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連合幹部を倒し、闘う労働組合を取り戻そう

月刊『労働運動』34頁(0332号09/01)(2017/11/01)


連合幹部を倒し、闘う労働組合を取り戻そう

(写真 連合本部への抗議デモ)

労働組合を戦争の道具にするな!

片峯 潤一(国鉄闘争全国運動事務局)

※改憲・戦争にむけたクーデター

 9月28日、安倍首相は臨時国会冒頭に衆院解散を強行し、10月22日総選挙を宣言しました。「自民党の単独過半数」といった分析が行われ、自民圧勝なら秋にも臨時国会を招集して憲法9条改悪に突き進むとも言われています。
 その要因として、小池の「排除」発言による希望の党の失速が取り上げられています。しかし、選挙戦術の成否以上に、ここに至るまでの選挙過程で行われてきたことは重大です。安倍政権による解散総選挙の突入と、それに対して新党を立ち上げて対抗した小池の動き。双方が改憲と現実の戦争に突き進むためのクーデターと言うべきものだったからです。
 安倍首相は解散にあたっての会見で、「国難突破」という戦時中の言葉まで使い、北朝鮮への戦争挑発政策について「信を問いたい」としました。小池新党の公認条件には「憲法改正」「安保法賛成」が掲げられ、一度は政権政党であった党派が一夜にして解体。戦前にすべての政党が解散して大政翼賛会が結成され、太平洋戦争へと突入していったことを思い起こさせる事態です。命をかけても戦争を阻止する。このことが問われているのだと、今回の選挙で本当に鮮明になりました。

※「産業報国会」化の道を進む連合

 その過程における最大の問題は、連合をめぐる問題です。安倍政権が解散・総選挙を決断する直前には、連合が残業代ゼロ法容認を撤回に追い込まれていました。この連合の残業代ゼロ法容認を仕掛けたのは、UAゼンセン出身の逢見事務局長でした。
 UAゼンセンは、安倍政権と財界によって育成され、一産別組織から急速に拡大して、日本最大の労働組合にまで成長しました。そして、改憲や戦争法、徴兵制にまで賛成してきた組合です。逢見事務局長は、UAゼンセン会長時代に安倍首相との極秘会談を行うなど、安倍政権と一体になって動いてきた人物です。
 安倍・逢見が結託して連合の残業代ゼロ法容認へ動いた。その狙いは、臨時国会前に残業代ゼロ法の議論にケリをつけ、10月の臨時国会では改憲一本で突き進もうというものでした。当初、次期連合会長は逢見事務局長で内定していました。逢見会長体制になれば連合を完全な改憲推進勢力にできるという、クーデター的な目論見だったのです。
 しかし、連合内外の激しい反発と怒りを前に、連合は残業代ゼロ法容認を撤回。逢見次期会長の人事も白紙になりました。安倍・逢見の改憲プログラムは、一旦頓挫したのです。今回の選挙が、その巻き返しを図るものであることは間違いありません。労働組合をめぐる動向が、解散総選挙の引き金を引いたのです。
 民進党の実質的解散と希望の党への合流の後押しをしたのも連合でした。連合の神津会長は、安倍以上の改憲論者である小池を評価すると表明し、「民進党は希望の党と連携すべき」という考えを示したのです。しかし、小池の「排除」発言以降は混迷を極めます。10月4日に開会した連合大会では、支援する候補が外された組織などから怒りの声が上がりました。結局、希望の党を支持することも出来ず、特定政党を支持せずに選挙に臨むという異例の事態になっています。
 連合は、安倍に手を突っ込まれ、次は小池に手を突っ込まれ、事態に翻弄されています。しかし、確実に産業報国会への道を突き進んでいます。傘下の産別組織で支持政党が分かれ、連合内から自民党支持を公然と打ち出す部分も出る事態です。まさに、櫻井よしこのいう「憲法改正を高らかに支持したUAゼンセンは、官公労と決別し、連合を分裂させよ」が現実になろうとしています。

※ 11・5集会に結集し、労働組合復権へ

 連合という労働組合のナショナルセンターの再編。これは、改憲・戦争へと事態が激しく進む時代だからこそ生み出された歴史的事態です。
 日本において、労働組合ナショナルセンターが再編されたのは過去に3回。そのどれもが歴史の重大な分岐点でした。1940年の産業報国会結成は、第2次世界大戦・太平洋戦争突入へ。1950年の総評結成は、朝鮮戦争へ。
 1989年の総評解散・連合結成は、87年の国鉄分割・民営化の結果でした。「闘う労働運動を一掃し、労働組合全体を労使協調の御用組合に統一する」。20年がかりで画策された歴史的攻撃でした。それは、「資本家側からの労働者に対する戦争開始」でした。労働組合は後退に次ぐ後退を強いられ、膨大な労働者が非正規職に突き落とされていきました。
 今回の連合再編は、「もう一つの改憲」というべき「働き方改革」=労働法制改悪攻撃の激しさをも表しています。正社員ゼロ、総非正規職・解雇自由化、8時間労働制の最後的解体。「個人事業主」という在り方を最大限拡大して、労働基準法や最低賃金も無視する。社会のあり方を根本から転換し、労働者の権利を根こそぎ奪う重大な攻撃です。
 それは、大企業・正規職を中心とした連合主流の組合にとって、自らの存立基盤が奪われることを意味します。これまでの労働者支配のあり方が崩壊していく。衆院選後に連合の改憲推進勢力化が一気に狙われることは間違いありません。現場の労働者の思いをすべて無視し、幹部連中の手によって労働組合が戦争の道具にされようとしています。労働組合が戦争の旗を振る時、戦争は現実のものになります。戦争に協力・推進するのか、反対するのか。労働組合の闘いこそが問われているのです。
 私たちは日本の労働者として、何より朝鮮半島での戦争開始を許してはなりません。そのために闘う労働組合を甦らせる。その力は、現場労働者にこそあります。
 11月5日に開催する全国労働者総決起集会/改憲阻止!1万人大行進には、韓国、アメリカ、ドイツなどの労働者が参加します。トランプが来日する中、日本と韓国とアメリカの労働者が、朝鮮半島での戦争を絶対に起こさせないと声を上げる。この時代に具体的な国際連帯の闘いを示し、闘う労働組合を甦らせる闘いです。11月5日、日比谷野外音楽堂への大結集を訴えます。