2004年6月号(No.171)  目次
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労働者の目 6月闘争を全力で

労働ニュース
  ●年金/教員/郵政民営化/派遣/自治体など ●日誌

国労5・27臨大闘争弾圧刑事裁判

・特集 小泉・奥田路線と闘う U
  ●小泉・奥田路線の新段階と階級的労働運動の課題
  ●小泉−奥田−生田の郵政民営化許すな!
  ●「有事体制化」進む全国の港湾

自衛隊をイラクから引き戻そう

反合保安闘争は動労千葉の基軸の闘い

私の職場から  国鉄労働者

たたかいは進む   ●労組法改悪阻止、4・28反処分闘争   ●全金本山闘争など

読者のページ

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●6月闘争を全力で

 全国労働組合交流センター常任運営委員 井上 長治

 5・21集会を成功させ、いよいよ6月決戦を全力で打ちぬき、戦時下の労働運動を本格的に前進させることが、交流センターに求められている。結成以来15年間のたたかいで切り開いてきた地平と、闘う路線・方針をさらにうち鍛え、強固な組織を創りあげていくことが一層求められている。
  反戦闘争、国鉄決戦を軸に始まった日本の労働者階級の反撃は、卒・入学式での教育労働者のたたかいへ、そしてさらに大きくその輪を拡げようとしている。
  マルクス主義で武装し、職場の労働者を組織しようという私たちのたたかいも、一歩を踏み出したばかりだが、大きな成果をあげ始めている。
  だからこそ、労働組合の指導権を握るということに本格的に格闘しなければならない。
  その場合、結成25周年を迎えた動労千葉の歴史と闘いを徹底的に学ぶことだ。組合員の団結を何よりも大事にし、大きな勝利を勝ち取った動労千葉こそ、我々の最も近くにある、最良の手本だ。
  「鉄路に生きるU」は、我々が労組指導部への飛躍とそのための姿勢を示している。そして、動労千葉の現在から学ぶことだ。
  ともすれば、私たち交流センター会員は、動労千葉のことを空気みたいな存在として見たり、ストライキをやるのは当たり前と思っていないだろうか。「特別な」組合だと思っていないか。ここからは、「第2、第3の動労千葉」はうまれない。つねに激しい組織攻防を闘い抜き団結を固めているその姿を、自分の目で耳で獲得することだ。
  自分たちの職場で組合権力を握るために全力をあげ、同時に動労千葉の闘いをもっと訴え、支援・防衛する取り組みを強めよう。
  6月闘争を全力で勝利し、04年後半への展望を切り開こう。6月全逓大会からはじまる各産別大会にむけ闘いを強化しよう。
  最後に、交流センターは、各地域・産別で素晴らしい闘いをたたかっている。この成果を共有するために、月刊交流センターへの積極的な投稿を呼びかけます。

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●労働ニュース(04年4月16日〜5月15日)

「現役の5割」最初だけ
  国会で審議中の政府の年金改革関連法が成立した場合、モデル世帯の給付水準は厚生年金を受け取り始めて1〜12年で現役世代の年収の5割を割り込むことが30日、厚生労働省が示したデータで明らかになった。

上限実は2万860円
  政府が来年4月からの引き上げを提案している国民年金保険料で、引き上げが終了する17年(平成29年)4月時点に国民が納める額が2万860円になることが、厚生労働省の試算で明らかになった。政府案には「平成16年度価格」として「1万6千900円まで引き上げて固定する」と明記されているが、将来の賃金上昇を加味した実際の納付額の見通しは公表されていない。

年金未納者の罰金上げ
  厚生労働省は年金保険料の未納問題の深刻化に対応した対策に乗り出す。保険料未納者への強制徴収で財産調査を拒否すれば、最高30万円(企業なら50万円)の罰金を科す仕組みを導入する。

採用数上位に非製造業並ぶ
  05年度の採用計画調査(日経)の最終集計では、非製造業が採用数のランキングで上位をつけた。最多の約2千50人を予定しているのは人材派遣・介護のグッドウィルグールプ。傘下のコムスンが介護拠点を約700から1千拠点に増やす計画で、高卒者約1千500人をホームヘルパー要員として確保する。

「指導力不足」教員66%増
  昨年度に都道府県や政令指定都市から「指導力不足」と認定された教員は481人と前年度に比べ192人、率にして66%も増えたことが30日、文部科学省の調査で分かった。初任者研修後に採用されなかったケースも同9人増の111人と過去最多。

民間人校長21人増え79人
  今年4月に小中高校など公立学校の校長に採用された民間人は全国で79人に上り、昨年に比べ21人増えたことが30日、文部科学省の調査で分かった。任用自治体も同7増えて計33都道府県市に。教育委員会職員などを含めると、教員出身でない校長の起用は同25人増の92人。大分県は全国で初めて学校事務職員を小学校校長に抜てきした。

請負教員が正規授業
  東京都内の私立高校2校が、業務請負契約した会社の計22人に正規の授業を受け持たせ、現場の指導主任らの指示を仰がせていたことが分かった。業務請負の場合、本来指示は請負会社からしか受けられない。全国私立学校教職員組合連合(全国私教連)は、労働者派遣法に違反する疑いがあるとみて、同様のケースがないか全国調査に乗り出した。

郵政民営化、移行期間「5〜10年に」
  経済財政諮問会議(議長・小泉首相)は21日、郵政民営化に向けた「中間報告」の原案を大筋で了承した。26日に正式決定する。07年に貯金・保険商品への政府保証を打ち切り、移行期間を経て完全民営化する。素案では「10年程度」となっていた移行期間を、小泉首相の指示で「5〜10年程度」に修正。完全民営化を前倒しする可能性を打ち出した。

郵政公社の賃上げ交渉自主決着
  日本郵政公社の04年度の賃上げ交渉は27日、基準内賃金についてベースアップせず、組合員平均1・4%の昇級(役職調整額の改定を含む)を実施することで、全逓(14万2千人)、全郵政(8万7千人)と合意した。一部労組とは交渉中だが、人事院勧告の対象でない旧国営4現業の賃上げ交渉が、主要労組との間で自主決着するのは初めて。

パートを組合員に
  大手スーパーのイオン、イトーヨーカ堂、西友の3社は最大14万人のパート従業員が正社員と同じ労働組合に加入できるようにする。各社とも全従業員に占めるパート比率が7割超に達し、店長なども一部任せている。正社員と同じ組合を通じて職場環境改善などの要望に応え、パートの士気を向上させて店舗競争力を底上げする。

派遣社員の活用、営業販売で急増
  営業・販売分野で、派遣社員が急増している。両分野への派遣が解禁されて4年余り。企業の正社員のリストラが進み、とりわけ百貨店や家電量販店、情報通信業界などで活用が広がっている。今春には、営業販売職の派遣受け入れ期間が1年から最長3年に延び、さらに需要が増えると見た派遣会社の売り込みも活発だ。

製造現場でも進む活用
  製造現場で人材派遣会社からの派遣作業員の活用が始まった。これまで一般的だった請負会社への委託からの切り替えも増えつつある。これは製造現場がコスト削減だけではなく、技術を向上・継承しやすい効率的な体制を整えなければ国際的な競争に勝てないという新しい段階に入ったことを示しているといえる。

派遣労働者、労組初結成
  派遣労働者でつくる初の労働組合「UIゼンセン同盟人材サービスゼネラルユニオン」が結成されることになった。15日に都内で結成大会を開く。約2万人の組合員でスタートし、年内に5万人、5年以内に30万人を目指す。

若者向け就職支援センター設置
  経済産業省はフリーターや無職の若者などを対象に職業訓練から就職までを一貫して後押しする就職支援センターを設置する。若年層の完全失業率は10%を超え、職業能力の低下は日本経済の成長力を脅かしかねないため、地域産業界が求める人材に育てる体制を整える。職業紹介や訓練などの実務は民間企業などに委託し競争を促す。

「悪化」膨らみ39%、「改善」わずか20%
  この10年間で自分の生活水準が「良くなった」または「やや良くなった」と感じる人の割合は20%と10年前の半分に落ち込む一方、「悪くなった」と「やや悪くなった」の合計は過去最多の39%だったことが28日、情報・システム研究機構の03年「日本人の国民性調査」で分かった。

自治体サービス委託進む
  自治体で公共サービスの民間委託が加速している。日本経済新聞社と日経産業消費研究所が国内の全市と東京23区を調査した結果、委託費用の大きな公園や市民会館など公共施設の管理運営費が1千億円を超え、5年後には6倍近い6千億円に達することが分かった。

筑豊じん肺、「国に責任」
  27日、じん肺対策を怠った国の責任を最高裁として初めて認定。

☆労働日誌(04年4月〜5月)

4月18日
  日本経済新聞社は、04年賃金動向調査をまとめた。それによると、主要企業の平均賃上げ率は、1・64%となり、7年ぶりに前年実績を上回った。業種別で最も高かったのは、電機の2・02%。平均賃上げ率は拡大したものの、定期昇給廃止やベア見送りを行う企業が増加しており、一時金を主体とした賃上げとなっている。

4月29日
  第75回メーデー中央大会が連合主催で開かれ、約3万5千人(主催者発表)が参加した。

4月30日
 総務省は、労働力調査結果を発表した。それによると、3月の完全失業者は333万人(前年同月比51万人減)となり、完全失業率は、4・7%(前月比0・3低下)となった。就業者数では男性の15〜24歳が17万人減、25〜34歳が8万人減となり、失業率の低下が就業者数の増加に結びついていない。同時に発表された03年度の完全失業率は5・1%となった。

5月2日
  人事院は、国家公務員の給与について、全国の各地域ごとに格差を設け、地方勤務の公務員の給与を引き下げる方向を明らかにした。地方で、「官民格差が大きい」との指摘があるなどを理由にしている。今夏の人事院勧告に反映させたいとしている。

5月6日
  経済財政諮問会議が6月上旬に決定する「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2004」の内容が明らかとなった。その中で、「地方公務員の高コスト構造の改革」「地方公務員の給与見直し」を打ち出し、「わたり」の見直しなどを取り上げる方向が出されている。

5月13日
  厚生労働省と文部科学省は今春卒業した学生の就職状況を発表した。大卒の就職内定率は93・1%(4月1日現在)、短大 卒の就職内定率は89・5%(同)、高卒の内定率は、92・1%となった。全体として内定率は、前年に比して微増の傾向にある。

5月13日
  公務員制度改革をめぐり、政府と連合による政労協議が開かれ、労働基本権をめぐり今後も協議を続けていくことで合意した。

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●いまあらためて思い起こそう!

 4党合意が1047名解雇撤回闘争解体であることを

  4月27日東京地裁104号法廷で、「国労5・27臨大闘争弾圧」事件の第22回公判が開催された。今回の公判では被害届を警察に提出した石井勝幸(国労本部会計監査員。5・27臨大に本部主催者側の一人として参加)証人が出廷し、弁護団の側からの2回目の尋問が行われた。この証人は4党合意推進の本部役員の一人として、5・27臨大以前の大会においても参加をしていたことから、4党合意をめぐる一連の経過について弁護側からの申請にもとづいて証人採用されたため、今回の尋問は弁護側の主尋問となった。

★4党合意受け入れを強行した国労本部

  5・27臨大弾圧はどのような経過で発生したのか。この労働運動に対する刑事弾圧の本質を認識するためには、国鉄の分割民営化における1047名解雇撤回闘争に対してかけられた“四党合意”という闘争解体の攻撃の本質を見据えることが重要である。
  4党合意が解雇撤回闘争の解体、国労の団結破壊を意図した攻撃であり、これにまんまとからめとられようとした国労本部執行部を弾劾し、これを許さず、その攻撃から1047名闘争を守り、国労の団結を守るための真の闘いの担い手は誰であったのか。このことを明らかにすることが極めて重要なことがらである。
  4党合意を特色づけているものは、その「密室性」である。国労が長年にわたり取り組んできた解雇撤回闘争に対して、その解決の方向を見出すと称して自由民主党が主導して出されたのが4党合意である。それは終始一貫して密室における談合として進められた。当事者であり被解雇者である闘争団員をはじめ、広く多くの国労の組合員や国鉄闘争支援者にはその過程はまったく公開されず、当事者と隔絶されたところで進行してきた。00年5月にその4党合意の内容が明らかにされると同時に、いきなり7月に全国大会が開催され(7・1臨大)、その受け入れを承認する提案が本部執行部から出されたのである。長年にわたる懸案事項であった解雇問題への「解決策」としては、極めて異常な経過をたどった。
  7・1臨大で明らかになったことは、闘争団をはじめとする組合員からの「JRに法的責任なしを認めてしまっては、闘えないではないか」「4党合意の受け入れは闘争団の切り捨てではないのか」との指摘に、国労本部執行部が「訴訟の取り下げは問題解決と同時」などとペテン的に答弁し、実態を明らかにぜずごまかし続けたことである。このような本部執行部の対応が一層の不信をかい、7・1臨大においては受け入れ議案承認の採決を強行しようとした本部に対して、闘争団などが演壇へおしかけ、それを阻止しようとする本部役員との揉み合いにより大混乱となった。この混乱の状況は前回公判において公開された7・1臨大のビデオにより明らかにされた。このとき石井証人は不当な議事運営に抗議して演壇につめよる闘争団員に対して、壇上から突き落とすなどして暴力的に排除・阻止した。
  今回の公判においてビデオから取り出したコマ撮り写真が弁護団から示され、石井証人が4党合意受け入れを強行に推進しようとする本部派の一人としてふるまってきたということが明確に証明された。
  国労本部執行部は「4党合意は入り口であり、解決交渉の進展にしたがって最終的解決にたるプロセスはそれなりに存在する」、という幻の解決プロセスなるものをデッチ上げて闘争団をはじめとする組合員を騙してきた。あたかも交渉の過程で組合側の要求がある程度は実現するかのごとき誤った幻想を与え続けてきたのである。執行部が解決の手順として説明してきた「訴訟の取り下げは解決と同時」というような見解も組合員や闘争団をあざむくために勝手に作り上げたものであった。
  4党合意のもつ解雇撤回闘争の解体という攻撃の性格は02年4月26日の3与党声明によって極めて明瞭になった。3与党声明は言う。「4党合意によりJRに法的責任がないことを認めながら、一方で鉄建公団訴訟が開始されていることは矛盾である。国労執行部は与党・政府から解決案なるものが出るかの如く期待感を煽っている」などと。このように自民党などは明らかに「解決案などない、闘争をやめろ」といっている。自民党らによる国労という労働組合の方針、1047名闘争への外部から直接の露骨な介入である。
  この3与党声明をうけて、闘争団の処分を行うべく本部執行部が強引に開催しようとした大会がこの02年5・27臨時大会であった。証人石井はこの5・27臨時大会においてもこの大会開催本部派の一員として積極的に行動していたのである。

★石井証人のあまりにもひどい責任感の欠如

  この公判において石井証人は二つの顔をもって登場している。一つは本件の被害者としての顔であり、すでに検察側証人として彼が受けたと称する暴力行為なるものについて証言してきた。その一方において、この間弁護団からの尋問で明らかにされたように4党合意を強力に推進してきた本部執行部と同一の立場をとってきたのである。しかしながら石井は、「会計監査員は執行部とは異なる」と詭弁を弄して、4党合意推進に積極的に関与してきたことを隠蔽し、極めて無責任な態度に終始しているのである。
  もしも4党合意により解雇撤回闘争に終息が図られるとしたならば、それは国労労働運動の死を意味するものである。しかしながら、4党合意撤回の地方労働委員会闘争に決起し、責任者である甘利明氏の証人採用を勝ち取った上で、三与党声明丸飲みの5・27臨大に対して断固として弾劾の闘いに決起した国労共闘の仲間の闘いにより02年12月の自民党らの離脱により4党合意は破綻し、その意図はうちくだかれた。4党合意の消滅により国労は解雇撤回闘争潰しの攻撃に打ち勝つことができたのである。この刑事事件において被告となっている人々、および鉄建公団訴訟に決起した闘争団員、現場で闘い抜いてきた組合員は、国労の運動をその解体の危機から救った栄誉ある人々である。
  その一方において、4党合意を推進してきた石井勝幸の責任はどうなるのか。彼が警察に被害届なるものを提出し、同じ組合員を逮捕起訴させる道筋を作った責任はどうなるのか。このことについて彼は法廷において弁護団からの追及に対して終始平然とひらきなおり、責任については頬かぶりをし続けてきた。「自分は会計監査員であり、本部執行部の方針形成とは関係がない」と証言してはばからないという、いささかの責任をも感じない態度はまったく許しがたいものである。
  国労本部が4党合意の受け入れを推進するとういうことは、「JRに法的責任なし」とすることであるから、これまでの解雇撤回闘争の方針を本部自らが変更したのではないのか、との弁護側からの質問に対して、石井は「そうは思わない、そういう方針変更があることもいたしかたなかった」とひらき直った。闘争団が4党合意を受け入れようとする本部執行部に対し不信感をもち、強引な議事運営に抗議して演壇におしかけた7・1臨大のときの彼の暴力的排除についても「大会を正常に運営するためには当然のこと」と言ってはばからないのである。
  さらに4党合意の破綻に対しても、「本部はそれなりに努力したのでしょう」と極めて傍観者的な無責任な態度に終始した。この石井という人物に傍聴者一同は〈なんという無責任な男だ〉という思いであった。次回は石井証人に対して「暴行」の事実に関する尋問が中心に続く。いよいよ刑事裁判の本番の攻防となるさらなる傍聴をお願いしたい。  (「許さない会」東京南部会員)

 公判日程

 第24回 6月9日(水)    第25回 6月29日(火)    第26回 7月21日(水)  第27回 8月5日(木)    第28回 9月6日(月)
  (いずれも 東京地裁104号法廷)

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特集  小泉・奥田路線と闘うU  小泉・奥田路線の新段階と階級的労働運動の課題

●教基法改悪―改憲へ動きだした財界総本山

 4月26日の記者会見で、日本経団連・奥田は、発足3年目を迎えた小泉政権について「企業業績が上がることにつながったという意味で相当高く評価している」と、高い評価を与えた。「今後は、郵政民営化や道路公団民営化などの課題解決と、年金・医療・介護を体とした社会保障制度改革、地方の三位一体改革に力を入れてもらいたい」と、構造改革のさらなる推進へとハッパをかけるとともに、経団連総会で憲法問題や安全保障問題を検討する委員会の設置を決定することを表明した。
  同日、経済財政諮問会議は、郵政民営化の中間報告を発表、6月上旬には、今後の構造改革の基本方針を示す「骨太方針・第4弾」をうちだす。奥田が「力を入れよ」という社会保障制度改革や地方の税財政改革(三位一体改革)がポイントになろう。
  これに先立つ4月19日、経団連は、「21世紀を生き抜く次世代育成のための提言」と題する教育改革提言を発表した。冒頭から「競争力の源泉は人材である」「教育を国家戦略の重大な柱として位置づける」と大上段に振りかぶり、「(奥田)新ビションの実現にむけてこれからの教育のあり方を具体的に提言する」として、「多様性・競争・評価」をキーワードとする教育行財政の抜本的改革をうちだしている。結論は「親や教育を受ける側の責務、自国の文化・歴史の教育のあり方など、様々な角度から、国会での議論を早急に開始し、教育基本法の見直しを進めるべきである」という教育基本法改悪の督促である。
  提言内容の批判は別の機会に譲るが、引用箇所を読むだけで、争闘戦に勝ち抜くエリート養成、国のために命を投げ出す兵士づくりのために、「権利としての教育」から「国家戦略としての教育」へと明示の転換が狙われていることは明らかだろう。憲法問題での委員会設置とあわせて、財界の総本山が、教基法改悪・改憲をはっきりとうちだしたことは超重大情勢である。

軍需への渇望と海外企業防衛の要求

 奥田ビジョンがうちだした対米対抗的な「東アジア自由経済圏」は、対テロ戦争での対米協力=参戦と一対である。現に、奥田自身が、イラク派兵の閣議決定、派兵命令の都度、これを支持するコメント=ご託宣を出してきた。
  日本最大の軍需産業である三菱重工の西岡会長は、2月4日の経団連首脳と自民党5役の懇談の席で、武器禁輸三原則の解禁を要求した。三菱重工の軍需依存度は99年の数字だが11・4%を占め、最新の事業計画では「BMD(弾道ミサイル防衛)の中核企業として貢献」するとうちだしている。長期デフレ下で、財界の軍需への渇望はかってなく高まっている。
  2月24日に行われた小泉首相を囲む財界人の会合では、企業がイラクに派遣した民間人を自衛隊が守れるように自衛隊法を改正する要望が出されたという。石油開発や復興ビジネスに参入するためにも、集団自衛権行使・改憲がブルジョアジーの火急の要請となっているのだ。新防衛大綱の策定にむけて設置された首相の私的諮問機関、「安全保障と防衛力に関する懇談会」の初会合が4月27日に行われた。これまた、東電顧問の荒木が座長、トヨタ社長の張が座長代理をつとめる財界主導の委員構成である。
  小泉・奥田路線は、新たな段階を迎えている。財界は、労働コスト引下げのための労働法制改悪、企業の税・社会保障負担の軽減、公的部門の民間開放など構造改革・規制緩和を政治に要求するのみならず、戦争国家化・改憲をめぐっても政府・自民党を積極的につき動かし始めているのだ。

民主党が年金・有事立法のさらなる改悪を主導

 通常国会では、有事7法案・3協定は対決法案にもならず、民主党は、来年の通常国会での「緊急事態基本法」の制定を要求して自公と合意、国民保護法の与党・民主の共同修正案が提出された。修正案は、大規模テロが起これば、あるいは起こる危険性があるというだけで、自衛隊が災害出動から治安出動・防衛出動に転じて対テロ戦争にのりだし、自治体・民間を総動員する仕組みづくりである。
  年金改悪をめぐっても、消費税大増税、企業負担軽減など抜本改悪に道筋をつける「三党合意」とひきかえに、民主党が改悪法案に賛成した。そのお膳立てをしたのは、経団連と連合の申し入れによる政労使の「社会保障協議会」設置である。民主党を先兵とする、とんでもない翼賛政治が現出している。
  こうした翼賛政治の構造がいかにつくりだされてきたのかを、振り返って見よう。
  一つには、いうまでもなく、総評解散・連合結成を契機に始まった政治改革・政界再編の流れであり、小選挙区制下で紆余曲折を経ながらも保守二大政党制が完成の域に達しつつあることである。「マニフェスト選挙」となった昨秋の衆院総選挙では、経団連の政党評価と企業献金斡旋復活が、自民・民主両党に奥田ビジョンの実行の競い合って誓約させるものとなった。企業が政治家に見返りを求めて献金すれば贈収賄罪、経団連が政党を丸ごと買収するのは「政策本位の政治」に資するからOKというのだ。
  民主党のマニフェストを奥田が草案段階で点検し、手厚い失業給付や年金財源への消費税導入が明記されていないことに激怒し、民主党が慌てて連合と合意していた公約を書き換えて「公務員人件費1割削減」「基礎年金財源に消費税を充てる」と盛り込んだというエピソードがある。政党評価と企業献金が、民主党を資本家政党へと変質させる強力なテコとなったことを示すものである。それは、自民党をして、旧来の支持基盤とのしがらみを断ち切らせ、構造改革を推進する「改革政党」への純化を迫る圧力ともなっている。小泉政権の登場は、その画期をなしたことはいうまでもない。

奥田が、構造改革を陣頭指揮

 いまひとつは、中央省庁再編―内閣府設置として制度を整えた「首相官邸主導の政治」が、小泉政権下で本格的に機能し始めていることである。経済財政諮問会議の骨太方針は、予算編成の基本的枠組みをも決定し、タイムリミットを切って政策実行を促すものとなっている。首相官邸と省庁、党政調会との力関係は、大きく前者優位に転換してきていると見るべきだろう。
  奥田、牛尾らが委員をつとめる経済財政諮問会議、オリックス会長・宮内が座長をつとめる総合規制改革会議は、従来の審議会政治とも異なり、御用学者をブレーンとして活用しつつブルジョアジーがいわば構造改革を陣頭指揮する体制である。個別資本の利害や省庁・族議員の権益を超えて、総資本の意思をストレートかつスピーディに貫徹する政治体制がつくられたのである。
  金融独占の利害むきだしの政策を推進する小泉政権がいまだ5割近い支持率を維持しているのも、「構造改革による景気回復」のデマゴキーと「経済成長による雇用・賃金の改善」という幻想が通用している限りでのことである。だが、この間の企業収益の改善は、リストラの代価でしかないことは、首切り・賃下げ、不安定雇用化にさらされている労働者が骨身にしみて知っている。そして、奥田のいう「死に物狂い(ママ)の成長」とは、まさに軍事力による市場分割戦への参入であり、改憲=戦争への道なのだ。

連合支配をうちやぶる闘いを

 このように見てくると、総翼賛体制の脆弱な構造と小泉政治の綱渡り性が透けてみえてくる。この政治構造を支えているのは、経団連のいいなりに「国益を考えるナショナルセンター」になり果てている連合である。会社が空前の利益をあげてもベア要求もせず、自衛隊機の修理のために社員の戦地出張を唯々諾々と受け入れる独占軍需産業の企業組合である。労働運動の連合支配こそ、総翼賛体制の最大の支柱でありかつ最大の弱点なのだ。
  「年金ドミノ」は、労働者人民の総翼賛体制に対する不信と怒りが巨大なマグマとなって渦巻いていることを示した。連合支配をうちやぶる労働運動の登場は、小泉・奥田路線との階級的対抗軸を明示することで、労働者人民の怒りの爆発を一挙におしひらくものとなるだろう。
  韓国総選挙での民主労総が支持する民主労働党の大躍進は、階級的労働運動の前進こそ、政治変革の道であることを教えてくれる。動労千葉の3波の春闘ストライキに続き、小泉・奥田路線と対決する闘いを全産別からつくりだそう。

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特集  小泉・奥田路線と闘うU  小泉・奥田路線の新段階と階級的労働運動の課題

●小泉―奥田―生田の郵政民営化許すな!

  労働者売り渡す連合全逓中央を打倒しよう

 全国労働組合交流センター全逓部会

 4月26日、経済財政諮問会議は、小泉首相の意を受けて「郵政民営化に関する論点整理(中間報告)」を決定し、07年郵政民営化をうちだした。期を一にして、日本経団連奥田会長は4月26日の記者会見で、小泉政権に「高い評価」を与え、「今後は、郵政民営化や道路公団民営化などの課題解決と、年金・医療・介護を一体とした社会保障制度改革と税制改革、地方の三位一体改革に力を入れてもらいたい」と要望した。財界が一致して小泉路線を全面的にバックアップし、その柱としての郵政民営化を推進すると表明したのだ。
  小泉政権は、かってない危機にあえいでいる。イラク侵略戦争に自衛隊を派兵し、イラク・イスラム人民の敵として怒りの標的となっている。スペインをはじめ各国が次々と撤兵する中、虐待と拷問を居直る米帝・ブッシュと運命をともにし、ますます侵略戦争の泥沼にはまりこんでいるのだ。また小泉政権は、この国会で有事7法案と一体で年金改悪を強行しようとしたが、未納者の発覚が相次ぎ、労働者人民の怒りの渦の中で暗礁に乗りあげている。
  だからこそ、小泉・奥田は、危機突破をかけて郵政民営化をぶちあげているのだ。郵政民営化攻撃は、戦争政治と一体の攻撃である。有事立法は、官・民をとわずすべての労働者に戦争協力を迫り、動員するためのものであり、郵政労働者も例外ではない。年金をはじめ社会保障制度改悪も郵政民営化も、底知れない危機と矛盾を労働者人民に転嫁し、そこから金をしぼり取り、戦争財政を作り出すものである。そもそも、郵貯も年金も戦費捻出のために創設されたものだ。
  まさに郵政民営化阻止の闘いは、小泉―奥田―生田路線と真っ正面から対決する闘いだ。労働者の生活と権利を守るために真剣に闘う労働運動こそ、戦争政治を打ち破る労働運動である。反戦闘争を真剣に闘う労働運動こそ、労働者の生活と権利を守りぬくことができる。今春闘を3波のストライキで闘った動労千葉は、JR体制を揺るがし、組合員の原職復帰を実現する画期的勝利をかちとるとともに、国際連帯をかけた3・20イラク反戦闘争の牽引車となった。そして5・21明治公園をはじめ全国各地の集会には、イラク反戦闘争を完全放棄した中央本部の制動をこえて、多くの全逓労働者が全逓旗を押し立て参加した。
  5・21闘争に続き、6月有事立法粉砕・イラク反戦闘争を闘おう。これと一体で、6月全逓第59回全国大会闘争をかちとり、連合全逓中央本部を打倒しよう。労働者の闘い、とりわけ全逓労働者の決起によって、小泉政権もろとも民営化攻撃を粉砕しよう。

「最大限の効率化」=大首切り・リストラ攻撃うちだした「中間報告」

 中間報告は、@07年4月から郵便・郵貯・簡保の三事業を段階的に民営化、A郵貯・簡保の政府保証を廃止し、B郵便事業における「最大限の効率化」を打ち出している。
  そして、「郵政公社の職員の雇用に支障をきたさないようにするためにも、安定した経営を可能にすることが必要」「民営化に際しては、職員のモラール(士気)と労使関係の安定に配慮すべき」と言う。
  あえて「雇用」を問題にしているのはなぜか。「最大限の効率化」とは、すさまじい首切り・リストラ攻撃のことだ。国鉄分割・民営化の時、政府は「一人も路頭に迷わせない」と言ったが、その結果は、何万人という人員削減が行われ、労働者に転職・退職が強要された。あげくに清算事業団1047人の解雇だ。郵政民営化とは、規模においても質においても、国鉄分割・民営化以上の攻撃である。すでに始まっている大々的な非常勤化と深夜勤導入にみられるように、凄まじい労働強化=労働者殺しだ。
  だからこそ、あえて「労使関係」を問題にしている。ここに、攻撃の本質があらわになっている。「職員のモラール(士気)と労使関係の安定」とは、徹底して労働者的意識を解体し、労働組合的な団結を破壊するということである。連合全逓中央の際限ない屈服で、全逓を労働組合とは言えない組織へ変質させる、これなくして民営化攻撃は成り立たないのだ。
  JPS方式、新たな人事評価制度の導入と成果主義賃金の投入などの人事制度・給与制度改革、過剰なノルマを課した自腹営業……どれをとっても、職場に分断と競争を持ち込み団結を破壊する攻撃だ。労働者をばらばらにし、一人ひとりに資本への忠誠を誓わせるものだ。だが、現場労働者は、これに屈してはいない。現場には、郵政公社、そして全逓中央への怒りがうずまいている。中央本部や地本の制動を打ち破って、一挙に爆発する機運があふれ出している。
  中間報告に対し、全逓中央は、全郵政と共同記者会見して「反対」を表明した。それは口先だけの「反対」でしかない。それどころか「民営化会社のビジネスモデル」が示されていないのが問題だとし、「全逓と全郵政は共同で、公社形態を維持するための政策提言に取り組む方針」と表明することで、全郵政と一体化して民営化攻撃に限りなく屈服することを誓っているのだ。
  2003年郵政公社への移行にともない、全逓本部は生田総裁のアクションプランに完全に賛成してしまった。それは、2年間で1万7千人を削減し、1147億円の人件費と2144億円の物件費=非常勤職員賃金を削減しようというのだ。さらに団体交渉を事後対処方式にすることで、当局の人減らし施策にリーハンドを与えてしまった。また、勤務形態の見直しと賃金体系の見直しの攻撃に賛成した。
  とりわけて、非常勤職員に対する締め付けが強まっている。非常勤職員の比率が本務者を上回り、仕事の非常勤職員への依存度が高まっている。中央本部は、深夜勤導入と同時に、これまで夜間手当として支払われていた割り増し賃金の廃止と、時間賃金の成果型への改悪に同意した。このことによって、非常勤一人あたり月に約1万7千円の減収になっている。
  さらに輪送部門に対する切り捨て攻撃も深刻だ。相次ぐ輸送運賃ダンピングの中で、労働条件は極限まで切り下げられ、合理化と希望退職が強制されている。「雇用の確保が第一義」と称して、これに全面的に承認を与え、推進しているのが全逓中央なのだ。現場には「何のための全逓か」という声があふれている。
  まさに郵政民営化攻撃を可能としている者こそ全逓中央本部だ。今こそ中央本部もろとも郵政民営化中間報告を粉砕しなければならない。

労働者を殺す深夜勤はただちに廃止に

 2月8日から導入された深夜勤の結果、3月3日ついに東京中郵で現職の労働者が死亡した。当局は、このことを一切公表せず、隠し通そうとした。全国で現職死亡が相次いでいる。定年を待たずして退職においこまれたり、自殺者も相次いでいる。だが、この現状に対して全逓中央本部も地本も、まったく知らぬ顔を決め込んでいる。
  亡くなった諸岡久夫さんは、連続2回の深夜勤を2度行い、3度日の深夜勤の直前に心臓発作を起こし帰らぬ人となった。彼は、4年前に出勤途上で狭心症の発作を起こし、職場でもときどき発作をおこしていたが、長距離通勤のつらさに耐えながら、きつい仕事をこなしていたのである。彼は、局内各課を5回もたらい回しにされた。通勤時間が2時間以上もかかることを百も承知で、夜勤勤務がほとんどを占める現在の課に配転させられたのだ。
  深夜動の明けたその日の夜にまた出勤する連続深夜勤は、健康な人でも「眠れない」「夜と昼が逆転して体調がおかしい」と訴える殺人的勤務だ。東京中郵では、連続2回だが、一般局では、3回、4回の連続深夜勤も行われている。その辛さは言葉では言い表せないくらいだ。それだけではない。JPS方式が定着していくところから、連続5回にグレードアップすると言っている。60歳の定年まで生きて勤められるかという疑問がたえず頭のなかをよぎる。もはや、次の犠牲者が何時でてもおかしくない状態なのである。
  その責任は当局とグルになった全逓本部にある。このような勤務を導入した当局は絶対に許せない。それと同時に、昨年の定期全国大会で中央本部一任を強行し、深夜勤に全面協力した全逓中央本部に対して、組合員の怒りがうずまいている。勤務体系の全面的変更は、労働協約の改訂をともなうものであり、労働組合がきっぱりと拒否すれば、一切通用しない。こんなことがまかり通るのは、労働組合が闘わないからだ。

名称変更と「未来づくり宣言」は労働組合の否定

 第59回定期全国大会(6月23日〜25日、旭川)は、全逓ではなくJPUの大会とされ、そこで「私たちの未来づくり宣言」を決定するとしている。JPU(日本郵政公社労働組合)への組合名称変更は、単なる名称変更にとどまらず、全逓の闘いの歴史いっさいを投げ捨てることを意味する。中央本部は「組織・財政の改革」と称して、一切の権限を独裁的に握り、現場の声を切り捨てる組織に変えようとしている。「コミュニケーション・ルール改革」と称して、分会・支部をはじめとする現場から交渉権を取り上げ、組合員を公社当局に売り渡そうとしている。
  12月全逓臨時全国大会で提案された「私たちの未来づくり宣言」では「自らの意識を『仕事をさせられる』意識から『仕事を創る』意識へと切り替え、主体的に仕事にとりくみます」などと言っている。ふざけるんじゃない。命をけずる過酷な労働でも、どんなに低賃金でも、喜びをもって働けと言うのか。これはもう労働組合とは言えないものになるということだ。

闘う全逓の旗を現場から打ち立てよう

 職場の中には、かつてない怒りであふれている。とりわけ全逓本部に対する怒りは深夜動の導入をもって職制の口からさえあがっている。これまで組合員をだまし続けてきた本部は、いまや組合員にまったく信頼されていない。いよいよ真に闘うものだけが生活と労働条件を守れる時代が来た。いまこそ現場労働者の怒りで全逓中央を打倒するときだ。闘う団結を打ち固め、民営化攻撃の一つひとつを粉砕する闘いを現場からまきおこそう。4・28被免職者と連帯し4・28反処分闘争を闘おう。旭川全国大会を闘う全逓の復活の日にしなければならない。本部派を打ち破り、闘う全逓の旗を打ち立てよう。
  全国各地で、多くの仲間が全国大会代議員選挙に立ち上がっている。全組合員の怒りの最先頭で全国大会に攻め上ろう。

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特集  小泉・奥田路線と闘うU  小泉・奥田路線の新段階と階級的労働運動の課題

●「有事体制化」進む全国の港湾

 成立した「SOLAS」法(=国際航海船舶及び国際港湾施設の保安の確保に関する法律)

 全国労働組合交流センター自治体部会

「港湾は国境だ」(?!)

 東京湾の奥深く、そこには、木更津・千葉・東京・川崎・横浜・横須賀という各港湾があり、それぞれ港湾管理者が設定され、国や自治体、そして民間の港湾労働者が日夜働いている。
  そうした労働者たちにとって、今まで意識さえしていなかった言葉、「港湾は国境だ」という言葉を私たちは最近よく聞くようになってきた。
  「水際対策」として、それは、「密輸」や「不法滞在者」対策となり、北朝鮮船舶に対する「入港制限」となりそして周辺事態法から有事法制の成立、それはまた、排外主義の横行をともなっての戦争準備となって現われているのではないだろうか。4月に成立した「SOLAS」法、そしてそれら「テロ対策」なるものに、私たち港湾で働く「官民」の労働者がその先頭に動員されようとしているのだ。

有事7法案・3協定等の衆院通過

 イラクへの自衛隊派兵で軍事物資の積み出しに公共埠頭が使用された。
  また、5月20日、「20労組」をはじめとする多くの労働者民衆の反対の声を無視するかのように、ACSA改定など「有事関連7法案・3協定条約案」が衆議院を通過した。
  なかでも港湾にひきつけていえば、「米軍行動円滑化法」「交通通信利用法(特定公共施設利用法)」として、米軍や自衛隊が港湾各施設を優先的に使用する法案があり、また7法案等のほかにも、すでに成立した「改定外為法」に続く北朝鮮への「制裁法」である「特定船舶入港禁止法案」の与党と民主党の合意がある。
  さらに新潟港でのマンギョンボン号に適用して知られるようになった「PSC(ポートステートコントロール)」を使っての船舶の入港制限は、今全国各港で行われている。
  現行の憲法の精神に基づいてつくられた「港湾法」のいう「港湾利用の不平等の禁止」などをズタズタに切りきざんで、しゃにむに北朝鮮に圧力を加えようとするものであろう。

船舶・港湾における「テロ対策法」の4月成立

 5月20日、東京湾横浜港で、「テロリストが客船でやってきたら」を想定して、「水際危機管理対応合同訓練」なるものが、横浜港の「港湾危機管理官(海上保安部長)」の指揮のもと官民25団体が参加して行われた。訓練場所は大桟橋埠頭構内であり、れっきとした公共埠頭が使われている。合同訓練は5月11日には東京港晴海埠頭でも実施されており、「密輸・密入国などへの対処能力と共通認識の確認」とされ、その主体は各港の関係機関が集まった「東京湾保安対策協議会」として、その調整を自治体である東京都港湾局が行ったという。
  これらは、4月に成立した「国際航海船舶及び国際港湾施設の保安の確保等に関する法律」(船舶・港湾におけるテロ対策法)に関連したものであると思われる。
  この新法は、「改定SOLAS条約(海上人命安全条約)」に対応したものであり、国際航海に従事する船舶を厳しく取り締まる一方、国内の国際港湾施設について「テロリスト対策の徹底」を義務付けたものである。
  もともと「SOLAS条約」とは、あのタイタニック号遭難事故から海の安全を願っての条約であり、船舶と乗客、乗組員の安全のためのものであったが、かの「9・11ゲリラ事件」に決定的な衝撃を受けたアメリカ政権によってこの条約が改定され、アメリカ合衆国に入港する船舶の「安全を確保する」ため、世界各国に対し、「船舶と港湾の安全確保」が必須とされることになったものである。

全国106港が「テロ対策港」に認定

 日本全国には1084港の港湾がある(つまり港湾管理者としてそれだけの自治体があるということだ)が、そのうち国際貿易港としての「重要港湾」が128港あり、国土交通省は、その中で、「特定重要港湾」23港を含む106港について、この新法にかかる「保安対策費」として総計415億円を配分(04年2月)した。
  成立したこの港湾テロ対策新法によれば当該港は、「埠頭保安規程」を策定し、国の「保安評価」を受け、「保安管理者」を選任し、「制限区域」を設定し、その区域を囲んで決められた高さ等を要する「フェンス・ゲート・照明・監視カメラ」を設置し、365日、24時間の「自己警備」を徹底し、また「埠頭訓練」を随時実施して、テロリストの侵入の防止や爆発物等の発見などに努めるなどとされている。ゲートに入る一人ひとりと持ち込む貨物について厳しくチェックしていくのだ。
  各港湾管理者である自治体は今年7月1日までにそれらの施設と人的配置を完成させなければならないことになっており、たいへんな費用と人力をそれにさかれている。
  国はモデル港まで決定し、名古屋港には55億、神戸港には27億円が配分された。その上に各自治体の対策費用が加算されることになるという、この間の自治体での合理化リストラ・コスト切り捨ての中での、大掛かりな整備であることがはっきりしている。ある港湾では、「スクラップアンドビルドだ」として、ひとつの事業所を廃止して、新規に「保安対策室」までつくって対応している。

「防弾チョッキ」を着用して仕事をする?

 このような港湾のテロ対策には、警察や海上保安庁・入国管理事務所など国家機関の指示のもとに、港湾管理者(自治体)や民間企業が日常的に携わることになる。
  私たち港湾で働く自治体や民間の労働者が、常日頃からテロ対策の先兵とされることになるのだ。
実際、港湾周辺には、アジア各国から、またいわゆる「中東」などから来ている外国人労働者も多く働いている。周辺の飲食店などには多くの外国人がだんらんしていることも多い。まったく許せないことに、政府はここに、かってに「テロリスト」の幻影を見ているのである。
  こうして私たちは、外国人を疑い、置かれている貨物を疑うことを強要されようとしている。
  そして「埠頭訓練」などをさせられて、「防弾チョッキ」などを着用して仕事をさせられ、日常的に排外主義をうえつけられようとしている。
  さらに今、こうした状況にあるところに、有事法制の成立強行がもくろまれているのだ。
  私たち港湾で働く「官民」の労働者にとって、これからが本当に本番のたたかいである。
  「陸海空港湾労組20団体」とともに、「完成させない。発動させない。戦争業務を拒否する」たたかいを文字どおり職場ぐるみでつくりあげ、有事法制を粉砕するたたかいをさらに強化発展させていこう。

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●自衛隊をイラクから引き戻そう

帝国主義を打倒するチャンス

 アメリカ帝国主義・ブッシュの世界戦争政策・単独行動主義が、いまや最大の危機に陥っています。ファルージャにおける武装決起を軸とするイラク全土の民衆蜂起が、世界最強の帝国主義アメリカを追いつめているのです。百年に一度あるかないかのこの勝利の機会を国際プロレタリアの連帯闘争の力で、なんとしても世界の帝国主義を打倒する突破口へと導くことが、私たち労働者階級の歴史的任務となっています。
  なかでも、ブッシュの戦争に手を貸している派兵国、とりわけ日本の小泉を打ち倒して自衛隊をイラクから引き戻すことこそ、私たち日本の労働者に絶対的に課せられている責務であります。

本質は中東・イラクの石油

 そもそも、ブッシュの戦争とはなんなんでしようか?
  アメリカによる中東支配秩序から逸脱して手に負えなくなってしまったフセインを崩壊させることが、9・11以前から計画されていたことが明らかになっています。そして、イスラエルを使っての中東支配も、粘り強いパレスチナ民衆の民族解放闘争によって無力化されつつあることと相まってブッシュのイラク攻撃を加速させてきました。中東・イラクの石油を略奪するチャンスをうかがっていたブッシュにとって9・11はまさに奇貨でした。イラク攻撃の口実に利用したのです。
  ブッシュの開戦の大義は「フセイン政権が開発・保有する大量破壊兵器の廃棄」というものでした。しかし、調査団長のケイ氏が「はじめから大量の生物・化学兵器はイラクに存在しなかった」と米上院軍事委員会で表明しています。ブッシュのイラク攻撃の正当性は、まったく失われたのです。それにもかかわらずブッシュは、開戦の大義を「イラクの民主・自由化」へとすり替えて全世界の人々を欺き、いまもなお強盗戦争を継続しています。

キリスト教原理主義をもって正当化

 ところで、ブッシュの戦争の論理とはどういうものでしようか?
  「アメリカに対する脅威を取り除くためには、先制攻撃も辞さない」とするブッシュ・ドクトリンに基づくことはだれでも知っています。これはブッシュ政権を思想経済の両面から支えているキリスト教原理主義の「世界は善と悪の闘争…イスラム教徒はナチスよりも悪質で…イスラエルは〈神の子〉である」とするアメリカ第一主義・シオニズムの独善的な教義の延長上にあります。実はこの思想は、イギリスからの独立を勝ちとった18世紀のアメリカの指導者たちが「明日なる運命」と呼んだドグマと軌を一にしています。自分たちが、北アメリカ全域を支配するように神によって選ばれた、とするこのドグマによって、アメリカ先住民(インディアン)を虐殺し、メキシコに戦争をしかけて領土の半分近くを略奪しました。さらにキューバとフィリピンを植民地にしたのです。そしてついには、「われわれアメリカ人は、世界を支配すべき人種なのだ。世界の文明化を担うべく神に託された人種としての使命がある。神はわれわれを選びたもうた。野蛮でもうろくした人々を治めるために政治の達人として創りたもうたのだ」とアルバート・ビベリッジによって高め(?)られたのでした。もちろんそのアメリカ人の中には、アフリカ系やヒスパニック系は含まれなかったのです。
  これらはいま、ネオコン(新保守主義派)によって引き継がれています。アメリカ経済の危機的深刻化の中からまたぞろ世界戦争政策・単独行動主義としてネオコンにより担ぎ出されたのです。ブッシュ政権を支えているのはこのネオコンであり、その思想的基盤はキリスト教原理主義にあるといえます。同時にこれはブッシュの選挙マシンでもあります。プロテスタント内最右翼派のこの原理主義の支持を獲得できなければ、共和党の大統領になることができない関係としてあります。
  「われわれは、善と悪の衝突の中にあり、世界を先導して、悪にたいこうするのです」(02年陸軍士官学校卒業式で)
  「自由はアメリカから世界の贈り物ではなく、神から人類への贈り物なのだ」(03年一般教書演説)
  じつにブッシュの発言は「明白なる運命」とうりふたつではありませんか。

巨大戦争企業とのゆ着

 そして、ブッシュの政権とゆ着し、持ちつ持たれつしているのが、アメリカ石油企業のハリバートングループです。ブッシュと同郷のテキサス州の油田会社から興したこの巨大戦争企業は、つい最近までチェイニー副大統領が最高経営責任者でした。イラク戦争を食い物にして110億ドル(1兆2千億円)もの受注を取っています。直接的な軍事作戦以外のすべての、宿舎、飛行場の設営から水・食料の供給、散髪から死体の洗浄・輸送までを担っているのです。まさに〈戦争の民営化〉。また、ブラックウォーター社などの傭兵企業の2万人の傭兵が、イラクの戦場で展開しています。これはアメリカ占領軍13万人に次ぐ兵力であり、英軍1万人を抜き、第2勢力となっているのです。

日本もイラクの石油を

 こうした動きの中で、三菱商事、三井物産など日本の企業連合9社が、ハリバートングループの子会社と共同でイラク西部のアクラ・ガス田の開発事業の入札に参加している事実を明らかにする必要があります。自衛隊がこの日本の企業を守るためにアクラへ移動することは大いにあり得ることです。むしろこの為に派兵したのではないでしょうか?
  大儀のない利権集団のためのブッシュの戦争は、至る所で腐敗をまき散らしています。アブグレイブ刑務所で起きたイラク民間人に対する拷問と虐待。ラムズフェルト国防長官の承認の下で行われたことが明らかになっています。ブッシュの戦争は、腐敗堕落の極致に達しているのです。9・11も大量破壊兵器も、民主・自由化もすべてブッシュにとってはイラク戦争を継続する口実です。世界を欺く方便にすぎないのです。
  いまや、ブッシュのイラク侵略は、引くにひけない第2のベトナム化に陥っています。ちょうどそれは、壺に手を突っ込んで石油をつかんだものの、こぶしが引き出せなくなった猿の話ににています。
  交流センターのみなさん、最悪の米大統領と、これもまた同じくらい最悪の日本の首相によるイラク戦争をすぐにでも止めさせるために、自衛隊をイラクから引き戻すために、ありとあらゆるたたかいをやりぬこう! 戦時下のたたかいです。私たちは生き残るために闘うのではなく、勝つために闘おうではありませんか!      (工藤俊介)

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●反合運転保安闘争は動労千葉の基軸の闘い

国鉄千葉動力車労働組合 顧問 中野 洋

 反合運転保安闘争というのは動労千葉にとって基軸中の基軸の闘い、綱領的な方針であると言っても間違いない。私が書記長の頃からも反合運転保安闘争に始まり反合運転保安闘争に暮れるという経過がありました。その闘いを3月で大きく復権させたわけです。
  長らくその闘いの先頭に立っていた私が、反合運転保安闘争というのはどういうことなのかということについて、今一度はっきりさせる必要があると思い今日はしばらく時間をお借りし、お話ししたいと思います。

レールの破断

 具体的に話します。今年3月の反合・運転保安闘争は、当初は総武緩行線が6分半短縮されることから始まりました。これは非常に許し難い。今を去ること89年、JRになってから、やはり総武緩行線が時間短縮した。その結果連日電車が遅れ、東中野駅追突事故が起こり運転士含め乗客あわせて3名が死亡するという事故が起きました。このときから動労千葉はJRになって始めて乗務員ストをやった。分民の過程で40名が解雇され大変な痛手を負い、その傷も癒えぬうちに本格的ストライキに入ったわけです。しかし、JR当局は十年余りたってますが、すっかりこの事故を忘れ、時間短縮を始めたのです。
  そして、1月に入ってから総武快速線でレールの破断を始め、2〜3カ月のうちにやたらとレールが折れるということが起き、3月の反合運転保安闘争は、このレールの破断ということが非常に大きなテーマになった。
  レールの破断ということはどういうことなのか。総武線というのは結構優等線区ですから、新幹線の次ぐらい良質なレールを使っているわけです。私も運転士だったのでわかりますが、レールが折れるなんてことは、ありえなかった。

線路改善闘争

 75年以降、千葉でレールが非常に劣悪化し列車が激しく振動するので、線路の改善闘争をやった歴史があります。乗務員分科会が自分の足で各線区を歩いて線路の状態を調べ、そのデータを団体交渉の席上に持ち込んで、『この現状を見ろ』と。このときはわれわれ素人ですから、当時の線路を主管している施設部長や課長あたりは「だいたい素人がなにを言っているんだ」とまともに対応しない。それに対してわれわれは安全運転闘争を対置したんですね。
  つまり線路が悪くなる原因は、線路保守の手抜きがひとつ、それと同時に列車のスピードアップがあるんです。スピードアップとは同時に激しくブレーキをかけることになりますから、物理学の原則で必然的に、車両とレールの双方に衝撃が非常に強くなる。だからレールがたちどころに悪くなるということが、ほんの半年ぐらいの間に起きたんです。それを動労千葉としては、「外房線は制限速度何キロ以下に抑えろ」「内房線はこれにしろ」「総武本線はこういうふうにしろ」ということを全部組合で方針化し、その指令どおりに乗務員が運転したわけです。その結果、トータルすると1日約5千分ぐらい遅れが出たのです。それをダイヤに組み込ませるという闘いをやった。文字どおり「ダイヤ改正」になったのです。今までは、ダイ改のたびに労働条件が悪くなるからダイヤ改悪反対と言って闘争をやったんですが、私が労働運動を始めて、初めてダイ改で労働条件が良くなったのです。その間に線路も修復されていくんです。
  これは裏話ですけれども、当事、国労千葉の施設協議会が私のところにきて、「動労はいい。線路が悪くなった原因は合理化にある。したがってスピードを落とすんだという闘いをやってくれた。一方わが国労電車協議会は、合理化の問題について全然触れないで、『お前らがちゃんと仕事をしないからレールが悪くなるんだ。ちゃんと仕事をしろ』というんだ。それに比べて動労千葉は物事がよくわかっている」といって当時の金で10万か20万のカンパ持ってきたんです。同時に、線路がどうやって悪くなったのかというデータを全部よこしたんです。線路が一体どういう仕組みで、どう点検されていくのかということはまったく素人でわからなかったがその資料でわかりました。これをもって団体交渉で詰めたんです。そうしたら当時の施設部長が本音を吐いたんです。今でも走ってる183系という特急列車があるんですが「千葉から以東の線路は、この特急列車を入れて走らせるには耐えられない線路なんだが、本社が強引に入れろと言ったんだ。その結果こういうふうになったんだ」と。その時、私は当時の施設部長に、「お前らも技術屋だろう。ダメなものを腹を切ってでも阻止するのが技術屋の使命だ」という話をした記憶があります。

手抜きとスピードアップ

 今までの闘いの歴史からみると、今度の総武線のレールの破断というのは、JR以降の保守の手抜きがずっと進行し、もの凄いスピードアップの結果だということです。
  たとえば成田エクスプレス(NEX)なんか最高速度130キロ運転です。快速もどんどん運転間隔が短くなって、ホームに入るとき80キロから90キロの速度で入って止まるわけだから、線路に大きな負担がかかる。1月過程から、優等線区である総武快速線のレールの破断が2カ所も3カ所も起こるということが発生したが列車が脱線転覆するということがなかった。しかし、折れ方次第によっては脱線転覆するわけです。しかもこのレールの破断を見つけたのは全部動労千葉の運転士です。
  さらに国鉄時代と違うところは規制緩和の問題です。日本という社会は、ありとあらゆるものが規制されていました。それが全部緩和される。あらゆる産業に対して、各担当省庁が規制をしている。その中心は安全問題です。
  運輸省、今の国土交通省は規制緩和をどのようにしたのか。結果としては全部会社に丸投げした。つまりJR東日本の安全に関する様々な取扱いについては、JR東日本に任せるというふうになったわけです。私が乗務していた国鉄の時、仕業検査を24時間に1回必ずやったんです。それが48時間に1回になり国鉄最後の時は72時間に1回なんですよ。今はなんと6日から10日です。線路も、電力も、通信も全部そういうふうになっているんです。
  保守というのはすぐに悪くならない。しばらく経つと悪くなる。今、イギリスでも国鉄や地下鉄の分割・民営化後19年を迎えて、めったやたらと列車の脱線転覆が起き、民営化が最大の要因だと言われています。

保守部門の全面外注化

 手抜きの最大の理由は、JRになってから電車区とか保線区、電力区、信号通信区、つまり車両の保守を担当するところに新規採用が、ほんの10数人しか入れていない。JRになるときからアウトソーシング、外注する予定だったからです。
  今この保守部門は、国鉄当時に技術力を培った労働者たちがになっている。今は、かろうじてJRの安全が維持されている。幕張電車区でもどこでもそう。だからこの労働者たちが退職したらどうなるのかという話になっている。
  そのうえで線路が極端に悪くなったのは、この2年前に線路関係は全部外注化したわけです。車両検査は幕張支部を中心に動労千葉が抵抗しましたからアウトソーシングはさせておりません。直営でちゃんと検査修繕やっています。だけどそれ以外は全部アウトソーシングされ、今回のレールの破断ということが起こった。これは非常に重要な問題だと私は考えております。
  そもそも資本というものは、利潤を生むというところには設備投資をする。利潤を生まないところにはしません。ですから保守部門というのは絶対にまずリストラの対象になるんです。国鉄当時も一番最初に合理化の対象になったのは、線路であり、電車の検修であり、保守部門でした。それでも最低限これだけは直営でやらなければいけないという部分を残しました。しかし、JRはこの部分も全部アウトソーシングしたのです。
  JRでは、10数年にわたって電車の検査係の養成がやられておりません。じゃあ関連会社ができるのか。本体が技術力がないのに、関連会社があるはずがない。だから施設なんかは、JRの現役社員が直接出向で行っている。電車の場合には、あの悪名高い「シニア制度」で、60歳以上の退職者にやらせようとしていたが動労千葉の抵抗があって破産した。
  やはり合理化という問題はまず保守部門にくる。保守部門というのは国鉄で言えば安全問題になるわけです。

安全の崩壊

 規制緩和で一気に安全が崩壊する、このことはJRだけじゃなくて、雪印から始まっている。農林水産省の管轄になると思いますが、腐っているやつを商品として出し、点検が全然なり立っていない。食の安全が問題になった。去年一年間に出光興産、エクソンモービル、新日鐵、黒磯のブリジストンタイヤの工場が爆破事故。こんなことが、10年前あったか。ないですよ。だいたい大企業の大工場が爆発事故を起こしているんだから。これらも間違いなく全部アウトソーシングがやられ、安全基準が全部曖昧模糊となっている。この現状が全体を覆っているのではないか。その際立ったものがJRであると認識しなければいけません。
  去年、中央線での高架切り替え工事での配線ミスで、列車が半日以上動かない事態が起こりました。それに対して国土交通省が異例の監査に入り改善命令を出している。その中身は、要するに個人の問題じゃなくて構造上の問題だと言っている。
  改善命令が出ている以上直さなければいけない。しかしその時に、JR東日本の最大組合であるJR東労組が何て言ったか。「これはJR東日本の労資に対するどす黒い権力の陰謀である」。
  事故がひんぱんに起こっている、だけど資本に対して責任追及はしない。しかも国土交通省という主管庁が改善命令を出したにもかかわらず、それを権力のどす黒い陰謀であるというふうに言っているわけです。
  また東労組は、「責任追及じゃなくて原因究明だ」と言っている。責任追及をしないということはどういうことか。資本に対して事故の責任を追及しないということです。その一方で、乗務員は実際上責任追及され、ちょっとしたミスだけで乗務停止される。東労組がJR東日本の最大の組合である限り、安全の危機はもっと深刻化する。そのことをきちっとしなければいけない。

船橋事故弾劾闘争

 われわれは、1960年代に三河島事故、鶴見事故という大変な事故を経験しました。そこから動労は運転保安闘争を基本路線にしました。
  72年、高石君の船橋駅事故が起こった。このときに動労千葉は、事故は合理化の結果で、高石運転士にはなんの責任もないんだと闘った。そもそも総武線は過密ダイヤで大変な問題になっていた。場内信号機と出発信号機の間に信号をやたらとつくる。絶対信号機(場内信号機と出発信号機)というのは絶対に止まらなければいけないという信号なのに、その間に信号機をいっぱいつくるということは動いてもいいということです。さらに当時、埼玉の蕨市からきている送電線が腐食し停電を起こした。信号機が停電になり、ATSは鳴りっぱなし。あの当時、ATSが鳴ったらいったん止まって走れと指導されていた。それで追突事故を起こしたわけです。それをめぐってわれわれは船橋事故闘争を始めたわけです。当時、動労本部の企画部にいたのは中江さん(前船橋市議)でした。大変な闘争にバーッとなった。数波にわたるストライキ、何十波にわたる順法闘争を展開した。裁判は禁固刑の執行猶予の判決で負けた。だけど彼の復職を獲得し運転士に戻した。
  こういう闘いの歴史のうえに立って、先ほど述べた線路問題を安全運転闘争として展開し、《奪われた労働条件を奪い返す闘争》と位置づけたんです。ダイヤ「改正」のたびごとに労働強化される。それを今度は奪い返すんだということを積極的に位置づけ闘争をやってきた。その歴史をふまえて、三里塚ジェット燃料闘争だとか、あるいは分割・民営化反対の闘いをやったんです。
  だから動労千葉の闘いの根幹には必ず反合運転保安闘争という思想が流れています。職員を半分に減らすという分割・民営化反対闘争の過程で、日航機が御巣鷹山で落ちる事故がありました。当時のスローガンは「分割・民営化反対、国鉄を第二の日航にするな」というのが動労千葉のスローガンだった。このままいったら事故がおこると。案の定JRになってから2年目ぐらいから貨物列車がやたらと脱線転覆した。今は、一応小康状態を保っていたけれど、細かい事故はたくさんある。しかし軽視も無視もできないことが今回の闘争の過程ではっきりしてきました。
  反合運転保安闘争を、私たちはいま一度歴史的に総括し、反合・運転保安闘争の飛躍を図らなければいけない。

敵のアキレス腱

 反合闘争をやらない労働組合は、右というんだ。反合理化闘争というのは合理化に反対するということ。これは言ったらきりがないんだな。資本主義を否定する闘いですから。資本は常に生産手段を近代化していく。そのことによって今まで5人でやっていた仕事を2人でやらせるとか。これは合理化でしょう。かつての労働運動は要員を減らされることに反対だった。しかし、それもできなくなって、「合理化を認めるから時間短縮せよ」というふうになった。これも成功していない。
  当時、動労の中でも革マル派は「合理化絶対反対」というようなことを理屈で言い回すという状況があった。しかし動労千葉は船橋事故闘争を経て、反合理化・運転保安確立という路線領域を確立した。
  つまり安全問題というのは、たとえばJR当局だって『危険でいい』とは絶対に言わない。『安全は命だ』と言っている。つまり、安全問題というのは敵のアキレス腱なんだ。安全問題を手抜きをし徹底的にリストラしながらも、やっぱり安全問題からは逃げられない。その結果としてどうなるかというと、現場の運転士とか関係労働者に対して大変な締め付けがいく。だけど人間のやることは限界がある。必ずいろいろな問題が起こる。だからこれを合理化問題として捉えて、動労千葉は「闘い無くして安全なし」、闘わなかったら自分の命も危なくなる。こういう立場で今後もやらなければいけないと思います。
  特にレールの破断というのは、重要な問題。いろいろ調べました。千葉支社の施設課長(マサチューセッツ工科大学出身らしい)が出した指示文書に書いてあるんだが、検測車というのがある。その中にコンピューターを積んでレールの上を走る。異常と出たらそこだけ直すというやり方なんだ。今回のレールが折れたところは、コンピューターには出てこなかった。だからこの文書にも検測車だけはきわめて危険であると書いてある。昔は、ベテランの軌道検査長がいて、運転台のわきに乗ったり自分で歩いたりして線路の状態を判断し、ダメになる前に手当てする。これが原則なんです。
  メンテナンスで一番重要なことは、壊れたら終わりなんだということ。なぜならば壊れる直前までお客を乗せた電車が走っているんだから。だからダメになる前に手を打たなければダメなんです。
「ダメになったら直せばいい」という考え方を一掃しなければいけない。
  現在、会社はレールの破断事故の原因を調査中だなどと言っている。けれど動労千葉にしてみればでっかい闘いにならざるを得ない。彼らがどうしても今までのやり方を続けるとすれば、いつでもレールが折れるという危険と裏あわせの中で運転することになる。そんな中で「130キロで運転できない。100キロに落とす」とか、「外房線は何キロ」とか、「東金線は50キロ以上出さない」という闘いを、動労千葉が乗務員分科会を中心に討論して決めて、本気になって闘いに突入していく。争議行為的に言えばサボタージュ、安全闘争としてやっていくということが非常に重要になると思います。乗務員が何たるか、鉄道業務が何たるかを知らないJR東労組にいる若い青年労働者たちにちゃんと教えていくということ。また、この闘いをキチッとやることが、組織拡大につながっていくんじゃないかと思います。
  これからも現役の諸君たちが、自らの命をかけてこの反合運転保安闘争に全力をあげて、動労千葉の団結を強化していくということを心から要請しまして終わります。

(本稿は、4月25日に行われた動労千葉結成25周年レセプションでの中野顧問の講演を要約したものです。)

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私の職場

●いまだに「人材活用センター」と同じ職場で高まる怒り

 国労東京 田中 邦夫

 私は、東京で働く国労組合員です。分割・民営化以前は東海道本線の運転士だった。いまは勤務場所は駅となっているが、本来の駅業務でない補助的仕事についている。勤務時間は朝9時から翌朝9時までの24時間勤務が主である。
  到着車両の遺失物の捜索や酔客が多く、トラブルが多いホームライナーのキップ売りなどである。いまも実態はあの悪名高い「人材活用センター」である。一応、毎朝の点呼では、駅員数として呼ばれるが、業務日誌などには記入されない欄外の処遇をうけている。JRになって17年、いまだに差別された24名の仲間が班として存在する。国労組合員であるが故の特別な職場である。
  職場が替わって最初に怒りを覚えたのは、呼び捨て点呼だった。なぜ呼び捨てにするのか、命令と服従じゃないかと抗議したところ、助役は、今まで何の問題もなかったと反論した。組合員の間にも不満があったようだが、抗議しなかったようだ。私は、「ふざけるなどこの職場でもそんなことはやっていない」、「○○社員とか敬称略とやっている」とさらに抗議した。翌日からは、呼び捨て点呼でなくなった。
  駅の社員として勤務しながら毎日気にかかることがある。それは、駅や車内でのアナウンスだ。
  ひとつは、前日の○○事故、○○故障などで列車電車が遅れたことに対するおわびである。メンテナンス合理化等による徹底した人員削減と、下請け孫請け会社への丸投げが原因となっていることは言うまでもないが、毎度のことなので、利用者もマンネリ化し、苦情も少なくなっているようだが、組合員として恥ずるところである。本部は、合理化反対とはいうものの、実際には何もせず、責任をJR総連に押しつけるのみだ。
  ふたつめは、警察の御指導御協力放送である。だれしもよく耳にするテロを口実とした不審物への警戒放送である。警察は、労働者や大衆の味方なのであろうか?否であるはずだ。あたかもそうであるかのようなアナウンスによって国民総監視体制に洗脳されている気がしてならないのだ。有事法制が成立した時、この警察という言葉が自衛隊という言葉におきかえられる日が来る。そう想うのは私だけなのだろうか。
  小泉は、昨年12月、イラク戦争に「復興支援」という口実で自衛隊を派遣し、米英帝国主義の侵略戦争に全面的に協力し、戦争のできる国へとまい進しようとしている。この間の、労働運動への弾圧を見れば明らかである。5・27臨大闘争弾圧を始め、全金本山や関西合同労組などの闘う労働組合に対する攻撃がそうだ。戦争のできる国家にするには、労働組合を産報化する以外ないのは至極当然といえることである。
  私たちは、いま5・27裁判闘争で完全無罪判決を勝ちとに全力をあげている。そして、酒田体制を打倒し、何としても国労再生を実現しようと闘っている。「活動家」だけが集められた私の職場だが、その先頭でたたかう中で、絶対に勝利できるという確信が大きくなってきた。みなさん、国鉄闘争勝利、反戦闘争勝利に向けともにたたかおう。

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たたかいは進む

☆5・21労組法改悪阻止、国会請願行動を闘う

  5月21日(金)、明治公園における「有事法制反対、イラク自衛隊撤兵」の大集会に先がけて、スタンダード・ヴァキューム石油自主労働組合と関西合同労働組合に結集する労働者たちは、労組法改悪阻止に向け、衆議院厚生労働委員会45人のうち15名の議員に請願を行った。
  13時からの行動に先立って、大阪選出の辻恵議員に要請した。辻議員は、4月21日の日弁連クレオにおける集会で、司法改革反対で発言した議員であり、労組法改悪反対の闘いにも理解を示してくれ、請願署名団体143、個人5名計148筆の紹介議員になってくれた。
  13時からの行動では、3波にわたって、計15名の議員事務所を訪ねた。いろいろな情報もあり、有意義な請願行動となった。終了後、第2議員会館歩道入り口周辺で、ビラ入れ、マイクアピールを行い、関西合同労組、動労千葉、5・27国労臨体闘争弾圧を許さない会、動労西日本、京都―滋賀地域合同労組、広島連帯ユニオンの決意表明を受け、ス労自主の団結ガンバローで締めくくった。労組法改悪阻止へのまずは一歩だった。

☆4・28反処分闘争を闘う

 4月28日、4・28連絡会および全国の闘う全逓労働者、争議団など全国の闘う労働者は、被免職者の原職奪還、公社―郵政当局の郵政現場への過酷な攻撃を許さない闘いをまる一日闘いぬいた。
  この日、不当処分から実に25年、怒りをこめて、午前7時20分から赤羽局、正午から郵政公社、14時から大崎局闘争と連続的に闘いを展開した。
  最後に南部労政局事務所会議室で18時すぎから4・28連絡会は総会を開催、続いて18時45分から、全逓東京、大阪の全逓労働者の司会により4・28反処分集会が開かれた。最初に4・28裁判弁護団の遠藤弁護士による「高裁闘争勝利、治安弾圧立法阻止」の方針が出された。連絡会代表の桜井さんから「全逓全国闘争勝利、高裁闘争勝利を現場の力で勝利しよう」と基調を提起した。このあと連帯のあいさつ、職場での闘いの報告が続いた。最後にシュプレヒコールでしめくくった。

☆全金本山労組、勝利へ全国闘争を闘う

 全金本山労組は5月9日、10日の両日、仙台現地で8月全面解決を目指して仙台現地闘争が行われた。昨年の仙台地裁の判決で、本山労組員が現在就労できていないのは、本山資本が就労させなかったことにあるとの判決を受けて、現在仙台高裁のもとで8月全面和解に向けた実務者協議が続けられている。しかし、こうした中で今春、メインバンクのみずほ銀行が本山資本に対する債権約23億円を政府系債権回収機構に譲渡していたことが判明した。本山資本はここで争議を解決できるかどうか、直接本山資本の存続にかかわることになった。
  ところが本山資本の千葉敬次社長は、身体をはって争議解決を図るのではなく、自らの自宅と別荘を身内に生前譲渡していたことが露見した。会社がつぶれるか、組合がつぶれるかとことんやるとの方針だ。こうしたやり方に社内で争議解決に向けたガンは社長だとの声さえ上がり始めている。
  こうした緊迫した情勢の中で、今回初めて社長宅抗議デモが敢行された。静かな住宅街にある千葉宅に対して「争議を解決しろ」のシュプレヒコールがくり返し叩きつけられた。付近の住民からは「ガンバッテ」の声さえ上がった。本山資本の悪質さは市民の中にも浸透している。
  デモのあと、近くの市民会館で全国総決起集会が開催され、全金本山労組から、全面勝利まで闘い抜く決意が表明された。また昨年の中野書記次長に対する東北大学廃寮でっち上げ弾圧は、こうした本山資本の勝利的前進に対する争議破壊弾圧であることが明らかにされた。
  翌10日午前8時30分から10時30分まで雨の中、大衡工場門前闘争が貫徹された。

☆羽廣さん奪還歓迎集会かちとる

 5月20日、「国鉄5・27臨大弾圧を許さない会・三多摩」は、5・27臨大弾圧被告の羽廣憲さんを招いて、30名の結集で羽廣さん奪還歓迎集会を行いました。
  呼びかけ人代表の工藤英三さんが、「刑罰とは程遠い事件。無罪あるのみだ」と挨拶した後、5・27当日の模様を写したビデオが上映されました。裏切り者の本部派に対して、「国労の旗を売り渡すな」と必死で説得活動を行う被告の皆さんの様子が映し出されました。
  羽廣さんがあいさつに立ちました。羽廣さんは、「5・27は、国労本部と国家権力によって仕組まれた弾圧だ。機動隊を導入した酒田が国労の委員長になった。組合員を権力に売るようなやつを許しておくわけには行かない。新たな国労を被告団が先頭になってつくる決意で頑張る。許さない会運動を広げよう。10万人署名運動をすすめよう。絶対に無罪を勝ち取る」と熱烈に訴えました。
  許さない会事務局の山川博康さんは、「日本の労働運動を大きく塗り変えていく決意で臨大弾圧に勝とう」と訴えました。国労豊田電車区の中村さん、立川市職労の代表が、羽廣さんとともに闘う決意を述べました。国鉄労働運動を守ることをとおして、労働運動の新しい潮流を登場させる決意にみなぎった集会でした。 (三多摩交流センター・加納敏弘)

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読者のページ

破産と闘う   関西合同労組日本管検工業分会

「突然の破産」

  2003年12月25日のクリスマス、午前8時から私たちの組合の新しい闘いが始まった。会社の「本日、破産を申し立てる」の発言とともに。そして「皆さんは解雇となります。」と会社代理人弁護士の言葉が続いた。一瞬の沈黙の後分会長が「事前協議の確認書があります。解雇は認められない。団交を要求します。」と反撃を開始した。以前から組合はこのままの会社経営であればいずれは倒産がありえると考えていたが、事前協議確認書を無視した、また余りにも突然の事態に驚愕した。当初は組合の分会員5名だけの団交が始まったが、時間がたつにつれ本部、各支部、各分会や友好労組の応援がぞくぞくと支援に駆けつけてくれた。団交中であるのでまさか裁判所への破産申し立てはできないだろうと私たちは思っていたが、当日12時半頃裁判所から保全執行が行なわれた。弁護士事務所より誰かが申し入れたようであった。その後数度の団交で確認書や協定書を勝ち取った。同時に裁判所へはこの破産申し立ては組合嫌悪の不当労働行為であるので、早急な破産宣告を行なわないようにとの主旨の上申書を計3回にわたり提出した。25日から、分会員は交代で会社に泊り込みに入った。(この泊り込み体制は翌年2月15日まで続く)また、毎日9時と、13時に裁判所へ出向き、破産宣告がおろされたかどうか、破産管財人が決定したかどうかを確認した。それと同時に大阪地方労働委員会に不当労働行為で申し立てをおこなった。

「破産宣告」

  翌年1月14日に破産宣告がおり、破産管財人が決定した事を裁判所に出向いた分会員からの連絡を受け取ると同時に、破産管財人弁護士が会社にやってきた。1月14日からは会社代理人弁護士ではなく、破産管財人との団交を行なってきた。(会社代理人弁護士には団交要求をほとんど毎日FAXを送付した。)そして各分会員の自宅へは破産管財人より1月14日付の解雇通知が、当然ではあるが、事前協議もなく送られてきた。
  私たちは、地労委対策、破産管財人(裁判所)対策、会社保全、自主生産活動への取り組み、他争議分会への支援、他組合への応援、東京での集会の参加、そして自身の失業保険や年金対策等の対応で忙しく日々を送ってきた。途中展望の見えない闘いに心がなえそうになるときや分会の団結が壊れそうな時もあったが、議論を積み重ねて何とか持ちこたえている。
  いよいよ第一回債権者集会が2週間後に迫った時、会社が裁判所に提出した申立書に記載してあった債権者への対策に行動の重点を置くようになった。債権者のリストを作成し、一軒一軒に債権者集会の議決権の委任をしてもらうように文章を郵送し、関西圏であれば直接訪問して委任のお願いをして回った。遠方へは電話による依頼を行なった。私たち労働者も破産に責任があるという会社、委任をするような事は一切しないという会社、債権者集会には必ず出席するという会社、組合活動に理解があり快く委任状をくれる会社、組合の主旨に賛同してくれる会社等色々であったが、断る会社が多かった。それでも60社のうちなんとか12社ほど委任をしてくれた。旧従業員にも委任状を求めたが委任のなんたるかが分からないためか、委任状は1通も返ってこず債権者集会にも参加しなかった。会社が作成した債権者リストは11月でのものであったので、12月25日での債権者とは若干の違いがあった。その上債権届を裁判所に出していない会社もあった。(このため集めた委任状のうち数件は無効であった)

「債権者集会」

  債権者集会の当日、分会員と労組本部の委員長他が旗と横断幕を持って裁判所前に集合し、伊丹地裁へ入った。最新の債権者リストと債権者および委任状を確認して法廷へ入った。そこには長テーブルが3、その前にいすが30脚ほどならべてあった。てっきりテレビや映画で見る法廷(一段高い位置に裁判官がすわり、右側に代理人弁護士、左側に管財人、低い柵の後ろ傍聴席に債権者という配置)とは違い、同じ平面に裁判官、弁護士、管財人と債権者が対面していた。社長が出席していたのには驚いた。
  冒頭、裁判官が管財人にこれまでの経過報告を報告させた後、組合以外の債権者からの発言を求めた。2、3の発言があった後、当事者である分会員の発言に移った。A分会員は淡々と冷静な発言をし、B分会員は裁判官に訴えかけ、C分会員は管財人を弾劾し、D分会員は座っていた椅子を投げつけんばかりに、激しく社長を追及した。最後に分会長がこの破産による解雇は地労委において不当労働行為で抗争中であり、もし裁判所が営業の停止を決定するならば、裁判所が違法行為に荷担する事である。また私たちは地労委での不当解雇、現職復帰のために職場を維持しているので営業の停止は行なわないようにと強く求めた。その後、本部の執行委員長や書記が営業停止の反対意見の発言があった。組合は営業の停止が決定されるのではないかと不安に思っていた。しかしながら裁判官の債権者集会の継続を7月16日に開催するとの決定で、第1回債権者集会は営業の停止を決議できずに終わった(何故だか知らないが、次回は第2回ではなく、第1回の継続とのこと)。
  裁判所から出て、組合員が集合し感想などを述べ合った。まだまだ私たちの闘いは始まったばかりである。いろいろな困難を乗り越えなければならないし、またこれから起こるかもれ知れない弾圧に負けないよう、最後に「団結がんばろう」で締めくくった。

ますます悪くなる郵便局の労働条件  神奈川 全逓 桜井隆夫

  6月23日に北海道・旭川にて全国大会が開催される。「全逓全国大会」と思ったらそうではなく、なんと「日本郵政公社労働組合全国大会」として開催されるというではないか。ここまでデタラメなことをやるのか本部は。
  そして全国の職場では、60歳まで労働できないような労働条件になっている。
1 「コストを減らせ」との大号令の下、さまざまなケチケチが実行されている。食堂が暗い、廊下が暗い、トイレが暗い。そしてとうとう、6月7日開局する神奈川県麻生局では、風呂がなくなりシャワー室だけとなった。さらに、食堂設備がなく食事室があるのみである。
2 郵便局においてフレックスタイム制が導入される。本部は「妥結承認は全国大会で」としているが、なにを言っているんだ。
   提案内容は、必ず勤務すべき時間帯(コアタイム)として、午前10時から午後3時、職員の判断で始終業時間を決めることのできる時間帯(フレキシブルタイム)として、午前8時〜10時(始業時間帯)、午後3時〜午後9時(終業時間帯)、1日の標準勤務時間は8時間(標準勤務時間帯は8時30分〜午後5時30分)
   さらに保険職場では、郵便局の局枠を越えて募集させる、「営業エリアの広域化」施策の拡大が提案されている。川崎港局を川崎中央局に、日本橋局を京橋局に、宇品局を広島中央局に統合するとしている。さらにこの施策は保険だけではなく貯金でも実施されている。
3 郵便配達は郵便課、集配課だけでなく、日逓労働者の輸送・集荷労働という「三者一体」で行われています。その日逓労働者に「合理化案」4月上旬示された。「業務上傷病見舞金の廃止」「諸手当の廃止」「年間休日日数の削減」「年休要員の不補充」「新賃金・新退職金規程の制定」などの内容です。
  公社全員に対する施策の全容を共有し、そして勝利する方針をつくろう。

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