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労働組合運動の基礎知識第28回 国家戦略特区

月刊『労働運動』34頁(0323号11/01)(2017/02/01)

労働組合運動の基礎知識 第28回
国家戦略特区を使った都の労働者に対する1年の変形労働時間制攻撃


 昨年12月2日の国家戦略特区第14回区域会議において、小池百合子都知事は「公務員の勤務時間について、1年単位の変形労働時間制導入、フレックスタイムを『週』単位で運用など、より柔軟な働き方を実現する制度を整備」することを提案した。このような重大な問題は、都の職員の労働組合の連合体である都労連との交渉事項である。それにもかかわらず小池は、都労連に提案することなく頭ごしに特区の会議に提案した。
 一般職の地方公務員、地方公営企業の職員(地方公共団体が経営する交通、電気、ガス、水道などの事業を行う企業に勤務する職員のこと)の場合は、労基法がほぼ全面的に適用される(地方公営企業法第39条第1項)。しかし地方公務員法第58条第3項の規定で、いくつか適用されない労基法がある。そのうちの一つが、変形労働時間制のうちの1週間単位の変形労働時間制と、1年単位の変形労働時間制である。1か月単位の変形労働時間制は、地方公務員にも適用される。
 地方公務員に労基法等が適用される場合の労働基準監督機関の職権に関しては、現業に従事する職員については、労基法上の労働基準監督機関(労働基準監督署等)が行うが、非現業に従事する職員については、地方公共団体の人事委員会等が行う。
 特区における除外規定の解除とはどういうことか。地方公務員法で労基法の適用除外となっている制度を、東京の特区に限って除外規定を解除して都の職員に適用するということである。この場合は、地方公務員法の改正は必要ない。憲法をはじめ地方公務員法などのあらゆる法律よりも国家戦略特区で決まったことが優先する。法の下の平等原則を破壊するのが特区法である。竹中平蔵はこの国家戦略特区を使って岩盤規制を撤廃すると述べていた。岩盤規制というのは自治体労働運動の解体であり、公務員労働者の権利の剥奪である。小池はそれを東京から行おうとしている。今回の都労連を無視したやり方は竹中平蔵や上山信一・鈴木亘の手法である。
 変形労働時間制は、1987年の労働基準法改悪により導入され、1993年に改悪された。一定の期間(変形期間)を平均し、1週間当たりの労働時間が1週間の法定労働時間(40時間、特例事業[1]の場合は44時間)を超えないのであれば、特定の日に1日の法定労働時間(8時間)を超えたり、特定の週に法定労働時間を超えても、法定労働時間内に収まっているとして扱う。1か月以内の一定の期間を平均し1週間当たりの労働時間が40時間(特例事業の場合は44時間)を超えない定めをしたときは、その定めにより、特定された週において40時間(特例事業の場合は44時間)又は特定された日において8時間を超えて、労働させることができる。1年の変形労働時間制は1日の労働時間の限度は10時間、1週間の労働時間の限度は52時間とされる。また、1年の労働日数は1年当たり280日が限度である。

 小泉義秀(東京労働組合交流センター事務局長)