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私の職場第8回 職場で組合結成

月刊『労働運動』34頁(0316号07/01)(2016/07/01)


私の職場 第8回
職場で組合結成しアパレルゼネラルユニオンも結成


丸田 (東京西部ユニオンアパレルゼネラルユニオン分会 マツオインターナショナル支部)

※アパレルメーカーで働いています

 ―どういう職場ですか。

 丸田 婦人服メーカーで社名がマツオインターナショナル株式会社、ミセスの婦人服を作って販売しています。元は生地屋ですが、生地の市場が縮小し、既製服の製造、百貨店で出来合いの服を売る方向に繊維業界がシフトしています。会社は、製造販売でしたが、最近は作って売る、製造小売にシフトしています。百貨店やショッピングセンターへの出店が多く、全国で300店舗以上あります。正社員は500人くらい、非正規は1000人くらいです。大きいお店、小さいお店がありますが、平均3人です。非正規はアルバイトや派遣契約、マネキンの日雇い販売員で、私は正社員です。

 ―何年前に就職したのですか。

 丸田 2012年入社の5年目で、東京支社の営業部の事務を担っています。大阪に本社があり、拠点は大阪本社、東京支社、福岡支社です。

 ―仕事、職場の状況は。

 丸田 事務仕事の営業総務は一部で、後は百貨店、ショッピングセンターの営業担当、他に企画・生産部、人事総務部、広報部があります。繊維業界ではJR外注化と別のことが起きていて、プロの資本に任せず中小零細工場の買収が進んでいます。ユニクロも他を買収しています。元はプロに頼むのが主流でしたが、抱え込むようにSPA(製造小売業)となりました。企画だけでなく工場を抱えて早く作ることが目的です。うちの会社も大きくはその方向でやっています。
 就業時間は9時半から18時半です。毎日21時くらいまで残業して帰るのは22時くらいです。休日が年間108日、平均すると週休2日で、月1~2回出社指定の土曜日があります。私のいる東京支社は100人くらいの労働者が働いています。

※仲間をつくるために組合結成

 ―組合結成経過を話して下さい

 丸田 東京西部ユニオンには、入社と同年の2012年に加入しました。その後4年間「どう仲間を作るか」試行錯誤しましたがなかなかうまくいかない。
 一つは自分の仕事がかなり大変でした。1年に1回くらい配転や業務追加されることが続き、2015年夏~冬はかなり体調も崩して、当時は「自分がこんな状態で組合つくるのは本当に厳しい」と思っていましたもう一つには、自分自身の決心がついていなかったということがあります。
 組合の立ち上げを本当に決心したのは今年2月、ユニオンの仲間と討論しぬいて決めました。それまでは「仲間ができたらやる」と思っていましたが、それは本質的に自分に負けていたと思う。自分の決断まで相手に委ねてしまっているというか、「君がやるなら俺もやる」では通用するわけがないと気づきました。
 「余裕があって仲間もいるから組合を作る」なんてものじゃない。むしろ長時間強労働も職場の団結形成もまず「自分は組合だ」と登場しきることで初めて切り込んでいける。「労働組合結成の目的はストレートに仲間を作るためだ、絶対仲間はできる」と確信を固めた、このことが大きな転換だったと思います。

 ―組合で何をしたいですか。

 丸田 若い人がどんどん辞めています。アパレルメーカーは中途採用の人が多いのですが、会社は新卒採用者を育てる力がないのです。会社は人がたくさん必要ですが、毎日、指導不十分なまま目的も言わないでこき使い、精神的にも肉体的にも消耗して辞めていくのです。この2年で10人近く若い人が辞めました。みな辞める時は本当に悔しい思いをしながらがっかりして辞めていくのです。使い捨て、絶望を生み出しています。
 労働者の権利とその意識、「自分たちには人間としての権利があるんだ」という意識を取り戻していきたいです。組合がなければ労働基準法は「なかったこと」になっています。
 直接的なことでいえば、「資本に法律を守らせる」ことから始めて、「サービス残業問題」「36協定開示」をめぐって団体交渉も行いました。会社に長時間労働の是正を申し入れました。私は、11か月で360時間以上残業しています。カウントされていないサービス残業を入れると120時間くらいはプラスされます。※残業と36協定等で団体交渉

 ―会社とのやりとりを話して下さい。

 丸田 3月22日(火)に資本に対して組合結成を通告しました。同時に「長時間労働の是正」「有給休暇消化不良の是正」「サービス残業の廃止」「36協定の詳細の開示」の4つで団体交渉を申し入れしました。
 就業時間は9時30分から18時30分ですが、時間外手当が発生するのは19時以降。19時以降も残っている人はみんな18時30分から19時の間は継続して働いていて、サービス残業になっていました。毎日30分の未払い労働が強制されるなんておかしいとずっと感じていました。また、36協定については、仕事だからと言って労働者の時間は無尽蔵に使っていいものではないということをはっきりさせたいと思い、開示を申し入れました。働き方の主導権は労働者のものだと思うので、サービス残業と36協定は大きな問題でした。

 ―資本の対応はどうでしたか。

 丸田 団体交渉日程の回答期限は4月1日(金)で結局4月15日(木)開催になりましたが、これを待たずに会社は対応し始めました。3月30日(水)東京支社臨時朝礼があり、そこでいきなり「36協定締結の従業員代表を選出します」と発表。36協定についての内容説明も不十分なまま立候補が募られ、その場の挙手で採決、挙手を数えるのは専務という乱暴なやり方です。結果は私が13票、会社側の人が37 票で、双方従業員過半数には達しませんでした。
 他にも、4月4日(月)の全社の朝礼で「4月1日(金)からは18時30分から残業がつくことを決定した」と社長自ら発表しました。建前として「経理部からの指摘があり、コンプライアンスの観点から云々」としていましたが、明らかに組合の申し入れを受けてのことです。

 ―4月15日(木)団体交渉のことを教えてください

 丸田 会社側の参加者は専務、弁護士、社労士の3人です。組合側はアパレルゼネラルユニオンの仲間をはじめ東京西部ユニオンの仲間、そして職場から3人の仲間が来てくれました。
 会社の対応はそれはひどいもので、「ボイスレコーダー使用拒否」「組合員以外の団交参加拒否」に始まり、交渉が始まるまで30分以上かかりました。
 冒頭に「18時30分から19時の時間帯、残っている人はみんな働いている。過去2年間分のサービス残業になっている分を支払いなさい」と要求しました。しかし、「今まではあくまでも『休憩時間』だったから労働実態はなかったと認識している」というふざけた回答です。「目の前で部下が働いているのを見ておきながら『労働実態はなかった』とはありえないだろう」と追及すると「労働実態の有無は改めて精査する」というところまでは回答を引き出しました。過去のことをうやむやにせず、問題解決に手をかけられたことは大きいと思います。
 36協定についてもやり方がめちゃくちゃなことと過半数未達のことを追求すると「やり方に瑕かし疵がありました。再度取り組みます」と回答。会社の間違いを認めさせたのは組合の力です。

※職場の仲間の意識が活性化

 ―職場の仲間の反応は。

 丸田 組合の登場で職場は活性化しています。3月30日の36協定代表者選出の直後と、初めてビラを出した4月8日(金)、団交直後が特にそうでした。職場の、特に若い人たちが自分の労働について真剣になっています。36協定は何かも説明せずに会社が選挙を強行したことにみんなもやもやしています。すごい不信感で、「何なんだ。36協定って何」と、廊下や階段の踊り場などで話題になる。
 話としては法定労働時間のことからになります。「一日8時間以上働かせたら違法なんですよ」というと「えっマジで、知らなかった」と、そこから話になる。みんな仕事があるから嫌だけど8時間以上働く。「急に業務が増えたり人が足りなくなった時に備えて、ある条件さえ満たせば時間外労働を会社から願い出ることができる。その約束が36協定なんです」と言うと、「えっそうなんだ」と。「本当は、18時半以降とか休日とか会社はそれ使わせて下さいという話なんです」と言うと「えっ、そうなんだ。うおー」と話になる。若い人には社会的に隠されていることなので知らなくても恥ずかしいことじゃない。それ以上に今まで知らされていなかった労働問題に主体的に興味を持ち始めていることが私は何より嬉しい。組合作ってよかったと思います。法律的なことは初耳でもそんなの関係ない、みんな「この会社、この働き方おかしい」という直感を持ってるとことに勇気づけられました。
 団交に参加した仲間の反応は三者三様です。労働組合の認識もまだこれからだし、「外部の人がうちの会社のこと何故知ってるの」とか「会社の対応、弁護士はひどい」「ひでえ会社だなと思いました、これ見たらみんながっかりするでしょうね」などが意見です。まだ始まったばかりです。
 4月18日(月)に第2回の36協定代表者選出が実施され、私が28票、会社側の人が40票でまたもや過半数未達となっていますが、前回より増えたことに私自身びっくりしました。

※もう一人の仲間を作る!

 ―今の課題は何ですか。

 丸田 一番焦点になっているのは「どうやってもう一人組合員を作るか」ということです。会社がばら撒いているのは「外部のユニオンけしからん」ということです。本当は「内部」も「外部」もなくて「闘うかどうか」だけの問題と思います。これからの実践で分断を乗り越えていきたい。そのためにも職場に組合員をもう一人作りたいです。
 将来的には、賃上げ闘争だってしたいし、繊維業界の工場労働者ともつながっていきたい。でも、今なによりも全部に優先してしたいことは、職場の仲間と本気で本音で話し合うことです。労働組合を作って会社と闘う決心をしたからこそ、私自身が職場の仲間に本音を話せた。組合の登場で周りが変わったのはその第一歩だし、いろんな話を職場の人たちとできるようになりたい。分断はありますが、倦うまず弛たゆまず、諦めずに活動を続けていきます。

※AGU結成の意味

 ―AGU結成について話して下さい。

 丸田 4月28日、西部ユニオンのアメリカンアパレル支部とマナマナ支部、マツオインターナショナル支部の3つの支部を統合してアパレルゼネラルユニオン分会( AGU ) を結成しました。繊維産業はどこもダーティで、いわゆる「やりがい搾取」も横行している状態です。その業界が好きでも、だからと言って不当な労働が許されるわけじゃない。特に若い人は似たような状況だし、想いは同じだと思います。だったらどんどん横のつながりを作ろうということが一番の目的で、合同労組として企業を越えて結成しました。繊維業界だったら誰でも入れる、情報交換し、議論し、一緒に行動する。団交もお互いの団交に行く。職場も比較的近く、業界も一緒ならもっと集まって行動しよう、組合で現状は変えられると広く発信していきたいです。
 結成集会の基調で私は「なぜ労働組合をつくるのか」というテーマで提起しました。「労働者の生活を守るために組合を作る。2018年を待つまでもなく組合がなければ正規も非正規も低賃金で無権利だ。繊維産業で一緒に闘おう。横のつながりを持った時に労働者はいろんなものを乗り越えることができる。一緒に実現しよう」と訴えました。役員体制も決めました。―結成した感想はどうですか。丸田 個人的な発見ですが、なぜ今、労働組合をつくるのかを仲間に訴えかけるとき、情勢から伝えることの威力、時代から自分たちを語る威力をすごく感じた当日でした。具体的には2018年問題ですが、それを突破する力は労働者の団結にこそあるということが改めてわかった。だからこそCTS就業規則改悪阻止の大きさがつかめました。就業規則改悪を動労千葉、CTS労働者が団結して阻止したのは、2018年大量解雇を阻止するスケールの闘いだし、自分たちが始めたこの闘いも総非正規職化絶対反対と完全に一つだと感じています。
 もう一つは職場の仲間に声かけぬいたことも重要でした。当日職場からの参加者は結果としてゼロでしたが、本当に一歩踏み込むオルグをしていきたい。本質的には首をかけて闘うことになるけれど、だからこそ堂々とやっていきたい。
 率直な目標は、UAゼンセンから労働者ぶっかいていくことです。連合の最大勢力であり流通業、小売業で特に非正規職の女性労働者を一番組織しています。現場の不満と怒りもすごいと思います。ユニオンショップ協定、不満分子をあぶりだし会社に密告する、さらには改憲も推進している組合です。UAゼンセン下で悔しい思いしている労働者とともに闘いたい。時間はかかるかもしれませんが、AGU結成でUAゼンセンと違う闘いの実践を示していきます。