2004年5月号(No.170)  目次
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・労働者の目 5・21全国から明治公園へ・労働ニュース

労働ニュース  ●「日の丸・君が代」処分/春闘/賃金など ●日誌

国労5・27臨大闘争弾圧刑事裁判

・特集 有事法制・団結禁止法をつぶせ!
 ●有事関連7法案・3協定の国会成立を阻止しよう
 ●共謀罪新設を阻止しよう!
 ●労働委員会の裁判所化を許すな!

悪化する労働者の現状シリーズ 最終回

難問解決 労働相談 第2回

沖縄5・15〜16闘争に結集しよう!

都立学校の卒業式・入学式で不起立闘争が大爆発

闘いは進む  ●動労千葉、福岡教育基本法改悪反対闘争  ●みやぎ3・20闘争

読者のページ


●5・21全国から明治公園へ

 全国労働組合交流センター常任運営委員 岩澤 仁志

 日本時間の4月15日夜、イラクの武装勢力「サラヤ・ムジャヒディン」に拘束されていた日本人3青年が解放されました。
 解放を決定した声明文で「サラヤ・ムジャヒディン」は次のように述べています。
 「我々は(3人の)日本人たちが占領国に汚されていないことを確認した。(人質の)日本人たちがイラク国民を応援していることや、家族の悲しみを考慮し、日本国民の姿勢も評価して、【3人の解放を】決めた」と。
 今なお、イラクのファルージャでは「停戦」中も含めて、アメリカ軍海兵隊が町を封鎖し、各所を武装制圧し、狙撃兵により非武装のイラク民衆が銃弾に倒れています。今月に入ってからだけでも犠牲者は700人(4月18日現在)を超えています。
 「事態の責任」をいうのなら、こんなイラクにだれがしたのか、「大量破壊兵器」を口実に開戦したブッシュ大統領や、それに自衛隊を派兵してまで協力する小泉首相の責任こそが、まず問われます。戦争は雪山や台風とは比較できない人災です。「人質」となった3青年の「自己責任」を責めるなど本末転倒といわなくてはなりません。
 イラクで米軍に抵抗しているのは、良心も理性もある、労働者の仲間たちです。小泉首相がいう「残忍なテロリスト」などではありません。彼らは、日本とアメリカの労働者がその階級的力を発揮してイラク侵略戦争を阻止することを真剣に望んでいます。
 日本の反戦運動は、大きな盛り上がりをみせつつあります。3月20日には、東京の6万人行動を中心に、全国50万人がイラク反戦にたちあがりました。自衛隊撤退と3青年解放を求める署名は3日で15万筆集まりました。こうした日本国内における運動の高まりが3青年解放の原動力でした。
 今このときも、イラクの労働者民衆は命がけで占領軍とたたかっています。日本の労働者がするべきことは何でしょうか? あらゆる力を5月21日明治公園に集め、その力で自衛隊の撤退を実現することです。

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●労働ニュース(04年3月16日〜4月15日)

教職員180人を処分
 東京都教育委員会は30日、今月の卒業式で「君が代」斉唱時に起立しなかった都立校の教職員約180人を戒告などの処分にすることを決めた。4日に、追加の処分を決める。異例の大量処分だ。教員らには「内心の自由を縛っている」と反発が強く、今後、不服審査の申し立てや訴訟が相次ぐのは必至だ。

 都立板橋高校が元教員を告訴へ
 都立板橋高校の卒業式で、元教員の男性が「日の丸・君が代」を巡る都教委の方針を批判的に報じた雑誌のコピーなどを配るなどして式の進行を妨げたとして、同校は17日までに、威力業務妨害容疑などで男性を告訴する方針を固め26日、警視庁板橋署に被害届を提出した。

 小泉首相の靖国参拝は違憲
 小泉首相の就任後初めての靖国神社参拝が政教分離を定めた憲法に違反するかどうかについて争われた訴訟の判決で、福岡地裁(亀川清裁判長)は7日、「参拝は公的なもので、憲法で禁止された宗教活動にあたる」と述べ、違憲と断じた。しかし「参拝で原告らの信教の自由を侵害したとはいえない」として、原告側の慰謝料請求は棄却した。

 春闘「脱賃上げ」加速
 17日にあった大手製造業の春闘一斉回答は、日産自動車が3年連続満額のベア1千円を出した以外は、軒並みベアゼロ。一時金を巡る労使の応酬はあったが、業績連動で一時金交渉をしない会社も増えた。成果主義が拡がり、春闘における「賃金」の重みは下がる一方だ。この流れは中小企業にも及びそうで、春闘の変質が加速している。04年3月期の連結当期利益が1兆円を超えるのが確実で、空前の好業績を上げながらベアゼロだったトヨタ自動車。松原専務は「春闘は、ベアがらみだけを話し合う場ではない」ときっぱり。東トヨタ労組委員長も「カネの議論だけではだめな時代になった」と同調。春闘の「脱賃金」の最先頭に立っている。

 中小、将来の不安消えず
 連合が初めて共通の賃上げ目標などを設定、底上げを目指した中小零細企業の04年賃金交渉。連合が25日発表した回答結果では、前年実績を上回る成果が出た形だが、定期昇給などの賃金体系がない零細企業ではゼロ回答の組合も少なくない。今春の賃上げが実現した組合でも、業績連動の一時金交渉に傾く経営側の姿勢に、不安を感じる声も出ている。

 脚光「キャノン流」(成果主義+終身雇用)
 定期昇給を廃止して成果主義を強化する大手企業が相次ぎ、04春闘は「脱賃金」が加速している。こうしたなかで、「新日本方式」を標榜するのが、キャノンだ。2年前から成果主義に切り替える一方、終身雇用を守るなど日本型経営の良さを引き出す方針を明確に打ち出す。業績が好調なことも手伝って、専門家の間には「先駆的な制度で、追随する企業が増えるのでは」という評価もある。

 賃金10%減提案、社員15%削減
 石川播磨重工業は15日、04年度から2年間、全従業員を対象に給与と賞与の一律10%削減することを決め、労働組合と交渉していると発表した。04年3月期の連結決算の業績のうち、当期利益を従来予想の0円から390億円の赤字に下方修正することになったのを受けた措置。また06年3月までの2年間で現在の社員数8千200人から7千人まで約15%削減する。

 トヨタ、工場に派遣社員
 トヨタ自動車は4月から国内工場の製造ラインに初めて派遣社員を採用する。改正労働者派遣法の施行で製造現場への直接派遣が解禁されたのを機に、派遣会社からまず約500人を受け入れる。

 請負労働の実態把握・違法を是正
 厚生労働省は製造業の業務の「請負労働」の監視を強化する。メーカー各社はここ数年、コストが安い請負労働を増やしてきたが、賃金や労働環境でトラブルが多い。従来は全国の公共職業安定所(ハローワーク)が指導してきたが、4月1日から各都道府県の労働局が直接指導、請負を装う違法な派遣などを是正する。

 日立、裁量労働2万人
 日立製作所は4月1日から事務・営業職に裁量労働制を導入する。これまで裁量労働制は研究者など専門性が高い職種に適用する例が多かった。日立は若手を除く社員1万2千人に適用し、管理職を含めると全社員の5割強にあたる2万人が対象になる。4月から、一般社員の年功序列型賃金を廃止。勤務スタイルは本人に任せるが、賃金は成果・能力次第という姿勢を明確にする。

 ヤマダ電機、全社員年俸制を導入
 ヤマダ電機は1日付けで、全社員約5千人を対象とした業績連動型の年俸制に移行する。

 コマツ、賃金の業績評価拡大
 コマツは一般社員でも業績評価次第で降給があり得る新しい賃金・人事制度を4月1日から導入する。業績評価で変動する賃金部分のうち年功によって決まる部分を廃止、従来より賃金に差をつける。総労務費が毎年の昇給率に左右される体制を、絶対額で管理する仕組みに改める。

 新日石、早期退職500人募集
 新日本石油は23日、500人の早期退職者を募集すると発表した。対象者は新日石と全額出資子会社の新日本石油精製の31〜58歳の社員で出向者も含め5千人。退職時期は7月1日。約60億円のコスト削減効果を見込む。

 地方公務員、国並に低下
 総務省は24日、03年4月1日時点での地方公務員の給与水準を示すラスパイレス指数(国家公務員の給与を100とする)が、前年比0・5低い100・1となり国家公務員とほぼ同水準まで低下、63年の調査開始以来、最低になったと発表した。

 職員給与カット、職員3割削減
 横浜市が17日発表したバスや地下鉄など市営交通事業の経営改善計画では、08年までに交通局職員を3割(約千人)減らし、民間企業より割高な職員給与を削減する。人件費圧縮は年間約110億円になる見込み。中田宏市長の諮問機関から1月に答申されたバス路線の民間移譲も進め経営自立を目指す。

 働く女性の4割、短時間労働者に
 働く女性のうちパートなど短時間労働者の占める割合が初めて4割を超えたことが、厚生労働省の03年版「働く女性の実情」(女性労働白書)で分かった。厳しい雇用情勢で男性雇用労働者数が減少するなか、女性の雇用労働者数は増加しており、同省は若年層のパート就職の増加が背景にあるとみている。

労働日誌(04年3月〜4月)

3月24日
 大学生時代に任意加入制だった国民年金に加入しなかったため、障害基礎年金を支給しないのは憲法に違反するとして、事故や病気で障害を負った4人が国家賠償などを求めた訴訟の判決があった。東京地裁・藤山雅行裁判長は原告3人について国に計1千500万円の支払いを命じ、他の1人に対する社会保険庁長官の不支給処分を取り消し、無年金放置は違憲とした。

3月25日
 秋田県大曲郵便局の職員を分限免職としたことの是非が争われた訴訟の判決で、最高裁第1小法廷(島田仁郎裁判長)は「郵便局長が裁量権を逸脱したとはいえない」と免職処分を取り消した1、2審判決を破棄し、元職員の請求を退ける判決を言い渡した。

3月30日
 総務省が30日発表した2月の完全失業率は5・0%、厚生労働省が同日発表した同月の有効求人倍率は0・77倍で、ともに前月と変わらなかった。2月の完全失業率は前年同月比19万人減の330万人で9カ月連続で減ったが、03年半ばから続いてきた雇用環境の回復基調には、やや踊り場感が出ている。男性の完全失業率は5・4%で前月より0・2悪化したが、女性は5%で0・1改善した。男性は、求人と求職が折り合わない「ミスマッチ」が若年層で続いていることに加え、景気回復を見込んだ転職の動きも増え、34歳以下の失業率が悪化している。

4月2日
 リクルートは10月、年功の要素のすべてなくした完全能力主義の人事制度を導入する。定昇と職務資格制度を全廃、半年ごとに社員の職務と実績を評価し直して賃金を決める。

4月3日
 日本の国民の豊かさは経済協力開発機構(OECD)加盟30カ国中で14位。社会経済生産性本部は、平均寿命や失業率、経済成長率などの指標を総合評価し、こんな結果を発表した。

4月6日
 厚生労働省は、使用者が支払うべき賃金の下限を法で義務づけている最低賃金制度のうち、業種ごとに定める産業別最低賃金を事実上廃止する方向で近く検討に入ることを決めた。産業別より低水準の地域別最低賃金に一本化する考えだ。

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●新たな10万人署名を開始

 ―公正裁判・無罪判決求め、被害者証人との攻防で攻勢を取り続けよう

 国労5・27臨大闘争裁判は、「被害者」と称する1人目の証人との攻防が続いています。4月27日の第22回公判は、関西の革同で本部会計監査の石井勝幸証人の3回目の尋問となります。今後は、長野のチャレンジの池田、東京の革同の江田の各証人と続きます。この3証人については、弁護側からも証人申請し裁判所も認めました。事件そのものの行為はもとより、4党合意をめぐる全経過を弁護側から尋問することが可能で、1証人につき数回の法廷となります。
 裁判的には「経過立証」と言われますが、「犯行の動機」のことです。検察官は冒頭陳述で、「中核派は……4党合意に反対する闘争団の一部を取り込み、演壇を占拠するなど大会に対する妨害活動を行っていた」と明記し、続いて5・27当日の「犯行状況」を書き連らね、全てを立証するとしています。
 弁護側は被告の「動機」の正当性は、たとえ敵性証人であろうとも立証できるとの立場から、3人を証人申請し争ってきました。この攻防の中で、検事は2月10日の第19回公判で、「経過は尋問しない」と言い出しました。これは、検察側立証の根幹の破綻を意味します。4党合意に対する国労方針の決定について、どららが正しいのか。この争いのヘゲモニーを弁護側が取ったのです。
 刑事裁判の場で、4党合意は「国家的不当労働行為の総仕上げ」か、「解決案」かという問題が、全面的に争われるのです。この攻防は、労働者の団結権を擁護・前進させていく決定的な意味を持ちます。

4党合意とは「国家的不当労働行為の総仕上げ」のための不当労働行為

 「4党合意」とは何だったのか。簡単に整理しておきます。
 4党合意は、国労がまず「JRに法的責任なしを大会決定すること」が明示に突きつけられます。これ自体が国労への支配介入であり、不当労働行為です。
 4党合意は、00年5月30日に自民党ら4党から国労本部に突きつけられ、本部は承認しました。しかし、7・1に始まる3度の全国大会でも決定できず、01年1・27の続開大会で機動隊配備のもとで強行採決します。
 これに対して自民党らは、大会で「追加方針」として決めた「公正裁判要求」などを矛盾として、方針の取り下げを強要し続けました。02年4・26の3与党声明では、鉄建公団訴訟を起こした闘争団員の除名やILOに送った書簡の撤回などにエスカレートしました。これを丸飲みしたのが、5・27臨大でした。自民党はさらに居丈高に、「8月大会までに、残り全部の問題の解決(除名の実行)」を迫りました(6・6記者会見)。
 02年は鉄建公団訴訟が開始され、労働委員会で甘利自民党副幹事長が証人採用されるなど、反対闘争が高揚しました。この中で、10月に本件弾圧が強行されますが、国労本部は11月大会で「除名」を強行することはできませんでした。これを受けて3与党は、「国労執行部は自らの延命を図るもの」(12・6離脱声明)として、進展がない」として4党合意は完全な破産となります。
 この後も国労本部は、「政治解決」を掲げ、闘争団員への統制処分を強行し、本件裁判闘争への敵対を強めています。「死んだ」4党合意にすがりつく、国労本部の惨めな姿の象徴が、検察側証人として「国労組合員を有罪にするために」出廷する証人です。

公正裁判と無罪判決求め10万人署名を開始

●4党合意の特徴をまとめると
 @政権政党らによる国労の解雇撤回闘争への直接の支配介入・不当労働行為。
 A自民党ら4党、国土交通省、JR各社が一体で仕掛けた大規模な攻撃。
 B分割民営化で不当労働行為の限りを尽くしたの張本人たちが、13年を経て、5・28東京地裁判決をテコに再び登場し、今度は裁判の取り下げを要求。
 C不当労働行為があったという中労委も認定した事実を、申し立てた労組に無かったと宣言させる。救済命令を受けている組合への口止め。労働委員会制度の解体。JRの労働委員会命令の履行拒否と一体。
 D密室での交渉だけで、「念書」、「水面下」「感触」が横行する労働組合運動を破壊するやり方。
 E国労の一方的譲歩が先で、「解決案」は担保なしの白紙委任。「解決」する気はない後に甘利は「ゼロもしくは、ゼロ+アルファー」と言明。
 F「裁判取り下げ」はそもそも無理。無理を承知で要求。採用差別事件は中労委命令を不服としてJRが起こした行政訴訟。国労は補助参加人で社会的に「敗北宣言」を出す以外にない。
 G訴訟の取り下げは第2段階なのに、一方的に強行された。最高裁での補助参加人取り下げ。西日本採用差別事件の上告断念など。
 このような特徴は、様々な時点で現れます。
 例えば、4党合意を承認した01年1・27の臨時大会では、「採用差別事件での上告方針」も決めます。この追加方針が3月6日の4党協議で問題とされ、3月15日に国労本部は「矛盾は解消していく」と回答します。すかさず自民党は、「4党合意承認の内実を示せ」と攻撃したわけです。
 3与党声明となるともっと露骨にエスカレートします。
 4党合意では「JRの法的責任なしの大会決定」が前提条件でした。それが、3与党声明では「国労総体での承認」が「前提条件」となります。この脈絡で、3与党は1・27臨大はもとより、10月大会についても「政治解決の前提条件は未だ満たされていない」とし、「4党協議は前に進むことはできない」と脅したのです。
 ついには、国労本部を「組合員とその家族の信頼を裏切るもの」とまで非難します。国労本部は、ここまで言われても、一言も反論しませんでした。なんとまた惨めで、怒りに耐えない姿です。

団結権侵害を許さず、責任者の追及を

 これらの事実は、4党合意を推進してきた「被害者証人」に突きつけられます。4党合意は、国労をどこまでも屈伏させることが目的だったのです。彼らはそれを承知で、反対する闘争団員・家族、組合員を足蹴にし、ついには検察側証人となったのです。
 「被害証人」との攻防のいま一つの柱は、実行行為です。刑事事件としては、「暴行」を事実をもって粉砕していくことがあくまで柱です。この点も十分な尋問を行います。

酒田委員長は進んで証言すべき

 この裁判はあくまで4党合意攻撃との闘いです。鈴木勉東京地本執行委員の証言でも、酒田本部委員長の名前が出ました。酒田委員長は、出廷して証言する義務があります。そして甘利明自民党副幹事長は、4党合意の責任者として全経過を証言すべきです。それなしに真実は明らかになりません。
 許さない会は、闘いの方向を「無罪獲得・国労再生」とし、「公正裁判と無罪判決を求める10万人署名」を開始しました。裁判傍聴、会員拡大、被告との交流会など、積極的に取り組み、国鉄1047名闘争の勝利を勝ち取ろう。     (松田浩明)

 公判日程   第23回 5月18日(火)  第24回 6月9日(水)  第25回 6月29日(火)   第26回 7月21日(水)   第27回 8月5日(木)   第28回 9月6日(月)
  (いずれも 東京地裁104号法廷)

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特集 有事法制・団結禁止法をつぶせ!

●有事関連7法案・3協定の国会成立を阻止しよう

 1954年の自衛隊発足直後に笹部益弘が「自衛隊と基本的法理論」を著して以来、1963年「三矢作戦研究」で「非常事態措置諸法令の研究」以来、1977年福田首相のもと「日米防衛協力指針」の策定作業開始以来、実に半世紀。今国会に提出される有事関連7法案と3協定・条約案によって、日本に憲法体系とはまったく別の有事法制体系が合法的に成立する。われわれは戦りつをもってこの事態を直視しなくてはならない。12月9日の自衛隊の海外派兵の政府決定が、戦時下へ突入した記念日とすれば、この有事関連7法案・3協定の国会成立は、現に進行しているイラク侵略戦争を通して戦争を法的に追認する記念日となるであろう。有事関連7法案・3協定の暴露をとおして国会での阻止と粉砕のために闘おうではないか。

戦争法案の徹底した暴露こそ粉砕の核心

閣議決定した法案
 昨年6月有事3法(@武力攻撃事態法、A安全保障会議設置法、B改定自衛隊法)が成立、それにともなって未整備の有事関連法案をとりまとめるために、政府に国民保護法制整備本部が設置された(本部長・福田官房長官)。同本部は2月24日、有事関連7法案(@国民保護法、A米軍行動円滑化法、B自衛隊法改定、C交通通信利用法、D外国軍用品等海上輸送規制法、E捕虜等取り扱い法、F国際人道法違反行為処罰法案)と3協定・条約の締結承認案(@日米物品役務提供協定=改定ACSA、Aジュネーブ条約追加議定書T「国際的武力紛争の犠牲者の保護に関する追加議定書」、Bジュネーブ条約追加議定書U「非国際的武力紛争の犠牲者の保護に関する追加議定書」)の概要を発表した。

 「有事10法案と3協定・条約の締結承認案」
 国会に提出された有事関連7法案と3協定・条約の締結承認案は、昨年6月に成立した有事3法と一体で体系化した法律となっている。いやむしろ法案全体を俯瞰してみると、今回上程された諸法案・協定・条約は実際の戦争法体系として有事3法とまさるとも劣らぬ実効法案だということができる。成立すれば77年に福田内閣が研究に着手した、第一分類から第三分類におよぶ有事法制の整備は、骨格として完成することになる。
 この場合、政府がさかんにキャンペインしている昨年の有事3法案で基本的法案は整備された、残されたのは「国民保護法制+α」であるという考え方はまったく間違っている。これはすでにヤマはこえて残るのは「国民保護法制」だけ、という悪質なデマであり、法案の核心をあいまいにした上で、反対運動つぶしにほかならない。われわれはむしろ「有事10法案と3協定・条約の締結承認案」と整理し、「03年=04年有事法決戦」ととらえてこれにたちむかう必要がある。別の表現をすれば、「2年越しの安保大改定とのたたかいの決着局面」がこの5月から6月なのである。猛然とファイトを燃やそう。

 10法案と3協定の概括
a 武力攻撃事態法は、有事法制全体の枠組みを示す基幹法である。
b 安全保障会議設置法は、政府に有事事態対処の進言をする基幹会議となる。
 このa、bのもとで、
c 米軍の行動を円滑におこなうために、米軍行動円滑化法案、日米物品役務提供協定=改定ACSA、交通通信利用法案、自衛隊法改定案の4法案がある。
d 自衛隊の行動を円滑におこなうために、改定自衛隊法、外国軍用品等海上輸送規制法案がある。
e 戦争を前提としていなかったため批准していない法整備として、ジュネーブ条約追加議定書T・U、捕虜等取り扱い法案、国際人道法違反行為処罰法案がある。
f 国民保護法案は、米軍と自衛隊が軍事行動を自由に行うために、「国民保護」の名のもとに国家統制し管理し動員する法案である。特に自治体・指定公共機関に責務を課して、国民に罰則つきで協力を求めている。すべての自治体は国民保護協会の設置や訓練の実施が求められる。
 このうちcの4法案が広義の米軍支援法として今次の上程法案の核心部分をなすものである。

 広義の米軍支援4法案を概括
A 改定ACSAは適用範囲を「日本有事」から「国際貢献、大規模災害」に拡大した。この法律により、国際貢献の名で米英軍への給油活動などが無制限に可能となる。また米軍が災害救援活動(関東大震災の陸軍ははじめて戒厳令で治安出動の役割をはたしたことを想起せよ!)に出動が可能となる。
B 極めて重要なのは米軍行動円滑化法案である。民間事業者や自治体は、米軍の行動に関して協力を要請されたら従えという法律である。民間であれば業務命令として強制される。この「努力義務」に対してどうたたかうか、20労組が腐心している。
C 自衛隊法改定案も極めて重大。改定ACSAに伴い、自衛隊の物品・役務の米軍への提供範囲を拡大している。これは米軍が朝鮮侵略戦争などの場合、無条件で自衛隊施設を活用し、物品と自衛隊を使えることになる。施設には当然にも自衛隊の空港や港湾基地が含まれる。
D 交通通信利用法案も極めて重要。武力攻撃事態等には、特定公共施設たる自治体の港湾施設や民間飛行場や道路や海域・空域を利用できるようになる。内閣総理大臣(武力攻撃事態等対策本部長)が命令と強制力をもって、これにあたる。

有事法といかにたたかうか

「平時には憲法」「有事には有事法制」
 有事法制の完成とはすなわち、戦後憲法体系とまったく別の戦争法体系の完成を意味する。日米安保体制が憲法体制とは異種依存であることは縷々証明されている。裁判論的にいえば、「高度な統治行為で裁判にはなじまない」といって、国家統治について裁判所はその権限を当初より放棄してきた。しかし日米安保という漠とした条約上の法制ではなく、有事法制の完成は、新しい体系として戦争法体系が合法的に完成するということである。では、果してこの両体系が両立するのか。極く簡単にいえば「平時には憲法」「有事には有事法制」とすみ分けようというのである。その間をとりもつのが「委任」である。「武力のさ中にあって法は沈黙する」「有事に憲法は停止する」ということである。すべて「委任」する。ナチスドイツの合法的クーデターが「委任」を意味する授権法であったことを想起すれば明白だ。権力を戦争法に預けるのが「委任」。そして首相大権のもとで、総合調整という私権制限をもつ権力調整がおこなわれ、「指示→代執行→罰則(解雇)」という体系で、戦争体制がつくられる。

 たたかう団結こそ戦争拒否の根源
 これらの有事法が整備されると戦争遂行体制がほぼ完成するとみていい。この場合、労働者(組合)にとっての火点はどこか、有事体制とどこでたたかうことができるのか。
 民間企業の場合は、「事業者の努力義務」と規定されるが、これは字義どおりではない。強制される。事業者は労働者に「業務従事命令」となって襲いかかる。これに対しては現在、20団体などが果敢にたたっている。航空連は組合の協力拒否を鮮明にさせているために事業者がちゅうちょしている。海員組合はすでに事業者と労働協約を結んで簡単に戦争への従事を許さない。全港湾も労働協約を結び、また協定をせまっている。相模鉄道など私鉄も拒否宣言を出している。もちろん労働協約など一方的に破棄される。要は力関係であり、組合の団結力の強さによる。たたかう団結こそが戦争協力拒否のすべての根源だ。自治体の場合は、首相が知事に指示し、自治体を上意下達で抑えるというのも、戦後の地方自治の破壊であり、憲法体系を逸脱するものである。首長の命令に従えば、そこにあるのは土地・家屋の強制収用であり、物資調達であり、業務従事命令などの手続きをするのは具体的には自治体労働者である。退避計画、訓練、隣組など日常的に有事体制にくみ込まれる。
 さすがに全国知事会ですら、指示に従わなければいきなり代執行というのはあまりにも強権すぎると反対している。こうしたなかで自治労特定港湾連絡会は、港湾法にもとづいて自治体は港湾の有事利用を拒否すべきだと、交渉を続けている。舞鶴や佐世保や立川市では首長との確約をとって戦争利用を拒否している。非核神戸方式は函館、小樽、高知市と拡大している。しかしここでも労働組合が軸となってたたかわれているのであって、確約はほごにされ放棄されても、組合が団結して阻止する意思があれば抵抗は打ち破れない。

 5・21明治公園に万余の結集を!
 3月9日にはこれらを通常国会へ上程することを閣議決定し、4月13日には衆議院本会議で趣旨説明と質疑をおこない審議入りした。会期は6月16日までで、7月には参議院選挙が控えており、延期は事実上できない。5月連休明けに集中審議、中旬に衆議院通過、参議院に送って6月会期末までに成立させるというのが政府が描いているスケジュールである。政府にとっても後が切られており決して余裕があるわけではない。
 民主党は基本的に有事法制は必要という態度であり、関連7法案は対決法案にならない。それ以上に補完する立場から大規模テロや武力攻撃にともなう災害(被災を想定している)に総合的に対応するために緊急事態基本法案をつくれと要求した。政府は、民主党の修正など全面的に受け入れる構えである。
 連合は99年第8回大会で新たな「連合の政治方針」を採択し、護憲から論憲(改憲)へ態度を転換し、三役直属の「国の基本問題検討委員会」を設置、02年5月16日には「憲法の枠内で(これは政治用語で実際は憲法と両立しない)基本的に有事法制は必要」との態度を明確にした。しかし、その後も基幹労連など戦争産業の有事体制の積極的推進にもかかわらず、依然として自治労・日教組・私鉄などの抵抗がある。
 われわれの力でなんとしても有事関連7法案と付属3協定を絶対阻止しよう。陸海空港湾20団体は、審議入りをまえに4月9日、日比谷野音で4000名を集めて、廃案へむけて決起を開始した。5月21日には、3月20日を上回る規模の集会を明治公園で開催する。連合・全労連傘下の組合員に決起をよびかけよう。圧倒的反対運動の高揚でいっそう激しい分裂状態にたたき込み、既成のナショナルセンターを越えた、本当に闘うものの結集で、廃案においこもう。  (上尾康隆)

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特集 有事法制・団結禁止法をつぶせ!

●共謀罪新設を阻止しよう!

  ―くり返すな戦前の治安維持法 戦争への道をとめよう―

 共謀罪新設阻止の闘いは大詰めの段階に入っている。すでに、昨年156通常国会で継続審議となり、秋の臨時国会で廃案の憂き目にあっている国家権力・法務省は、今159通常国会にサイバー犯罪条約の国内関連法にからめた法案として共謀罪を再提出してきた。「犯罪の国際化及び組織化並びに情報処理の高度化に対応するための刑法等の一部を改正する法律案」という相変わらずの長ったらしい名前をもつ法案は2月20日に再上程され、法務委員会での審議入り情勢となっている。内容は@「国際組織犯罪防止条約」の締結に伴う罰則等の整備、A強制執行を妨害する行為等に対する罰則整備、Bハイテク犯罪に対処するための法整備、である。@は前国会で廃案となった内容、Aは労働争議に利用できるもの、Bはインターネット版の盗聴法である。
 周知のように共謀罪の新設は、実行行為がなくても「話し合い」だけで処罰することを可能とする。具体的には、傷害・強要など557もの罪名について、実行行為がなくとも「合意した」とみなせば懲役・禁固刑を課せることになる。このことは、現行刑法があくまでも「実行行為」を処罰することを原則としていることを考えると、とんでもないエスカレーションである。法務省は「暴力団」向けと説明しているが、「凶器準備集合罪」や「暴力行為等処罰に関する法律」が当初「暴力団対策に限る」として激しい反対運動を抑えて制定されたにもかかわらず、反戦闘争、労働運動弾圧に猛威を振るっていることを考えると、共謀罪も同様に使われることは明らかである。
 実行行為なしの犯罪という場合、決定的なポイントは警察権力の権限の強化である。「話し合い」が犯罪に該当するか否かを判定するのはとりあえず警察権力であり、その判断にもとづいての逮捕となる。これ自体、弾圧のエスカレートを可能とするのだが、同時に捜査手法としておとり捜査、免責規定が導入されると、スパイ天国となる。反戦闘争、労働運動に潜りこんだスパイは一定の活動を行ったのちたとえ逮捕されても免責規定により無罪放免となり、後顧の憂いなくスパイ活動に専念することとなる。警察権力は現在も公安部門の一部にいわば「裏部隊」を養成し、さまざまな非公然・非合法の活動を行っているのだが、こうした行動がいわば法律により公認されることになる。まさしく警察国家化へのエスカレートである。

共謀罪の先取り攻撃

 すでに共謀罪の先取り攻撃がはじまっている。2月27日の自衛隊監視立川テント村、3月3日の社会保険庁の職員への弾圧は、反戦闘争つぶしの弾圧であり、現行法における拡大解釈の極致たる弾圧である。だが、こうした逮捕弾圧は現行法においては証拠構造上無理があり、被弾圧者が裁判において徹底的に争った場合、有罪にするのには国家権力にとってかなりの飛躍が必要。このことを如実に示したのが、弾圧刑事裁判における昨年末から今年3月にかけての連続的な無罪判決であった。具体的には、1998年12月6日に強制執行妨害罪で逮捕され、同年25日に起訴された安田弁護士の安田裁判、01年2月8日の羽田空港での「ころび公妨」事件に関する羽田裁判、88年9月21日の千葉県収用委会長せん滅戦闘に関する水嶋裁判、86年4月15日の米軍横田基地、5月4日の迎賓館へのロケット弾戦闘に関する迎賓館・横田爆取デッチ上げ裁判である。それぞれ昨年12月から今年の1、3月に無罪判決をかちとっている。このことは、現行法のもとでは国家権力といえども力が有限であることを示すものであった。したがって国家権力は「戦時下の弾圧」体制における「不備」を切実に感じていることは間違いない。
 であればこそ、共謀罪新設の衝動は加速される。共謀罪が新設されれば、これまでの実行行為者の特定という証拠構造上の弱点(被弾圧者が徹底的に争った場合は無罪がある)は「克服」されることとなる。逮捕弾圧―有罪とストレートに結びつき、弾圧効果は倍加されるであろう。このことは、同時に質的エスカレーションも伴うことになる。「司法改革」にともなう裁判迅速化、裁判員制度が加わった場合、逮捕のあと短期間の裁判で有罪判決となり、これまで手が出しにくかった組織労働者への攻撃は急速に強まるであろう。立川テント村の被弾圧者3人のうちの1名、社会保険庁の1名はともに公務員であり、罰金刑以外の刑が確定した場合、懲戒免職扱いとなり退職金が没収される。こうした攻撃はボクシングにおけるボデーブローのようにじわじわと効くのであり、大衆運動の萎縮と更なる労働運動の体制内化を狙う攻撃である。
 ビラ入れは反戦闘争、労働運動の基本中の基本でありこうした行動が事後弾圧―令状逮捕の対象、さらには実行行為がなくとも逮捕の対象、となったらほとんど自由なビラ入れはできなくなる。共謀罪の新設は、反戦闘争、労働運動にかかわる人民が弾圧の対象となるのであり、「現場で跳ねなければ大丈夫」といったこれまでの「常識」をくつがえすものなのだ。いまこそ、労働組合運動にたずさわる人民こそが危機意識をもち共謀罪新設阻止―司法改革反対の闘いに立ち上がる時期である。

共謀罪反対闘争に立ち上がろう

 すでに、共謀罪反対の国際共同声明運動が力強く推進され、4月11日の午後には「群がって悪いか! のさばるな警察! 共謀罪・警察大増強・イラク派兵反対!4・11緊急共同集会」が京橋プラザ区民館に365人を集めて行われた。集会は山際永三さん(人権と報道・連絡会)、小田原紀雄さん(破防法・組対法に反対する共同行動)、土屋翼さん(国賠ネットワーク)など14氏が呼びかけた集会実行委員会が主催し、メインゲストの一人であるゼルツァーさん(タフト・ハートレイ、抑圧と民営化反対キャンペーン)が国際連帯の重要性と今年の10月アメリカ・ワシントンDCで「百万人の労働者マーチ」を行うことを訴えた。もうひとりのゲストである金石範さん(作家)は、米日のイラク占領を批判し、アメリカこそテロ国家と断罪した。その後、弾圧と闘う7つの団体が発言し、日比谷公園までのデモを行った。
 4月12日には、破防法・組対法に反対する共同行動が国会前で情宣行動に立ち上がった。朝、衆議院第2議員会館前でビラまきとマイクによる宣伝を行ったあと、すわり込みに突入。昼には国会前で集会を行い共謀罪新設阻止・司法改革反対の決意を衆院にたたきつけた。
 これに先立つ2月28日、大阪では全国金属機械労組港合同と組対法に反対する全国ネットワークの共催による共謀罪粉砕・強制執行妨害罪厳罰化阻止の集会が行われ60人が集まった。東京から小田原紀雄さんが「イラク派兵状況下で国内の運動への弾圧が強まっている。その頂点こそ共謀罪だ。絶対阻止を」と訴えた。3月4日には、朝に国会前でビラまき情宣を行い、夜には東京の早稲田奉仕園で破防法・組対法に反対する共同行動が主催して「共謀罪新設阻止!共同行動総決起集会」が行われ70人が参加した。
 こうした闘いによって国会のなかでも共謀罪についての認識は広まっている。民主党は共謀罪を重要対決法案とはしていないが「問題の多い法案」という認識は強まっている。公明党の一部に流動化がおきる中、法務省は共謀罪「Q&A」を作成し、広がりはじめた反対の声へ対抗している。刑法学者声明、静岡弁護士会、大阪法曹5団体共同アピールなど反対の声は確実に増えている。もちろん、衆議院法務委員会に絶対反対派の議員が1人もいないという厳しい国会内力関係は厳然としてある。しかし、イラク反戦運動のうねり、治安弾圧への反撃など新たな動きもでている。さらに国際共同声明(3月現在で319団体・1千290個人)を広め、共謀罪新設を阻止しよう。      (菅原雅行)

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特集 有事法制・団結禁止法をつぶせ!

●労働組合法改悪反対! 労働委員会の裁判所化を許すな!

スタンダード・ヴァキューム石油自主労働組合 中西 敏勝

 政府(厚生労働省)は3月5日(金)、「労働組合法の一部を改正する法律案」を閣議決定し、国会に上程した。「厚生労働委員会における審議入りは未定であるが、国会会期の6月16日迄には成立する筈である」とし、さらに政令策定作業、施行通達などの作業に入り、施行の05年1月1日までには関係者の研修を含め終了するとしている。
 この「法律案」は「司法制度改革の一環として、労働委員会の救済命令に対する司法審査の在り方について、労働委員会の在り方を含め、司法制度改革推進本部の設置期限(平成16年11月30日)までに所定の措置を講ずることが必要」とするための、昨年12月16日の「労働委員会の迅速化などを図るための方策について」の「建議」に沿うものである。
 そもそもJR各社やエクソンモービルなど多くの企業は、労働組合法第27条(労働委員会の命令等)第5項「使用者は、地方労働委員会の命令の交付を受けたときは、15日以内に中央労働委員会に再審査の申立をすることができる。但し、この申立は、当該命令の効力を停止せず、その命令は、中央労働委員会が第25条の規定により再審査の結果、これを取り消し、又は変更したときに限り、その効力を失う」を無視して、労働委員会救済命令不履行に居直り続けてきた。その上、企業に法を守らせる立場にある厚生労働省や日本政府は、労働組合、労働者をこれら不法企業のじゅうりんにまかせ、不当労働行為に加担してきた。

期間の長期化/司法の取り消し率の理由はまやかし

 「法律案」の基の「建議」が「労働組合法の改正を含む制度の抜本的な見直し」の理由に、「審査期間の長期化」と「労働委員会の命令に対する司法審査における取り消し率」をあげているが、「審査期間の長期化」を理由とした「制約」はかえって労働組合、労働者の不当労働行為立証に不当な制限を加えるものであり、「審査期間の長期化」は何よりも中労委や東京地労委における腕章着用禁止による審問・調査の拒否や、厚生労働省や東京都による不公正な事務局人事への介入などによって生じているものである。「司法審査における取り消し率」の問題は、「私法上の権利義務関係」による判断を行う昨今の裁判所の偏向にある(●98年4月22日、日経連「労働委員会制度の見直し」報告は、その一項目で「裁判所の審理に耐え得る適正な命令を出すべき。そのためには不当労働行為成否の判断については司法上の権利義務を無視すべきでない」としている)。
 85年、関経協の提言の骨子は「少数組合の団交権否定、背景資本の責任追及否定、労組の政治活動規制」などであった。87年、経営法曹会議の提言の骨子は「偏向的労働者救済主義の打破、手続きの民事訴訟化、労働者の不当労働行為制度・使用者の救済申立制度導入、労働委員会でなく、裁判所で勝負せよ」などであった。

労働委員会の裁判所化[第27条1項(1〜13)〜4項→第27条1項〜26項]

 改悪法案は「7条、19条、20条、24条、25条、26条、27条、28条、29条、30条、31条、32条の12条」にわたっているが、紙数の関係で次の項について述べる。
@名称変更(案― 19条の12)―「地方労働委員会」→「都道府県労働委員会」
 東京地労委を多くの人々は「都労委」と呼称している。大阪/京都地労委を大阪/京都府労委とは呼ばない。東京のみ特別扱いしている。我々はあえて東京地労委としてきた。「都労委」「道労委」「府労委」「県労委」と呼称することになるのだろうか。
A公益委員一部常勤化/小委員会設置(案― 24条の2)―裁判官出身者が大学教授や弁護士として「公益委員枠」に入り込み、会長として「君臨」するミニ東京地労委が全国にできるのか。
B審問開始前の審査計画策定(案― 27条の6)―労働者・労働組合は資本・当局の不当労働行為に対し、常に身構えているわけでない。救済申立までには決意や、準備が必要だ。さらに申立時に事実の把握や証人の準備が十分であるなんてことは絵空事だ。審問で証言することや総括作業を通して真実に迫り、新しい発見をすることなどもざらにある。「そういう時はちゃんと考慮しますから」とのおためごかしが聞こえてくるが、理由もいわず「認めない!」と審査進行を強行したり、またしている中労委・地労委の公益委員を多く知っている立場からすれば、絶対に認められない。
C審問廷の秩序維持(案― 27条の11)―「条文―労働委員会は、審問を妨げる者に対し退廷を命じ、その他審問廷の秩序を維持するために必要な措置を執ることができる」。
 救済を申し立てた労働者・労働組合が「審問を妨げる」わけがない。審問廷が騒然とするのは、腕章禁止や証人採用の拒否、被申立人の不当な異議申立に対する公益委員の加担ともいえる審査指揮などに対する抗議によるものだ。「必要な措置を執る」とは、却下強行や警察官導入まで想定しているのか[事実、中労委は97年2月19日、我々の申し入れ行動に対して、職員約30名に黄色腕章を付けさせ、警察(公安5名、愛宕署など計13名)を導入してロックアウトしたことがある]。
 少なくとも、「腕章着用禁止」に法的根拠をあたえるものだ。

われわれが88年11月の東京地労委対策会議結成以来勝ち取ってきた成果

1、90年4月、東京地労委/「審問調書の無料化」「書証部数削減…10部→5部」
2、90年10月、中労委/「審問調書の無料貸出制」「書証部数削減…10部→7部」
3、東京地労委情報公開請求/「労働者選出基準はない」「委員手当…公益41万円、労使…37万円(91年12月当時)」
4、東京地労委/中労委の腕章禁止・審問拒否に対する警告・勧告など
 1 92年4月、日本労働弁護団、東京地労委/中労委に腕章着用禁止撤回の要望書
 2 93年9月、十一都道府県労働者委員研究会、要請書
 3 94年3月、第二東京弁護士会「労働委員会の不当労働行為救済機能の放棄ないし救済義務の懈怠であるとともに、労働組合法上付与された労働者・労働組合の不当労働行為救済申立権を侵害するものというべきである」との東京地労委宛「警告書」
 4 96年12月、日弁連、中労委宛勧告(朝日新聞、5段抜きで報道)
 5 97年、日本労働弁護団、東京地労委/中労委に「審理の開始」を申し入れ
 6 98年11月、国連・国際人権規約委員会、中労委の腕章禁止・審問拒否について日本政府に勧告
 7 99年5月、大阪地労委、腕章着用禁止全面撤回
 8 00年10月中労委/01年11月東京地労委にて腕章着用で審問開始

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●悪化する労働者の現状 シリーズ最終回

 佐藤 陽

年金大崩壊の予兆

 政府与党(公明党は年金に固執しているように見せかけているものの、支持者に組織労働者が少ないので、実際はどうなってもよいのだ)は、今通常国会に厚生年金の最終的な保険料率を18・30%(労使折半)に固定するとの案を提出した。17年まで毎年0・35%ずつ上げる。国民年金は保険料を現在の月1万3千500円を、毎年280円ずつ上げて1万6千900円で固定とする、というもの。
 また、給付額削減のために「マクロ経済スライド制」を導入する。少子、高齢化の進展程度に応じてスライド調整値を0・9として23年まで0・9%ずつ減額する。
 政府はこの方式により「夫が40年働き、妻は家庭にとどまる世帯」をモデルケースとして、現役世代の50%台給付が確保できるといっている。
政府与党の大嘘と乱脈運用
@モデルケースとした片働きは、実は現在の家庭の4分の1を占めているに過ぎない。(これでも現在の給付水準の59%から20%も低い)現在は共働きが主流であり、厚生労働省の案でいくと給付水準は大きく下がって39%になってしまう。3分の1も減ってしまう。A現役労働者が「1・5人で1人」の受給者を支えるという数字の大嘘。
 厚生労働省の計算の分母に、厚生年金加入者以外に他の年金加入者や、無年金者の数が入っている。厚生年金の問題であれば、厚生年金の加入者を分母として計算すべきである。この方法で計算すると「1・8人で1人」という数字になる。0・3人分の保険料の合計はなんと14兆2千623億円となる。厚生労働省はこの分だけ少なく計算し、危機感をあおっている。この金額は、厚生年金の峠といわれる2050年の予想給付総額121兆円の約12%に相当する。B現在、厚生労働省の乱脈運用により、年金積立金がいくらあるのかもわからない。147兆円説、193兆円説、155兆円説など様ざま。C最近マスコミで大きく取りあげられたが、本来「責任を持って運用すべき」厚生労働省が、デタラメ運営をしていた。保険料の5兆6千億円もの巨額を投じ、本来の目的外の百万坪保養施設グリーンピアの建設運営に使い、その利便性、商業性を全く無視した場所性から巨額の赤字を出し、現在二足三文で売りに出されている。D政府自身が、社会保険庁の一般事務経費は保険料から、毎年約1千億円を使うよう要請してきた。Eその他にも、さまざまな箱物と組織を作り、天下り先として維持し、高額の報酬を与えている。現在分かっているものだけでも、年金保養協会、厚生年金事業振興財団など13の組織に、年金官僚が2千312人も天下っている。
 厚生年金制度は定額部分を設けて、現役世代の賃金の低い人にも比較的厚い給付をして再分配機能を持っていた。しかし、4・32%もの保険料の値上げ分を負担できない企業や個人が出るであろうことから、加入企業数の減少が予想される。現在でも未加入企業が百万社もあり、そのうえにフリーターなどが、世界で一番厳しい25年間もの保険料負担ができないで、無年金者となる可能性が大きい。賃下げ時代にちょっとした負担増も大きく響く。結果、厚生年金は大企業のなかでも相対的に豊かな企業と人の年金となり、貧しい人は無年金者となってしまう。現在でも約400万人が無年金者となろうとしており、更に増大するだろう。年金制度そのものの崩壊の予兆を示すものだ。
大増税の時代
 年金生活者に対する老齢者控除の廃止と課税強化により、給付額の減少と増税の挟みうちになる。加えて看護保険料の値上げ。社会保障が全面的に解体される。更に消費税の値上げも加わり、大増税時代に突入する。18・30%の固定も破られる可能性もある。奥田路線だ。

女性差別

 「平成15年度版働く女性の実情」によると、女性の雇用者数は2千177万人で前年比16万人増加、雇用者総数に占める女性の割合は前年からさらに上昇し40・8%になった。
雇用形態による差別
 女性の非正規雇用者数は産業計で28・7%に達した。産業別にみると、特に「卸売・小売、飲食業」では45・5%に達している。雇用形態は多様化しており、パート、アルバイト、派遣社員、契約社員、嘱託、請負などだが、いずれも低賃金である。こうした雇用形態が臨時的でなく、基幹労働力の重要な一環とされており、役職付きパートも増えている。高卒、大卒でも、卒業直後につく職業がパート、アルバイト、派遣、請負などが増えている。
賃金差別
 所定内給与額で男女間の賃金格差は、縮まりつつあるものの03年で66・8%もある。またパート・タイム労働者の時給は893円で正社員との賃金格差は50・3%にも及んでいる。企業規模によっても差が大きい。
 さらに雇用形態別にみると、表に示したようにパート・アルバイトでは年収50〜150万円に集中している。自立した生活はまったくできないが生計費の補助になる程度。不安定雇用労働者全体としてみて、高くても年収400万円程度。今後とも低賃金の使い捨て労働者とし女性の不安定雇用労働者の使用を増やしていくだろう。
育児と再就職
 厚生労働省が今年3月17日に発表した「出生前後の就業変化に関する統計」によると、53%が出生前に離職し、その後も仕事をしておらず、出産後に離職した人を合わせると、61%が出産を機に仕事を離れたままいることが分かった。育児をしながら働くことの困難さを示している。
 少子化対策として政府はさまざまな施策をとり、大手企業を中心として育児制度を設けているものの、実際はほとんど効果を上げていない。男性育児の制度も増えているが、育児休暇を取得することが将来のマイナス要因になるとのおそれをもつことがあってか、それほど利用が増えていない。
昇進・昇格差別
 雇用均等法、男女共同参画などが叫ばれているものの、女性の管理職は依然として9・9%にしかすぎない。企業内に女性役職者がいる割合は62%に達しているものの、20年前の4・2%から遅々とした増加でしかない。
 コース別雇用を採用している企業は7・1%がピークであったが、少数ながら依然として残っている。
 昨年12月、大阪高裁で「住友電工の差別事件」で、井垣裁判長は差別であることを認め、労使双方に和解を勧告した。会社側は昇格を認め、2人の昇格と解決金1千万円を支払った。ところが、総合商社兼松事件で別の裁判所は違法ではないと判定した。裁判所ごとに判決が変わるのが現実。

労働争議

 労働組合あるいは労働者が、経営側に解雇など不当な扱いを受けたときに利用できる公的機関として、裁判所、労働委員会、労政事務所、労働基準監督署、各県地方労働局に01年設置された「紛争調整委員会」などがある。
 裁判所、労働委員会を利用する場合に、1人だけでまる裸で闘うことは事実上困難であり、個人の場合は合同労組に加入するか、支援組織を作って闘うしかない。「使用者が労働者の団結権を侵す不当労働行為があったとき簡易・迅速に労働者を救済する機関」として労働委員会がある。あまり権威的でなく、公労使3者構成となっており、裁判所よりは気楽にできるということで労働委員会を利用することが多い。しかし実際は簡単なことではない。
 労働委員会は、労働組合だけを対象とするとされてきたが、最近では個別労働者を受け入れるところもぽつぽつ出てきており、労働者の闘いで受け入れさせているケースも出てきている。
 前述した紛争調整委員会は、個別紛争を未然に防ぐための装置として厚労省が強引につくり上げたもの。経営側は、拒否権をもつことを条件に受け入れた経緯がある。リストラの多発で労働者は相談に年間10万件も殺到したものの、斡旋を申請できたのは、経営側の拒否権発動により3千件にすぎない。

地方労働委員会の係属状況

 地方労働委員会の03年1〜6月、04年1〜6月の民間企業関係、地方公務員関係別申立件数、および同終結状況は別表(いずれもJR関係は除く)の通りである。

争議団

 労働委員会に係属中の事件のうち、いわゆる争議化した事件が何件含まれているかは、わからない。労働委員会で係属中、裁判所に係属中のもの、それも終わったものなどの多数の段階の争議団がある。
 連合、全労連、全労協、争議団連絡会議、その他、大半がいくつかの系列あるいは共同でそれぞれのやり方で闘っている。争議団数は厳密に把握できないが、争議団はひとつの闘いの陣型をつくっている。しかし既存の労働組合とまったく無関係に存在している訳ではない。物資販売、カンパ、署名、闘いの現場へ参加などを得ている。逆に争議団の1人の首切りも許さない原則的闘いや、その戦闘性が、既存労働運動に闘う息吹を与え、支えあっている。
 争議団の戦闘性は、権力弾圧、刑事弾圧や間接強制など民事的手法による弾圧の対象となったいる。今後ますます強化されるだろう。
 JR復帰を求めて闘っている1047名の闘いもすでに13年。30年をこえる争議団がいくつか出てきている。最近では、大手労組が取り組まない未組織労働者、外国人労働者の組織化・争議化も進んでいる。

あとがき

 この原稿を書くにあたって様々なテーマを考えましたが、個人的な事情、手持ちの資料の少なさなどから取り上げきれませんでした。▲教育破壊と教育格差の生み出すもの▲外国人労働者▲寄せ場労働者▲野宿労働者▲労働法制改悪▲職場のいじめその他。
 広島連帯ユニオンから2月号の請負労働について資料を添付して、請負会社で自社工場で業務を行っているケースがあるとの指摘がありました。ありがとうございました。

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●難問解決 労働相談 第2回

 今回の回答者  茨城県地域連帯労働組合

妊娠を「口実」とした解雇を撤回させる

相談 病院に勤めています。検査技師です。私は1年ほど前に結婚しましたが、先日妊娠していることがわかりました。そのことを上司に伝えたところ、2〜3日して「○月○日(2カ月後)にはやめてほしい」といわれました。すごくショックです。学校に通っていたときの奨学金の返済もありますし、なんとか解雇にならない方法はないでしょうか?

回答 このケースの場合、病院の経営者がたいへんなワンマンで、しかも考えが古いものですから「子供ができたら女は家にいるもの」(原文のママ)と家父長的に考えたのでした。さっそく当該のAさんから前後の事情を聞いて、私ともう一人で解雇撤回の申し入れ行動に行くことになりました。
 問題は当該が妊娠されているので、職場で本人に重圧やストレスがかかりすぎると、母子ともに最悪の結果を引き起こす危険性があるということでした。一度労働者に通告した解雇の撤回は、経営者もメンツがあるのでなかなか撤回しないので、あらだつことが多いものです。むつかしいケースです。
 申し入れ行動の当日、病院を訪ね、労働組合であることを名乗り、なんとかその日のうちに経営者(理事長)と面会することができました。
 労働者の権利と解雇に関連する過去の裁判所の判例など一通りのことを理事長に説明し、団体交渉申入書を見せた上で、私は次のように切り出しました。組合「理事長さん…、そういうわけで私どもとしては、今回解雇通告がされたのであれば、法律にのっとりあらゆる方法で、その撤回を求めていくことになります」、理事長「そうですか…」、組合「ですから理事長さん、この申入書を手渡す前に改めて確認したいのですが…、本当に解雇通告なんて乱暴なことをなさったのですか?」、理事長「…いや、私は解雇なんて一言も言っていない」、組合「それでは、語気は強かったけれども、本人への指導および注意の一環、そう理解してよいのですね」、理事長「ああ、もちろんだ」、組合「もう一度確認しますが、解雇通告の事実はないということでよろしいですね」、理事長「ああ、間違いない」と、いうことで、理事長に丁寧に事情を説明し事実関係をうかがったところ解雇通告は「そんな事実はない」ということになりました。もちろん、「解雇」と何度もいわれた本人がいるわけですから、経営者の言い分はごまかしていることは明白です。しかしこちらとしては解雇通告が撤回され、勤め続けることができて、奨学金の返済に問題が発生せず、かつ産休までたどり着けばとりあえず勝利としていましたので、これで交渉をまとめることにしました。
 現在、彼女は無事出産まで終え、母子ともに健康です。

後日談
 相談にいらしたAさんに尋ねたことがあります。
 「どこでうちの労働相談のことを知ったのですか? インターネットですか?」
 「いいえ、母から聞きました」
 「?」
 「母の友達が何年か前、連帯労組さんの労働相談をやってもらい解決してもらったそうです。その人から電話番号を教えてもらいました。」
 ここでいわれている労働相談は、以前に月刊センターに掲載した、ふりかけで有名な食品会社で発生した定年問題をめぐる労働相談のことです。5年以上前に解決してからいままで大事に電話番号をもっていた労働者がいて、もう一方で自分の娘さんに労働組合にいくように勧めた労働者(お母さん)がいて、そして今回のような相談〜解決となったわけです。

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●緊迫する名護新基地建設阻止を勝ち取ろう! 沖縄5・15〜16闘争に結集しよう!

 沖縄労組交流センター  

決戦に突入した名護新基地建設阻止の闘い

 沖縄は現在、名護新基地建設阻止の決戦の真っ只中です。すでに建設予定地の名護市辺野古では「命を守る会」のオジー、オバーを先頭に防衛施設局職員との激突が始まっています。この原稿を書いているのがちょうど4月19日(着工の日)の夜です。明日も早朝より、現地の攻防が行われます。絶対に新基地建設は許さない!
  本年5・15闘争のアピールとして、沖縄現地から全国の仲間の皆さんに訴えたいのは名護新基地建設絶対阻止のたたかいを、沖縄―本土を貫くものとして闘おうということです。そしてこの闘いに勝利するためには、今の世の中を私たち労働者が変えていくこと、それしかないということです。

沖縄基地の再編・強化

 ペテン的「復帰」から32年を迎えようとしている沖縄は、3度目ともいえる沖縄売り渡しが行われようとしている状況にあります。
  イラク侵略戦争の泥沼と北朝鮮侵略戦争の切迫のなかで、アメリカ帝国主義の沖縄基地再編・強化の必要性は最重要の課題です。
  アメリカはSACO合意から8年経ってもなんら進展しない新基地建設を待っているよりは、現存の下地島(宮古)を明け渡せとか、嘉手納への統合案や本土移設案などを要求している状態です。基地建設が強行されても、新基地の完成にはあと数年もかかります。現在の世界情勢とアメリカの世界戦略のなかにあって新基地の必要性は緊急であるがゆえに、いまさらゆっくり作ってられない(15年の使用期限などもっての外)状態ということです。

「基地=戦争に反対」、しかし「基地は必要」というジレンマ

 いま、新基地建設(ボーリング調査が強行されようとしている。基地強化・固定化が推し進められようとしている時に、求められているのは闘いそのものです。
  日本帝国主義と沖縄が非和解の関係にあることは周知のことであると思います。そして、沖縄は生きるためには、もはや日本帝国主義を打倒するしかないというところにあります。
  長寿の島・沖縄といったイメージを持っている方も本土にたくさんいらっしゃると思います。しかし、沖縄で起きていることは多くの労働者の自殺という現実です。労働者が生きていけない状態が強制されている。また、失業状態の中で生活苦から家庭崩壊が引き起こされたりしています。生きるためには働かなくてはいけない。しかし、この島には働く場所がない! わずかにある就職先も低賃金と労働条件がものすごく悪いといったものはざらです。季節工という形で本土に出稼ぎに行っても、帰ってきたときにあるのはわずかなお金と失業状態の自らの存在です。特に青年労働者の実態は深刻になってきています。高卒・大卒での就職内定率は3分の1、4分の1です。専門学校へ進学したとしても、その後の就職先はまったくみえない状態です。
  安定している仕事は公務員であるとよくいわれます。だれしも、戦争や人殺しの協力がしたくて基地労働者にはなりません。そこに職場がある、職場が基地であるということであり、生活のためにそこしかないということでもあります。実際に基地就職のための専門学校までもが沖縄にはある。しかし、基地は仕事を与えるために存在しているわけではありません。基地は戦争のために存在している。そして沖縄にとって、この基地の存在こそが沖縄の一切を奪いつづけてきたものです。
  「基地=戦争に反対、でも生きるためには基地で働くしかない、基地は必要」とほとんどの「基地は必要」という人が語るこの現実は、日本帝国主義による徹底した沖縄差別政策のもとで強制されてきた現実です。しかし日本が帝国主義として労働者階級を食わすことさえできなくなり、むき出しの沖縄差別政策が行われているなかで、沖縄の怒りは、基地への怒りは、日本帝国主義へのいかりとして爆発しようとしています。

帝国主義を打倒するしかない

 本年5・15闘争は、わたしたち沖縄からすれば、むき出しの沖縄差別政策の強行と、新基地建設強行に一大反撃を与えていくものとしてあります。そして求められているのはわたしたち労働者が自らの未来をかけて闘うことです。
  このたたかいは、イラク侵略を許さず、アメリカの世界戦争計画を根底から揺るがすものです。また、日本帝国主義そのものを打ち倒していく闘いです。安保・沖縄闘争は帝国主義そのものとたたかう闘争であり、帝国主義打倒の中でしか勝利しえないものです。その主体は沖縄の労働者階級であり、日本の労働者階級であることは疑う余地はありません。
  5・15へ全国から青年労働者を先頭に大挙して沖縄にきてください。
  労働組合の旗を林立させ、普天間基地を包囲しよう。名護新基地建設を絶対阻止しよう。米軍基地撤去が、沖縄を沖縄の手に奪い返すことであり、安保をぶっつぶし、帝国主義を打倒する力であることを、沖縄現地で実感してください。労働者がたたかいの主体となったときに必ずや勝利し得ることを、5・15沖縄闘争の中で実感してください。共にたたかいましよう。

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●都立学校の卒業式・入学式で不起立闘争が大爆発

   職務命令への服従を拒否した被処分者を全労働者の力で防衛しよう!

 3月30日、東京都教育委員会は、都立校の卒業式での「国歌斉唱」時の不起立者など171名に対する戒告処分、5名に対する再雇用合格取消を決定した。4月5日には、公立小中学校、都立障害児学校の20名に対する第2次処分を決定、うち1名は減給1カ月の処分とした。入学式でも大量の不起立者が出ており、被処分者は数百にのぼる見込みである。

 大量不当処分は、教育労働者の抵抗闘争を制圧できなかった都教委の敗北の自認であり、本質的に破産したものでしかない。真の勝利は、数百名に登る教育労働者が、処分を辞さず、職務命令への不服従を貫いたことにある。小・中学校では、監視・現認体制がとれず、校長に報告させず処分を阻止した例も多く、不起立者は被処分者の数倍にのぼる。都教委の暴挙は、処分を恐れず不屈に闘う主体を次々と生み出している。
  昨年、再選を果たした石原都知事は、教育施策を「より過激にやる」と豪語し、人事異動要綱の改悪、七生養護学校の性教育への弾圧と、やりたい放題の悪行を重ねてきた。
  7月に卒入学式等対策本部を設置、三脚での掲揚や教職員・生徒の不起立をやり玉にあげ、10月23日に「教職員は国旗に正対して起立・斉唱せよ」「校長の職務命令に従わない場合は、服務上の責任が問われる」とする通達と新実施指針をうちだした。新実施指針は、10月から12月にかけて行われた創立記念式典で発動され、全教職員に職務命令書を手交して指定席での起立・斉唱、音楽教員にはピアノ伴奏を命令し、各校に大量の教育庁職員を監視のために派遣した。入学式前の2月17日、創立記念式典で不起立した10名に見せしめ的に戒告処分を発令、「複数回不起立すれば分限免職」という恫喝を加えてきた。
  他方、都教委は不起立しそうな教職員を入念にチェックし、活動家には受付や校外巡回を命じて式場外に排除するなど、不起立闘争の封殺に全力をあげてきた。にもかかわず、数百名の不起立闘争が爆発したのだ。暴力で脅せば服従するという石原のファシスト特有の傲慢な思い上がりは、教育労働者の人間的誇りをかけた決起の前にうち砕かれたのだ。

都教委の血迷った攻撃を断じて許すな

 区市町村の教育委員を集めた4月8日の教育施策連絡会で、鳥海教育委員は「あくまで反対の少数派は徹底的に潰さないと禍根が残る。半世紀巣くってきたガンだから、痕跡を残しておくわけにはいかない。必ずこれは増殖する」などと、不起立闘争の拡大への恐怖と憎悪をむきだしにした。
  都教委は、不起立者への処分だけでなく、生徒が「君が代」を歌わない場合は、担任を「指導力不足教員」「不適格教員」とする攻撃に踏み込もうしている(3月16日、都議会予算特別委員会での横山教育長答弁)。
  さらに重大なのは、板橋高校への刑事弾圧である。生徒の大半が不起立したことを問題視し、学校に警察をさしむけて担任団を取り調べ、来賓として式に参加した元教員を「威力業務妨害」で刑事告発するなど、まさに戦前の治安維持法弾圧というべき暴挙である。
  だが、都教委の見境ない凶暴化は、教育労働者の怒りの火に油を注ぎ、教育労働者の抵抗と不服従をますます広げるだけだ。石原・横山との倒すか、倒されるかの攻防が火蓋を切って落としたのだ。

戦時下の「日の丸・君が代」闘争の展望ひらく

 東京の不起立闘争は、教育基本法改悪・改憲阻止闘争の巨大な突破口であり、階級的労働運動の再生への号砲だ。
  第1に、戦時下の「日の丸・君が代」の巨大な展望が切り開かれたことだ。
  200名にのぼる不起立闘争の爆発は、石原・横山への大打撃となった。不当処分への抗議と都教委の暴挙への批判は、日々拡大し、都教委を包囲しつつある。商業新聞が社説で相互に非難を応酬するという前代未聞の事態が生まれている。まさに「日の丸・君が代」をめぐる国論二分情勢が切り開かれた。教育労働者の闘いがこれほどの社会的反響を産み、国論を二分する議論を生み出したのは、勤評闘争以来のことだ。
  こうした国論二分情勢は、戦時下の愛国主義の煽動、戦争への国民精神総動員攻撃としての教基法改悪との闘いにとっても決定的地歩となっている。東京の不起立闘争の爆発は、戦争国家づくりと改憲攻撃への全人民的反撃の突破口ともなった。
  新たな「15年戦争」情勢下で、侵略戦争の先兵となることを拒否する教育労働者の自己解放的決起が始まったのだ。

労働組合の階級的再生の道筋を示す

 第2に、都高教本部の屈服方針をのりこえた集団的不起立闘争は、新潮流運動としての意義を持ち、労働組合の階級的再生の道筋をさし示していることだ。
  不起立闘争は、「処分を出さない」「職務命令が出たら引く」という都高教本部の屈服方針をのりこえて、現場組合員によってかちとられた。連合派と共産党系からなる執行部から提起された指示は、「組織防衛最優先」の名のもとに組合員に「立て、歌え」と強制するものだった。執行部がやったことは、処分による二重三重の不利益を宣伝し、都教委と結託して式場外に不起立の意思を持つ組合員を排除することだけだった。
  こうした中で、現場組合員は、保護者・市民とも協力して様々な反撃に自主的に取り組んでいった。中でも決定的役割を果たしたのが、起立・斉唱義務不存在確認を求める訴訟(予防抗告訴訟)の提訴だった。昨年10月から準備され、1月に228人の原告団によって提訴されたこの闘いは、大きな注目を集め社会的反撃の突破口となるとともに、現場の不起立闘争の闘争委員会としての役割を担った。
  こうして、数百の被処分者がいわば「闘争団」として生み出された。新たな、闘う団結がかちとられたのだ。迷い、悩んだ末に、不起立を貫徹した被処分者たちの表情は底抜けに明るく、都教委に一矢報いた勝利感と歴史に恥じない行動をした誇りに満ち溢れている。執行部をのりこえて、「私が日教組、私が都高教」として闘った経験と自信は、必ずや闘う都高教を再生する力となっていくに違いない。東京の不起立闘争と処分撤回闘争は、先行した広島両教組の決起と結合し、日教組の階級的再生への展望をも切り開いている。

戦争協力拒否闘争の先駆、都労連闘争への檄

 第3に、ファシスト石原による都労連解体攻撃との闘い、東京決戦の一大突破口となっことだ。
  教育労働者の渾身の決起は、石原都政への最大の告発となり石原に社会的批判が集中する情勢を切り開いた。労働者の体を張った闘いこそ、公務員バッシングをうちやぶり、全労働者人民の共感を獲得することを示した。そういうものとして、この闘いは、石原の「テロ対策」の名による首都戒厳体制づくり、地方独立法人、民託化を駆使した民営化リストラと対決する都労連ストライキへの檄でもある。職務命令への不服従を貫いた闘いは、有事立法下の自治体労働者の戦争協力拒否闘争の先駆でもある。
  戦時下の階級攻防の最前線におしあげられた東京の不起立闘争を、全労働者人民の力で支え、被処分者を激励、防衛しなければならない。石原・都教委への弾劾と被処分者への激励の声を全国全戦線全産別からまきおこそう。国鉄1047名闘争と不起立処分撤回闘争を両輪に、階級的労働運動の反転攻勢を切り開こう。  (岡田 優)

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●たたかいは進む

 ☆動労千葉、3波のストライキに起つ!

 動労千葉は、1047名闘争と結合し、3波の04春闘ストライキに起ちあがり、大きな勝利をかちとった。

 春闘第1ラウンドの闘いは、定年間近の組合員の強制配転をきっかけとして2月10日から突入。16日間にわたる連日の指名スト(延べ40人)と徹底した非協力闘争を闘いぬいて、ついに会社とJR東労組が結託した不当な労務支配に風穴をあける画期的な勝利をかちとった。
  3月第二波ストは、この成果にふまえ、3月12日〜14日、04春闘勝利、反合理化・運転保安確立を要求して、全組合員をあげたストライキに突入した。
運休本数247本。闘いは断固として貫徹された。
  3・29第3波ストは、ベアゼロ回答打破、JR貨物会社が画策する「賃金制度の白紙的見直し」計画の撤回を求めた3月29日ストライキであった。
  この闘いは何よりもベア要求すら放棄するという労働運動の現状を問う闘いであり、また「春闘の終焉」―終身雇用制の解体を宣言し、年金改悪や労働組合法の改悪をもって労働者の生きる権利、団結する権利すら奪おうとする小泉―奥田路線に対する闘いであった。この現実に対し、労働者が団結し、ストライキで起ちあがることが求められている。
  JRでも三つの根本矛盾(【結託体制】【安全問題】【要員問題】)が噴出している。われわれの04春闘は、何よりも第一に、この矛盾を突いて、国鉄分割・民営化体制と真正面から対決する闘いであった。
  そして50日間にわたる組合員の総決起を実現し、大きな一歩をきりひらいた。(日刊動労千葉5861号より抜粋)

 ☆許すな侵略と戦争 2・8教育基本法改悪反対集会報告

 福岡で初めて、デモで市民へアピールした。私たちは実行委員会を組織し、教育基本法改悪の狙いを訴え、集会参加とデモでの行動の必要性を広く訴え、2月8日、都久志会館での集会と天神に向けてのデモを行った。
 小泉政権が推し進める「イラク戦争」への自衛隊(日本の軍隊)派兵は、北朝鮮・中国への侵略戦争をにらんだ帝国主義の侵略戦争である。行き着くところまで行き着いた帝国主義はいま、侵略戦争以外の方法では生き残れないところまできているのである。その戦争に国民を総動員していくために、思想信条の根幹に「国家のために」を植え付けていく必要がある。戦後の現憲法と教育基本法では「戦争」はできないのである。
 そのような狙いをもって、教育基本法は改悪されようとしているのである。「イラク戦争」「自衛隊派兵」「教育基本法改悪」は一体のものである。
 集会での講師に、12・23東京で、「教育基本法改悪反対の集会」を呼びかけた小森陽一氏(東京大学教授)を招き、教基法改悪の背景、狙い、現状について60分の講演を聴いた。それは、参加者にとって強烈な提起であった。
 改悪に対する怒りを共有したおよそ100名の集会参加者は、ほとんど全員が天神に向けての力強いデモに決起した。講師の小森氏も、天神までのデモの先頭に起って「イラク戦争反対」「自衛隊派兵反対」「教基法改悪反対」を力強く市民に訴えた。
 デモを見守る市民の関心は強く、じっと私たちのデモを見つめ、シュプレヒコールやプラカードに集中していた。携帯電話やデジカメでデモ隊を撮る人も何人もいた。本集会とデモの大成功を実感させるものと言える。
 教基法反対の闘いは、今後、さらに大きなものにして闘っていかなければならない。
 実行委員会の中心を担う闘う教育労働者は、この集会とデモの大成功を実感し、さらに5月16日に「教育基本法改悪反対の集会」を計画している。実行委員会を重ね、陣形を広げ、教育労働者100名を目指し、オルグに走り回っている。 (福岡県労組交流センター)

 ☆イラク戦争反対・平和憲法擁護宮城集会報告

 3月20日、仙台市・市民の広場で行われた「イラク戦争反対・平和憲法擁護宮城集会」に労組の仲間と共に参加しました。この集会は県内各地からナショナルセンターや政党の枠を超えて22人・12団体の呼びかけによって開催されました。
 みやぎでは総評解散以後初めての全県的な統一集会となったし、運動の集約点でもあったので、何人集まるかと期待と不安に胸をわくわくさせていました。広場のほぼ全部をぎっしり人が埋め、主催者から「集会のプログラム3千500枚がなくなり、まだ入場者が増えているので参加者は4千人を超えました」と告げられると「やったぜ、宮城でもついにこういう集会が実現した」とジーンときました。主催者を代表してあいさつに立ったのは写真家の後藤東陽さん。後藤さんのかけ声に合わせて全員が「派兵反対!」とこぶしを突き上げました。リレートークでは教員や宗教者の戦争反対の思いが熱く語られました。会場内には労組の赤旗や諸団体の旗が林立し、風船も配られる中、ミニコンサートなども行われ、集会は盛り上がりました。全金本山労組の中野さんに対する不当弾圧との闘いを共に担ってきたAさんが「やはり、労働組合の力は大きいものですね」と言っていたのが印象に残っています。
 デモは私は労組隊列、すぐ前では本山労組などが参加した百万署名運動の隊列がドラムを打ち鳴らし、ラップ調のコールで元気ににぎやかに進んでいきました。労働組合では、最近はデモで声を上げるのは慣れないので恥ずかしいのか、大声でシュプレヒコールを上げる人は少ないのですが、さすがにこの日は多くの仲間が声を上げていました。
 わたしは3・20の大成功・春闘の勝利に向け、2度職場ビラを作り、早くから執行部に対して「3・20の大成功で、戦争をとめ、小泉に一泡ふかせてやろう」と訴えてきました。結果は動員枠を大幅に上回る参加になりました。全力で取り組んで良かったと思います。後で参加者と話すと「統一してやってよかった。今後は年金などでもどんどん統一してやるべきだ」と感想を述べていました。
 いま、この瞬間にもファルージャではイラクの民衆が米軍によって殺されているかもしれない。米兵や米軍物資を運んでいるのが自衛隊だ。「イラクから自衛隊・占領軍は撤退せよ」、「有事関連7法案、3条約・協定の成立を阻止しよう」これを本当に実現できる労働組合の闘いをつくりあげるため頑張りたいと思います。 (みやぎ労組交流センター)

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●読者のページ

 ☆A医師による二重の人権侵害事件弾劾闘争  陽和病院労働組合 櫛淵秀人

入院患者さんに対するA医師の差別暴力事件発生

 昨年9月19日、入院中で保護室使用中の50代の女性患者さんが、日中の時間開放処遇で病棟ホールに出ていたときに、特に特定の人に対してではないが大声を出していた。これを見た主治医であり病棟医でもあるF医師が、その患者さんのところに急行し、ホールから保護室に引きずり込み、ベッドに押し倒し馬乗りになり両手を押さえて威嚇するという差別暴力の事件侵害事件が引き起こされる。

業務ラインでこの問題が上に上がらない

 この「事件」を目撃したI組合員(看護師・執行委員)は直ちにもう一名の看護者に現認してもらい、その足で病棟主任に報告するが無視される。I組合員は直接A医師に抗議するがA医師は居直る。翌日副主任に報告するが「主任に言います」とだけの返事で何も動かず。そこで看護部長に直接「事件」を報告。部長は「調べます」というが部長も動かず。こうして「事件」発生から4日目に問題が組合に持ち込まれる。労組としては病棟業務のなかで発生した問題であり、当局責任で解決させるのが妥当であると判断する。労組は9月27日文書にてA医師問題に関する労使協議を申し入れる。以後10回を越える協議が開催されるが、当局はA医師の行為を「抑制に当たる」といいなし、「事件」を問題としない姿勢を取り続ける。

I組合員に対するつるし上げ事件発生(第2の人権侵害事件)

 当局が動かずと見たA医師等の反動グループが、I組合員への報復に出る。9・19以後、業務を利用したI組合員への小さないじめ行為が始まる。そして11月27日、決定的なつるし上げ「事件」が引き起こされる。この日、I組合員は準夜勤務であり、夕方出勤すると、いきなり病棟主任から「今からあなたの受け持ち患者さんのC・Cを行います」と宣言され、準夜勤務の申し送りを吹っ飛ばし、1時間半に渡り、I組合員が医師の領域に入り込み越権行為をしたと言いなし、A医師、病棟主任らの反動グループの面々から謝罪・断罪の声を浴びせられる。I組合員はこの仕組まれた「つるし上げ事件」により強度の精神的打撃を受ける。そして追い打ちをかけるように、12月2日、スタッフミーティングの場で再びI組合員に対する激しい攻撃が加えられ、以後I組合員はPTSD状態となり勤務不能に追い込まれる。

組合前面へ。当局団交拒否・組合ビラ撤去と反動化。そして団交戦取、組合勝利へ

 当局のA医師擁護姿勢は崩れず、時の経過のなかでI組合員が傷つく。労組は事件発生から4カ月経過した04年1月中旬、労組の力でA医師追求弾劾闘争をやり切る決断をする。
 新聞記者、弁護士などへ相談。弁護士会に人権救済措置の手続きに入り、同時に東京都へ内部告発する。そして1月30日、労組執行委員会名でA医師に「公開質問状」を発し、職員食堂に掲示。受け取り・朗読を拒否するA医師に対しては自宅にFAXで送付。当局は1月31日、組合への警告文を掲示。労組が掲示していた公開質問状を撤去し、組合ビラも撤去。翌日労組は「闘争宣言」ビラ撒き。当局は2度目の労組への警告文を出す。翌日労組は「徹底闘争宣言」ビラ撒き。以後、当局は2度の団交拒否。そして全職員への「説明会」強行。激突は最大の局面を迎える。
 だが2月下旬に至って当局が姿勢を転換。団交要求を受け入れ、3月3日、ついに団交を戦取。(この間、東京都から労組に対して、内部告発を受け監査に入り、9・19には問題があった、ということの報告が入る。)この団交の席で当局から「A医師が非を認めた」「当局としても9・19は問題があったことを認める」「I組合員の行為に感謝し、病気になったことへのお見舞いをする」との公式見解が表明される。「人権侵害ではないが問題があった」との当局認識だが、闘い開始から5ヶ月を越えたこの日、労組はついに勝利の入り口をこじ開けることに成功した。さらに3月19日、看護部長団交を行い、部長の謝罪を表明させる。

I組合員の職場復帰に全力をあげる

 病院当局より「復帰に向けた条件作りに努力する」ことを取り付け、労組は動く。I組合員の主治医の意見も聞いて、4月1日より病院と同じ敷地内にある老人保健施設の看護師としてリハビリ勤務が開始される。今後はI組合員の勤務が軌道にのることと、勤務不能状態で受けた経済的損失を補填させる闘争に入る。

中間的総括

 わが労組は、労働者の権利も精神障害者の権利も同等に重いもの、との認識・確認で組合運動をつくってきた。精神病院の閉鎖性を打破する開放医療運動を労組として担ってきた。したがって例え医師であろうと何であろうと9・19事件のような人権侵害事件に対しては、問題を明らかに正しく解決しなければならないという基本姿勢を形成してもきた。今回の約半年にわたる闘争のなかで、日本における医師、医師集団との闘いは相当な困難性を覚悟しないと闘えない、という事実を突きつけられた格好となった。医師は文字通りの特権階級に位置する。指定保健医療機関の規定もある。こうした構造を解体しないと精神医療の根本的改革の大道を進むのは難しいことを感じさせられた闘争であった。困難だがこうした闘いを貫徹できたのもわが労組であった、という自信と自負をもって新たな闘いに進んでいきたい。

 ☆ちょっとこれはひどすぎるのでは 神奈川 全逓 桜井隆夫

 2月17日の新聞に「はがきの内容、家族に漏らす―元郵便局非常勤職員を書類送検」と題する記事があった。
 1月9日に、仕事中に知り得た郵便の内容を家族に漏らした、ということで16日付けで懲戒免職にした非常勤職員を、2月16日付けで前橋地検に書類送検したという内容です。
 この記事を読んでびっくりしたのは、書類送検したということです。これは要するに「前科者」にするということではないか。送検したからといって直ちに起訴され、裁判になるとは限らないでもないが。
 送検したということは、郵政公社の手を離れたということです。今後どうなるかは地方検察庁の判断ということになります。
 送検したのは理由があると思います。郵政公社で働くすべての労働者に対する「しめつけ」の強化が内部理由で、もう一つは外部理由です。
 郵政公社はもうすぐ発足してから1年になります。小泉の「07年民営化」という動きの中で「信書」を扱うという企業体に対する、「こういう事になるんですよ」という「親切心」から出た「要望」ではないのかということです。
 やんわりと「手をひきなさい」と言っているのではないか、と思うのは考えすぎですかね。それにしても、懲戒免職にした1月16日から、書類送検した2月16日の間に、いったいどんな動きがあったのだろうか。ぜひとも知りたいものである。
 これからは、今年の〈エト〉のサルのように〈見ざる、言わざる〉に徹しないといけないのかな。でも、それが過ぎると〈聞かざる〉になってしまうような気もするのであるが。

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