2005年10月号(No.187)目次
| ホーム | 月刊交流センター | 産別部会 | リンク | 連絡先 |
 

労働者の目 11・6 1万人の大結集を!

労働ニュース
  ●憲法/石綿 ●雇用など ●日誌

国労5・27臨大闘争弾圧刑事裁判

・特集  小泉「圧勝」に4大産別から総反撃を
  ●全逓労働者の団結うち固め、郵政民営化阻止・JPU本部打倒の新たな闘いへ
  ●反動判決はねかえし、戦争と民営化攻撃と対決する国鉄1047名闘争を
  ●「日の丸・君が代」―教科書闘争の地平を日教組運動の階級的再生へ
  ●自治労本部の改憲路線に開始された反乱

今秋決戦で共謀罪を葬ろう!

労働者学習シリーズ 帝国主義 第9回 米 宗教右派

やってられないぜ!  第4回 大増税目白押し

闘う合同労組 第12回 千曲ユニオン

たたかいは進む
  ●鉄建公団訴訟判決に対する動労千葉の見解
  ●第30回9・14反弾圧闘争貫徹
  ●全金本山労組定期大会  

読者のページ 編集後記

・PhotoDocument

労働者の目

●11・6 1万人の大結集を!

 全国労働組合交流センター常任運営員 庄山    正

 「官から民へ」を絶叫する小泉自民党が、小選挙区制というとんでもない制度の下で〈圧勝〉した。国会は衆院で、与党が3分の2以上を占めるおそるべき事態となった。憲法改悪をはじめ、教育基本法改悪、恒常派兵法、イラク派兵延長・継続、米軍大再編と基地強化等、戦争へ向けたあらゆる攻撃が、堰を切って開始されようとしている。労働法制の改悪、さらなる労働強化、首切り、不安定雇用化、賃下げ、大増税、福祉切り捨てなど塗炭の苦しみが労働者・民衆に襲いかかろうとしている。
 この背景には、帝国主義の激しい危機が存在する。日本帝国主義は、国家財政が大破産し、1千兆円という天文学的赤字の下で、国家予算すらまともに組めないという危機に直面している。小泉の解散−9・11総選挙は、限界にきた旧来の自民党的な利益誘導・調整型政治に、日本経団連、奥田、支配階級が断を下したことを意味する。奥田と小泉は、戦争を決断し、05〜07年へ、強権的手法で、社会のあり方を変えようとしている。その核心は、民営化による労働組合の解体・根絶である。最大の突破口は郵政民営化だ。これは、まぎれもなく、全員解雇・選別再雇用の攻撃であり、大量首切り・レッドパージである。国鉄分割民営化とNTT大合理化を集大成しつつ、それをも上回る大攻撃だ。民営化は、全公務員に波及し、全社会的に賃下げ・人減らし・労働強化・不安定雇用化を生み出す。さらに大増税と社会保障の解体が直撃する。労働者の奴隷化への道である。
 この歴史的大反動攻勢を打ち破る唯一・最大の水路こそ11・6全国労働者集会である。労働者と労働組合に対する、すさまじい攻撃と蹂躙の下で、労働者の怒りと危機感は限度を越えている。全ての怒りを11・6へ組織しよう! 既に命脈が尽き、〈戦争と民営化〉攻撃の下で、労働者の、人間の労働と生存を〈保障〉出来なくなった資本主義・帝国主義を打倒しよう! 1万人の大結集で、そのかたまりの力で〈戦争と民営化〉に立ち向かおう!

| HOME | 目次 |


●労働ニュース(05年8月16日〜9月15日)

新議員84%が改憲派
 衆院選の期間中に毎日新聞が実施した全候補者アンケートを基に、当選した新議員480人の考え方を集計したところ、憲法を「改正すべきだ」する改憲派が402人と84%に上り「改正すべきでない」とする護憲派(36人、8%)圧倒した。96年の衆院選後のアンケートでは41%だった改憲派は、約10年で倍以上に伸長。

 「トヨタ労組、自民支援」武部発言に連合会長抗議
 連合の笹森清会長は9日、茨城県日立市で記者会見し、自民党の武部勤幹事長が街頭演説で「トヨタ労組も自民党支援を決めた」と発言したとして「事実無根」とする抗議文を小泉総裁あてに郵送したことを明らかにした。

 労組・政党の関係考え直す
 連合の笹森清会長は12日、都内で記者会見し、支援した民主党の大敗を受けて「これほど議席を失うとは思っていなかった。小泉旋風にやられた」と話した。今後も、民主党との協力関係は変わらないとしながらも、労働組合と政党とのかかわりなど根本的に考え直したいとしている。

 個人金融資産1433兆円
 日本銀行が15日発表した資金循環統計(速報)によると、6月末の個人金融資産の残高は前年同月比0・7%増の1433兆円で、統計をとり始めた80年3月末以来、過去最高となった。

 公営企業売却を加速
 バスや病院など地方自治体が運営する公営企業の民間売却が相次いでいる。04年度は15件と過去最高を記録。05年度もすでに11件以上が売却済みか計画決定済みで、前年度を上回るのは確実だ。

 個人住民税15件が増税
 地方自治体の間で個人住民税を増税する動きが加速してきた。都道府県民税のうち、所得が多くても少なくても一定額を納める「住民税均等割」を引き上げたか来年度に引き上げる予定の自治体は15件にも上る。国の財政悪化で地方交付税交付金など地方へ回る財源も減る方向であるため、自治体も独自に歳入を上積みする姿勢に変わってきた。

 会社員の年金保険料率9月から上げ
 会社員の厚生年金保険料率が9月から現在の月収の13・934%から14・288%(労使折半)へと引き上げられる。保険料上限の18・30%に達する2017年まで毎年引き上げがつづく。

 会社員、公務員より0・8〜1・6%負担重く
 会社員が負担する厚生年金の保険料率は実質ベースでみると、共済年金に加入する国家公務員の負担よりも年収の0・8%分、地方公務員の負担よりも1・6%高いことが明らかとなった。公務員共済の給付財源に占める公費割合が大きいことが背景。

 NTT、退職者の年金減額申請へ
 東京地裁が8日、NTTグループの退職者の請求を棄却したことを受けて、NTTは9月中にも、退職者の年金受取額が減る条件変更を厚生労働大臣に申請する見通しだ。

 尼崎市、中皮腫死者50人
 兵庫県尼崎市の大手機械メーカー「クボタ」旧神崎工場の周辺住民にアスベスト(石綿)が原因とされるがん「中皮腫」が多発している問題で、02〜04年の3年間に同市内で計50人が中皮腫で死亡していたことが市の調査でわかった。全国平均の5倍にあたる。

 中皮腫は原則救済
 アスベスト(石綿)被害の補償拡大を図る新法で、政府は12日、中皮腫や石綿吸引が原因の肺がんを発症したり、死亡したりした工場周辺住民や従業員の家族らについて、一時金や治療費などを支給する方法で救済する方針を固めた。財源は石綿関連業界に拠出を求め、国も一部を負担する。

 有休積み立て、最大140日に
 労働基準法では2年間で消滅する「年次有給休暇」を、独自に100日まで積み立てることができる制度を大和ハウス工業が導入した。休暇をとりやすくして、従業員の育児や介護などを支援することが狙いだ。

 中途採用が急増
 景気の回復傾向を受け、人材紹介市場で正社員の中途採用需要が急増している。IT(情報技術)や自動車関連、金融を中心に様々な業界から前年を大幅に上回る求人があり、とりわけ新卒採用が抑制されたバブル後世代の人気が高い。

 高卒求人倍率0・9倍
 来春卒業予定の高校生の求人倍率は今年7月末現在で0・9倍となり、前年同期を0・2上回ったことが9日、厚生労働省のまとめで分かった。3年連続で改善しており、7月末としては、98年の0・98倍以来、7年ぶりの高水準。

 カーブアウト大企業動く
 大企業で埋もれた技術や人材を社外の独立した組織に出して事業化を図る「カーブアウト」という新手法が注目されている。支援ファンドが相次いで創設され、ソニーの元技術者や、日立製作所などの電機メーカーのほか、大手商社も参入。専門家の起業にむく有限責任事業組合(LLP)制度が8月から始まったのも追い風だ。

 初の育休 企業に100万円
 新たな子育て支援策として厚生労働省は、従業員100人未満で、これまで育児休業の取得者がいない中小企業に対し、初めての取得者が職場復帰した際に約100万円、2人目には約60万円の助成金を支給する方針をきめた。手厚い助成金を呼び水に取得者の前例を作り、育休の取りやすい職場環境に変えるのが狙い。

 外食、正社員登用を拡充
 パート、アルバイトへの依存度が高い外食関連業界で店舗への正社員の配置を増やす動きが相次ぐ。長崎ちゃんぽん専門店を展開するリンガーハットはパートからの登用を進め、3年で正社員を約2倍にする。日本マクドナルドホールディングスも増員し、店長などへ処遇の道を開く。人件費は増加するが、サービス向上などによる集客の回復をめざす。

 自殺予防へ総合対策
 自殺者が7年連続で年間3万人を超えている事態を受け、厚生労働省は30日までに、自殺予防の総合対策をまとめた。拠点として「自殺予防総合対策センター」(仮称)を設置し、地方自治体や非営利組織(NPO)と連携して全国的なネットワークづくりに乗り出す。専門家による検討会も立ち上げ、自殺未遂者や遺族に対する心のケア方法のマニュアルづくりをめざす。

 教員採用権 全市町村に
 文部科学省は来年度から構造改革特区だけに認められていた市町村による教職員の独自採用を全国に広げることを決めた。
 

 労働日誌(05年8月〜9月)

8月19日
 大阪市と大阪市教委は、いわゆる「ヤミ専従」問題で、組合役員と管理職側の計254人を処分した。市当局は、「給与の不正受給分は2千800万円」として、8月中に返還を求める。

8月19日
 小泉首相は、衆院選の自民党のマニフェスト(政権公約)を発表。@公共サービス効率化(市場化テスト法)案の年度内国会提出、A独立行政法人、行政代行法人の行う官業の民間開放の強力な推進、B国家公務員の制度改革(能力・実績主義の人事・労務管理、給与体系の見直し、関連法案の早期提出)、C独立行政法人の見直し、廃止・統合・民営化と原則としての非公務員化、D規制改革の推進など。

8月23日
 自治労は、定期大会の中で、全国一般(浦俊治委員長 3万5千人)との組織統合を提案した。06年統合の予定。

8月23日
 日本経団連は、05春闘アンケートを発表。それによると、「ベアを実施せずに定期昇給のみ実施」の企業が53・5%となり3年連続で5割を超えた。今後の方向について「定期昇給を見直し、または廃止する」と回答した企業が45・3%となった(2088社を対象とし509社の回答)。

8月30日
 総務省は労働力調査を発表。それによると、7月の完全失業者数は289万人(前年同月比29万人減)となり、完全失業率は4・4%(前月比0・2上昇)となった。男女別では、男性が4・5%(前月比0・1上昇)で、女性が4・3%(前月比0・4上昇)となった。

9月15日
 厚生労働省は、労働条件の個別化や労組の組織率の低下のもとで、個別の労働紛争が増加していることに対応するため、「労働契約法」(仮称)の検討を進めるとする最終報告書を発表した。報告書では「公正で透明なルールづくりのため労働基準法とは別に制定する」と述べている。同省は、数年後の法制化をめざす。

| HOME | 目次 |


●国労5・27臨大闘争弾圧裁判を傍聴して

 〈池田への膝げりはなかったと推定される〉 見えないのに「見えた」と言い切る浅川証人

  国労5・27臨大闘争弾圧 公判報告

 8月23日および9月7日「国労5・27臨大闘争弾圧」事件の第44、45回公判が東京地裁104号法廷において行われた。この日の公判では長野地本の浅川初幸に対する弁護側からの3回めの反対尋問が行われた。

 「現場共謀」を粉砕すればこの弾圧事件は柱を失う

 この事件に対して検察はなぜ暴力等処罰に関する法律を適用しているのか。5月27日の大会参加者へのビラまき、説得活動が暴力行為を伴うものであり、それが偶然に発生したものではなく、被告らの共謀の結果であり、集団としての意志一致によるものとしているからである。この共謀の意志によってなされた犯罪という位置付けが、被告ら8人に対する1年4カ月にもおよぶ長期の勾留にもつながったのであり、裁判全体を左右する。
 今回の44、45回公判の焦点は検察側の主張する共謀を裏付けるものとして、本部派の池田という人物に加えた暴行があり、それによって現場での共謀が成立したというものである。検察側冒頭陳述によれば、この池田に対する暴行を被告ら全員が目撃し、その意志を了知し、それによって共謀の意志が成立し、ホテルの玄関を出てバスに乗り込もうとする大会参加者を待ち受け、暴力行為におよんだというものである。この池田へ松崎被告が行ったと称する膝げりの場面を、買い物のためホテルの外に出て戻ってきたとき、歩道の所で黒執と浅川が見たというのである。この池田への膝げりがあったかどうかは共謀の存在にかかわる重要な争点であり、それを目撃したという浅川の証言はきわめて注目されるものである。
 甲142号証杉並ビデオでは、バスが到着し、ホテルから出てきた客にビラまき隊が道をあけて通している。その少し後の画面に池田が一瞬登場し、その後すぐに内側のホテルの玄関方向に消えるところがある。検察側主尋問で浅川は、「この部分が池田への暴行の直後の場面である」と証言している。この画面で浅川自身は右側隅のホテルの壁際にいる姿が映っていて、ここから膝げり暴行を見たというのである。

 何人もの人が間におり膝げりの場面は見えない

 44回公判で、まず西村弁護人から、長野地本からの参加者や5月27日の当日の朝の行動について質問がなされ、ホテルの外にジュースを買いに出て、そのまま黒執と二人で中に入らず、皆が出てくるの待っていた状況を証言した。
 つぎに河村弁護人が主尋問でビラまきの一人からじっとにらまれていた、それは原田さんだ、と言ったことについて、ビデオの画面を示して、原田さんはホテルから出てきた客のほうを見ている、にらみつけてはいないのではと質したのに対して、「にらまれたにはこの前の場面」と答えた。池田が出てきたことに気がついたのは、との問いには、「押し問答があったので」と答えた。その位置について、「出入り口と歩道の境目のあたり」と答えて、実況見分の時の図に自分の位置を入れた。「押し問答があって膝げりがあった時間は」との問いには、「10秒前後の時間」と答えた。
 つづいて大口弁護人が、池田への暴行を見たというその時のことについて質問した。ビデオの映像から見るとホテルの壁の前に立っている浅川の前には黒執がいて、さらにその前にはビラまきの人たち数人がいる。そこで弁護人の「人がじゃまになってとても見えないのではないか」との問いに、浅川は「視界を遮っていた人が突然どいて、そこから見えた、再び集まってきたところがビデオに映っているところ」と証言した。そこで「証人は検察官主尋問のとき、視力が1・5だからよく見えた、と言っているが、画面でみるとこんなに間に人がいるではないか」との問には、「体を左右に動かせば見える」と答えたので、「なぜ今になって言うのか、主尋問のとき体を動かしたので、人の間からでも見えた、と言わないのか」と追及されると、「これは後の画面ですから、急に人が集まってきたところ」とまた証言を変えた。
 証人が事件の極めて重要な現場共謀の成立の事実についてあまりにもおかしな証言をするので、弁護団は44回公判の翌日、グリーンホテル入り口の場所で杉並ビデオの映像にある当日と同じく人の配置や身長を厳格に一致させ、浅川自身の目線のところから彼がどう見えたかを明にするため写真を撮り、これを45回公判での法廷に提出した。この写真から人の身体が重なってしまっていて、橘さんが池田と対面しているすぐ脇で松崎さんが膝げりをしたとしても、浅川の位置からはまったく見えないことが証明された。

 池田への暴行は実際にはなかったと推認される

 弁護団の尋問に対する浅川の答を整理してみると、彼は3つの異なることを言っている。その1は杉並ビデオの画面は暴行の直後だから、暴行のそのもの瞬間にはもっと人はばらけていて、十分に隙間があった。その2として身体を左右前後に動かせば、人がいてもその間から見ることはできる。その3は突然パッと隙間ができて遮るものがなくなったので見えた、というものである。
 これらがいずれも彼自身の体験した事実の記憶であるとするならば、証言としてこのようなまったく異なるものになるのか理解不能である。ビデオの画面との関係で言えば、1については、暴行直後とすればビラまき隊の動きにそんなに急激なものはありえないから、人と人との間には十分な隙間があったというのはおかしい。3についても同様に、突然パッと隙間ができるような動きがあったとはとうてい考えられない。また2つめの体を動かしたので見ることが出来たというのであれば、捜査段階の調書や主尋問において、身体を動かして人の隙間からみることが出来た、となぜ言っていないのか。当時の状況を説明する重要な事実であるはずである。
 結局のところ、池田への膝げりはまったくなかった、ということである。ありもしないことを見たと言っているので、綿密な現場検証の写真を基にした、「人が立ちふさがっていて、見えなかったはず」と追及され、見えたと言い張るために矛盾だらけになってしまったということであろう。
 被告らの共謀を証明すべき唯一の事実がまったくの作り事だったということはとんでもないことである。同じ国労組合員として、労働者としてデッチ上げ逮捕に加担し、裁判で検察側に立ち、立証破綻を繕う者の罪はあまりにも重大である。
 次回も引き続き浅川証人に対し、彼自身が受けた暴行への反対尋問が行われる予定である。ぜひ多数の傍聴をお願いしたい。
      (「許さない会」東京南部会員)

公判日程
  第47回10月19日(水)  第48回11月8日(火)  第49回11月30日(水)  第50回12月13日(火)  第51回12月21日(水)
  第52回06年1月11日(水)  第53回2月1日(水)  第54回2月22日(水)  第55回3月15日(水)  第56回3月29日(水)
  第57回4月19日(水)  第58回5月10日(水)

| HOME | 目次 |


特集  小泉「圧勝」に4大産別から総反撃を

●全逓労働者の団結うち固め、郵政民営化阻止・JPU本部打倒の新たな闘いへ

 全逓労働者部会

 9・11総選挙で「圧勝」した小泉は、9月21日に召集した特別国会に、参議院で否決された法案と全く同じ郵政民営化関連法案を提案し、強行突破しようとしている。
 郵政族を中心とする自民党内反対派は、すでに多くが賛成派に転向した。そして、支配階級の意志を激しく押し出した小泉の迫力の前に無様に大敗した民主党は、独自の民営化対案なるものを打ち出し、第2自民党としての本質を明らかにした。

 今こそ(郵政)労働者の総反撃を

 小泉・奥田は、大政翼賛化した特別国会で、郵政民営化法案を突破口に、通常国会で廃案になった諸反動法案を成立させ、一気呵成に改憲まで突進しようとしている。
 今こそ改憲につながる郵政民営化粉砕を掲げて闘おう。郵政労働者は、この闘いを生きるか死ぬかをかけた闘いとして全力で闘おう。そして、郵政労働者を先頭に、4大産別の労働者はもとより、民間労働者を含めすべての労働者が、民営化・戦争攻撃阻止の闘いとして闘いぬき、11月労働者集会1万人結集へと上りつめよう。
 総選挙の結果は、労働者階級の敗北を意味するのか。決して否だ。いまこそ小泉のデマとペテンを怒り激しく暴露・弾劾して、(郵政)労働者の怒りを闘いへ組織しよう。

 小泉のウソとペテンを打ち破れ

 「郵政(国家公務員)の既得権」、ふざけるな今の郵政労働者・国家公務員のどこに既得権があるんだ! 劣悪な労働条件の下で昼夜を分かたず労働し、多くの自殺者や事故死をうみだし、早期退職者も激増している。人手不足の現状を無視し、さらに大量の人員削減を行い、賃金引き下げが頻発し、勤務時間の延長が狙われている。どこに「既得権」があるのだ。
 「郵政民営化なくして改革なし」とは何という言いぐさだ。郵政民営化によって正規雇用28万、非正規雇用14万労働者の首を切り、それをてこに「公務員改革」と称し自治体労働者へのリストラ・大量首切りをかけようと言うことじゃないか。
 「雇用」問題もそうだ! 国鉄分割民営化の過程で、40万から20万へ大量の首切りが行われたように、郵政労働者に対しても、いったん解雇・選別再採用(活動家パージや病弱者排除)が行われようとしているのだ。

 労働者の怒りを闘う団結へ

 現場には怒りが渦巻いている。全国の郵便局で、我慢できない労働者の自主的な決起が始まっている。しかし、郵政民営化反対の方針を提起し、闘いの先頭に立つべきJPU(全逓)中央は、敵の側に寝返り民営化を強制する裏切り者・労働代官に成り下がっている。多くの職場では、労働者の団結がズタズタにされている。現場労働者は、全逓・全郵政の組合員を問わず、民営化反対の方針と闘いを求めている。何よりも、労働者同士の団結を求めているのだ。
 今こそ我々が労働者の団結の軸になろう。それを土台に現場組合機関を労働者の手に取り戻そう。郵政民営化攻撃の大激動の今こそ絶好の機会だ。現場組合役員は、本部の民営化推進方針と、自らの労働実態、組合員の怒りの狭間で展望をなくしている。路線と方針を示すことができるのは我々しかいないのははっきりしいる。大胆に交流センターへの結集を呼びかけよう。
 何よりも、11月労働者集会へのすべての労働者に訴えよう。1万人結集こそ、労働者の団結をよみがえらせ、総反撃の場だということを訴えよう。
 民営化を前にした2007年3月からは、郵便内務事務のアウトソーシングと、10時間2交替制勤務の導入が画策されている。もう我慢の限界だ。
 9・15超反動判決と闘う国鉄労働者、「日の丸・君が代」、教育基本法改悪攻撃と闘う教育労働者、地方行革と闘う自治体労働者とともに、10月21日に開催される「郵政民営化反対集会」(仮称、場所:東京・宮下公園)を成功させ、11月労働者集会の1万人結集を実現しよう。


 
郵政民営化を撃つ!闘う全逓の再生のために  岩本正治、中野洋共著

 5月に労働者学習センターより発刊されたこの本は、郵政民営化攻撃の本質をあばきだし、闘いの歴史と方針が鮮明に書かれている。ぜひ一読をお勧めします。
 「郵政民営化攻撃の狙いの核心は、1987年の国鉄分割・民営化でも明らかなように、経営形態の変更をとおして国家公務員の身分を剥奪し、民間企業のように首切り・リストラが自由にできるようにすることです。そして、路線転換以降も現場で苦闘し全逓運動を担っている、闘う数千・数万の活動家パージと大量首切り、定員削減をとおして、職場生産点に脈々と生き続ける闘う全逓労働運動をたたきつぶし、侵略戦争に協力した戦前の逓信報告会=産業報告会に変質させること…」(はじめに)より。
 

| HOME | 目次 |


特集  小泉「圧勝」に4大産別から総反撃を

●反動判決はねかえし、戦争と民営化攻撃と対決する国鉄1047名闘争を

 国労共闘全国協議会

 1047名の団結の破壊をねらった9・15鉄建公団訴訟反動判決を徹底弾劾する

 9月15日、東京地裁の難波孝一裁判長(民事36部)は、国労闘争団員と遺族297人が鉄道建設・運輸施設整備支援機構(旧鉄建公団)を相手に解雇の撤回を求めていた鉄建公団訴訟において、その訴えを退ける許し難い反動判決を下しました。
 この9・15判決は、なによりも「7・15」集会6000人結集に象徴される国鉄1047名闘争の歴史的発展に心底から恐怖した権力中枢が、きわめて政治的かつ卑劣な手口を使って、この国鉄闘争の分断・解体を狙った大攻撃にほかなりません。その核心は、労働者の団結権の徹底的解体であり、まさに「9・11」選挙結果をもって新たにはじまる小泉ファシスト的大反動の、民営化と戦争攻撃=労組解体を全面的に体現したものです。
 9・15判決をはねかえす道は、11・6労働者集会1万結集にあります。私たち国鉄労働者は、この闘いの組織化の先頭に立ちます。

 「不当労働行為による解雇は無効」の大原則を公然と破壊

 9・15東京地裁判決は、第1に国鉄改革関連法を盾に、「90年解雇は有効」と開き直りました。
 難波裁判長は、「国鉄が作成したJR採用候補者名簿に原告らが登載されずJR不採用とされたことは国労差別による不法行為である」として「不当労働行為」の事実を認めました。
 しかし、その舌の根も乾かぬうちに「日本国有鉄道退職希望者職員及び日本国有鉄道清算事業団職員の再就職の促進に関する特別措置法(=再就職促進法)の失効時には、事業団と事業団職員との間の雇用関係も当然に終了することが予定されていた」とか、「JR各社は雇用契約締結の自由を有しており、再就職促進法は、事業団職員を優先的に雇い入れるようにしなければならないと規定してはいるものの、義務付けていない」とか、「(他方事業団も)組合差別を行なったか否かに係わらず、原告らに対し、地元JRに採用させる義務を負っていたと解することはできない」「(不当労働行為なかったと仮定しても)原告ら全員が地元JRに採用されたはずであるとの証明はいまだされていない」などと言いなして「本件解雇(90年4月の1047名の解雇)は有効」であると公然と開き直ったのです。

 「不当労働行為」を5つに区分し、労働委員会制度の根幹を否定!

 しかも東京地裁は、87年2月16日の「振り分け」(JR不採用)から90年4月1日付けの清算事業団解雇に至る一連の不当労働行為を、ペテン的な手口を駆使して「不当労働行為の争点」を5つに細分化しました。そして「87年2月のJR不採用」を『不当労働行為』としただけで、その他全てを「再就職促進法の失効で雇用関係は終了した」と開き直って「90年解雇は有効」としたのです。「国鉄改革関連法のもとでは、採用差別があろうがなかろうが、1047名の雇用や権利が回復されることはない」という滅茶苦茶な宣言です。
 「不当労働行為による解雇は無効」これが労働法の根幹です。にもかかわらず「90年解雇は有効」としてこの原則を徹底的に蹂躙し、一切の原状回復をわずか500万円の「期待権侵害」にすり替えたのです。

 原告5人を分断し、1047名闘争を根底から破壊する

 さらに重大な問題は、原告のうち佐藤昭一氏ら5人について、国鉄時代に「停職6カ月以上または2回以上の停職処分を受けた」「昭和61年度末において年令満55歳以上の者」ことなどを理由に「採用候補者から外したことは合理性を有する」と正当化したことです。
 これは、“組合員の先頭に立って闘ってきたがゆえに重い処分を受けた国労組合員は、首を切られて当然である。救済を受ける資格など一切ない”とするとんでもない判決です。鉄建公団訴訟原告団の団結にクサビをぶち込み、なぶりものにして分断と屈服を迫っているのです。
 しかも、「停職6カ月かあるいは2回以上の停職処分」をうけた国労闘争団の5名とは、動労千葉争議団(9名)のことでもあります。東京地裁判決のねらいは、国労闘争団の佐藤昭一氏ら5人にとどまらず、動労千葉争議団にたいしても「そもそも救済対象でない」として、1047名闘争の団結そのもの破壊解体のねらいを剥き出しにしたのです。

 9・11小泉民営化大反動と一体の反動判決

 9・15東京地裁反動判決は、総選挙に圧勝した小泉政権の郵政民営化をはじめとした大反動と一体不可分の攻撃です。この判決は、民営化で労働者をいくら首を切ろうと500万円を払えば免罪されるという「労働契約法制」の大改悪をも先取りしたものです。
 小泉政権は、鉄建公団訴訟原告団をはじめ1047名の団結と闘いに心底恐怖しています。とりわけ日比谷野音に5800名を集めた7・15国鉄1047名集会の大高揚は、小泉政権と国労本部をとことん追いめました。
 7・15日比谷野音集会は、国労闘争団・全動労争議団・動労千葉争議団の統一陣形を強固にうち固め、国鉄闘争の再生の大道を開いたのです。このことが郵政民営化を突撃路に、大民営化攻撃を進めようとする小泉政権にとって我慢ならないのです。だからこそ国家権力は、原告団と1047名陣形を破壊するために階級意志をむきだしにして9・15反動判決を振り下ろしてきたのです。

 国労再生と国鉄闘争勝利をかけて11・6労働者集会へ

 原告団は、「本日の判決は到底18年間の償いになるものではない」「目標は、あくまでも鉄道員として地元JRに復帰することだ」という声明を発し、直ちに東京高裁に控訴することを決意し、かつ仮処分の執行手続きを終えました。
 すべての争議は、階級と階級の力関係で決まります。国鉄1047名闘争の本格的発展は、「不当労働行為」を認めながら「解雇は有効」と開き直った前代未聞の9・15東京地裁判決を、敵の最大の弱点に転化する闘いでもあります。いよいよ反転攻勢にうって出るときです。その最大の出発点が11・6日比谷野音1万人結集の力です。
 国鉄1047名闘争は、郵政民営化の嵐の中で立ち上がる全逓労働者とともに、9・11小泉反動に敢然と立ち向かう新たな労働運動の一大潮流の登場を強く求めています。11・6労働者集会は、小泉の戦争と民営化―労組破壊にたいする国鉄労働者をはじめとした全世界・全日本の闘う労働者の戦闘宣言の場です。
 今こそ9・15反動判決を撃ち破り、11・6戦争と民営化―労組破壊と対決する全国労働者集会(日比谷野音)に大結集しよう。

| HOME | 目次 |


特集  小泉「圧勝」に4大産別から総反撃を

●「日の丸・君が代」―教科書闘争の地平を日教組運動の階級的再生へ

                                教育労働者部会

 不屈に前進する被処分者の闘い

 「日の丸・君が代」、つくる会教科書をめぐる東京の教育労働者の闘いは、石原・都教委との倒すか、倒されるかの闘いとしていよいよ熾烈化している。
 7月21日に強行された再発防止研修に対して、被処分者は昨年を超える激しい弾劾闘争をたたきつけた。この闘いに対して、都教委はゼッケン等を着用して会場に入場した被処分者10名に「職務専念義務」として新たな懲戒処分を加えようとしている。
 9月には、減給以上の被処分者に対して、個別に「専門研修」が行われた。外界と隔絶した地下二階の部屋で4人で取り囲んで詰問するなど、拷問に等しい暴挙だ。被処分者は、抗議して部屋を変えさせる、質問で都教委を圧倒するなど、果敢な闘いを繰り広げ、意気軒昂と闘っている。
 戒厳令体制を突き破った今春の東京の不起立闘争と闘いの全国への拡大は、日教組の改憲路線への転換を阻止する力となった。都高教大会では、「都高教総体をあげて『日の丸・君が代』不当処分撤回をかちとろう」のスローガンをはじめ32本の闘う修正案が可決・受け入れとなり、日教組本部の95年「五項目方針転換」や都高教本部の「日の丸・君が代」での「180度方向転換」を厳しく批判する特別決議も可決された。
 本部の屈服方針を突き破って闘われた不起立闘争は、ランクアンドファイル運動から組合権力への道を切り開き、闘う日教組再生の拠点をうちたてる展望をもさし示している。
 「日の丸・君が代」不起立を闘う教育労働者への処分攻撃は、戒告から減給、停職へと加重され、来春は、懲戒免職も覚悟の闘いとなる。06年卒入学式闘争での今年を数倍する不起立闘争の爆発にむけて、被処分者を先頭に全国の1千の闘う教育労働者の11・6総結集をかちとろう。

 つくる会の野望を打ち砕いた杉並の教科書闘争

 教科書闘争は、「日の丸・君が代」闘争の継続、激化・発展として、愛国主義・国家主義(教育)への抵抗陣地を拡大する決定的な地平を生み出した。採択結果は、公立学校では、東京、愛媛の中高一貫校と、ろう・養護学校、滋賀の中高一貫校3校中の1校、採択区では、杉並区と大田原市のみの採択となった。歴史は、4860冊=0・39%、公民2350冊=0・19%である(9月6日付教科書ネット調査)。杉並の教科書闘争の爆発が全国情勢を決して、採択率10%を豪語していたつくる会を惨敗にたたき込んだのだ。
 8・4採択延期は、反対運動の高揚が山田区長―納冨教育長体制を動揺させた結果であり、直接的にもつくる会のドミノ戦略に大打撃を与えた。ここから8・12採択強行にいたる過程は、つくる会勢力のなりふり構わぬまきかえしとの内戦型の激突となった。
 つくる会勢力は、扶桑社に反対した教育委員を「公開質問状」やビラで脅迫・中傷し、前夜から区庁舎前に泊まり込み傍聴整理券を独占し、藤岡みずからが傍聴に乗り込んで威圧を加えるなど、その暴力的正体をむきだしにした。採択強行は、つくる会勢力に牛耳られた教育行政の姿を暴きだすものとなり、杉並区民や教育労働者の怒りと危機感をますますかきたてている。全国で採択が阻止されたことで、つくる会教科書の過半数を東京都と杉並区が買い支える異常な構図が浮き彫りとなり、撤回闘争への展望をつくりだしている。
 つくる会教科書が「教科書として不適切」という報告書の書き換えを強制する暴挙に対して、組合員教員は勇気ある告発にたちあがった。杉教組執行委員会は、採択強行に対して「いかなる弾圧・強制にも屈せず教育者の良心にかけて歴史の真実を子どもたちに伝え続けることを宣言する」「たとえ反面教師としても、このような教科書を使うことは教育者の良心が許さない」という声明を発表した。「日の丸・君が代」闘争に続く教育労働者の戦争協力拒否闘争の始まりだ。
 つくる会は、採択結果についての声明で「四年後の教科書採択に三度挑戦する」と宣言し、地理、家庭、国語など他教科への進出も予告した。つくる会教科書攻撃がまさに採算度外視の政財界総がかりの攻撃であることを改めて示している。すでに4年後にむけた攻防は始まっている。その帰趨を決するのが、杉並と東京の中高一貫校の撤回・拒否闘争だ。

 戦争教科書の使用強制を断じて許すな

 採択直後に「補完的ガイドラインや教師用指導書が必要」というコメントを発表した教育委員長に対して、つくる会勢力は、「許しがたい行為」「違法行為の推奨」「職務上の義務違反として罷免せよ」とする「公開質問状」と「見解」を送りつけ、委員長コメントを事実上撤回に追い込むという事態が生起した。
 つくる会の「見解」はいう。「四年前の採択で、扶桑社の歴史教科書が採択されたのち、愛媛県立養護学校中等部の教員が、配布された教科書の受け取りを拒否する事件があった。杉並区でも来春、都教組杉並支部の主導のもとに中学校の社会科教員が同類の違法な戦術を採用して混乱をつくりだすことは十分に予想されるところである。これは…伝習館高校訴訟最高裁判決でも懲戒処分の理由に該当すると判示されている」。
 また、つくる会の松浦杉並区議は、「杉並から日本を変える―扶桑社歴史教科書採択への道」と題する一文の中で「来年の4月以降も、学校を訪問し、資料請求も行い、授業でのプリントやテストもチェックしなければと思ってます」などと語っている。
 都教委は、中学社会科教員が公民の授業に使用したプリントで、侵略戦争を否定する都議の発言を批判していることが信用失墜行為にあたるとして戒告処分を出している。プリントの事前提出や使用禁止が職務命令で出される場合はもちろん、教員の裁量で使用する副教材の内容そのものを理由とする懲戒処分に踏み込んでいるのだ。
 つくる会と結託して採択を強行した都教委・杉並区教委は、「教科書使用義務違反」による懲戒処分、自主編成への弾圧を振りかざした、教育労働者への使用強制の攻撃にのりだしている。当面、社会科教員や組合役員への報復人事、強制異動が最大の攻防となっている。教育労働者の拒否・抵抗闘争を支え、これを大きく包む撤回運動をつくりだそう。

 公務員労働運動をめぐる階級決戦の先頭で

 「自民圧勝」で、郵政民営化を突破口とする戦争と民営化攻撃の嵐が吹き荒れようとしている。「労組=国賊」キャンペーンの下、小泉政権は、公務員労働運動の絶滅・一掃に向かってきている。民営化攻撃で、公務と公務員の範囲を劇的に縮小し、戦後の護憲平和運動の中心部隊である公務員労組をたたきつぶす。そして、身分保障解体、能力等級制と査定昇給、選挙運動の制限など、公務員制度改革で公務員を「国家への奉仕者」へ、教育労働者を「聖職者教師」とする。改憲阻止の帰趨も、民営化攻撃との攻防にかかっている。
 処分覚悟の「君が代」不起立闘争で職場抵抗闘争を復権し、現場組合員による「日の丸・君が代」全国統一闘争をつくりだしてきた教労戦線こそ、郵政民営化・公務員労働運動をめぐる階級決戦の先頭にたとう。

| HOME | 目次 |


特集  小泉「圧勝」に4大産別から総反撃を

●自治労本部の改憲路線に開始された反乱

 自治体労働者部会 

 8月23日から26日まで鹿児島市で第76回全日本自治団体労働組合(自治労94万8千人)の大会が行われた。
 23日の初日には、代議員数963人中938人が参加、傍聴者も同数かそれ以上ともおもわれた。26日の閉会まで、50人近い発言者の中で、「平和基本法」に反対の意見・質問が21人に達し、反戦・平和・護憲の具体的な運動の提起を含めると25人の代議員が本部方針に反対した。彼らの発言は本部を圧倒し、特に最小限防御力・自衛権が焦点化し、本部は防戦一方となった。
 翌日24日の南日本新聞の朝刊の見出しは、大会開催の紹介の後「総選挙突入を7日後に控え、憲法改正や公務員人件費削減を公約に盛り込む民主党や、同党支持を打ち出す上部組織の連合への批判が相次ぎ、連合が1枚岩ではない実態を浮き彫りにした」と報じている。いかに本部方針である「平和基本法」=「改憲」に対する自治体労働者の怒りがあったのかを明確に指摘している。

 階級的労働者の決起が始まった

 自治労本部は、5月の中央委員会「国の基本政策」の最終報告において、それまで22回の会議を行ってきたということを答弁している。しかしその参加者は、全国の組合員から比べれば、きわめて少数の人たちだけである。どういう基準で集められたのかさえ組合員には明らかにされていない。本部もそれを認めて「諮問機関的」と認めているのである。
 あの「21世紀宣言」でさえ、多くの県本部では下部討議にせざるをえなかった。しかし今回この重大な問題を下部討議にはしていないのだ。
 それはなぜか。組合員の総反発に会うことが、わかりすぎるほどわかっていたからだ。だからあえて、事前に諮問機関などを作り、まるで、「民主的な会議」を何回も重ねてきたようなポーズをとらざるを得なかったのだ。既成事実を積み重ね、既に討論は尽くされたとの仮称を作らざるを得なかったといえる。だが組合員はこんなことで騙されるわけにはいかない。さらに、今回の議案書を見てみれば「平和基本法」が、経過報告や闘争方針にそっと紛らせ、そのものとして採決できないように、とんでもない工夫がされているのである。正面から提起できないこと事態が、本部に正義性が全く無いことの自認であり、組合員からすれば、卑劣そのものである証である。
 本部は、「平和基本法」の持つ悪さを100%承知だからこそ、このように隠蔽し、今大会で何気なくまぎらせ、組合員を騙して「平和基本法」を通そうとしたのである。
 しかし「最小限防御力とは何か、どこまで認めるのか」「自衛隊は違憲ではないのか、いつから認めるようになったのか」「7・14連合見解とどこが違うのか」等をたくさんの県本部に指摘され、いまさら「連合にはペーパーで申し入れる」などとの本部答弁でごまかされる状態ではなくなってしまったということだ。
 そもそも自治労はなにゆえつくられたのか。戦争に動員した側の反省から、自治体労働者の生活と権利を守るための、組合員のための自治労のはずだ。間違っても本部のためのものではあってはならないものである。
 現場をだまして意見を封じ、「採決はきちんとしました」、と連合大会に持って行き、戦争準備に手を貸そうとしていることは明白だといわなければならない。組合員を丸ごと資本に売り渡そうとしたのである。誰がこんなことを考えたのか。恥知らずにも、再度赤紙を出させようと策したのは誰か。我々はそのことを徹底的に追及し、戦争をやろうとする裏切り者のあぶり出しを、階級的労働者の責務として行わなければならない。
 いつの世も戦争で真っ先に殺されるのは若者であり、労働者そのものである。賃金どころの問題ではない。今大会冒頭から「平和基本法」=「9条改憲」をめぐる大会となったのは、労働者の観点からして全く当然のことなのだ。まさにこの時点において沖縄県本部を先頭として全国の自治体労働者は「21世紀宣言」を乗り越え、階級的な決起と流動を開始したということである。

 本部原案に対する補強修正案提出(宮城・新潟・富山・沖縄の4県本部)

 このようなまやかし的な本部原案に対し、全く当然にも「補強修正案」が上記4県本部からが出された。
 それに先立ち24日朝9時過ぎから大会会場中庭において、4県本部のひとつである沖縄県本部が、大きな横断幕を掲げ、それを組合員がしっかり支える中で沖縄県本部委員長代行山城氏より約1時間にわたり、火を噴くようなアジテーションが行われた。
・ 今まで全国の自治労の仲間と反戦闘争を必死で闘ってきたこと。
・ 戦争への動きはなんとしても阻む決意だということ。
・ 「平和基本法」は今大会では絶対通してはならないこと。
・ 沖縄戦の実情から軍隊が決して住民を護らないこと。
・ 台湾有事・尖閣有事に備え、政府には5万5千名の自衛隊を送る計画があること。
・ このままでは沖縄に帰れない。
などを暴露糾弾し、本部方針に反対し方針撤回まで戦い抜くことを決意表明したのである。
 本部の「平和基本法」強行方針に反対して行われたこの中庭集会を見るために、鹿児島アリーナ入り口の階段、2階のピロティーには組合員約500名が鈴なりになって、反戦の闘いを全国の最先頭で戦ってきた労働者の怒りと憤激のアジテーションに感動し、圧倒的な拍手を送ったのである。誰もがこの発言を自分の県本部の組合員に聞かせたかったに違いない。このアジテーションによって2日目は補強修正案に賛成の方向に大きく針が動いたのは明らかである。その後「補強修正案」に賛成する県本部は多かった。2日目になっても三重県本部をはじめ、この補強修正案に賛成の意思を明確にしているからだ。他にも、山形、茨城、岐阜、鳥取、静岡、長野、香川、広島、埼玉、福島、宮崎、栃木、北海道、高知、山梨、佐賀、秋田等の発言からも含め明らかである。

 本部矛盾の激化、委員長の更迭

 大会2日目の答弁で本部は、追い詰められ言い訳的な発言に終始する。
 「『平和基本法』は今大会で突然出てきたものではない。92年に方向性を確認し93年札幌大会で確認してきたものだ。十分な論議はしてこなかった。不十分ではあった。しかし憲法改正の動きが出てきて、議論は彷彿し、政界、経済界も同様になってきた。様々な市民団体との乖離もある。解釈改憲も進んでいる。護憲を進めると同時に恒久法を作る必要がある。これから平和基本法の中身について議論していく必要がある」と言い出すのである。そして本部は@9条の死守、A平和基本法はスタートライン、B連合への意見反映、C論議のオープン化、D自衛権論わかりやすくなどを挙げ、連合には口頭ではなく「ペーパー」で申し入れる旨の答弁を2回も行う。だが何年も前から論議してきたといいながら、「中身はこれから」とはどういうことか。「十分な論議はしてこなかった」と認めながら憲法を否定するような法律を作ろうとはどういう意味なのか。一方では改憲を認めつつ、それ以上のものがどうして出来るというのか。それらは『屈服』以外の何を意味するのか。本部は戦争に協力する気なのか。本部の矛盾した答弁は、雪の汚れを隠すがごとく続けられていく。
 このような状態から脱すべく本部は2日目から巻き返しを図り始めた。さらに夜にかけて相当強力な圧力がかけられたと思われ、翌日には補強修正案は取下げとなっていく。さらに委員長人事をめぐり、続投を決めていた人見委員長に対し、岡山県本部の森本氏が立候補し争うこととなったが、なぜか突然双方が取り下げる事態となった。そして結果としてうわさのあった岡部副委員長が予定通り新委員長になったのである。

 本部矛盾の深化

 本部側は先に記述したように、当然のことのように「平和基本法」を今大会で通し、連合に無条件で持って行きたかったに違いない。しかし全国の代議員の憤激の発言に会い、いいわけ的答弁に終始せざるを得なかったのだ。結果的に原案は通ったものの、大会で平和基本法がとんでもないものだということは、すべての組合員が理解したということだ。
 また、地域給、市町村合併、指定管理者制度等においても現場とのギャップの拡大は大きい、とりわけ平和基本法については、解釈改憲を認め、資本の方向に行こうとする本部と、戦争への道は絶対阻むという沖縄県本部を先頭とする勢力は対極にあるといって過言ではない。しかし沖縄だけではない自治労内の反戦勢力が大会を翻ろうしたのである。紙面の都合上、代議員発言を紹介できないのは残念だが、この大会から第2ラウンドの攻防が開始されたのだ。
 「平和基本法」こそ本部の最大の弱点に転化した。現場からの反撃が開始されたのである。だが自治労本部は更なる巻き返しに出てくることは明白である。どちらがこの秋の攻勢に出るかが問題だ。その上で来年初頭の臨時大会に向け闘うことが求められている。自治労内の闘う勢力の一切を、すべての力を11月6日の労働者集会へ注いでいこう。自治労大部隊の結集を! すべての力を11月6日、日比谷野外音楽堂での集会へ。

| HOME | 目次 |


●今秋決戦で共謀罪を葬ろう!

 「うそも100回いえば本当になる」。ドイツ人民は72年前の1933年2月、「改革」を強烈に訴えたヒトラーを大喝采で迎えた。だが、この「改革」は人民の期待とは裏腹に、人民を戦争へとたたき込み、塗炭の苦しみを与えたあげく崩壊することになる。ファシズムは「やさしい顔をしてやってくる」というのが歴史の教訓である。
 社会の行き詰まりのなかで、「改革」を渇望する人民の期待はとりあえず、「自民党をぶっ壊しても改革する」と大見得を切り、「小泉劇場」を演出した小泉純一郎のもとへ収斂された。あたかも「改革」が前進し、新しい時代がはじまったかのようなある種の高揚感が生まれている。だが、小泉自民党はもはや「自民党であって自民党ではない」、ネオ・ファシズム政党へと急速に変質しつつある。社会はもはやファシズム前夜といってよい。これが9・11総選挙の結果がもたらしたものである。
 この道は確実に「弱肉強食社会」へと人民をたたきこむ。そこには、誰もが「勝者」になりうるような巧妙なマジックが仕掛けられている。だが、石井ひさいちが9月12日付朝日新聞の「総選挙番外ののちゃん」で「競争社会なのか?これから」「勝ち組・負け組どころかボロ勝ち組とボロ負け組かもな」との会話のあと、疑似小泉男に「眠から棺へ」と叫ばせたように「官から民へ」のフレーズに陶酔して惰眠していると棺桶に直行する、というのがリアルな現実であろう。こうした手法について人材育成コンサルタントの辛淑玉は「不況下において、最も打撃を受けているのは都市部のホワイトカラー。彼らの多くは無党派だ。首相はこんな状況でも安定している公務員、あいつらを引きずり降ろせ、と言わんばかりに対象を郵便局に絞った。憎しみを活用する手口は『ユダヤ人がいるから××』というナチスのやり方と相通じている」と喝破する(日刊ゲンダイ9月12日号)。
 だが、こうしたナチス張りの大衆操作はあくまで「操作」である。小泉「改革」がまやかしであると判った時、小泉「改革」票はただちに反小泉票へと変わる。だからこそ、反小泉票の受け皿そのものを消滅させてしまえ、と治安弾圧体制は強化される。

 治安弾圧を粉砕しよう

 戦前のドイツでナチスのヒットラー政権が「合法的」に誕生したのは周知の事実である。問題は政権を獲得した以降の政策である。矢継ぎ早に「授権法」の成立、労働組合、社民党の活動の中止、ナチス以外の政党の禁止と手を打ち、独裁体制を完成させていく。今日の日本で全く同じ政策を行うという訳ではなかろうが、警察権力の肥大化を通じて同様の結果をなし遂げることは可能である。この間、おこなわれている弾圧手法の特徴は、現行刑法の拡大解釈を選別的に行う手法である。具体的には、自民党・公明党が行うポスティングは取締りの対象にならないが、反戦運動団体が行うポスティングは「犯罪」となるという構図である。この場合、判断基準は検察・警察権力が独占する。治安弾圧政策も一切はとりあえず検察・警察権力からはじまる。こうした脈略から共謀罪を見てみると、ナチスが行った「ナチス以外の政党禁止」に匹敵する内容を孕んでいる。9・11総選挙の結果は、治安弾圧立法の成立を加速する。治安弾圧を粉砕する闘いは労働者人民にとって第一級の課題とならざるを得ない。

 治安弾圧法と共謀罪

 共謀罪は戦前の治安弾圧法と極めて近い構造を持っている。1900年3月に制定された治安警察法は、集会など政治活動を規制することを目的としていた。この結果、1901年に社会民主党、1921年には日本社会主義同盟、1928年には労働農民党や日本労働組合評議会などが結社禁止とされた。1900年6月に制定された行政執行法は、デモや集会を理由とする検束を可能とした。警察が一時的に拘束・連行して留置場に閉じこめるのである。期間は「翌日の日没に至るまで」となっているが、「留置場のたらいまわし」という形で長期の拘束が行われた。そして治安維持法は1925年に制定され、3年後の「結社の目的遂行のためにする行為」規定の追加によって適用範囲は一挙に広がり、弁護士の活動さえ「共産党の目的遂行のための行為」とみなされ弾圧された。
 共謀罪は、治安警察法、行政執行法、治安維持法など戦前の治安弾圧法の内容を引き継ぎつつ、さらに強化・拡大したものである。反政府的な言動は、検察・警察の恣意的な判断で弾圧できることになる。

 共謀罪を永久に葬り去れ

 9月21日に開会した第163回特別国会は郵政民営化法案、対テロ特措法の再延長法案、共謀罪法案、「障害者」自立支援法案など反動法案が目白押しとなる。政府・与党は郵政民営化法案を10日程度の短期で成立させたあと、内閣改造を待たず、前国会で廃案になった共謀罪、「障害者」自立支援法などを一挙に成立させる攻撃をかけてきている。衆議院法務委員会の空席となっていた副大臣に、法務大臣政務官であった公明党の富田茂之が就任した。南野大臣の答弁能力の問題は残っているが、これで法務委開会の条件はクリアされ、いつでも審議に入れる環境となった。待ったなしの決戦である。
 前国会での闘いによって、@多数派弁護士の無関心、A国会議員の無関心、Bメディアや表現者の沈黙という大きな壁は打ち破られた。問題は労働運動・市民運動など大衆運動の取り組み、高揚が全く立ち後れていることである。しかし、高揚の兆しはある。衆議院議員会館で7月21日に行われた院内集会は、見解表明こそしなかったが連合も参加し、これまでの3倍の規模となった。平和フォーラムが反対を表明し、自治労も7・26集会への参加を決定し、全労協も10月大会で反対を決定する準備を進めるなど反対の声は労働運動・市民運動にも広がっている。
 今秋、労働運動こそが共謀罪反対運動の主軸にならねばならない。国会前行動への参加が1ケタという惨状を克服し、日比谷野音を埋め尽くすような集会をかちとろう。破防法・組対法に反対する共同行動主催の10・1総決起集会をかちとり、日弁連主催の10・13集会に結集しよう。国会前での座り込み闘争に決起しよう。グレードアップされた共謀罪反対国際共同声明の署名を爆発的に集めよう。こうした力を集中して共謀罪を永久に葬り去ろう。 (鈴木 健二)

| HOME | 目次 |


労働者学習シリーズ 帝国主義 第9回 米 宗教右派

               島崎光晴   しまざきみつはる   労働運動理論センター

 前回につづき、労働者学習センター主催の労働学校での講義、そこでの質問・感想、それに対する私の回答を中心に、帝国主義と現代帝国主義について考えていきます。

 ブッシュ「神からの召命」

講義 ブッシュは1月の就任演説で「世界の圧政を終わらせる」「必要なら武力行使」と、世界戦争を公言しました。しかも、それを「神からの召命」とまで言い切りました。「伝道」という言葉も使われています。「自由の拡大」という言葉が繰り返し出てきますが、“アメリカは神の召命によって世界に自由を拡大する”という意味です。ここでの「自由」はブルジョア民主主義的な「自由」ではなく、「神のもとでの自由」という性格に変わっています。この就任演説は、マイケル・ガーソン大統領首席スピーチライターが手がけたとされています。彼は「米国で最も影響力のある25人の福音派」(米タイム誌)に選ばれるほどのバリバリの宗教右派です。第2期ブッシュ政権では政策顧問に抜擢されています。
 現在のアメリカ帝国主義の政治・社会は、宗教右派、キリスト教原理主義者を抜きに考えることはできません。まず、いくつかの顕著な事実をあげましょう。
 04年のブッシュ再選は、キリスト教右派の票によって初めて可能となりました。全投票者のうち福音派が23%を占め、そのうちの78%がブッシュに投票した、と言われています。00年の大統領選でも、ブッシュへの投票の3〜4割が福音派だった、というのが定説です。
 福音派というのは、19世紀後半にダーウィンの「進化論」が登場したさい、プロテスタント教会内の主流が「進化論」を容認したのに対し、聖書無謬説をとった宗派です。福音派は旧約聖書・新約聖書の一字一句をまちがいないとみなします。“神が天地を創造し、それから人間を作った、それがアダムとイブ”という説を本当に信じています。福音派は全米で7000万人との説もあります。
 ホワイトハウス幹部は毎週月曜日、全米福音派協会会長のテッド・ハガード牧師など福音派指導者との電話会議を開いています。「全米4万5000の教会の代表」とされる人物です。ホワイトハウスが毎週会議をやるほど密接な関係なわけです。
 政治だけでなく社会的にもキリスト教原理主義がまんえんしています。米国では「グロリアス・アピアリング(栄光の来臨)」という宗教小説が売れています。聖書の「ヨハネの黙示録」に想を得たフィクションです。シリーズ12作目で、累計6000万冊以上売れているらしい。そこでの描写はものすごい。「暗闇に包まれた世界に突如として光が差しこんだ。天が開き、白い馬に乗ったイエス・キリストが舞い降りてきた」。地上に降り立ったキリストが言葉を発するたびに異教徒がバタバタと死んでいく。「何万人もの体が引き裂かれ、血が流れ出た」「イエスがわずか数インチ手を動かすだけで地は割れ、すべての異教徒が泣き叫びながら落ちていった」。異教徒を退治する「救世主」になっているわけです。
 「進化論論争」も再燃しています。米国では19世紀から「進化論論争」がありました。1960年代には連邦最高裁が、特定の宗教にもとづく学校教育は、信仰・言論の自由を保障する米憲法に反するとしました。最近になって、「知的な設計」論と呼ばれる新しい反進化論が台頭しています。“人間が生物の進化であると認めるが、しかし何者かによる知的な計らいが進化の方向を決めた”というもの。最高裁判断を気にして「知的な設計主」を「神」と明言していないだけで、実質は進化論否定の学校教育をすべきだとするものです。ブッシュは8月初め、この知的設計論を学校で教えることを容認しました。
感想 ブッシュの“神召”には驚きました。時代がおかしな方向に行くと、こういうもの(宗教)がはびこるものなのでしょうか。

 ネオコンと結びつく

講義 福音派が政治的に右派的性格を強めたのは、70年代以来です。ベトナム戦争での敗退とアメリカ帝国主義の没落、国内支配の崩壊的危機などを背景にしています。従来の倫理・習慣の崩壊、権威の失墜、家族の瓦解、文化の激変に対し、伝統的な価値・制度を対置することで体制を維持しようとするものです。
 しかもキリスト教右派は、80年代から90年代にかけて、ネオコンサーバティブ=ネオコン(新保守主義者)と結びついてきました。ネオコンは、社会福祉の抑制、市場の重視、単独主義的な外交などを特徴にしています。宗教はもともと反知性的なものですから、キリスト教右派は知識人を持っていませんでした。一方のネオコンは、70年代に始まって80年代レーガン政権下で政治的に伸長しましたが、アメリカ社会への影響力は限られたものでした。この両者が80年代に、当初はイスラエル支持を共通目標に結びつきました。その後、ネオコンが中絶やゲイの権利に反対するなど社会政策でキリスト教右派の意見を取り入れていきます。今では、外交と内政の両面にわたってネオコンとキリスト教右派が同盟している状態で、それが米帝ブッシュ政権の土台をなしています。
 なお、「一般にネオコンという用語は極左から極右に移った人々に使われる」(ロバート・ライシュ クリントン政権下の労働長官)という説もあり、ライシュは「ラドコン(ラジカル・コンサーバティブ)」と呼んでいます。もともとのネオコンは、保守派に転向したアメリカのトロツキストを指していたようです。帝国主義批判の抜けたスターリン主義批判は、容易に反ソ・反共強硬派に転落してしまうことを示しています。
 さて、アメリカ帝国主義がこんにち、キリスト教右派とネオコンを権力の土台とするにいたったのは、なぜか。帝国主義としての支配の危機をのりきりつつ、世界戦争につっこんでいくためです。
 アメリカは帝国主義国でも極端な貧富の格差が拡大しています。そこからくる労働者人民の不満はすさまじいものです。それを、伝統的な倫理・家族観・愛国心で抑えつけようとしているわけです。実際、福音派が最も浸透しているのは、米国南部で「レッド・ネック(日焼けした首)」と呼ばれる貧しい白人層なのです。
 同時に、第2次大戦と戦後のアメリカによる世界支配のイデオロギーはもはや通用しなくなっています。「アメリカンデモクラシー」などと呼ばれてきましたが、01年9・11の反米ゲリラ戦によってその帝国主義的本性がむきだしになりました。それに代わる世界支配と世界戦争のイデオロギーこそ、ネオコンとキリスト教原理主義にほかなりません。つまりアメリカ帝国主義は、「外に向かっての侵略戦争と内に向かっての階級戦争」をこういう形でやる以外になくなったということです。
 アメリカがキリスト教原理主義で世界戦争につっこんでいく。これは別に「文明の衝突」ではありません。帝国主義の基軸である米国がもはやそうするほかになくなったという、現代帝国主義の延命のあり方の問題なのです。帝国主義として本当に最末期を示すものではないですか。

感想 帝国主義のなれの果て→神だのみに依存する米国。こんなことが許されていいものか。世界戦争が始まる前に労働者が団結して、世界を解放しなければならないと思った。

感想 「つくる会」教科書、靖国問題のようなことが米国でも進行していて、それらが資本家のための戦争推進のためにやられていることがよく分かりました。やはりこの状況を打破できるのは労働者の力しかないと思います。

| HOME | 目次 |


●やってられないぜ! ―悪化する労働者の現状

 第4回 大増税目白押し

 10月の給与天引き分から厚生年金保険料が上がり、手取額が減った。さらに介護保険の入所施設のホテルコスト(食費と居住費)の全額自己負担化も開始された。年明け1月の源泉徴収分からは所得税の「定率減税」が半減(現行20%→10%)され、来年6月からは住民税の定率減税も半減(現行15%→7・5%)され、さらに手取りが減る。
 小泉・自民党が目論む消費税増税や「税制の抜本改革」は、ごく一部の金持ちをより優遇し、労働者からの収奪をいっそう強めようとするものである。年収2000万円以上の高額所得者を減税し、年収700万円以下の圧倒的多数の労働者が大増税になるなんて、やってられないぜ!

 小泉・自民党のもくろむ大増税

 小泉・自民党は衆議院選挙期間中、「サラリーマン増税」をあたかも否定するようなデマゴギーを振りまき、まんまと増税隠しに成功した。
 自民党のホームページには選挙後も「政府税調のサラリーマン増税ありきを自民党は許さない」という見出しが大きく掲げられ、「安易な増税は許さない」とこぶしを握りしめた武部の写真まで載せている(9月26日現在)。
 「サラリーマン増税」という言葉自体、わかりやすいようでいて、その実、具体的に何を指すのかよくわからない、実に曖昧な表現である。それを「許さない」と強く打ち消すことによって、あたかも一切の増税をしないかのような、錯覚を与えることを狙った詐欺的かつ狡猾なデマゴギー以外の何物でもない。
 この「政府税調のサラリーマン増税」とは、政府税制調査会が本年6月21日に公表した「個人所得税に関する論点整理」で提言された個人所得税の抜本的な見直しのことを指している。
 政府税調の提言のうち、サラリーマン=給与所得者に関係するものを拾い出してみると、次のようなものがあげられている。
   @定率減税の廃止
   A給与所得控除の圧縮
   B配偶者控除の見直し(世帯単位での課税を検討)
   C扶養控除の年齢制限導入
   D特定扶養控除の廃止
   E個人住民税所得割の税率フラット化(実質大増税)
 A「給与所得控除の圧縮」以外は給与所得者だけでなく、個人事業主や年金生活者も含め、あらゆる納税者に関わる「論点」だが、いずれにせよ大増税に直結するものばかりである。
 政府税調の各「論点」はいずれも給与所得者の85%以上を占める年収700万円以下の所得層にとっては激甚な増税になるであろう。とりわけ低所得者層にとっては死活問題となるような大増税にならざるをえない。
 政府税調の「論点整理」は個人所得課税に限った提言であるため、当然ながら消費税増税にはいっさい触れられてない。つまり、小泉・自民党は今回の選挙で「サラリーマン増税は許さない」と言いつつも、消費税の大幅アップは既定路線として推進すると宣言しているのだ。
 今回の衆議院選挙では「郵政民営化」のみを争点とするような演出がなされる一方で、「政権公約2005」いわゆる「マニフェスト」の中では、労働者の収奪をいっそう強化し、公共サービスや福祉を切り捨てる政策のオンパレードになっている。
 増税路線は「財政・歳入一体の財政構造改革を実現」の「税制の抜本改革」ではっきりと公約されている。所得税について「サラリーマン増税を行うとの政府税調の考え方はとらない」とした上で、「18年度において三位一体改革の一環として、所得税から個人住民税への制度的な税源委譲を行う」、「19年度を目処に、(略)消費税を含む税体系の抜本的改革を実現する」としている。
 年末に向けて、「税制改正」が政治日程に上ってくるが、来年度の税制改正に盛り込まれなくても、選挙のほとぼりが冷めた来年以降、ほぼ確実に出してくるだろう。公約違反を指摘されても、A以外はサラリーマンだけを対象にした増税ではないので公約違反には当たらないとして、正面突破してくることは間違いない。そもそも「安易な増税」を「許さない」という曖昧な表現で、「安易でない」「抜本的」な税制改革は労働者にとってどんなに大増税になっても「やる気」なのだ。

 定率減税廃止も既定路線

 小泉・自民党のデマゴギーにだまされないように、労働者は税制のしくみを把握しておきたい。
 所得税の納税額年収(1年間に会社から支払われた賃金の総額)から給与所得控除、社会保険料控除、人的控除、その他控除を差し引いた課税所得金額に税率をかけて算出される。所得税の税率は74年には最高税率が75%であったものが、84年以降段階的に引き下げられ、99年以降37%と半分以下に引き下げられた。累進課税が緩和され、この十数年、高額所得者の税負担は大幅に軽減された。99年以降年間所得金額1800万円を超える部分には37%が適用されている。
 上の表は年収400万円の労働者の所得税の試算である。06年には定率減税半減(すでに決定済み)、07年は全額廃止で計算した。定率減税は99年に小渕内閣が景気対策として導入した「恒久的減税」で、税率で算出された税額に所得税は20%(上限25万円)、住民税は15%(上限4万円)を軽減するというもの。「恒久的」といいながらわずか6年で半減されてしまった。財務大臣の谷垣は「本来の税率に戻すのは増税とはいわない」と07年の全廃を既定路線としている。
 所得税の試算は夫婦と子供二人の4人家族、専業主婦世帯で二人の子供のうち一人は特定扶養控除対象者というモデルケースが使われることが多い。配偶者控除、扶養控除、基礎控除など、納税者本人や扶養者が対象になる控除を人的控除という。特定扶養控除は年齢16歳以上23歳未満の扶養親族に適用される控除で教育費のかかる高校、大学、専門学校に在学中の所得が103万円以下の親族を扶養している人が受けられる。
 このモデルケースでは人的控除が大きくなり、05年の所得税の納税額3万円程度と少なくなる。しかし、少子化や共働き世帯が多い最近では、これだけの控除を受けられる人は少数派で、単身者の場合は同じ年収でも、試算のように納税額はいっきょに大きくなる。納税額が大きいと定率減税の半減、廃止の影響は大きくなる。

 給与所得控除見直しで税負担は倍増

 政府税調の「論点整理」で見直しの対象になっている給与所得控除や配偶者控除、特定扶養控除が見直された場合、どうなるだろうか?
 定率減税が廃止され、給与所得控除が半減された場合、年収400万円の単身者は現在よりも所得税は10万円、個人住民税は5万円の増税になり、所得税だけでも納税額は現在の2倍以上になる。これに消費税アップで月20万円消費する場合、消費税率10%になった場合1万円、15%になった場合2万円の増税になる。それに社会保険料は毎年上がり、健康保険の保険料や給付まで見直されるとなると、年収400万円以下の労働者はほんとうに生きていけなくなる。労働者の生活の防衛と小泉・自民党は両立・共存できない。 (雷太)

| HOME | 目次 |


●闘う合同労組 第12回 長野県の地域合同労組・千曲ユニオンからの報告

 今年前半のとりくみ

 まず、今年度の千曲ユニオンの路線は次のとおりです。
★リストラ・賃下げ・社会保障解体、生活破壊とたたかい、民間中小・零細未組織労働者のいのちと権利をまもります!
★現場組合員こそ主人公―たたかう労働運動の団結を、全県・全国に広げます!
★差別と排外主義を許さない地域共闘をつくりだします!
★反戦平和を高く掲げて、労働者の国際連帯を求めて進みます。
(04年9月改称第2回大会決議)
 これに基づいて闘いぬいていますが、今年前半のとり組みから、2つほどとりだしてみます。
 その1、パート女性労働者の未払い賃金を取り戻したとりくみ
「残金は○○○○円だね」(社長)
「そうです」(パート労働者)
「ではこれ」(社長)
「確かに」(パート労働者)
 今年6月、2月からとり組んだパート女性の賃金未払いを取り戻した瞬間です。当該も付き添った千曲ユニオンの執行部も心のなかで「やった」と叫びました。
 今年2月、当該の知人をとおして「給料が支払われない。このままでは子供の給食費も払えない」という深刻な労働相談を受け、ただちにとり組みを開始しました。まず当該に組合に入ってもらい、組合として労基署に訴えると同時に、会社に対して団交を要求し、未払い額の確認と支払い日を確定しました。
 しかし、支払い日当日になって、「今日は都合がつかない」と電話で連絡してきました―こうしたドタキャンが数回行われ、また支払われても一部分だけということをくり返しました。会社の意図は明らかに労働者があきらめるのを待つという態度です。
 約束を破られるたびにはらわたが煮えくりかえる思いをしながらも「働いたものは絶対にとりかえす」ということを当該の女性と何度も徹底的に確認し合いながら、その度ごとに「抗議書」「申し入れ」などを発行し圧力を加え、一方で労基署を突き動かして側面からも圧力を加えつづけました。
 こうした過程で明らかになったことは、この会社は実質的に倒産しているにもかかわらず、他の従業員にもおなじように給料の未払いをおこない、労働者がいやになって辞めていくと職安に求人広告をだして別の労働者を雇い、会社を延命させることをやっていたのです。こうしたことが判るにつれて、ますます「絶対にあきらめない」という気持ちをはっきりさせながらとり組みました。そして約4カ月以上かかりましたが、徹底的にくらいついて全額の支払いをかちとりました。
 このとり組みで私たちは、会社が「労働者の側がいやになってあきらめるのを待つ」ということに対して「絶対にあきらめない」ということ、すなわち労働者の当然の権利と、何より労働者魂を対置してたたかいました。それは、「資本と労働者は絶対に非和解」という階級的立場を貫くということであり、「動労千葉型労働運動」を地域につくり出すという気概でたたかったということの勝利だと総括しています。
 その2、千曲市教育委員会に「つくる会」教科書不採択を求めた申し入れた行動。
 千曲ユニオンとして、1〜3月「日の丸・君が代」強制とたたかう方針を確立し、さらに4〜8月「つくる会」教科書反対のたたかいにとり組みました。
 それはまず「日の丸なんてただの旗」「戦前のような教育を復活させるといってもピンとこない」という組合員の意識との思想闘争として始まりました。学習会を積みあげるなかで、それでもよくわからないという組合員でしたが、「じゃあ実際に見てみよう」と教科書展示会に行って直接見てもらいました。「つくる会」歴史教科書を手にとったお年寄りの組合員が、「これは自分の子供の頃の教科書だ」とつぶやいたことが決定的でした。このひとことが合図となって、中学生の子供をもつ組合員や戦中多くの朝鮮人が強制連行・強制労働させられた松代大本営地下壕近くの出身の組合員の声もあがり、千曲市教育委員会に不採択を求めて申し入れ行動を行おうという話になりました。こうした組合員の声を背景に7月21日千曲市教育委員会に不採択を求めて申し入れを行いました。このことは地元の「信濃毎日新聞」にも記事となり大きな反響をよびました。
 その一方で執行部や青年部の若者は、「つくる会」教科書攻防の最激戦地・杉並に駆けつけ駅頭でのビラまき、区役所包囲闘争に決起しました。こうした「つくる会」反対闘争をとおして、教育と民営化をとおして日帝が今やろうとしている、「戦争のできる国民つくり」との闘いの基盤をつくり出しつつあると確信しています。

 千曲ユニオンの歴史と現状そして未来

 地域合同労組・千曲ユニオンは、1996年、一労働者の解雇問題から出発しました。このとき更埴地区労組会議(当時)に相談し、地区労の指導の下で「更埴ユニオン」がつくられ、その委員長に就任して解雇撤回闘争が始まりました。しかし、地区労は団交を一度もったきり、闘いと指導を放棄してしまい、委員長はやむを得ず泣き寝入り、ユニオンも開店休業状態となりました。
 97年再び委員長の解雇問題が発生し、今度は労組交流センターの指導の下に不当解雇撤回闘争をたたかい、会社の「警察をよぶぞ」という脅しにも屈せず、解雇撤回をかちとり勝利しました。これが私たちの運動の出発点です。いわば地区労が「生みの親」交流センターが「育ての親」ということです。
 その後長野での新しい潮流運動の旗振りとして県内労働運動に「11月労働者集会」をもちこみ、百万人署名運動を先頭で担って来ました。その一方で部落解放同盟全国連・長野県連との連帯の闘いを深め、全国連の各支部大会や県連大会を積極的・主体的に担う立場で共闘を積み重ねてきました。
 03年に入って地域の中心的な人物が組合に入ることで、第二段階とも言うべき段階に入り、更埴市が合併で千曲市となったことを機に、「地域合同労組・千曲ユニオン」として再出発し、同年11月集会へ大会参加者全員が参加してきました。
 現状は多くの合同労組と同じく、組合員の職場がバラバラなうえに、長時間・強労働という民間中小企業の現実からなかなか集まれない、執行部も全員が労働者ということから十分な活動が保障されない、事務所がないなど多くの悩みと困難を抱えています。しかし、冒頭にのべたように、9・11反革命は、4大産別を軸とした労働運動の死活的な再生を突きつけており、放置されるならば排外主義と愛国主義に絡め取られかねない民間未組織労働者を獲得できるか否かは、大変な問題です。私たち千曲ユニオンは、小なりといえども「連合や労組会議に代わって、地域の権力をとる、ヘゲモニーをとる」ことそのために「拠点と言える職場を持とう」「どんなに小さくても事務所をもとう」を当面の目標にしています。一見困難に見える目標でも地域に根づけば根付くほど展望が見えてきます。また結集している青年労働者は、積極的に沖縄やヒロシマ、杉並にでかけ階級闘争全体を見わたす視野の獲得と主体を形成しつつあります。このことは必ずこれから生きてくると思っています。そうした飛躍の決定的場が今年の11月労働者集会だと考え全力で最大の結集をかちとるべく奮闘していく決意です。

| HOME | 目次 |


●たたかいは進む

★9月15日の鉄建公団訴訟判決に対する動労千葉の見解

(1) 昨日、国労闘争団の仲間たちが提訴した鉄建公団訴訟の判決がだされた。
 判決は、国鉄が国労組合員らをJRの採用候補者名簿に登載しなかったことを、国労に所属していることを理由として、採用基準を恣意的に適用し、勤務成績を低位に位置付けたことによる不法行為であると判断した。ところが、東京地裁民事36部は、二重三重の「理由」を張りめぐらして、90年3月の清算事業団からの解雇を「有効」とし、さらにはJRに採用されていれば受け取ることができたはずの賃金相当額等の請求についても斥けたのである。
(2) 判決は第1に、「再就職促進法の失効時には、事業団と事業団職員との間の雇用関係も当然に終了することが予定されていたというべきであり、(90年3月の清算事業団解雇は)合理的な理由があり、有効である」という。
 第2に、国鉄が採用差別を行なった以上、事業団は原告らを地元JRに採用させる義務を負うという原告たちの全く正当な主張に対し、判決は、「JR各社は雇用契約締結の自由を有しており、再就職促進法は、事業団職員を優先的に雇い入れるようにしなければならないと規定してはいるものの、義務付けていない」と言い、他方事業団も「組合差別を行なったか否かに係わらず、原告らに対し、地元JRに採用させる義務を負っていたと解することはできない」とした。
 そして第3に、不当労働行為がなかったと仮定しても、「原告ら全員が地元JRに採用されたはずであるとの証明はいまだされていない」というのである。
 さらには、国鉄分割・民営化の過程で吹き荒れた嵐のような不当労働行為の責任についても、それが不採用〜清算事業団解雇をもって完結する一連の行為であるにも係わらず、「時効」の名の下に全てを切り捨てた。
 そして判決は、「国鉄から違法に不利益取扱いを受けたことで、正当な評価を受けるという期待権を侵害された」として、1人わずか500万円の損害賠償金の支払いだけを命じたのである。
 しかも、297名の原告のうち5名はそれすら拒否された。理由は「停職6ヵ月以上または2回以上の停職処分を受けた者」「昭和61年度末において年令満55歳以上の者」を採用候補者名簿に記載しなかったことについて、その基準自体は明確なものであり、合理性を有するからだというのである。
(3) 結局、この反動判決の本質は、国鉄改革関連法のもとでは、採用差別があろうとなかろうと、JRへの採用を拒否された1047名の雇用や権利が回復されることなどないのだということを宣告したに等しいものだ。
 こんな判決がまかり通ったら、郵政をはじめ、社会全体を呑み込むような規模で吹き荒れようとしている大民営化攻撃の渦中で、民営化された新会社への移行をめぐり、いかに差別しようが、排除しようが、どんな不当労働行為をはたらこうが、500万円払えば全ては免罪されることになる。その意味でこれは、民営化とその過程での膨大な労働者の選別・解雇、労組破壊攻撃を容認するために仕組まれた政治的反動判決であると言わざるを得ない。しかも、それがくやしかったら、自分は絶対に採用されていたはずだという、証明不可能なことを証明してみろというのだ。
 さらにこの判決は、解雇金銭解決の法制化や、不当解雇や不当労働行為事件で、労働者・労働組合側に立証責任を課そうという動きなど、画策されている労働組合法改悪攻撃を先取りし、それに先鞭をつけようとする反動判決でもある。
(4) そればかりではない。「停職6ヵ月以上または2回以上」という不当な基準を合理性を有するとしたことは、本事件の5名のみならず、明らかに動労千葉争議団9名への採用差別を切って捨てることを意図したものだ。
 処分歴について、採用候補者名簿作成の基礎資料とされた職員管理調書への記載が「昭和58年4月以降」とされたのは、国鉄分割・民営化の手先となった旧動労を救うためであった。
 さらにこれは、二重の処分が行なわれたことを意味する。そもそも、労働処分を職員選定の重要な要素とすること自身が不当極まりないものだ。
 われわれは、断じてこのような判断を許すことはできない。
(5) 1047名の解雇撤回に向けた19年に及ぶ闘いは、「国家」という巨大な壁にたち向い続けた困難の連続であった。しかしわれわれは、98年の5・28反動判決を乗りこえ、「4党合意」による闘争圧殺攻撃を乗りこえて、今日まで不屈に闘いを貫いてきた。われわれは、今再び闘いの原点に還り、9・15反動判決を乗りこえて、反撃に起ちあがる決意である。
 昨日の判決から透けて見えてくるのは、19年に及ぶ不屈の闘いに追いつめられ、あえいでいる政府―裁判所の姿である。
 闘いはこれからだ。1047名の解雇撤回闘争は全ての労働者の未来をかけた闘いだ。小泉政権は恐れているのだ。高鳴る怒りの声が1047名闘争を中心に結集し、溢れだすことを。19年間の勝利の地平に確信をもって、固いスクラムを組み直そう。われわれは、9・15反動判決を乗りこえて解雇撤回―JR復帰の勝利をわが手につかみとるために、労働運動の再生をめざし、全ての労働者の怒りの声の先頭にたって闘い続けることを決意する。(DC通信7605/09/16より転載)

★第30回 9・14反弾圧闘争貫徹

 9月16日、第30回9・14反弾圧闘争が闘われた。6時30分から東京・京橋プラザで集会が開始されたが、集会への参加過程で警察による不当検問を阻止する行動が行われた。約170名の労働者が参加した。
 最初に、今春、「日の丸・君が代」闘争を闘った教育労働者など4団体からの連帯のあいさつを受けた。三里塚反対同盟からのメッセージが紹介された。
 基調報告が東京の争議団から提起された。この1年間、ビラまきなどの刑事弾圧が相次いだほか、間接強制による攻撃が続いていることも明らかにされた。
 決意表明は、立川テント村ビラまき弾圧、国鉄5・27弾圧と闘っている労働者から勝利するまで闘い抜く決意が表明された。
 最初に「労働契約法」の制定に反対する決議、戦争と治安管理国家化を許さない決議を採択しデモに移った。
 日比谷公園まで銀座通りを通って力一杯戦闘的にデモ行進し、最後に公園内で解散集会を開き締めくくった。

★全金本山労組第26回定期大会

 勝利の地平を引き継ぎ、さらに、闘いを発展させるために

 全金本山労組は9月4日、午前9時から仙台市内で第26回定期全国大会を開催した。今回の大会は3月16日に職場復帰した後の初めての定期大会。総括・方針・役員体制など活発な議論のあとすべての議題を採決・決定した。
 職場に復帰した人、復帰しなかった人含めて24名の組合員が出席した。
 全金本山労組は34年間の争議の事務処理を継続している一方で、よせられた支援は闘いで返す一環として、これまで仙台現地をはじめ各地で報告集会を開いてきたが、今後も各地で集会を開催する方針だ。
 同労組は、普通の労働組合として職場内で組合活動を行い本山資本との労使関係をつくりあげていく一方で、極めて劣悪化している賃金その他の労働条件向上のために闘っていく。また多数派労働組合となるための組織拡大を勝ち取ることを重要な方針としている。争議の勝利引き継ぎ、地域で、全国で闘う労働運動をつくりあげていく方針だ。このため新しい執行体制を次の通り選出した。執行委員長・長谷武志、副執行委員長・青柳充、鈴木義和、書記長・中野七郎、書記次長・千田芳明。
 

| HOME | 目次 |


読者のページ

★職場で団結を広め深め支えあおう  全逓 神奈川 桜井隆夫

 郵政分割・民営化は賛成だが、小泉法案には反対だ、という民主党の考え方が、小泉の、わけのわからないが簡単な説明に「敗北」をしたのが、今回の選挙結果だと思う。
 郵便局現場で配達労働をしている私としては、私の加入しているJPU労組が、断固反対と言っていても、現実に、民営化攻撃に反対もせず、更には、協力している状況では「口先だけの反対」と思われてもいたしかたないだろうと思います。
 民営化反対なら民営化攻撃に反対をすべきと思う。組織としては郵政公社維持であるか、その内容は、クロネコ以上の、佐川以上の、営業第1職場になっているのである。
 「私は、受箱前で1通1通確認します」
 「私は、誤配『0』を宣言します」
 「私は、『だろう』ではなく、『かもしれない』運転をします」
 「私は、配達時には大きな声で『郵便です』と声かけをします」
 「私は、道順組立ファイルを見て道順組立をします」
 これは、南東地方の郵便局で毎日行われている、朝のミーティングのひとこまです。この文章の声を出して全員で確認するのです。
 単に声出しだけではなく、違反すれば即処分です。JPUはなにも言いません。当然だという態度です。
 こういう現実をそのままにしておいて、民営化法案反対のたたかいを、と言っても誰も信用しません。
 競争推進の労働をするのか、団結推進の労働をするのか、白黒つけろと簡単には言いませんが、中心軸だけは明らかにしておくべきだと思います。
 一つ一つ淡々とやっていくことこそが、ある日大きく花を広げることになるのです。

★韓国労働者がわれわれに求めるもの 愛知 高野義治

  9月11日、「WTO/FTAを問う名古屋集会」で民主労総の起亜自動車労組常任指導委員長の趙俊虎(チョ・ジュノ)氏の講演があった。東海民衆センターやピースアクションの人達が主催した集会でしたが、参加してみました。
 講演は感動的なものでした。11月労働者集会にむかって、韓国の労働者たちが何を求めているのかを考える一助となればと思い、講演要旨を紹介します。

 ゼロからはじめた闘い

 私(趙氏)は、軍隊服役を終えた89年に労働運動をはじめた。当時は、労働運動をするには決意が必要だった。周囲で多くの人が労働運動をやろうとして命を落としていた。女性の繊維労働者のたたかいがあったが、大企業の男性労働者のたたかいは皆無だった。先輩もなく、本もなく、日本の社会科学の本を翻訳して知識を得た。
 戦後、全評の激しい労働運動があったが、それが壊滅して以降、韓国の労働運動は根絶やしになった。70年全テイル氏の平和市場での焼身抗議があり、女性繊維労働者の闘いが続いた。
 80年の光州抗争のあと多くの学生活動家が労働者となり、工業化と労働者の組織化が徐々に進んだ。
 私(趙氏)は、町工場で働く労働者であったが、起亜自動車で金型工となった。職場は御用組合が支配していた。3人で労働運動をはじめた。待遇改善を求めるビラを撒いたら、「北のスパイ」より高い懸賞金がついた。その後、潜伏−逮捕−釈放を繰り返してたたかい、20年を経ずして起亜自動車労組は最強の労働組合になった。95年に全民労協が民主労総に発展、屈することなくたたかってきた。

 グローバリゼーション・新自由主義下の労働運動

 97年アジア金融危機が襲った。韓国は国家的不渡りとなり、IMFが入ってきて国家ごとリストラされる、銀行がアメリカに売却され、大失業がやってきた。「現代」では、整理解雇を巡って3万人の労働者が家族とともに篭城、最後は鉄パイプと角材で武装してたたかったが、結果は惨敗であった。われわれは何が起きているのか解らず、考えねばならなかった。
 グローバリゼーション・新自由主義の時代に入ったのだ。もはや、一企業、一国家のたたかいでは勝てないと考えた。韓国社会は二極化し、非正規職は60%を超えた。アメリカはヤクザと同じ、暴力と金で屈服を迫り、利権を拡大する。GATTではあきたらず、関税を撤廃させてWTOをつくり、国際会議が上手く行かないと、FTA=二国間協定で個別に切り崩す。韓国とチリのFTAでは、チリの安いブドウなどの農産物が入ってきて、韓国農家は壊滅的な打撃を受けた。チリの農業と言うが実際はアメリカの企業だ。韓国の輸出とGDPなど経済指標は伸びたが、一般国民・労働者の生活は窮乏化した。これがグローバリゼーション・新自由主義だ。あらゆる規制が撤廃され、資本が自由に金儲けをする。
 イラク戦争もグローバリゼーションと新自由主義がもたらしている。
 11月釜山APEC、12月香港WTOに反対してたたかおう韓日FTAが締結されるとどうなるか?日本の皆さんは誤解しているが、韓国の労働条件は日本よりいい。それは韓国の労働運動が生きているからだ。自動車の現場では管理職は労働者に逆らえない。韓国の自動車労働者がトヨタに研修に行かされると、働き蜂のように働かされる職場を見て、「こんなんだったら、俺は金をもらってもやらない」と言う。資本家はFTAによって、韓国の職場を日本のように支配し、他方、日本の労働者の賃金を韓国並に引き下げようとしている。韓国の民衆は、日本の民衆に助けを求めているのではなく、共同闘争を求めている。マルクスが「万国の労働者は団結せよ」と言った時、まだその条件はなかったが、今はそれができる時だ。「韓国の労働運動は活発で、日本は沈滞している」などということは関係ない。今、積極的に出会うことが必要なのだ。
 日本と韓国の企業のアジアでの横暴は許されないことだ。韓日労働者の連帯で、アジアの労働者の連帯の模範を示そう。アジアの平和のためにたたかおう。
 マスメディアは今日、自民党が圧勝すると言っているが落胆することはない。状況が悪化する時には私達が光る。怒りに火をつければ爆発する。
 11月釜山APEC反対行動に5000人のオルグ団を作り、10万人を動員する。
 12月香港WTO反対に1500〜2000人の遠征団を組織する。日本の皆さんと団結し、ひとつになって闘おう。


■編集後記

  今月は投稿が多く、掲載しきれませんでした。投稿された方ごめんなさい。でもいつもはこんなことはめったにないのです。どうかよろしくお願いします。▼自民党の大圧勝にびっくりしました。当該ですらびっくりしているはずです。「改革」の叫びの前に反対するのは守旧派、利権にしがみついている者とばっさり切る。善対悪の二者択一。わかりやすい。私たちは労働組合として、労働者として守ってきたものを一切合切はぎ取る「改革」に断固反対していこう。絶対に矛盾はかくせない。チャンスは必ず来る。 (し)

| HOME | 目次 |


PhotoDocument

 

| ホーム | 月刊交流センター | 産別部会 | リンク | 連絡先 |