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労働組合運動の基礎知識 第22回 破産・解雇攻撃との闘い

月刊『労働運動』34頁(0317号07/01)(2016/08/01)

労働組合運動の基礎知識 第22回


小泉義秀(東京労働組合交流センター事務局長)

破産・解雇攻撃との闘い

 東京都内で5店舗を展開していたインドカレー店「シャンティ」が破産手続きを申立て、5店舗で雇われていたインド人とバングラデシュ人の16人を6月20日付で解雇した。1名を除く15人は5店舗で泊まり込み体制をとって自主営業を続けている。15人の労働者に2年間も賃金が支払われておらず、未払い賃金は残業代を含めて6千万円になるという(6月29日付東京新聞 朝刊24面)。
 破産手続きは申立てによって開始される。破産手続きの開始の決定と同時に裁判所は破産管財人を選定する。破産管財人は一般的には弁護士が選ばれる。破産管財人は破産財産を管理・評価・換価して、債権者の範囲、および債権額を確定し、債権者に配当を行う。この破産者の財産の集合体を破産財団という。この破産財団から破産手続きによらずに破産債権者に優先して随時弁済を受けられる請求権を財団債権という。
 破産法149条1項には「破産手続き開始3カ月間の破産者の使用人の給料の請求権は、財団債権とする」とある。破産手続き開始前3カ月間の給料は、破産手続きによる配当ではなく、請求を受けた破産管財人がその債権が支払われるべき時期に優先的に支払う財団債権となる。
ここで重要なのは破産債権には優先順位があることだ。「給料その他債務者と使用人との間の雇用関係に基づいて生じた債権」(民法306条、308条)=労働債権は先取特権のある優先的破産債権である。また破産手続きの中では事業譲渡が増えているが、破産法78条4項に「労働組合の意見聴取」が書かれている。これを利用して労働契約の継承を追求することも可能だ。
 上記カレー店の場合は少なくとも破産手続き開始前3カ月間の給料は確保できる。問題は6千万円の未払い賃金であるが、先取特権を主張して闘うことになる。労働者側には指宿昭一弁護士が付いていて交渉にあたっているとのことである。
 7月11日の団体交渉で破産・解雇が示唆され、翌日破産・解雇が強行された東部ユニオン吉崎製作所分会のケースは、会社側が労働債権を残さない形で13日には解雇予告手当を含む、賃金・夏季一時金、退職金、退職加算金をすべて支払ってきた。秘密裏に金型を事前に運び出し、団交の翌日に破産・解雇通告をして、会社を閉鎖したのは東部ユニオン吉崎製作所分会が労働債権確保のために工場占拠・金型を確保するなどの闘いを恐れてのことだ。
 吉崎資本には8億の負債があり、破産全員解雇というのであるが、負債の原因はホンダの1次下請け会社山下ゴムが作り出したものである。吉崎製作所で生産されてきた部品は必ずどこかで誰かが生産する。組合を潰した後で、近隣で新たな会社を立ち上げるか、どこかの会社にやらせようとしている。しかし我々は潰されない。東部ユニオン吉崎製作所分会はホンダ、山下ゴムに雇用責任を取らせるまで徹底的に闘い抜く。
 (詳細次号-『闘う合同労組』コーナー)