兵に変質させ、そのことで階級の団結を解体しようという攻撃です。
 それは逆に、狭山闘争が労働者階級の階級的団結と覚醒と決起にとって決定的な環を担っていることへの恐怖の表れです。連合の右からの解体に対して、狭山闘争が国鉄闘争と一体で非正規職撤廃でもって連合支配を根底からひっくり返していく決定的チャンスです。

(2)階級的労働運動にとって部落解放闘争とは

①労働運動の先頭で闘う部落解放闘争

 まず歴史的事実として、部落解放闘争は、労働者階級の階級的な決起の最前線で闘われてきました。戦前の水平社運動然り、戦後革命期の闘いも、部落民が労働組合の組織化と闘いの先頭に立って闘ってきたし、水平社運動もそれと一体の闘いでした。
 しかし、戦後の総評と解同が体制内改良主義に取り込まれ、革命に対する怒りの防波堤になり、さらに血債主義的運動の変質と裏切りの過程があります。
 西郡住宅闘争の実践の中で、新自由主義と対決する部落解放闘争の路線を確立し、全国水平同盟を結成しました。自主管理闘争を闘う植木団地の労働組合の闘いは、階級の最先頭の闘いです。西郡をはじめ、追い出し攻撃に絶対反対で闘う住宅闘争は、戦後の労働者階級が生きるために家族・地域総出で食べ物を求め、健康と命を守り、住むところを求めて立ち上がった闘いを、荒々しく復権させる闘いです。それは階級の闘いそのものです。差別と分断の集中した部落ほど激しく闘われてきたし、敵の今日の闘争解体、破壊攻撃のもっとも先鋭な激突点になっています。自治体の民営化が、現業民営化と非正規職化として始まり、非正規職撤廃の闘いが、根底的な革命の要求として全階級を組織する闘いだということがそれを示しています。

②労働者階級の解放を目指す部落解放闘争

 部落解放闘争の目的は労働者階級の解放です。そして、もっとも激しい差別・分断があったからこそ、その絶対反対と怒りは激しく闘われてきました。
 差別の本質は、階級に対する分断攻撃です。資本の目的は、それを通してより徹底的に労働者の生き血を吸ってしゃぶりつくすことにあります。10割非正規職化攻撃とは、その究極の姿です。差別と分断こそ資本の本性そのものです。現場では、雇用形態、スキル、賃金など、ありとあらゆる手口を使って、分断が持ち込まれ、さらにそれを使った対立と団結破壊が行われています。血債主義者、体制内派は、差別との闘いを賃労働と資本の関係から切りはなし、その結果、差別との闘いが逆に階級分断攻撃の先兵になり、階級に対する絶望を組織するものに転落してきました。
 差別との闘いは、資本との絶対非和解の闘いの先頭に立つことで、より生きた労働者の仲間意識、共同性と団結を深める闘いです。差別撤廃の闘いとは、差別を緩めるとか、減らすとかという問題ではなく、あくまで資本との非妥協と根底的転覆を求める闘いです。人間として扱われないことに対する怒りであり、共同性と団結を求める根源的な闘いです。

③動労水戸の被曝労働拒否の闘いに学ぶ

 部落民労働者が人間としての誇りを奪い返すためには、労働組合が決定的です。食肉屠場、皮革関連、斎場、清掃はじめ部落産業と呼ばれるものは、「卑しい」労働と扱われてきました。しかし、どれをとっても社会の運営に絶対必要なものです。人間的尊厳を奪い返すということは、社会の主人公としての労働者、誇りと、共同性=団結を奪い返すことです。それは労働組合=階級としての結集と、資本との絶対反対の闘いが不可欠です。

④ゼネストを準備するソビエト建設の課題

 階級的労働運動の目的は、プロレタリア革命です。労組交流センターは産別の連合体ではありません。ゼネストを実現するためには、地域全体を拠点として組織する。そのためには労働組合が軸に座ることです。
 しかし、それだけでは不十分です。家族を含め、地域でのあらゆる怒りと課題を組織することが必要です。八尾北労組を軸にした西郡での闘いは、地域すべてを組織する闘いです。住宅、健康、福祉、教育問題や、部落差別、障害者差別、女性差別とも闘う、全国水平同盟の課題はそういう課題です。逆に言えば、その課題を組織できない労働組合は階級的労働運動ではありません。階級的労働運動で、ゼネスト実現のために労組交流センターは決起しましよう。

(3)全国水平同盟闘争支援基金運動で、全水の旗を全国に立てよう!

 具体的な報告は紙面ではできませんでしたが、全国の地域交流センターで、全国水平同盟の機関誌とビラを読み、地域で訴えてください。
 いま、大衆は生きるすべを求めています。一つの旗とビラが闘いを組織する時代です。西郡の闘いが、高槻に広まり、さらにそれが京都の決起と組織化を生み出し、奈良にまで拡大しています。闘いの組織化の決定的武器は、全水闘争支援基金運動と機関誌です。1000万円緊急闘争カンパと併せて、全水闘争支援基金への取り組みを訴えます。
=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*


▼狭山第3次再審闘争
1963年埼玉県狭山市で起きた女子高校生誘拐殺人事件の犯人にデッチあげられた石川一雄さんの無罪をかちとる闘い。東京高裁に3度目の再審請求を行っている。