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小池都政と都労連決戦 民営化と労組解体攻撃と闘おう

月刊『労働運動』34頁(0320号08/01)(2016/11/01)


小池都政と都労連決戦
安倍政権と小池都政一体の民営化と労組解体攻撃と闘おう!

(写真 10月18日東京都庁モールでの都労連秋闘総決起集会に1000人が結集。東京都人事委員会が同日出した極悪の勧告【都人勧】への怒りに包まれた。)

◆築地移転問題は全面民営化攻撃

 小池百合子が東京都知事選に当選して、小池都政の下で東京では築地市場(中央卸売り市場)の移転の延期が大騒ぎになっている。今年11月の移転が延びた。関係者にとっては青天の霹靂(へきれき)だった。今あらゆる勢力、8割の都民が小池を支持していると言われている。小池都政下の都議会が始まり、築地市場移転問題をどうするかが問題になっているが、小池都知事は、築地問題の矛盾がますます明らかになるのを恐れ、幹部の処分で幕引きをはかり、早く移転を発表しようとしている。
 他方、大阪都構想が頓挫(とんざ)した中で、小池知事の当選に元大阪市長の橋下徹はエールを送っている。東京都と一緒にやることで大阪都構想の全面的民営化の破綻を打開しようとしている。小池は知事に就任し、直ちに大阪都構想、全面的民営化推進の橋下の最大のブレーンだった上山信一を筆頭に「都政改革本部」を作り、都丸ごと民営化をやろうしている。
 既成野党も含めて都民の8割が支持していると言われるオール東京の中で、小池は何をやろうとしているのか。結論的にいえば小池は橋下がやった大阪の全面的民営化攻撃を東京でやろうとしている。われわれはこのことをはっきりさせないといけない。
 そういう立場から築地移転問題を労働運動の問題として民営化の問題としてすえないといけない。この間、築地移転反対の集会、デモがかなりの頻度で行なわれていたが、民営化絶対反対の路線的なものが貫かれていたかというとそうではない。例えば豊洲移転反対の区が呼びかけるデモはあるが、労働組合が呼びかける反対運動はない。何が問題なのかが非常に曖昧(あいまい)模糊(もこ)としている。「現時点では移転やむなし」となって、労働組合の絶対反対の運動は起きていない。
 しかし、そこに働く労働者の声を体現して絶対反対の運動を起こすことが非常に重要だと思う。そして、民営化攻撃の一環として、安全問題、利権問題を明らかにすることではないか。

◆小池は橋下と同じ攻撃をしている

 小池のやろうとしていることは橋下がやろうとしたことと全く同じだ。橋下が何をやったかをみれば、これから東京がやろうとしていることがよくわかる。橋下の攻撃とその破綻を教訓化しないといけない。
 小池は来年の都議選にむかって、都丸ごと民営化を貫徹するために、小池新党を作ろうとしている。だから新党を作ることに誤魔化されてはいけない。小池新党問題、橋下がエールを送っているという問題、そして、上山信一を顧問にもってきた中から、小池が何をやろうとしているかがわかる。
 では橋下は何をやったのか。
 第一に、橋下は、徹底した情報公開をやった。大阪は情報公開が立ち遅れていたと。小池は、豊洲移転問題、築地市場の移転問題は、情報公開が立ち遅れていたと言っている。情報公開自身がまやかしだ。「盛り土」「空洞」問題は、石原元都知事の責任であることがはっきりしているにも関わらず、「わからない」とうやむやにして、そして市場長を処分して責任を転嫁した。自分の都合のいいことだけ選択して情報公開を叫び、内部告発などを国鉄分割・民営化の時のヤミ・カラキャンペーンのようにやろうとしている。どこの組合が働こうとしていないとか、闇出張とか、カラ出張とか、組合専従はごまかしているとか、ヤミ専従などを問題にしようとしている。情報公開を小池は都政改革本部の第一方針に掲げて徹底してやろとしている。
 上山信一は「国鉄闘争から学ぶ」と言っている。国鉄分割・民営化も、ヤミ・カラキャンペーンで「国鉄労働者は働かない」というあらゆる嘘とデマで、内部告発を情報公開という形でやった。
 第二に、橋下がやろうとしたことは現業の全面的民営化攻撃だ。部分的ではない。JRは全面的民営化をやってから外注化した。自治体の現業は、上下水道、学校給食、公営交通、病院、公園、道路管理、公営住宅、ごみ清掃もある。これを完全に丸ごと民営化しようとした。これは、東京で行なわれた清掃の区移管で終わらない、全面民営化だ。大阪交通の全面的民営化問題が攻防の焦点になったことがある。現業を徹底して民営化する攻撃だった。
 東京では、都庁職は現業もあるけれど、現業ではない省庁本体がある。ここには検査業務とか航空管理とか、築地市場にも都庁職がいるが、省庁の本体に残る現業部門も全部民営化する。
 第三に、道州制の導入や大都市部の行政機構の再編をやろうとした。例えば、大阪市と大阪府、それぞれ水道、公立大学、公営住宅、卸売り市場などを保有していると二重行政の弊害が大きいとして、民営化し、廃止しようということだ。だから各部局、職種を全部洗い出して、ここは人数を減らせと徹底して人員削減をする。
 橋下のやろうとしたことは、国鉄方式だ。全員解雇・選別再雇用、これを大阪の全面民営化過程でやろうとした。
 第四に、学校の全面民営化攻撃だ。学力テストをやってそれを公表し、点数が低い学校を廃校にし、教育労働運動を解体しようとした。今、アメリカのシカゴやロサンゼルスで襲い掛かっている学校の民営化でも、学力テストをやって点数が低い学校を廃校にした。日本でも橋下はやろうとしたが、学力テスト問題は大問題になった。今、日本ではその攻撃が足立区でやられている。恐るべきことだが、どんどん学校を学力テストで廃止していく。
 第五は、労働運動解体攻撃である。これが民営化攻撃の核心だ。

◆築地移転は86年から始まった

 築地移転問題の歴史的経過は、1987年国鉄分割・民営化と同じ86年に、当時の中曽根首相が副総理である民営化担当大臣を作ったことに始まる。これを担ったのは金丸信だった。金丸信の鶴のひと声で10兆円の臨海部副都心開発がこのとき始まった。そのときに臨海副都心と都心を結ぶ環状2号線、高速晴海線など5本の幹線道路が中央区に通る計画が発表された。このときに築地市場をどうするかが問題になった。
 だから臨海副都心開発の問題として築地市場問題が含まれて始まった。それから30年経ってもまだ移転問題の解決がつかないということは、いかにこの問題が大きいかということがよくわかる。このときはまだ築地市場の移転問題とはならなかった。老朽化等、再整備の計画として問題になった。
 1997年頃、ゼネコン関係者から築地市場移転の声が出始めた。99年に石原が都知事になって、築地移転問題が大きく動き出した。築地移転問題は石原都政で進んだ。この移転問題は民営化問題だった。築地市場をどうやって民営化するか。一つは築地市場を移転したあとの一等地の利権問題が浮上した。同時に、築地市場の中に大ブルジョアジーが介入してどうやって儲けるか、移転にからんでゼネコンがどうするかで、築地移転問題に絡む攻防が30年間行なわれてきた。
 2011年に石原は任期が満了し、それから猪瀬、舛添、小池と続くが、2011年まで12年間、石原都政下で民営化攻撃が激しく進行し、その中で豊洲移転が決定されていった。だから諸悪の根源は石原都政、石原こそ悪の根源だ。それを引き継いだ小池自身が橋下と一体の攻撃をかけている。だからわれわれは安倍、小池、石原、橋下をすえて、これとの闘いを挑むことが求められている。石原を引き継いでもっと全面的な民営化をやろうとしている小池打倒闘争としてやりぬくことが求められている。
 民営化の実態ということについては、市場を管轄する最終省庁は農林水産省だ。農水省の諮問機関である食品流通審議会卸売市場部会の第1回会合は 99年12月だった。そこでどういう討議がなされたか。農水省側から次のように提案された。バーチャル市場(楽天市場)、電子商取引の導入の一方で、セリを廃止する方向が打ち出された。伝統的なセリの廃止だ。
 施設整備では、民間活力の導入、要するに民営化だ。民間活力の導入で、PFI方式をやろうとした。民間の資金を導入して病院を作るとか、市場を作る計画だ。その運営も民間がやる。建物を建ててその資金を行政が民間に返していく。経営は民で、建物の管理は官がやるという方式が提案された。この中身はセリの廃止=築地市場の廃止だ。セリに仲卸が並び、小売業に売るために物がセリにかけられる。大卸、仲卸、小売業という構造を解体するものとして、アメリカのゴールドマンサックスなどの大資本・大独占がこの卸業の8割をすでに握っている。豊洲市場はセリ市場ではなくなる。卸、卸業を大資本が全部支配する。だから豊洲はセリ市場ではなく物流施設になる。ここに民営化攻撃の核心がある。
 同時に、そこから何が生み出されてくるか、豊洲のような大汚染地帯に物流施設(倉庫)が出来ることによって、安全問題になる。だからセリ市場だった築地市場が完全に廃止され、物流施設(倉庫)が新設される。市場の機能として一番大事な、大卸から仲卸を通して小売に荷物が行く、この過程が卸売市場の中枢だった。これを無くすことに民営化の核心がある。大量の仲卸労働者の首切りが問題になっているのだ。豊洲にはすでに建物が完成しているが、セリをする場はない。

◆いかに闘うか

 都政改革本部(月1回開催)で、民営化を築地移転問題を突破口にやろうとした。これがある意味で大焦点化し、パンドラの箱を開けた。現在当事者を処分するということで幕引きを考えている。しかし、簡単に幕を引けない。11月強行を延期させた問題として移転問題の矛盾が次々に爆発している。確かに安全の危機と利権問題はものすごいことで、矛盾は爆発している。それは民営化のなかの矛盾の爆発だと捉える必要がある。
 われわれの闘いの大きな路線として、首切り問題、安全問題、利権問題がある。しかし、国鉄分割・民営化がそうであったように、核心はそこで働いている労働者の決起、そこで働いている当該の労働者がいかに立ち上がるかが問題だ。
 利権問題や安全問題は大きいが、これは民営化の過程で起きた問題だ。民営化攻撃が諸悪の根源で、国鉄闘争と同じ問題だ。国鉄の利権を日本のブルジョアジーが延命の唯一の命綱にした。民営化で安全が完全に崩壊した。だから諸悪の根源は民営化だとはっきりさせないと労働者の決起にならない。住民の怒りも労働組合、労働者が立ち上がらなかったら決起は生まれてこない。

◆橋下を倒した職場からの闘い

 橋下の攻撃はなぜ破綻したのか。それは現場の労働者の闘いがあったからだ。人数は少なくても入れ墨処分やアンケート拒否の闘いなど、現場の反撃があったからだ。大阪の公務員全員が立ち上がったとか、ストライキをやったのではないが、本当にたとえ一人からでも現場から闘いをなんとしても起こしていったことが非常に大きかった。そして、数波にわたる大阪市役所前での集会や包囲デモが行なわれた。
 10月14日、東京都と内閣府は、国家戦略特区を進める「東京特区推進共同事務局」を開所し、鈴木亘(学習院大学教授)を事務局長にして、国と都から8人ずつの人員を出して事務局を構成した。これは、都丸ごと民営化と安倍の「働き方改革」攻撃が開始されたということだ。
 国鉄労働運動と都労連の闘いが日本の労働運動の決戦課題になったのだ。11・6労働者集会を新たな出発点に、国鉄―都労連決戦にうって出よう!
 中田一夫(動労千葉を支援する会事務局)