2004年9月号(No.174)  目次
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労働者の目 怒りのハンマーを

労働ニュース
  ●自殺/郵政/雇用保険など●日誌

国労5・27臨大闘争弾圧刑事裁判

国労第72回定期全国大会の課題

・特集 改憲・教育基本法改悪阻止へ
  ●改憲阻止闘争に向けて
  ●改憲を先取りする教育基本法改悪を阻止しよう

成果主義賃金導入狙う新潟日報資本との闘い

7・17〜21サンフランシスコ訪問報告

闘う合同労組 第1回 関西合同労組

今、全逓労働者は?

・たたかいは進む   ●労組法改悪阻止、4・28反処分闘争   ●全金本山闘争など

読者のページ

労働者の目

●怒りのハンマーを

 全国労働組合交流センター常任運営委員 庄山 正

 アメリカのILWU(国際港湾倉庫労組)・ローカル10(第10支部)は、米大統領選を前にした10月17日に「ブッシュ打倒、ケリーもNO」を掲げ、百万人を組織した大行進を行おうとしている。アメリカのナショナルセンターAFL−CIOの「民主党支持・ケリー支持」の方針に真っ向からの反乱である。
  ブッシュは、「9・11」の後、アフガニスタン、イラク侵略戦争に突入する一方で、ILWUをつぶしにかかり、協約改訂闘争に、タフト・ハートレイ法(80日間労働組合のストを禁止する法)を発動し、海軍投入をはかるなどして、闘いの弾圧に全力をあげた。ぎりぎりで、この協約を守りぬいたILWU・ローカル10が、闘いの総括として出した結論は、「AFL−CIOなどの屈服・変質を下から打破していかなければ現状を突破できない。そして国際的な労働者の連帯闘争を本気になって組織しなければならない」というものであった。今、アメリカではILWUを先頭に「ランク・アンド・ファイル(一兵卒)」運動、労使協調の幹部を打倒して、労働組合を現場の組合員の手に取り戻そう! という運動が盛んになっているという。アメリカでは国防総省も民営化するという文字通りの大民営化攻撃、雇用・賃金破壊攻撃の下で、労働組合のあり方が切実に問われている。
  ローカル10の中心的指導者であるジャック・ヘイマン業務部長は、訪問した動労千葉・田中康宏委員長の「今、私たちは日本で、様々な労組がナショナルセンターの違いなどで、統一行動が発展しないこと、連合・全労連の屈服をどう下から打破するかということ、このふたつの壁に挑んでいます」との訴えに対して「すばらしいことだ。全力で支援したい。私が壁を壊すべくハンマーを持って参加しましよう」と語ったという。動労千葉をはじめとする3労組が呼びかける11月労働者集会は、日・米・韓のたたかう労働組合が再び合流する重要な集会になろうとしている。一人ひとりが怒りのハンマーを持ってたちあがろう!

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●労働ニュース(04年7月16日〜8月15日)

自殺者最悪3万4千427人
  昨年1年間に自殺した人は前年より2千284人(7・1%)多い3万4千427人で、統計を取り始めた78年以降で最多となったことが22日、警察庁のまとめで分かった。特に中高年男性を中心に、負債や生活苦など「経済・生活問題」が動機とみられる自殺が同12・1%増と急増、過去最悪の8千897人に上った。

経団連、改憲を議論
  日本経団連は15日、憲法改正、安全保障政策など日本の国家像、国家戦略を議論する「国の基本問題検討委員会」(委員長 三木繁光・東京三菱銀行会長)の初会合を開いた。来年1月をめどに論点の整理と提言をまとめる。経団連が憲法改正問題に取り組むのは初めて。

敵基地攻撃力の保有検討
  今年末に政府が策定する新たな「防衛計画大綱」に向け、防衛庁が他国の弾道ミサイル発射基地などをたたく「敵基地攻撃能力」の保有を検討していることが25日、分かった。日本の防衛政策は憲法との整合性から専守防衛を基本理念とし、他国の基地を攻撃する能力のある装備は持たず、攻撃は米軍に委ねる立場を堅持してきた。この方針から逸脱する恐れがあり、今後、波紋をひろげそうだ。

郵政3事業ごとに新会社
  郵政事業民営化の組織改革をまとめた内閣府の素案が20日明らかになった。郵便、郵便貯金、簡易保険の事業ごとに組織を分割し、持ち株会社を使って新会社を傘下に置く。3事業を一体で運営している日本郵政公社の形態ままではリスク管理が徹底できない懸念があるうえ、民間との競争条件の格差も残ると判断した。政府の経済財政諮問会議で議論し、9月中旬をめどに結論を出す。

職員、公務員から除外
  政府の郵政民営化準備室が検討を進めている民営化後の人事制度についての原案が22日、明らかになった。約27万人いる日本郵政公社の職員は民営化する07年4月から国家公務員の身分保障を撤廃する。郵便貯金や簡易保険など事業別に設立する新会社が独自の賃金体系を導入し、経営の自主性を高めるのが狙いだ。

「独立法人化で労働条件悪化」
  国立病院で働く職員やパートら計28人が28日、4月の独立行政法人化に伴い労働条件が引き下げられているとして、3年後に予定されている賃下げの中止、パートからフルタイムへの労働条件回復や慰謝料など総額約8千300万円の支払いを国立病院機構に求め、東京地裁に提訴した。

雇用創出策 市町村が選択
  坂口厚生労働相は21日、新たな地域雇用創出策の骨格を固めた。国が一律に対象分野を決める従来の雇用政策を転換、環境や観光、伝統産業など市町村が地域の実情に応じて自ら選んだ重点分野の創業を財政的に支援する。05〜06年度の雇用対策の柱として、来年度の予算要求に盛り込む。

長期休暇は年単位で
  厚生労働省の専門研究会は23日、労働者の働く意欲の向上につなげるため、目的を限定しない1年以上の長期休暇を取得できる制度の導入を、企業に求める報告書をまとめた。制度が企業の負担にならないように休暇中は無給を前提にすることなどをモデル案として示し、導入を促す考えだ。

寒冷地手当7割減額勧告へ
  人事院が8月上旬に実施する国家公務員の給与勧告とあわせて、内閣と国会に提出する寒冷地手当の見直しに関する勧告の内容が23日明らかになった。年間約110億円に上る手当を09年までに約30億円に引き下げる。対象地域も現在の30道府県から、原則として北海道だけに限定。

非正社員 3人に1人
  厚生労働省が21日に発表した「03年就業形態の多様化に関する総合調査」によると労働者に占める非正社員の比率は34・6%と前回調査(99年)より7・1高まり、全体の3分の1を占めた。

総合職女性わずか3%
  総合職や一般職などコース別の雇用管理制度を導入している企業で、総合職に占める女性の割合が3・0%にとどまっていることが23日、厚生労働省の調査で分かった。総合職の女性の割合が1割未満の企業は全体の89・4%に上り、男女格差が依然大きい実態が浮き彫りになった。

失業給付 月100万人割る
  03年度に雇用保険から失業給付(基本手当)を受けた人は月平均83万9千人で、前年度比20万9千人(19・9%)の大幅な減少となったことが12日、厚生労働省の集計で分かった。100万人を下回るのは6年ぶりで、95年度(83万7千人)以来の水準まで低下した。雇用保険財政は、受給者の増加で03年度末までに積立金が底をつく恐れがあったが、景気回復に伴う雇用環境の改善などで、破たんはひとまず回避した。

私大教員8割未加入
  私立の大学や短大の教員の8割が雇用保険に加入していないことが、厚生労働省の調べで分かった。朝日新聞の調べでは東京六大学のほか、関西の有名私大も含まれている。同省の再三の加入働きかけにも反応が鈍いことから、「これ以上違法状態を放置できない」として、職権による強制加入も視野に、本格的指導に乗り出した。

生活保護費 国と地方が対立
  生活保護費の国庫補助率引き下げをめぐり、国と地方が激しく対立している。厚生労働省や財務省は、国の負担割合を現行の4分の3から3分の2に下げ、社会保障費の抑制策の柱にしたい考えだが、地方自治体は「国の責任放棄だ。国から受託した事務の返上も辞さない」と反発。国と地方の税財政を見直す「三位一体改革」の行方もからみ、溝は深まるばかりだ。

「6・3制」を弾力化
  河村文部科学相は、50年以上続いてきた義務教育9年間の分割方法「6・3制」を市町村が独自に変更できるようにすることなどを盛り込んだ義務教育制度改革案をまとめた。国が制度を支える原則を変えないまま、地方ができるだけ自由に学校教育に取り組めるようにするのが目的。近く公表し、具体化を事務方に指示する。

 労働日誌(04年7月〜8月)

7月20日
  労働政策研究・研修機構は、「働く意欲と雇用管理のあり方に関する調査」を発表。それによると成果主義を導入している企業は55・8%、3年以内に導入を予定している企業は26・7%、となっている。また、3年前との比較で、「業績や成果を上げようという雰囲気が強まった」との回答は、企業が72・8%、従業員が37・6%となり、「1人ひとりの能力を生かそうという雰囲気が強まった」との回答は企業が64・7%、従業員が25・3%となった。意識の違いが鮮明となっている。

7月23日
  OECDは、企業年金制度の指針となる勧告を発表。その中で、年金の加入権について、パートタイムとフルタイムの従業員を区別せず、平等に扱うことを盛り込んだ。

7月26日
  中央最低賃金審議会は、04年度地域別最低賃金額について、実質的な据え置き答申を行った。据え置きは3年連続。

7月26日
  「日本経済活性化のための経済連携を推進する国民会議」は、外国人労働者受け入れのための環境整備として、看護師や介護福祉士、ホームヘルパーなどの在留資格職種の拡大や日本語教育などの支援を早急に実施するよう求める提言を小泉首相に提出した。

7月30日
  総務省が30日発表した6月の完全失業率は、前月と同じ4・6%だった。男性が前月に比べ0・2上昇して4・9%、女性は0・2低下し4・2%となった。厚生労働省が同日発表した6月の有効求人倍率は前月より0・02高い0・82倍。

7月30日
  総務省が発表した6月の家計調査報告によると、サラリーマン世帯(2人以上の世帯)の消費支出は、30万8千104円で、物価変動の影響を除いた実質値の前年同月比はマイナス1・3%と3カ月ぶりに減少した。

8月6日
  人事院は国家公務員の給与に関する勧告を出した。月例給・一時金ともに「改訂なし、据え置き」だが、「給与構造の基本的見直し」として、昇給・昇格の見直し、実績評価に基づいた査定昇給の導入などを挙げている。

8月7日
  政府が検討している公務員制度改革関連法案の骨子が明らかになった。5等級からなる「能力等級制」の導入、「能力・実績」評価制度の導入などが中心的内容。

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●「吉田書記長に指示され被害届を出した」と告白

 幻の解決案にすがりついた本部派の末路  ――長野地本・「共謀」立証のための池田証人

 国労5・27臨大闘争弾圧 第27回公判

 東京地裁で国労組合員ら8名への弾圧の第26回公判が7月21日に、第27回公判が8月5日開かれました。第25回から長野地本の東北信支部委員長(当時)の池田勝幸証人(協会派)への尋問が続いています。池田証人は、5・27臨大に警備のために参加し、自らも「暴行を受けた」と言うが、その行為は何ら罪に問われていません。彼は、「被告らが共謀していた」と立証したいようだが、「皆が一斉に動いた様に見えた」と言うだけでした。暴処法という戦前からの労働運動弾圧の治安法を発動させ、「共謀」で全員をまとめて全ての行為を加算して被告に押しつける役割をあえて担っている、重要な証人です。受けた「暴行」については、痛かったという趣旨の証言をしたが、検事はそれ以上の重要な役割を課しています。その役割をあえて引き受けた証人でした。

法的責任の追求を放棄する転換であると認めさせた

 なぜそのような役割をかって出たのか。弁護団の尋問によりその核心が次第に明らかになりました。
  検察側の証人から、被告に有利な証言を引き出すことは極めて困難なことです。事実を突きつけても、検事の立場に立ち言い逃れに終始するからです。池田証人も言い逃れを重ねましたが、弁護団の厳しい追求により、4党合意受け入れが国労にとって路線転換であることを認めざるをえませんでした。
  池田証人は「国労は以前から政治解決を求めていた」と、路線転換ではないと言い逃れようとしました。しかし、「法的責任について、以前は追及していたが、4党合意以降は追及しないということですね」という尋問に、「そうなります」と答えざるをえませんでした。
  池田証人は路線転換が是か非かという問題については、自分の判断は明らかにせず、「本部が決めたことに従うのが地方の役目」という実に主体性のない答えに終始しました。修善寺大会では本部方針を否決した事実をつきつけても、「4党合意は本部方針に従うのが当然」という旨の答えに終始しました。
  このような「本部支持」の姿勢で、「被害届けを出すように吉田委員長に言われた」と組合員の警察への売り渡しも居直りました。吉田書記長から言われ、組合員を警察に売り渡したと言うのです。労働組合の原則も投げ捨てたのです。

闘争団への「兵糧攻め」をいち早く開始

 この姿勢は、闘争団への「兵糧攻め」でも貫かれました。長野地本は、北海道の紋別と美幌の闘争団の支援に取り組み、「オホーツク」という有限会社を設立し、5名がその仕事に従事し生活を支えてきました。ところが、紋別と美幌の闘争団が4党合意の受け入れに反対すると、「支援打ち切り」を強行しました。池田証人は「闘争団にとって相当の打撃となった」と兵糧攻めをしたことを認めました。
  闘争団への支援打ち切りの理由も「本部方針に反対した」ことでした。長野地本は、国労本部が生活援助金を凍結する以前から「兵糧攻め」を行っていたのです。池田証人も東北信支部委員長として、かかわってきたのです。
  被解雇者の生活と闘いを支援するという原則も、「本部方針に反対した」という理由の前に消し飛んでしまったのです。これでは、「本部を支持する闘争団だけを支援する」ということです。反対するものは排除する論理です。
  国家的不当労働行為で解雇された組合員を守る、闘争団の不屈の闘いと共に歩むという国労闘争の原点は、どこにも見ることはできません。「闘争団は国鉄闘争にとってお荷物」というチャレンジ一派の本音が表れたのです。

集団脱退した新井たちの「心情は理解」と

 長野地本では、01年の夏から冬にかけて前本部執行委員の新井を中心に、国労からの集団脱退が強行されました。10月の全国大会で、多くの代議員から警告が出されましたが、本部は無視し容認しました。
  池田証人は、自分の地元で行われた新井たちの脱退工作を「知らなかった」と容認したばかりか、脱退についても「心情は理解できる」と擁護する証言を行いました。闘争団が4党合意に反対したので「解決の道が閉ざされた」と責任転嫁する証言を行いました。
  組合からの集団脱退は組合にとって最大の問題です。脱退工作の首謀者を擁護し、脱退の責任は闘争団にあるとする本末転倒した論理を平然をおこなったのです。

4党合意は国労解体が目的だったからはね返された

 池田証人は長野地本で闘争団への支援打ち切りを強行し、他方で脱退者を放置、擁護してきました。しかし、肝心の「1047名闘争の解決」には何の関心もなかったことを自己暴露しました。
  国労本部は「4党合意は解決案」「最後のチャンス」と叫び、機動隊を導入し戒厳令下で1・27臨時全国大会を強行しました。本部派にとって、「解決案」が出るのか否かは最大の焦点だったはずです。
  自民党筆頭副幹事長の甘利明は、国労本部派の屈伏を見て、さらに居丈高に国労解体策動をすすめました。それが、3月の4党協議でした。ここで甘利は「法的責任なしを認めたことと、最高裁に公正裁判を要求することは矛盾する」と国労本部に突きつけ、国労本部は「矛盾を解消する」と屈伏しました。
  池田証人はこの過程を尋問されると、「知りません」と答えました。「3与党声明にも書いてあるでしょう」という弁護士の尋問に、「そう書いてあります。3点の矛盾が指摘されています」と他人事のように答えました。
  池田証人は、「解決案」が出るかどうかには、関心もなかったことを自己暴露したのです。「4党合意による解決」「本部方針で解決」と言いながら、「解決」には何ら関心はなかったことを自己暴露した証言でした。

追い詰められていた本部派

 4党合意を受け入れた国労本部は、自民党の手先と化し国労の団結を破壊する先兵となり、延命を策しました。本部派(協会派・チャレンジ)は「本部方針に従え」とどう喝し、革同は「反対するのは外部勢力」と言い、団結破壊を居直りました。いずれも1047名の階級的団結とはほど遠い、党派の反動的利害を最優先する排除の論理です。この下で長野地本が実際にやったことは、資本さながらの兵糧攻めと集団脱退の擁護でした。
  本部派・長野地本に残された道は、反対派への攻撃以外にありませんでした。そして、現在の国労本部・酒田委員長、吉田書記長の指示に基づき、組合員を警察に売り渡すという労働運動にあるまじき犯罪行為にまで走ったのです。
  池田証人への尋問を通して、「国鉄1047名闘争」「解雇撤回・JR復帰」の内実が明らかにされています。「闘争団を守る」というが、「指示に従う闘争団だけ守る」のか、「解雇撤回に向け守る」のか、まったく違います。池田証人は前者であることを本人の口から述べたのです。
  当該3組合の団結を固め、闘いぬかなくてはなりません。労働運動の原則を貫く潮流を大きく発展させることが、勝利の道であることを改めて確信しました。   (松田浩明)

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●国労第72回定期全国大会の課題

 酒田・革同連合による1047名闘争の解体策動をうち砕こう!

 「解雇撤回・JR復帰」をかかげ、鉄建公団訴訟を取り組もう!

 8月26〜27日、国労第72回定期全国大会が熱海のニューフジヤホテルで開催される。本国労大会の課題は、昨年12・22最高裁反動判決に屈し、「解雇撤回・JR復帰」を放棄した国労本部による「総団結」の名による闘争の収拾=解体策動をうち砕き、「酒田・革同連合執行部打倒・国労再生」へ、鉄建公団訴訟の取り組みを決定し、1047名闘争の勝利を開く総決起大会としてかちとることである。

1047名闘争破壊の大反動をうち破ろう

 国労本部は、全国大会を前に、「全国大会を総決起・総団結の大会にする」という「7・1アッピール」を発し、「闘争団の生活援助金を凍結してもいい」などとウソやペテンまで使いながら闘争団をはじめ国労再生を求める組合員の闘いを封じ込め、動労千葉を排除し、1047名闘争の陣形の許し難い破壊策動を開始している。その策動は、「4・13国鉄闘争支援大集会」によって切り開かれた1047名闘争の新たな発展の歯車を逆転させる大陰謀であり、1047名闘争を早期収拾して総屈服させる大反動である。この破壊策動の中心は、国労の酒田執行部であり、それと結託した日共・革同だ。

「訴訟はしない」と酒田委員長が発言

 『国労文化』最新号の酒田委員長のインタビューと「8・4国鉄1047名の解雇撤回をめざすシンポジウム」での国労弁護団の岡田尚弁護士の発言は、そうした国労本部の本音をあけすけにするものだ。
  酒田委員長は、「訴訟は最後の選択肢です。訴訟を起こせば、裁判所は和解を提起し、相手も応ずるという意見もあるが、これは主観的願望や期待感であって、本件に限って言えば、訴訟の場合、相手方は一切和解に応じず裁判で決着ということになる」と述べました。それにたいして「訴訟を行いながら政治解決と言うことはないのか?」との質問に、「そうです。相手は甘くない」と答えている。
  また岡田尚弁護士は、「情勢は4党合意の時よりも厳しい。闘争も17年を経過した。早く解決したいんでしょ。だったら訴訟などやらないことだ」と発言している。
  酒田委員長も国労弁護団も、1月国労拡大中央委員会において「検討する」としてきた「新たな訴訟」について、鉄建公団訴訟への合流はもちろん、国家賠償請求もやらないと述べているのだ。
  「新たな訴訟」の放棄を公言する国労本部の腹は明白である。彼らのねらいはただ一点、闘争の収拾である。そのためには、4・13集会の地平がどうしてもじゃまなのだ。
  その意図を全国大会向け「04年度国労運動方針(案)第1次草案」はあからさまにしている。「第1次草案」のどこを探しても「1047名闘争」や「解雇撤回・JR復帰」の文字がない。「不当労働行為根絶」のスローガンも消え、「JR不採用事件の早期解決」に置き換えられている。国労本部は、もう「解雇撤回・JR復帰」を投げ捨てしまっているのだ。
  だから6月のILO報告にすがって何の展望もリアリズムもない「ILO勧告に基づく政治解決」を空叫びしながら、全力をあげて動労千葉を排除し、国鉄1047名闘争陣形を破壊しさろうとしているのである。
  先日行われた「8・5大阪集会」でも、上村西日本エリア本部委員長が、公然と動労千葉を排除する発言を行っている。4党合意を推進してきた日共・革同は1047名闘争の発展などまったく考えていないのだ。

闘争団の切り捨て許すな!生活援助金凍結解除せよ!

 国労本部は1047名闘争の破壊に全力をあげている。国労本部の「ILO第6次報告に基づく政治解決」のスローガンは、それを押し隠すためのものだ。
  そもそもILO第6次報告にすがった「早期政治解決」に何の展望があるのか。8・2〜3の国労の中央行動では、「早期の政治解決を求める」などと言いながら、国会議員や政党関係者から相手にもされなかった。何のリアリズムもないのだ。
  しかもILOの第6次報告は、日本政府の反動的報告を受け入れ、国家的不当労働行為を否定し、破産した四党合意の復活を求めた反動的なものである。こんな第6次報告にすがって一体何の展望があるというのか。
  小泉(=奥田)政権は、イラクに自衛隊を派兵し、教育基本法改悪や改憲を叫び、郵政民営化など民営化・資本攻勢を容赦なく加えてきている。まさに「戦時下」ともいうべき状況に突入した日本労働運動において、首を切られた労働組合の側が首を切った政府・JRにたいして「解決」をお願いするなど本末転倒もはなはだしい。
  しかし、国労本部は、4党合意破産を認めるどころか、その執行部責任を開き直り続けている。それどころかまともな労働組合の指導も放棄している。いまや最高裁反動判決に飛びつき、ここぞとばかり闘争の収拾・解体へ動き出しているのだ。

1047名闘争破壊のため「建交労との共同闘争」を利用

 国鉄闘争勝利の道は何か。それは、国労、建交労、動労千葉が鉄建公団訴訟に取り組み、国労闘争団・全動労争議団・動労千葉争議団が初めて一堂に会して共闘を誓い合った4・13国鉄闘争支援大集会の地平を発展させることだ。4・13集会は、動労千葉の3月ストライキ、3・20イラク反戦の大高揚、さらに「日の丸・君が代」不起立闘争に立ち上がった教育労働者の闘いと結合し、戦時下の日本労働運動、階級闘争に大きな展望を与える闘いであった。
  ところが国労本部は、この集会にたいして「国労とは一切関係ない」(東京地本声明)と敵対を露わにした。そして、今また、4・13集会の地平をなきものにしようと「国労と建交労の共闘」を叫び、動労千葉の排除をねらって8・5大阪集会―8・23東京集会を開催した。
  しかし、動労千葉を排除して1047名闘争は成り立たたない。国労本部はそのことを百も承知であり、ただただ1047名闘争の破壊ためにのみ「建交労との共同闘争」を叫んでいるのだ。

1047名が団結して鉄建公団訴訟に立ち上がろう。酒田・革同執行部打倒・国労再生を勝ち取ろう

 全国大会の第2の課題は、「新たな訴訟」の放棄を公言する国労本部の策動をうち砕き、1047名闘争勝利に向かって、鉄建公団訴訟を取り組む決定をかちとることである。
  国鉄闘争は、最高裁反動判決などでつぶれない。裁判で負けたからといって勝利した争議はいくらでもある。国鉄闘争は、建交労、動労千葉、そして再建された国労が一つになった1047名闘争として発展することの中に勝利の道がある。
  その点で8月国労全国大会と8月建交労大会は重大である。ここで鉄建公団訴訟の取り組みを決定しきらなければならない。国労闘争団が進めている鉄建公団訴訟に建交労が合流すれば、動労千葉が合流し、国労闘争団、全動労争議団、動労千葉争議団が一つになった1047名闘争は、4・13集会への大反動を突き破って本格的に発展する過程に突入する。それは、国鉄闘争と日本労働運動の新たな高揚の扉をひらくものだ。酒田・革同連合を国労内部からうち倒して国労再生をかちとるときの声となるだろう。
  国鉄闘争こそ戦争と大失業時代の労働運動の帰すうを決する闘いである。日本の労働者階級が侵略戦争を拒否し、改憲と民営化・資本攻勢の嵐をうち破る基軸的闘いである。4・13集会への大反動を1047名闘争の団結した力でうち破り、8月国労全国大会を鉄建公団訴訟の総決起、酒田・革同執行部打倒・国労再生・1047名闘争勝利の総決起大会としてかちとろう。  (8月24日 山口 聰)

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特集 改憲・教育基本法改悪阻止へ

●憲法9条改定が改憲攻撃の核心 ―改憲阻止闘争に向けて―

 ス労自主 山川博康

はじめに

 参議院選挙で社民、共産両党の惨敗を指して、護憲勢力の衰退が言われている。政界、財界、マスメディアの世界では、「護憲」が逆風にさらされ、「改憲」への追い風がかつてないほど吹いている。護憲は古臭く、改憲こそ新しい。そんなムードが漂う昨今の風潮だ。だが、改憲(論議)は政府・資本・支配層からの労働者・人民に対する攻撃である。この点を見失うと、「改憲論議をタブー視すべきではない」なる改憲派のペテン的議論に引き摺りこまれて、新たな人権を盛り込もう、とか環境権を加えようなどということで、改憲派の思う壺にはまってしまう。われわれの立場は「改憲阻止」以外にない。その上で改憲阻止の闘いをどうイメージするかである。支配者の側が9条改定を軸に戦後の日本を成り立たせていたあらゆる仕組みを破壊して、日本を戦争国家に根本的に改造しようと目論んでいる時、条文改悪反対運動とか改憲の歯止めかけ運動では通用しないだろう。あらゆる改憲反対(護憲派も含む)の労働者・市民、労働組合の総力戦で、支配者・権力者を打ち倒す闘いこそイメージすべきだ。そうした闘いを実現しないかぎり勝利はおぼつかない。

改憲の動向

 まず、改憲に向けた具体的な動きがどうなっているのか、ざっと見てみよう。
  第一は、00年1月、「日本国憲法について広範かつ総合的に調査を行う」ことを目的に衆参両院に作られた憲法調査会の動向はどうなっているのか。調査期間5年と定められたため、今年中には調査を終え、最終報告書のまとめの作業に入る。設置の目的が「調査」なので、調査会として憲法改正草案を作るようなことはできないが調査会の構成メンバーやこれまでの議論、参考人意見などの傾向をみれば、改憲志向の強い報告書となることは必至だ。
  第二は、政党の動きであるが、この半世紀余現行憲法を敵視し続けてきた自民党は、来年05年11月に結党50周年を迎え、それまでに党としての憲法改正案を作る方針である。党憲法調査会の憲法改正プロジェクトチームが昨年12月から週一ペースで憲法前文から全条項に亘って討議を行い、本年4月15日には討議を終え、憲法改正要項案をまとめている。自衛隊の存在を「自衛軍を保持する」と明記し、集団的自衛権の行使を明文化するなどした。
  民主党は選挙のマニフェストで「論憲」から「創憲」と変え、事実上の改憲勢力となった。今年の5月3日に『毎日新聞』が衆参両院議員を対象に行った憲法改正アンケートでは民主党議員の73%が改憲賛成と答えている。
  公明党は「加憲」という言い方をしながら、事実上の改憲の立場を明らかにしている。運動方針でも「憲法の三原則や9条は変えることなく、憲法の精神を発展・強化させながら、環境権やプライバシー権などを憲法に明記して補強する、あえて言えば『加憲』を検討する時期にきているのではないかと考えます」と述べている。
  そして、財界や一部マスメディアの論調が、こうした改憲の動きを後押ししている。
  例えば、経済同友会は03年4月、憲法9条や国民の権利・義務に関する規定の見直しなど、憲法改正を求める意見書を出した。包括的な改憲への提言は財界としては初めてのことだ。最近では日本経団連の奥田会長が7月22日〜23日の経団連セミナーで「自分は改憲論者」とした上で、9条改正をぶった。マスメディアでは、『読売新聞』が1994年11月に第一次案を、00年5月に第二次案をそれぞれ紙面で公表している。

改憲論の核心

 改憲の目的の核心は、憲法9条を改定して(具体的には9条2項の削除)、自衛隊を明確に「軍隊=国軍」に位置付け、さらに集団的自衛権の行使を正当化することにより、海外での軍事行動(=戦争への参加、戦争の遂行)を可能にすることにある。この手の改憲論は例えば、中曽根康弘「わが改憲論」(00年3月)、橋本派・憲法改正案(00年12月)、自民党国防部会提言(01年3月)山崎拓「新憲法試案」(01年5月)、経済同友会憲法問題調査会意見書(03年4月)、自民党憲法調査会改憲素案(03年5月)など枚挙に暇がない。
  しかし、現代改憲論議の特徴としては、財界からも集団的自衛権に関する政府解釈の変更や九条改定の要求がシリアスなものとして提言されるようになった点である。経済同友会の意見書のまとめ役を務めた高坂節三(栗田工業顧問)は、集団的自衛権の行使を熱烈に擁護するが、注目すべきなのは「グローバル化とは、日本の資本や人材が世界中に広がって行くこと。これを守るためには何らかの方策が必要だ。だから米国と提携するのだが、ここだけは自分がやる、というところがないといざという時に言いたいことが言えない」と述べている点だ(『朝日』03年5月27日)。「ここだけは自分がやる」というのは、将来自衛隊をアジア諸国に単独派兵させることの含みを持った発言である。グローバルに展開する日本の「国益」を守るために海外での自衛隊の軍事行動を可能にすることが、財界を含めて支配層のシリアスな欲求となっている。日本は自国の利益のために他国に戦争をしかける「普通の国」に変貌しようとしている。「9・11」への報復としてアメリカがアフガニスタンを空爆している最中に、『読売』は「国民の生命、財産を守ることは国家の根源的な責務だ。日本自身が国際テロの標的になれば、今回の米国と同様、個別的自衛権を発動していいはずだ」と論じた(01年10月14日)。日本もアメリカ・イスラエル並みの「先制的自衛権」を行使すべきと平気で論じている人々が九条改定の推進派である。

自民党の改憲案の基本的考え方

 来年11月の結党50年に憲法改正案を出そうとしている自民党の考える改憲案とはどういうものか。政権政党の改憲案の基本的考え方を知るのは重要である。党憲法調査会の会長の保岡興治の発言や、党憲法改正プロジェクトチームでの議論の内容を紹介する。
  保岡は第一に、「国民の生命と財産を守る、という国家の根本的責務である安全保障規定が、現実からあまりにも遊離した条文になっている。歴代政府は、その落差を埋めるため、情勢に応じた解釈変更を行ってきたが、これ以上の解釈改憲は、憲法や政治への取り返しのつかない不信につながりかねない」とした上で、「自衛隊の存在や集団的自衛権を含む自衛権を憲法に明示、さらに世界の平和と繁栄に寄与するため、国際的な平和創造活動に参加する旨、新たに憲法に書き込まなければならない」と述べている。具体的なことは述べていないが、要は9条2項を削除・修正し、集団的自衛権および自衛隊を明記することである。
  保岡が第二に述べていることは「日本独自の歴史、文化、伝統などの民族的アイデンティティの明記」である。これは具体的には、現行の「前文」を「詫び証文」「1920年〜40年を反省する余り、日本人の心は傷んでいる。これを克服するようなものにすべきである」「誤った平和主義、人権意識がはびこっている」などと言って、「日本の国家観」「美しい日本語の真価が問われるもの」「健全な愛国心」などを盛込んだものに、全面的に変えようとするものである。この発想は、「日の丸・君が代」「愛国心」を教育労働者と子供たちに押しつける教育基本法改悪に通じるものである。
  戦後、教育基本法改悪と改憲はワンセットで論じられてきた。中曽根が、残された政治生活で「憲法と教育基本法の改正問題をやり遂げたい」と語っていることにも示されている。
  第三に保岡が強調しているのが「基本的人権と公共性の調和」である。保岡は「現行憲法は、国家地域社会、家族など共同体に対する義務がはっきりしない。個と公自分と他人との自由・権利・幸せのバランスにもっとウェートが置かれてもいい」と言って、国家が個人の人権を守る義務を負うという立憲主義をひっくり返して、個人の人権を制限・規制する、個人を縛ることに力点を置くということである。「やたらに権利のみを主張し、国家、社会、家族への責任と義務を軽視する風潮を改めるべきだ」(自民党高市早苗00年8月の衆院憲法調査会で)、「憲法には、自由や権利に関する規定が非常に多く、義務や責任といったようなところに対する規定がまだまだだ」(保岡同)はその典型的な考えである。

改憲阻止へ

 どこから闘いに着手するかである。軸はやはり9条である。戦争をやる、やれる、そのために憲法を変える。ここが核心だ。従って改憲阻止闘争は反戦闘争としてある。自衛隊のイラク撤兵、多国籍軍への参加阻止、「有事立法を発動させない、完成させない、従わない」、こういう闘いが第一に必要だ。3・20日比谷公園に6万人の労働者・市民を結集させた闘いを再現し、これを拡大することだ。
  第二には「日の丸・君が代」強制を許さず決起した教育労働者の闘い、教育基本法改悪反対の闘いを教育労働者だけの闘いにせず、全ての労働者・市民の共通する課題として闘うことである。この闘いこそ改憲阻止闘争そのものだ。
  第三には労働者の団結破壊、権利剥奪を狙う労組法改悪阻止の闘い、国鉄、郵政、自治体をはじめとする全ての職場で労働者の団結を取り戻し、職場闘争を組織することである。そして、学習会を重ねて改憲阻止論を立てることが必要だ。「改憲阻止」「改憲阻止」と言っているだけでは闘いにはならない。日本は既に自衛隊という軍隊を海外へ派兵している現状にある。改憲攻撃はこういう戦時状況(体制)の中で起きているのだ。平時ではないということだ。従って、改憲阻止闘争はおのずと、戦争遂行政権を打ち倒す闘いに直結する闘いだ。だからこそ、丁寧な学習が必要である。

憲法第9条【戦争放棄、軍備及び交戦権の否認】
1 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武 力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
2 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。

 

 

 

主な改憲論議と関連事件

1952 対日講和条約・日米安保条約発効(4月)
1954 自由党と改進党が党憲法調査会を設置(3、4月)
自衛隊法・防衛庁設置法施行(7月)
自由党調査会「日本国憲法改正案要綱」公表(11月)
1955 社会党統一大会(10月)
自由党・民主党合同(11月)
自由民主党憲法調査会発足(12月)
1956 自民党調査会「憲法改正の問題点」公表(4月)
1957 政府憲法調査会活動開始(8月)
1960 安保闘争(5月衆議院にて強行採決)
1964 政府憲法調査会最終報告書(7月)
1980 奥野法相の改憲発言(8月)
自民党憲法調査会の活動再開(10月)
1982 中曽根内閣の発足(11月)
1991 湾岸戦争勃発(1月)
ペルシャ湾への掃海艇派遣(4月)
1992 PKO等協力法成立(6月)
1993 政党・マスコミ等で明文改憲論が台頭
1994 政治改革関連法成立(3月)
社会党が自衛隊合憲・安保堅持へ政策転換(9月)
読売新聞社が憲法改正試案を発表(11月)
1999 周辺事態法成立(5月)
憲法調査会設置のための国会法改正(7月)
国旗・国歌法成立(8月)
2000 両院の憲法調査会発足(1月)
2001 9・11同時多発テロ(9月)
テロ対策特別措置法成立(10月)
2002 有事関連3法案を閣議決定、国会に提出(4月)
2003 アメリカがイラク侵略戦争開始(3月)
有事関連3法案が成立(6月)
イラク復興支援特別措置法成立(7月)
自衛隊がイラクへ出兵(12月)
2004 有事関連7法案・3条約成立(6月)
小泉首相、自衛隊の多国籍軍参加を表明(6月)

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特集 改憲・教育基本法改悪阻止へ

●改憲を先取りする教育基本法改悪を阻止しよう

 11・6〜7日比谷野音に万余の結集を

 6月16日、与党の教育基本法改正協議会の中間報告(以下、与党案)がまとめられた。自民、公明が「全面改正」で合意したことで、改悪攻撃は新たな段階を迎えた。改悪法案の次期通常国会上程は必至の情勢である。
  いうまでもなく、教育基本法は、46年11月の憲法公布を受けて47年3月に公布・施行された憲法と一体の法律である。教育基本法の前文は、冒頭「われわれは、さきに、日本国憲法を確定し…」と宣言し、「個人の尊厳を重んじ、平和と真理を希求する人間の育成」を目標に掲げ、「日本国憲法の精神に則り…この法律を制定する」と、憲法理念との一体性をうたっている。
  条文でも、憲法の平和主義、国民主権を、1条・教育の目的に「平和的な国家及び社会の形成者」としてとり入れ、次代の主権者育成にむけ8条で政治教育の尊重を規定している。憲法26条の「教育を受ける権利」を具体化して機会均等(3条)、義務教育9年制(4条)、施設主義にたった社会教育の奨励(7条)を定めている。機会均等や男女共学(5条)は、憲法14条「法の下の平等」、24条「両性の平等」に沿ったものである。9条2項の公立学校における宗教教育の禁止は、憲法20条「信教の自由、国の宗教活動の禁止」に対応している。
  教育は人間の人格形成にかかわる精神的文化的営みである以上、憲法23条学問の自由、19条思想・良心の自由など、精神的自由権の保障を受け、教育の自由が保障されねばならない。ここから10条で教育行政の不当支配が禁止され、その任務は条件整備に限定される。
  教育基本法を変えることは、改憲にむけた一大突破口としての政治的意味を持ち、改憲にむけた国民意識の地ならしをねらうものである。

姿をあらわした《改悪教基法》=与党協議会・中間報告

 与党案は、前文を全面的に書き換えるほか、11条からなる現行教基法を18項目に再編する全面改悪案である。前文における憲法理念の取扱い、愛国心の表現などについて、未決着の領域が残されているが、すでにその内容は教基法の性格を根底から転換するものとなっている。
  第一に、「教育の目的」規定の大転換である。与党協案は、「教育は、人格の完成をめざし、心身ともに健康な国民の育成を目的とすること」としている。現行教基法は、前文の「個人の尊厳を重んじ」、1条の「個人の価値を尊び」と、個人の尊厳と価値をなによりも強調し、「国民の育成」には「平和的な国家及び社会の形成者としての」という限定をつけている。これに対し、与党案は、「人格の完成」をむしろお題目とし、「国民の育成」こそが教育の目的だと押し出すものとなっている。与党案では、「個人の価値」は、まったく登場しない。国家と個人の関係が反動的大逆転を遂げているのである。
  第二に、教育目標に「伝統文化の尊重」「愛国心」などを盛り込んだことである。与党案は、「教育の目的の実現を目指す」ものとして6項目の「教育目標」をあげ、「道徳心の涵養」「公共の精神を重視」「伝統文化を尊重し、郷土と国を愛し(大切にし)、国際社会の平和と発展に寄与する態度の涵養」などを盛り込むとしている。
  ここでは「平和」の二文字は、憲法の戦争放棄ではなく、それを一国平和主義と批判する国際貢献論の文脈で登場し、多国籍軍参加を意味するものとなっている。「愛国心に燃え、国際平和に寄与する態度の涵養」とは、まさに侵略戦争を支持し担う国民づくり、兵士づくりである。
  教育基本法に、愛国心、伝統・文化の尊重などの教育目標が盛り込まれれば、ただちに学校教育法が改悪され、学習指導要領、教科書検定基準も改訂され、教科書もどぎつい愛国主義に彩られていくことになる。
  教育基本法は、国民主義を抑制し普遍的人間主義を強調する教育目的を掲げ、他方で教育の自主性をうたうことで、平和教育の拠り所ともなってきた。だが、愛国心の育成を教育目標として法定した改悪教育基本法は、支配階級による人民の思想統制の強力な武器となるのだ。

教育が「国家に対する国民の義務」へ

 第三に、「権利としての教育」を完全に否定し、教育を国家に対する義務としていることである。「教育の目的」を「国民の育成」とした与党案は、「義務教育」の項目で「義務教育は、国民としての素養を身につけるために行われる」と規定する。国民学校令の「国民の基礎的練成」という目的規定の復活である。そして、子どもの「規律を守り、真摯に学習する態度」を盛り込み、さらにそれを「学習者の責務」と明記することを画策している。「子どもたちが教育を国民の義務として理解し、それに畏敬の念を持つこと」(『21世紀日本の構想』懇談会報告)が目指されているのである。
  「教育目標」に盛り込まれた「健全な身体の育成」「能力の伸長」「創造性」「職業との関連を重視」などは、エリート教育のための教育制度の複線化、教育内容の差別化、「障害児」の分離教育などを推進する理念である。また、「教育の機会均等」で「国民は、能力に応じた教育を受ける機会を与えられ」と、憲法26条、教基法3条の「ひとしく」を削除し、差別禁止事由から「社会的身分、経済的地位または門地」を抹殺している。「9年の普通教育」を削除していることは、義務教育年限短縮化の布石であろう。
  「家庭教育」の項目を新設し、「家庭は子育てに第一義的な責任を有する」とし、親は子の「健全育成」義務を負うとしている。男女共学の規定を削除していることと併せて、家族主義イデオロギーの反動的復活、性別役割分担固定化をもくろむものである。

国家による、行政行為としての教育

 第四に、「教育行政」の項目で、教育基本法10条の趣旨を完全に逆転させていることだ。いうまでもなく、教基法10条は、教育と教育行政を区別し、1項で「教育は、国民に直接責任を負って」と教育の自主性をうたい、行政権力や支配政党の「不当な支配」を禁じ、2項で教育行政の任務を「教育条件の整備確立」に限定している。
  最高裁判決でも、「教基法10条1項は、法令に基づく教育行政機関の行為にも適用がある」とし、「教育行政機関が法律を運用する場合においても、教基法10条1項にいう『不当な支配』とならないよう配慮すべき拘束を受けている」と認めている。ところが、与党協案は、10条1項の主語をすりかえ「教育行政は、不当な支配に服することなく」とすることで、教育行政の「不当な支配」を完全に免責している。これでは、日教組や教育運動を弾圧する根拠規定となってしまう。与党案の2項では教育行政の責務を、条件整備から「施策の策定と実施」と、教育内容への介入を正当する文言に変えている。
  また、「国民に直接責任を負って」を削除することで、教育行政の独立性を否定し、「適当な機関を組織して」と教育委員会廃止論に道を拓くものとなっている。
  「義務教育」の項目でも、国・地方公共団体は学校の設置者から「義務教育の実施責任」者とし、もはや教育の主体は行政権力であるとなっている。教員は、再び、国家意思の伝導者となり、行政権力に命じられるままの教育を施すコマとなる。
  与党案は、教育振興基本計画の条項を新設し、「政府は、教育振興に関する基本的な計画を定めること」としている。「教育振興基本計画」とは、国会も通さずに、教育政策を閣議で決定し、国−地方自治体を通じて貫徹していく仕組みである。まさに、「国家のための、国家戦略としての、国家権力による教育」の推進法というべきである。
  以上から明らかなとおり、与党案は、もはや改悪というレベルではなく、教育の目的、「教育の目標」を転換し、10条を解体することを通じて、教育基本法の性格と意義を180度逆転するものとなっている。新たに制定される新教育基本法とは、愛国心を強制し、日教組を弾圧する凶器以外のなにものでもない。

教基法改悪・改憲攻撃は、大日本帝国憲法―教育勅語の復活

 改悪教育基本法は、自民党案や読売試案などの改憲案を先取りした内容となっている。
  改憲案が「守るべき価値」として前文に盛り込んでいる「歴史、伝統、文化」「道徳心」は、教基法改悪の与党案の教育の目標にしっかりと盛り込まれている。改憲案が「国家あっての個人」を強調することに対応して、与党案は、「国民の育成」を教育の目的とし、「公共の精神」を強調している。戦争協力を国民の義務とし、海外での武力行使を規定したことに対応して「国際社会の平和に寄与する態度の育成」が盛り込まれている。
  男女平等規定の改悪、家族条項の新設に対応して、改悪教基法には家庭教育の項が新設されている。
  改悪憲法が国家権力を制限する規範から「国民の行為規範」となり、「国柄」と「国民の精神」を規定するものとなることに対応して、新教育基本法は、権力の教育支配を制約する法律から、次代の「国民の精神」「国民として身につけるべき素養」を規定し強制する法律となろうとしている。
  戦前における国家と教育の関係は、大日本帝国憲法(89年発布)と教育勅語(90年発布)の関係に示されている。「神聖不可侵」の天皇制国家の臣民づくりは、教育勅語を最高の規範とする忠君愛国主義の教育として進められた。改悪教基法はまさに、戦争国家の国民づくりをねらう「平成版教育勅語」である。
  教基法改悪を阻止する闘いは、全労働者階級の課題である。11・6教基法改悪反対集会― 11・7国際連帯労働者集会を連続闘争として、ともに日比谷野音を溢れ出る万余の結集でかちとろう。

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●成果主義賃金導入狙う新潟日報資本との闘い

 ―労組執行部提案に代表委で「採決待った」―

        新潟県内をエリアとする地方紙・新潟日報社(50万部、社員610人)は、03年春、従来の年功型賃金体系を全面的に転換し、職能資格制度に基づく「新しい人事・賃金制度」(以下、新制度)を提案しました。その根幹は、職制による人事考課に基づいた昇格・昇級を行ない、賃金・一時金を決定する制度です。退職金もポイント制に転換し、大幅な減額を持ち込むものです。能力主義・成果主義へと転換する内容です。
  新潟日報労組では、およそ1年半にわたり、新制度への総質問運動、先行導入労組の学習会などを行なってきました。労組執行部は6月末、新制度導入容認の方針転換案を提案。しかし、7月末の職場代表委員会では採決延期を議決し、事実上執行部方針に「ノー」を回答しました。査定をはじめとして会社提案への根強い拒否感、不信感を突きつけました。
  新聞業界では不況下の中、増ページ競争や、印刷部門の別会社化の過当競争に明け暮れる一方、紙面は改憲論をはじめとして政府権力への迎合と戦争翼賛報道への道を走っています。「戦前と似てきた」と転向状況が指摘されます。メディア全体の過当競争、翼賛報道と、そこに働く労働者の平和意識と労組・職場闘争の後退とは表裏一体の関係にあります。新潟日報で何が問われているのか、この1年半を報告します。

1年半の職場への訴え

 職場の労働者で組織する新潟日報労働運動研究会は、会社提案に対して職場配布チラシ「労研ニュース」を発行し、会社資本の狙いと危険性を訴えてきました。その要旨は、@労組が反対してきた査定を大幅に拡大し、労働者の個別競争をあおる、A総額人件費の圧縮・賃金抑制を狙う、B職場に分断と差別が持ち込まれ、職場を暗くする、C賃金決定権を会社が全面的に掌握することで、組合員の組合への団結を困難にし、組合の存在意義をなくすことを狙う、Dこれまでの慣行である労組との協定、事前協議制や雇用確保協定、会社提案に対する「労組同意の必要」などを事実上破棄して職場、労組の弱体化を狙う―などです。職場チラシのほかに、『本当に「新人事・賃金制度」は必要なのか』の討議資料(8n)も6月に全職場に配布しました。
  新潟日報労組では65年、職務職能給導入をストライキで闘い、阻止してきました。以来「査定」(職制が労働者をランク分けし、賃金に反映させること)反対を労組の闘争スローガンに掲げてきました。「査定=働く仲間の分断」という認識が強くあり、編集、制作職場を中心に査定反対は「労組の憲法」でした。しかも成果主義・能力主義賃金は、言論の自由を標榜する新聞社にふさわしくない制度であり、地道で粘り強い取材・仕事をやり難くし、「およそ似合わない」と受け止められています。実際査定は導入されていますが、毎年のベア・一時金における割合は数%というごくわずかの比率にとどめられてきたのです。

導入反対の1/4の組合員の声

 こうした中、03年度執行部は改選期を前にした6月末、1年間の討議集約として執行部見解と取り組み方針案「よりよい人事・賃金制度をめざして」を提案しました。内容は、従来反対してきた査定を原理的に認める方針に転換、会社提案を土台にして導入のための協議に入ろうというものです。委員長はじめ執行部は全職場に説明に回りました。組合員からは「査定を認めるのか」「会社の言いなりではないのか」などの意見が多く出されていたと言います。
  そして、04年度執行部選挙が7月に行なわれました。事実上、査定を認めるとする執行部方針の可否を問う選挙と受け止められました。このため私が、地方支局のひとり勤務職場にもかかわらず、締め切り直前に委員長候補に異例の立候補をしました。私の主張は「新制度の導入反対」、一方の委員長候補は、会社案への懸念をにじませながらも態度を鮮明にせず、「参加と論議の組合」を掲げ、対立選挙に持ち込まれました。
  結果は103票対293票。委員長選挙に敗れましたが、100票を越す得票は反対派としては過去最高の獲得数です。選挙結果は社内に衝撃を与えました。新制度導入に対する根強い意見と会社に対する抵抗を示しました。

査定容認の方針転換に職場からNO

 選挙後、03年度執行部は、提案してあった方針転換案の承認を求める職場代表委員会を7月末に開催しました。代表委員会では、「査定容認につながる方針案には賛成できない」「昨年大会で、査定反対を決めているはず」「執行部は組合員のためになることをやるのではないか、このようなことをしているのなら、労働組合は必要ない」「闘うことを忘れた組合ならいらない」と執行部方針に反対意見。「交渉して良い方向にもっていければいいのではないか」「強行導入されるより、テーブルについて納得できるものにすべき」「現行の年功型賃金には不満がある」と理解を示す意見。賛成・反対の意見が活発に出され、しかも若い組合員が積極的に発言する姿が目立ちました。
  こうした中で、私が「職場報告をそのまま次年度の新執行部に送ったらどうか。今日は採決を行なわず先送りしたらどうか」と提案しました。あくまでも採決を求める執行部とのやり取りの中、執行部方針に反対した代議員などから賛同する声が上がりました。私の提案が緊急動議となり、採決の結果、35名中賛成21名で可決されました。執行部方針の事実上の否決であり、極めて異例のことでした。

再び提案が可決される

 3日後に開かれた定期大会では、新制度についての議論はほとんどありませんでしたが、私が提出した「人事、人事考課は従業員の権利、労働条件に関わる。事前協議、労使共同決定の原則を守らせよう」とする議案書修正案について、活発に議論が行なわれました。これは、今年4月会社が新制度を管理職に先行導入した際、会社が「人事、人事考課は会社の専権事項」と言ってきたのに対して組合が全く反論できなかったことから、職場で問題となってきたことです。
  代議員から私と執行部に対して質問が出され、「今まで人事異動も組合の同意を得てやっている。一般的法律論がどうなるのかわからないが、労使合意・労使共同決定が新潟日報のやり方だ」(私)、「顧問弁護士によると、人事権は経営権の一部で『専権事項』は一般論として妥当性がある。組合が人事権に関わるのは、組合活動を妨げるなど客観的に不当と判断される場合だけ、団交で苦情処理される」(執行部)と姿勢の違いも明らかとなりました。採決の結果、またしても賛成多数で可決されました(組合顧問弁護士は日共系の人で、新制度に対しても「徹底抗戦して悪いものが入るより、協議してよりよいものにした方がよい」と階級性のないアドバイスをしています)。

組合活動の強化のために

 2つの機関決定を経て、新執行部は論議を引き戻し、再度職場の意見を聞くことになりました。組合としての導入合意は一旦否決されました。客観的には、会社が目標とした来春導入は厳しくなりましたが、導入を阻止できるかどうかはこれからの闘い如何です。今後も組合員の先頭で闘っていきます。  (新潟日報労働運動研究会  片桐 元)

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●11月労働者集会に向かって始動

 7・17〜21サンフランシスコ訪問報告

 国鉄千葉動力車労働組合 執行委員長 田中康宏

  7月17日〜21日、サンフランシスコを訪問しました。1カ月間にわたって開催されるレイバーフェスタの企画のひとつとして「労働者、戦争と抑圧」と題された労働者の国際討論集会が開催され、そのパネリストの一人として招かれたのです。
  また、昨年の訪米時に要請されて「俺たちは鉄路に生きる2」の英語版を作成し、また「ILWU物語」を日本語に翻訳して出版したこともあって、出版記念レセプションも開催されました。
  アメリカではILWU(国際港湾倉庫労働組合)ローカル10や34、サンフランシスコ労働者評議会の呼びかけで、この10月にワシントンで、「ブッシュ打倒、ケリーもNO」のスローガンを掲げて、「ミリオン・ワーカーズマーチ」(百万人労働者行進)が計画されています。今回の訪米の最大の目的は、アメリカでのこの画期的な取り組みと、日本での11月労働者集会の成功に向けた討議を行なうことにありました。
  実質4日間というわずかの期間でしたが、数多くの企画や討議の場、そしてストの現場にも参加し、ほんとうに実りの多い、そして私自身認識を新たにさせられた訪米でした。
  何よりも驚いたのは、私たちが訪れたときにはすでに、11月集会への代表団の派遣について、多くの労働者の間で討議されていたことです。「20名くらいの代表団を派遣したい」と集会で提起したり、「飛行機のチケットを手配する予定です」と話しかけてくる労働者がいたり、サンフランシスコ労働者評議会のウォルター・ジョンソン事務局長らとの討論の場では、事務局長自身が、「飛行機をチャーターしてパラシュートで会場に飛び降りよう」と、冗談ををまじえながら11月集会のことを呼びかけてくれるなどという情況でした。 昨年の11月集会が思いもよらず、サンフランシスコの労働者たちに大きなインパクトを与えているのです。
  これには背景があります。彼らが昨年11月集会に訪日した時期というのは、ILWUは、協約改訂をめぐる大闘争のすぐ後のことでした。ブッシュは、「9・11」の後、アフガニスタン〜イラクへの侵略戦争につき進む状況のなかで、アメリカ最強の労働組合であるILWUの解体に全力をあげます。そのために、ILWUが70年間守りぬいてきた労働協約(西海岸の全域港湾労働者について、労働組合が運営する雇用事務所を通さずに雇用・就労させることはできないことを定めた協約)を解体しようとしました。ブッシュは、この協約改訂闘争にタフト・ハートレイ法(80日間ストを禁止する等の労働組合弾圧法)を発動し、海軍を導入する等の恫喝をかけ、闘いはまさに国家をあげた攻撃との闘いになりました。ILWUは、ギリギリのところでこの協約を守りぬきます。しかし一定の後退も余儀なくされます。
  さらにはその後、オークランド港からイラクへの軍需物資輸送を阻止するためのピケットには、警察が木製弾で銃撃し、多くの重軽傷者・逮捕者がでるという大弾圧が加えられます。
  こうしたなかで、ILWUの最左派を形成するローカル10がだした総括は、「AFL−CIO(日本の連合)などの屈服・変質を下から打破していくような運動を組織しなければならない、そして国際的な労働者の連帯闘争を本気になって組織しなければ、この現状を突破することはできない」という提起でした。
  こうした状況のなかで、動労千葉との交流が始まり、そして11月集会への参加があったのです。直面する課題への問題意識は、まさにぴったりと一致したのです。
  また、アメリカでは大民営化攻撃が吹き荒れようとしています。何と国防総省(ペンタゴン)の業務まで民営化してしまおうという攻撃です。「民営化」が全世界で労働者の権利や雇用・賃金を解体する猛毒であること、これとの闘いが労働者の最重要の課題であることで、私たちの認識は完全に一致しました。そして、動労千葉が、小さな組合にも関わらず、国鉄の分割・民営化に真正面からたち向かい、今の団結を守って民営化反対闘争を継続していること、そしてそれだけでなく、日本の労働運動全体の再生や新しい潮流の形成をめざして闘いぬいていることに、大きな注目が集まりました。「俺たちは鉄路に生きる」を翻訳してほしいという要請も、こうした認識に基づくものでした。
  こうしたなかでの討議や11月集会への参加を通して、相互に影響を与えあう関係が形成され、アメリカでは、ローカル10などの呼びかけで、ミリオン・ワーカーズ・マーチが提起されます。今、AFL−CIOは、これに賛同するな、参加するな、資金援助をするな、という指令をだして、制動に躍起となっています。しかしサンフランシスコの労働者たちは、「これはわれわれの闘いがアメリカの労働運動全体に無視できない影響を与え初めたことを示しているんだ」と胸をはっていました。
  私は、ローカル10の最も戦闘的・中心的指導者であるジャック・ヘイマン氏に次のように訴えました。
「今私たちは二つの壁に挑んでいます。ひとつは、連合、全労連という日本の労働運動のナショナルセンターの幹部たちは、もはや労働組合とは呼べないほど屈服を深め、政府・資本と一体化してしまっている。これを下から打破することです。そしてもうひとつは、様々な労働組合がナショナルセンターの違いやイデオロギーの違いなどによって自ら壁をつくり統一行動が展開できていないという現状を打破することです。昨年の11月集会は、未だ小さな穴に過ぎませんが、こうした現状に風穴をあけることができました。今年はこれをさらにこじ開けたい」と。
  ジャック・ヘイマン氏の返事は「それはすばらしい。お約束しましょう。その穴を打ち壊すために私がハンマーをもって参加しましょう」というものです。
  国は違っても、闘う労働者の思いはひとつであることを感じた一瞬でした。
  ILWUの労働者とは、昼食会というかたちで討論する場面があったのですが、驚いたのは「私たちはマルクス主義のベースがあるから国際連帯することができる」と胸をはっていうことです。
  「ロシア革命のとき、アメリカも干渉軍を派遣したが、アメリカの港湾労働者はそれに抵抗してウラジオストックへの武器輸出を2ヵ月間ストップさせた。その間に赤軍がウラジオストックを占領したので、私たちが送った武器は全部赤軍の手に渡ったんだ。私たちはチリの軍事クーデターのときも、米CIAが介入してニカラグアの左派政権を倒したときも物資の輸送を阻止した」と胸をはっています。1934年のサンフランシスコゼネストを始め、自らの闘いの歴史を心の底から誇りとしているのです。
  初対面にも係わらずこのような議論がされること自体、私にとってはまさにアメリカの労働運動に対する認識を一変させるものでした。
  大失業と戦争の時代に通用する新しい世代の動労千葉を創りあげよう!(日刊 動労千葉5918号より転載)

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闘う合同労組 第1回

●関西合同労組第10回 定期大会開く

  6月6日関西合同労働組合は、西宮市の勤労会館で第10回定期大会を開きました。65名が参加し、各支部の1年間の総括や組織拡大に向けての取り組み強化のための活発な討論が行われました。

1000人組織拡大の展望を切り開いた1年

 渡海副委員長が「議案を事前配布できたのでおおいに議論していきたい。1年闘って、1000人実現の展望きり開けてきた。他の労組にまねできない筋の通った労働運動をやってきた。ここが総括の大きなポイントになっている。苦闘をひとつひとつ突破した1年だった。賃上げ勝ち取った1人分会も2つある。ストライキ背景に闘ったサンボー分会、小林運輸では4千200万円の和解金を提示されても『金より団結』と屈せず復職を要求して闘っている。倒産・閉鎖をつきぬけて日本管検も闘っている。これらの点が、これまでと違うこの1年の闘いだった。この地平をひろげていく大会としてかちとっていきたい。戦争と大失業、闘わないと生きていけない時代に関西合同労組こそ組織拡大していこう」と開会を宣言。
  今大会では国鉄千葉動力車労働組合の後藤執行委員、しごと開発就労者組合の寺内さん三輪さん、関西合同労働組合顧問で東大阪市議の阪口克己氏、国労5・27臨大弾圧被告の富田益行氏が挨拶。また港合同、合同労組かながわ、広島連帯ユニオンなど多くの組合からのメッセージが寄せられました。
  以下、組合員を中心に大会の発言を紹介します.

ストが新鮮な衝撃で受けとめられた

 泉州支部サンボー分会の西村さんは「職場内でも激励あったが駅頭でビラまいているとストということに反応があった。郵便局でも『ストなんてひさしぶり、1人でストやるのか』などの反応があった。ビラをまいた周辺の団地からも雇い止めされた人から激励の電話が入った。ストで闘うことが新鮮な衝撃をもって受け止められていた。職場の中で組合員を獲得していくのはかなり難しいが、他にも多くの労働者がいる。組合まわりもやった。結構注目されている。職場内だけでなく、地域に根ざした合同労組をつくっていきたい。イラク反戦や労組法改悪の署名なども広げて行きたい」とストの力を実感しつつ抱負を語りました。

春闘ためらっていたが初めて団交した

 兵庫支部尼崎養護学校分会の石川さんは「自分も春闘をためらっていたが、1千800円の賃下げではじめて団交をした。昼食時に校長室の掃除させているが自分だけ拒否してきた。これも団交で追及して、教育委員会から介助員の仕事として不適切ということになった。企業内25人の仲間というだけでなく、サンボーも仲間ということで勇気ももらうし、職場の人もそう理解してくれた」と生き生きと発言。

働く仲間を組織して港の流れを変えたい

 兵庫支部小林運輸分会の野々村さんは海コンの現状を報告。「人づてで労働相談がちょくちょく来るが、組織するにはなかなかいたっていない。海コン業界、港の運輸関係は大きな労働組合に組織されているがその組合が闘わなくなり、どんどん労働条件が引き下げられ、組合も労使協調路線になってしまっている。そこから抜けて闘う組合に加盟するとなると激しい攻撃を受けるので、不満は多いが思い切ることができない。関西合同労組に入れば即争議になる。闘えば争議にならざるをえない状況だ。働く仲間を組織して港の流れを変えて行きたい。しかし自分の争議も勝利的に進んでいるが職場復帰にいたっていない。職場復帰かちとれば流れも変わるだろうと展望して闘っている。今後とも執行部の一員として支部をもりあげていきたい」

一人でもいることで何かが変わると確信

 大阪東部支部西川運輸倉庫分会・柴田さんの発言。「西川闘争支援へのお礼を申し上げます。奈良では1人しかいないが、地域で産別をこえた連帯でデモをやりすごい効果があった。1人分会だが賃上げや組合掲示板をかちとった。職場では1人でも仲間がいるという確信と、本人自身ががんばることが重要と認識させられた。いろんな集会でエネルギーもらったり、ひっぱっていってもらいたかったら自分から進み出るようにした。この春闘でかちとった組合掲示板も誰かが見ている。定年まで3年5カ月だががんばりたい。定年後も支えてくれた人々への恩返しをしたい。西川運輸の取引先の井村封筒のゼンセンの組合員からも相談されている。1人でもいることで何かが変わってきていると確信している」。

いろいろやって労組の組合員からも声援

 泉州支部泉佐野給食事業協同組合分会の黒瀬さん。「3人が2人になってしまったが頑張っている。組織拡大で突破するためにいろいろとりくんでいる。本社にいるのは自分1人だけでがんばっているが、他組合や未組織の労働者と間口広げて接近したり、原則的な労働運動をやっていることをビラなどで伝えていくことで他労組の組合員からも声援受けている。二重加盟もふくめてとりくんでいきたい。闘いの力という点で、ストライキを打つ力はないが、地労委闘争で会社にやりほうだいさせないことはできる。労基法違反をやってきた会社を規制し成果あげている。いろいろな手段で力をつけて一定前進できた」。

戦争などの問題、もっと理解できる取り組みを

 兵庫支部・日本管検工業分会の小島代議員は「情勢の最初にあるように、『まさか倒産するなんて』と思っていた。多くの人々は、戦争もふくめてどれくらい理解できているだろうか。一人一人がもっと理解できるようにしてほしい。『訪朝で支持率上がった』とか、都合のよい宣伝しかされていない。『自衛隊が行って何が悪い』という意見も出てくる。ここで議論していれば分かるが、世間でマスコミの宣伝の中にいると、どこまで確信もてるだろうか。たえず労働者としてどう見てどう感じるべきかを宣伝していってほしい」。

76歳だが、分会つくって会社と交渉していく

 大阪東部支部仕事保障要求部会の正谷組合員からは「十数年前のPKO闘争の頃から一緒に行動してきた。28年生まれ76歳、現役労働者。いろいろ辛酸苦労してきた。12年前、警備会社に就職した。いかに高齢労働者が過酷で低賃金に置かれてるか分かった。組合活動も無知だったので他のことをやってきた。執行部先頭にみなさんががんばってきたことは必ず花開くと信じてきた。みなさんの協力で、介護要求部会を中心に阪口さんの選挙を闘った。約200人の国健会の中には労働問題での悩みがある。関西合同に入りたいという人が6人いる、中には連合系の委員長をやっている人もいる。本当の組合、本当の闘う労働運動でなくてはならないと、この歳になって思っている。自分も分会つくって会社と交渉していく。今は苦しくても、みなさんの闘いは必ず報われる。自分も一緒にがんばりたい」。

組織拡大をどう実現するか、組合員全体の責任

 兵庫支部・ヤタナカオ分会の祖父江代議員は、「三点質問する。@、執行委員の多忙解決しないと、人間的余暇もない。そうでないと正常な組合活動もできないのではないか A、未組織労働者に飛び込んでいかないのか、B、労基法39条の年休請求権、契約内容にないと会社は拒否するが、こういうことも訴えて組織拡大していきたい。以前の関合労ビラ、当時自分も街頭や電車でまいた。こういう宣伝・行動をしないと組織拡大できない。組合員の参加は去年の方が多かったと思う。これでは衰退の一方だ。執行部だけでなく組合員全体の責任だ。兵庫支部で相談していきたい。

組織拡大へ関西合同労組は何をなすのか

執行委員からの答弁が行われた。
  松田執行委員「情勢の的確な暴露が重要だ。小泉はマスコミ使ってその場しのぎで支持率維持するポピュリズムだが、決して民衆の心をつかんでいない。日本資本主義が労働者を食わせていけないことから発する攻撃だ。資本主義打ち倒す方向で宣伝していく」。
  石田委員長「この1年間をふりかえって、現場で本気で頑張るという姿勢が会社を変えてきた。少数、1人という孤立感があって会社に足元見られている。仲間がいるということも大事だが、1人からはじまるということもある。関合労は16人ではじまった。自分の職場で本気で立ち上がったときに、勝利や前進がある。時給10円アップも大きな成果、闘うことによってかちとることはかけがいのないことだ。相談に来た人も『お前ら裁判で勝ってるから来た』と言っていた。闘って勝つことが重要だ。リーダーがひっぱり、それを支える団結がなければいけない。オルグ・執行部だけでなくそれを囲み支える活動家をつくりだしていかねばならない。オルグの力量に限定される運動では、資本家の組織力に勝てない。1人でも頑張るところで力関係かえ地域に組織つくりだしていく。海コンもつくってはつぶれの中でもずっとつづいてきた。ここで勝てば大きく仲間を増やすことができる。もう一つは、苦しいときでも労働者の筋を通す闘いで回りの人々を獲得していかねばならない。各分会での闘いと地域が一体となって力関係変えていくところにようやく到達しつつあると思っている。これで組織拡大していきたい」。
  渡海副委員長「組織拡大について。数年前まで関合労に入れば争議になったり解雇されたりろくなことがないというような状況があった。昨年1年、サンボー・尼養からもあったように1人でも筋を通せば要求を通したり職場の仲間と交流できるようになった。関合労に入っていてよかったという状況がでてきた。それがなければ組織拡大できない」「破産通告に対してただちに団交・争議に突入できたのは、分会結成以来、分会員が日々闘ってきたことの成果の上にできたことだ。日々つみあげた意識や権利があったから、倒産攻撃に対して争議に入ることができた。サンボーでも当該の決意・覚悟があったから成果があった。本部が団交で大声をあげるだけでは決してかちとれない。闘う労働者をとことん支えるのが関合労だ。人間らしく生きることを労働者は求めている。原則的な闘いで人間性を奪い返す力が必要だ」「労働相談来たらどうするか。一緒に悩むこと。労働法知っているとか、知恵があるとかでは勝てない。当該のふんばりをどう支えるか、一緒に悩み、一緒に理屈もふくめて考えていく。役所に行っても一方的倒産を許さない闘いを役所としてどう支えるのかと言って仕事を取ってきている。職場の中でも、外の未組織にも、団結をつくりだしていくことが重要だ。1000人の展望はてらしだされた。この道を邁進していきたい」。
  蒲牟田執行委員「高齢者の問題は被災地でも厳しい。被災高齢者は切り捨てられようとしている。高齢者が『何も価値産み出さないから要らない』といわんばかりの扱いうけている。元気に闘う高齢者の仲間も多い。いろんな経験をぜひ学ぶ場を組合でもつくっていきたい」「いつも重度『障害児』が毎年死んでいる話を聞いてきた。もうけを産まない弱者が捨てられ殺されていくような社会は絶対おかしいと闘って行く。知らないことも多い。ぜひ学習会などもやっていきたい」。
  大会では全ての議案が採択され、蒲牟田新書記長の音頭による団結ガンバローで大会をしめくくった。

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●今、全逓労働者は?

 郵政民営化攻撃と大合理化

  先の参院選で惨敗を喫した小泉内閣は、政権の生き残りをかけて構造改革―経財諮問会議報告(「骨太方針」)を強行しようとしている。その中心に郵政民営化をすえて、07年民営化―郵便・貯金・保険・窓口の4分割案を構想している。マスコミは、あたかも郵政民営化が既定の事実であるかのように報道しているが、それほど単純な話しではない。

どんどん進む合理化

 今、郵便局では、全逓(現JPU)中央本部の裏切りによって、労働条件は悪化の一途をたどっている。「民営化対応」といって、「民営化を阻止するためには、民営化以上の合理化を受け入れる」と詭弁を弄して、当局の合理化提案を丸飲みしている。郵便内務への深夜勤導入に続いて、「集配ネットワークの高度化」という大合理化をはじめようとしている。
  今回の試行は、集配に実働10時間、拘束12時間の勤務を導入して、ひとりで集配業務を全部やらせようとするものだ。そのために、今までのバイク中心から軽4輪に変えるとしている。
  現行では、おおむね、通常配達(日勤)、速達(早番、遅番で1日3回配達)、小包(日勤―現行は委託が多い)と分担している勤務体系を、全部まとめてひとりにやらせようというのだ。規制緩和を受けて民間宅配業者が小包と一緒に「メール便」を配達しているのを猿まねして、郵便局でも導入しようとしているのだ。
  民間宅配業に従事している労働者の労働条件の劣悪さは、つとに有名だ。休憩時間はあってなきがごとしで、車を運転しながら食事を取るのが当たり前になっている。
  しかし郵便局の場合、事態はもっと複雑だ。通配中心の作業は、場合によっては全戸配達になり、小包と一緒に配達するのは困難だ。しかも速達の2号、3号便を受け取りに最低でも2回、帰局しなければならない。そのうえ、「時間指定」「夜間配達」の速達・書留がでたら、その都度、配達しなければならない。その間に通常配達をしながら、集荷・営業を一緒にやれというのだ。
  下町にはバイクでも入れない路地が山ほどある。「山の手」だって一方通行だらけだ。現行は違反を承知で、バイクで歩道を走ったり、一方通行を逆走して、やっと配達しているのだ。どうやって軽4で配達しろというのか。だいいち、軽4の駐車場はどうする?ただでも狭い郵便局の敷地に軽4がひしめいて、どうやってブツを積み込む? 伝送便とかちあったらどうする? 当局はそうやって、新たな設備投資に金をかけ、資本家どもを儲けさせ、自分の天下り先を確保しようとしているに違いない。

職場の闘いがすべてを決める

 郵便内務でも新たな攻撃がかけられようとしている。10時間勤務(拘束12時間)の2交代勤務、内務事務のアウトソーシングだ。政府は民営化後の10年間で7万人の人員削減をねらっている。しかも、当局は極限的な合理化・労働強化を強制したうえで、「人材活用センター」という名の強制収容所を導入しようとしている。
  実は、郵政民営化の最大のネックは労使関係にある。当局は、全逓中央は押さえたかもしれないが、現場を制圧したわけではない。現場労働者を非公務員にしたら、直ちに争議権の問題にぶちあたる。民営化した途端にストライキが爆発―その恐怖から支配階級はのがれることができない。だから当局は、民営化前に人事交流という名の強制配転で全逓の拠点職場を解体して、それでも屈服しない活動家層を「人活」に隔離しようとねらっているのだ。しかし、労働者全員を「人活」送りにすることはできない。たたかいの火種を消す事は絶対にできない。
  郵政民営化阻止の闘いは、いま目の前にある合理化攻撃と闘うことにある。同時に、その勝敗は国内的・国際的な労働者階級の階級的力関係にかかっている。
  だから、われわれの合い言葉は「動労千葉のように闘おう」だ。

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読者のページ

 ☆書評  東京労組交流センター事務局長  小泉義秀

  本書は8月19日に東洋経済新報社から発刊されたばかりの、改正派遣法に対応した『知らないと損する労働者派遣法』(新版)である。今年の3月に改正労働者派遣法が施行され、新たに期間制限(原則一年)を超えて派遣スタッフを活用した派遣先に対して「派遣スタッフへの直接雇用申し込み義務」等が定められた。本書は法律がどのように改正されたのかを明らかにしつつ「派遣労働」の問題を暴き出している。著者は「派遣労働ネットワーク」。01年に結成され、代表は中野麻美弁護士である。
  本書の特長の第一は、法律は条文を読んだだけは良く解らないことが多いが、イラストで解説が為されているため非常にわかりやすいことだ。よくぞ四コマ漫画で難しい法律の適切な例を説明したものだと感心させられる。
  第二。一般的に法律の解釈や解説が為されているのではなく、具体的違法事例や派遣労働現場での実態が列記され、その一つひとつのケースを取り上げて具体的解決の道筋を明らかにしていることである。第5章は「相談窓口、ユニオン、ネットワーク活用法」という章になっており派遣の労働組合が具体的に解決した事例や労働組合への相談窓口につながる編集が為されている。派遣労働だけではなく全ての職場・職種に共通したことではあるが、現実には労働組合に結集し資本と闘わないと法律を守らせることもできない。派遣法も改正派遣法も現行の労使関係を改悪し、不安定雇用労働を増大させる為に導入された派遣という制度を法律によって追認し固定化するためのものであり、労働基準法をはじめとした現行労働法をなし崩し的に解体していく制度であり法律である。その意味で、法律違反の実態を羅列しただけでは何の意味も無い。具体的解決の方策と闘いの方向性が示されている点が実践的だということである。
  第三に重要な点は、徹頭徹尾派遣労働者の立場に立ち、その目線から「労働者派遣法」を対象化していることである。派遣労働者は現在200万を超えるまでに増大し、資本の側はより安い労働力として派遣労働者を導入し正社員を減少させている。この場合労働現場では、その怒りがそれを導入している資本の側でなく、派遣労働者に向かい正社員と派遣労働者が対立させられたり、競争させられる構造が作られる。が、本書は「派遣スタッフの権利向上と正社員のリストラ防止は、表裏一体」(はじめに)であること、正社員と派遣労働者がともに闘わなければ両者の権利が守られないのだという点を強調している。
  第四は、第二の点と重なり合うが、派遣労働の種々の違法形態を暴露していることである。二重派遣や事前面接などは違法行為である。製造業では派遣と称しながら「偽装請負」という労働形態が拡大している。人件費削減として正社員をリストラし、その穴埋めに派遣と称する業務請負(偽装請負)などの「外部労働力」を導入したり、争議中に派遣労働者が導入されたりしている。これらは違法行為であるが、意外と知られていない。もし違法であることがわかっていたならば、その違法性を指摘することでその導入を阻止し、資本を追い詰めることが可能だ。私がこのことを知っていれば役に立ったであろう争議がつい最近あった。何が違法行為なのかわかっていたならばそれを武器にして資本と闘う契機とすることができる。その意味で様々な違法行為の実態が暴露され、どのようなケースが違法なのかが書かれている本書は闘いのバイブルであり、未組織の派遣や正社員の組織化の武器である。
  労組交流センターが未組織労働者の組織化や合同労組建設に乗り出すとき、「改正派遣法」を知ることなくしてそれはできない。早急に本書を学習する必要がある。
(東洋経済新報社刊 1500円+税)

 ☆釣り紀行  東京 関西漁業

  今回、釣りに行くことができなかったので、昨年の釣果のあった報告です。
  9月某日、東京・江東区の若洲海浜公園にフッコ(スズキの小さいの)を釣りにいきました。ここは無料の釣り波止があるのですが、そこから南に行ったテトラからです。時間は日没から1〜2時間がいいのです。左に目をやるとディズニーランドの火山が見えます。夜8時30分頃になると花火が上がっています。ここは荒川の左岸です。羽田空港の着陸路になっているため次から次へと飛行機が通過していきます。
  その日は大潮の満潮が調度、日没と重なって最高の潮どきです。えさはアオイソメの2本がけで電気ウキで投入です。ハリスは3号で大物がかかると切れてしまいます。竿は安物の4・5bです。実はその前に大物がヒットし、手前まで引き寄せたのですが、タモも持っていないので、満月になった竿を5分間くらいもっていてばらしてしまったのです。
  その日、全然釣れなかったのですが、突然ヒットしました。これは大きい、果たして上がるのか。満潮のおかげで手前まで引き寄せることができ、道糸を手でつかんで引き上げることに成功しました。上がってきたのは42aのフッコでした。私のクーラーは30aの発泡スチロールです。はみ出した魚を見ながらにんまり。
  帰りにガソリンスタンドで給油です。スタイルを見て店員は「釣れましたか」と聞く。
  「いや、たいしたことはないです」と言いつつ、荷台の魚をみせる。店員は「大きい、どこで釣ったのです」と聞く、こちらはいつももっと大きいのを釣っているのですが、今日は小さい方ですなどと言って「ハ、ハ、ハ」と笑う。至福の時というのでしょうか。
  帰って、刺身にして食べました。おいしかった。

読者のページに投稿を

  読者のページに投稿をお願いします。自分の意見を言わないで人を組織することなどできません。思っていることを活字にしてみましょう。そうして「彼を知り己をしれば、百戦してあやうからず。彼を知らずして己を知れば、一勝一敗す。彼を知らず己を知らざれば、戦うごとに必ずあやうし」という孫子の兵法の精神を持とうではありませんか。論理の飛躍という前にまずは投稿を。

編集後記

▼昨年の自殺者が3万4千427人。1日94人強、なんと1時間に約4人が自殺していた。欧米に比べても群を抜いている。この予備軍は10倍と言われている。勝ち組、負け組、弱肉強食、自己責任とやはり資本主義がやっていけなくなり、すべてこの矛盾を個人に押しつけた結果ではないのか。対策は聞こえてこない。うつ病などで会社の損失が膨大になると対策がでるが資本にとって役にたたない者は死ね。これが小泉―奥田路線だ。 (し)

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