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東京都丸ごと民営化を許すな!第3回 東京交通労働組合の労働者の闘い

月刊『労働運動』34頁(0325号07/01)(2017/04/01)


闘東京都丸ごと民営化を許すな! 労働組合の闘いで小池打倒へ! 第3回
東京交通労働組合の労働者の闘い

★大木勇次さんのインタビュー(東京交通労組6号乗務支部執行委員)

都営交通の民営化阻止へ、ストライキのできる労働組合をつくっていく!

オリンピックと労働法制改悪と一体で、民営化攻撃は始まる

○大木さんの今の問題意識を語ってください。

●大阪市のバスと地下鉄の民営化方針案が市議会で可決しました。都営交通にも国鉄分割・民営化型の攻撃が来ると思います。実際にはまだ民営化提案が出されていない中で、今から闘いをどう作っていくのかという問題意識があります。
 3月14日に東京交通労組の定期大会がありました。オリンピックまでは都営交通の民営化は来ないだろうという雰囲気があります。しかし、オリンピックも含めて、労働法制改悪と一体の民営化攻撃がかけられてくると思います。
 小池都知事と上山信一顧問が都庁に来たことで、「何かやれば叩かれる」という空気があり、都庁内に怒りは蔓延しています。マスコミが小池知事を持ち上げていることに対して労働組合が負けていると思います。

大会では怒りが渦巻いていた

○東京交通労組の大会を報告して下さい。

●今、東交の組合員は6500人くらいで、代議員は170人です。全体は傍聴者も含めて180人くらいの参加でした。
 大会は、前半が来賓の挨拶でしたが、民進党の挨拶はガタガタでした。民進党の中には都民ファーストの会に行く議員がいます。民進党都議団は小池都知事支持であり、会長である松原は小池の「情報公開」を評価していることを発言しました。これが労働組合への攻撃であることがわかっていての発言です。
 東交は足立区の「大西さとる」を準組織内候補として擁立しています。大西は「民進党には旧維新の会と旧民主党の議員がいるが、私は旧民主党の考えだ」と言っています。どちらにしても労働者の味方ではありません。
 後半の方針審議では対決的な討論にはなりませんでしたが、秋期年末闘争やバス運転手の賃金10%カットなどをめぐっての発言が相次ぎました。
 秋闘については、人事院勧告で国家公務員の賃金は上がっているのに、都人事委員会勧告では、改定見送り、一時金0・10月分引き上げは勤勉手当での実施、扶養手当の削減など、これまでの一線を越える勧告を出してきました。
 小池が知事になって交渉の仕方も変わりました。都はまず都政改革本部に事案をあげてから回答するようになりました。
 これに対して都労連はストライキと言わず、統一行動という言い方をしました。ストライキと言うとマスコミが騒ぐからと都が要請したようです。
 6波の決起集会のなかで組合役員の発言からも小池批判は出ましたが、結果は完全な敗北です。
 大会の発言でも出たことですが、「都人事委員会はもはや中立の立場でない」という批判があります。これについて秋闘決起集会で東交委員長は「これからは人事委員会勧告ではなく労使交渉で決める制度を」と言いましたが、これは単組ごとに交渉することを意味していて、これでは都労連としての団結破壊です。
 東交のバス部門は10年前の2006年に運転手の賃金が10%カットされました。組合は外注化で止まっていた新規採用の再開をバーターに認めてしまいました。このとき10%の根拠とされた「民間との比較」を含めて10年後に継続の可否を検証するとなっていましたが、結局は継続することになりました。
 大会では自動車部の代議員から「若い人が生活できないで辞めていく」と言って10%カット撤回を求める意見が出ました。本部は「撤回を求めていく。労使で若年層の賃金が低いことを確認した」と答弁しました。賃金問題では、年金の掛け金を厚生年金に一本化することになったため掛け金がものすごく上がったので、家族を持った人は大きな打撃を受けています。不満が爆発しないで渦巻いていると感じました。
 本部大会の後には電車部や自動車部など部門の大会が行われ、ここでも討論が行われます。

定期大会で民営化問題を発言

○大会での討論、特に東交の民営化、外注化攻撃についての論議を話して下さい。

●本部は答弁のなかで、「外注駅を直営に戻せと求めていく」「ホームドアのない駅のホーム監視要員はガードマンでなく駅定数増を求める」と言っています。しかし本部は現場の怒りや団結の力を背景にしない、交渉で解決するというやり方をとっています。だからストライキという言葉もありません。
 民営化問題については、私が次のように発言しました。「議案書に『都知事の取り巻きには、地下鉄の一元化やバスの民営化を唱える者がいて』とありますが、取り巻きとは大阪市長だった橋下のブレーンのことだと思います。大阪市営交通の民営化法案が市議会で可決されていますが、現場には強い危機感があります。東交あるいは都労連として、この『取り巻き』を含む都政改革本部との関わりについてどう考えているのか」。この発言に対する福田書記長の答弁は、「できれば都政改革本部とは関わりたくない。上山は特別顧問という責任を負わない立場で知事に進言している。だから危うさは感じている。局長から
情報提供を受けて探っている。最近はトーンが変わってきた。東京は手を付けるところが違うと考えているらしい。大阪の焼き直しとはいかない。上山はツイッター好きなので注視している」というものでした。
 民営化問題については、自動車部からも「オリンピック後に(民営化の)矛先がわれわれに
向けられることは容易に想像できる。どう注意を払っていくのか」という発言がありましたが、本部は「注視していく」というだけでした。
 また民営化に関連するかたちで都議選に触れ、「大阪では民主党がゼロになった。東京でそういうことになってはいけない」と、大西候補への支持を訴えていました。

職場で闘えなければ政治闘争も闘えない

○大木さんの東交全体についての意見を話して下さい。

●大会は全体として非常に危機感がありました。しかし結局、組合本部は選挙しか方針がありません。闘う前から展望がないのです。2020年の東京オリンピックまでは都の交通政策に変更はないと考えているのだと思います。
 大会宣言の中に、共謀罪のことや沖縄の辺野古新基地建設のことなどが出されています。労働法制も書かれています。でも労働運動と政治闘争に乖離があり、一体となっていないと思います。今の東交の方針は、沖縄集会や共謀罪反対集会に参加していくだけの方針です。動労千葉が一つの労働組合運動の勢力として登場していますが、闘えば労働組合が一つの政治勢力になっていくと思います。職場に攻撃が来た時に闘えないで、戦争、基地問題、改憲攻撃にストライキで闘えるはずがありません。階級闘争という視点がないと思います。バスの10%カットにしても「東交本体を守る」立場だから反対しない。民営化・外注化にも反対で闘わず「労働組合も経営感覚を持たなくてはいけない」などと本部は言っていたこともあります。都市交時代から地方の公営交通の廃止、民営化が進む中で「サービス推進」が生き残る道のように言われてきました。
 大阪市の地下鉄やバスの民営化攻撃を明らかにして宣伝することは大事だと思いますが、それだけでは恐怖心を煽ることになりかねません。やはり現場の怒りと結びついて、職場から闘いをつくりだしていくことが大事だと思います。

合理化で安全が危機にある

○安全問題について話して下さい。

●ホームドアについてですが、直接には「障害者の転落や飛び込みの防止」が言われていますが、実際には大江戸線でホームドアをつけた直後に投身があるなど、それ自体は絶対安全ではありません。このホームドア設置はワンマン運転と一体で始められました。大きな事故は減っていますが、ワンマン運転は運転士がドア操作をするため、小さい事故は増えています。そのほとんどは車掌が乗っていたら起きなかった事故です。
 都営地下鉄のワンマン運転は大江戸線から始まりました。次にワンマン運転になったのが三田線です。大江戸線の全線開業を控える中で、定数を増やさずにこれを実行する目的で三田線はワンマン化されました。都心を走る地下鉄でツーマンからワンマンに転換したのは都営三田線が初めてです。
 これまで大きな事故が起きていないのは現場の運転士の努力にほかなりません。以前は乗務員と駅員の連携が取れていましたが、外注化の進展により分断されつつあります。
 今、合理化は一旦止まっていますが、それは合理化が限界にきているからです。
 先日も都営地下鉄で事故がありました。労働強化の結果だと思います。勤務ダイヤは組合が作成しているので、組合に問題があるかのようにも言われますが、根本は合理化問題だと思います。事故は合理化と一体です。拘束時間の延長=合理化による長時間労働となっているのです。
 駅では管区制攻撃の問題があります。管区=複数の路線を受け持つため、大きな負担になります。当局は「スキルアップ」になると謳っていますが、その本質は組織破壊、労働組合つぶしです。しかしこれも駅新規採用(それ以前は車掌直採で駅に若手が定着しない)再開をバーターにするやり方で組合は妥結してしまいました。

外注化が2002年に始まった

○職場の状況を話して下さい。

●定年の人が再任用されて働いています。そのため再任用の仕事を増やしています。その結果、現役運転士の仕事が圧迫される現象が起きています。
 10年以上前から駅では都営交通協力会への外注化が始まっています。すでに駅の4割は協力会に外注化されています。検修部門も東京交通サービス(TKS)という外郭団体が入っています。これらの外注化に対しては私たち当時の青年部を中心に闘いました。しかし本部は民間ではなく、協力会などの外郭団体ならば良いと妥結してしまい、2002年から外注化が始まりました。TKSなどは再雇用職場として、定年後の職員が保線や検修の仕事をしています。バスの民間委託では「はとバス」に営業所ごと外注化されています。

(写真 都労連第5波総決起集会【2016年11月10日都庁前】 )

ストライキのできる労働組合へ

○これからの闘いの課題を話して下さい。

●大会に向けて大阪の地下鉄とバスの民営化問題のビラをまきました。まず事実を知らせていくことから始めています。民営化攻撃との闘いを組合員の怒りにつなげていくことが課題です。韓国の民主労総の闘いのように、「民営化反対、競争原理反対」にどうつなげていくかが課題です。労働組合の中からと同時に、都議選を通じて「民営化反対、競争原理反対」の世論をつくりだすことが課題です。
 小池知事との闘いですが、小池に対する怒りは現場に渦巻いています。都民の中に小池支持もあり、小池批判を言えない雰囲気もあります。組合の中から小池批判を出していかなくてはいけないと思います。ストライキは、現場から声が上がっていかないとできない。
 現場からの要求としてストライキのできる組合をつくっていきたいと思います。