2004年11月号(No.176)  目次
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労働者の目 戦争・改憲と民営化を阻止しよう

労働ニュース
  ●社会保障/就職●合理化など●日誌

国労5・27臨大闘争弾圧刑事裁判

・特集 戦争と民営化との闘い
  ●小泉構造改革と公務員制度改革
  ●戦争国家づくりを許すな!
  ●共謀罪成立を阻止しよう! 

アメリカ労働者階級の壮大な挑戦が開始された!

闘う合同労組 第 3回 広島連帯ユニオン

「全医労不利益・雇い止め是正裁判」への支援のお願い

労組法改悪反対国会請願行動報告

・ 物販闘争にご協力を

たたかいは進む   ●10・17MWM連帯行動   ●共謀罪など

読者のページ

労働者の目

●戦争・改憲と民営化を阻止しよう

 全国労働組合交流センター常任運営委員(女性部長)  長谷川 ユキ

 第2次小泉内閣が発足し、第161臨時国会が10月12日より開会した。今国会で小泉政権は、「共謀罪」新設と「労働組合法」改悪を強行しようとしている。戦争体制をつくるために労働組合、労働団体を弾圧し、日本の労働運動解体を目論むこれらの攻撃を絶対に粉砕しなければならない。
  第2次小泉内閣は、郵政事業の民営化を最重要課題にあげている。6月に発表された経済財政諮問会議「骨太方針W」では、郵政事業の分社化・民営化と合わせて、自治体業務の民営化や公務員労働者の「非公務員化」「非正規雇用化」、抜本的税制改革などの公務員制度改革を07年までに実施するとしている。
  経団連・奥田会長は04年夏季セミナーにおいて「日本がリーダーシップをとるには軍事力の強化が不可欠」と演説した。これに呼応して連合・笹森が自治労第74回定期大会で改憲発言を行なった。
  教育基本法改悪・改憲攻撃が公務員制度改革・民営化攻撃と一体となって、労働者・民衆に襲いかかってきている。今04年秋〜05年は「戦争・改憲と民営化」阻止に向けた日本の労働運動の命運をかけた階級決戦の出発点である。
  闘いはすでに始まっている。女性部は、「家事、育児、介護など働き続けるための全ての問題を労働運動の課題に据えた闘い」を目指している。教育基本法改悪・改憲攻撃、年金・税制問題、福祉・社会保障制度の問題など、労働者が生きていくための全ての問題が労働運動の課題だ。
  「日の丸・君が代」強制を許さず、処分攻撃と対決して敢然と闘っている教育労働者の闘い、国鉄分割・民営化とストライキで闘う動労千葉の闘い、国労5・27臨大闘争弾圧を許さない反弾圧闘争をはじめ、職場・地域で奮闘している会員のすべての闘いが、私たちの大切な財産であり、展望を指し示している。
  10・17MWMの成功、労働者の国際的団結に確信を持ち、勇気をもって今秋決戦を闘おう!
  アメリカ労働者階級の壮大な挑戦が開始された。11・7へ!

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●労働ニュース(04年9月16日〜10月15日)

経団連「社会保障給付2割減を」
  日本経団連は21日、年金、医療、介護など社会保障制度の一体改革を求める提言を発表した。年金給付をさらに5%抑制し、社会保障全体の給付を現行水準よりも20%程度削減することが必要だと指摘。社会保障・福祉に共通する個人番号や個人単位で負担・給付を一元管理する社会保障個人会計(仮称)の導入などを求めた。提言は、25年度の潜在的国民負担率を50%に抑制し、消費税率は12〜13年度には15〜16%まで引き上げる。生活保護制度の見直しや、自発的離職の場合の雇用保険の給付日数の抑制も盛り込んだ。

食住費、自己負担に
  厚生労働省は06年度にも、病院に長期入院する高齢者などにかかる居住費と食費を医療保険の給付対象から外し、本人の全額自己負担に改める方向で検討に入った。負担額は病院によって異なるが、月5万円を超すとみられる。

時短促進法の見直し平行線
  06年3月末に期限を迎える時短促進法の取り扱いを巡る議論が28日、厚生労働省の労働政策審議会で始まった。政府目標「年間平均労働1800時間」について経営者から「時代に合わない」と同法廃止を求める意見が出る一方、労働者から「現状に即した目標設定が必要」と見直したうえでの継続を求める声が相次ぎ、主張は平行線をたどった。

フリーター課税徹底
  総務省は4日までに、就労期間が1年に満たないパート労働者やフリーターらに対する住民税の課税を強化するため、地方税法を改正し、給与所得のあった人の「給与支払い報告書」を市町村に提出するよう事業主に義務づける検討を始めた。早ければ07年度の実施を目指す。

高齢者・女性の就労支援
  厚生労働省は団塊世代の大量定年や人口減少が始まる「2007年問題」を控え、労働力の減少に歯止めをかけるための包括的政策の検討に乗り出す。パートの待遇改善による働く女性の支援や高齢者の活用、若者の能力開発の充実が柱となる。300万人の新規雇用を創出し、15年までに370万人の減少が見込まれる労働力人口をほぼ現在並みに維持するのを狙う。

65歳定年の円滑導入支援
  厚生労働省は企業に高年齢者の定年延長や再雇用を促す制度を来年度から始める。06年4月から65歳までの定年延長などが義務付けられることを受けた措置。制度が不十分な企業に具体例を提供するなどの指導をして、円滑な導入を後押しする。

国家公務員を中途採用
  人事院は一般職国家公務員を中途採用する「職務経験者採用試験」(仮称)を07年度から実施する方針を固めた。民間企業での実務経験や専門知識を持つ人材を登用し、幹部に育成するのが狙い。受験資格に年齢制限を設けず、中高年の受験も可能とする。

社保庁・ハローワーク明記
  政府の規制改革・民間開放推進会議(議長・宮内義彦オリックス会長)は12日、今年度以降に実施を目指す項目を盛り込んだ基本方針を決めた。官民競争入札(市場化テスト)のモデル事業では、社会保険庁とハローワークの業務を対象に明記するなど、推進会議が掲げる14の重点事項の具体的内容を示した。

郵便職員に接客ランク
  日本郵政公社は10月から、郵便局窓口や郵便配達を担当する職員22万人(非常勤を含む)の接客態度をランク付けして、水準以下の職員を接客業務から外す制度を導入した。新たに導入したのは「接遇認定制度」。毎月2週間の評価期間に郵便局長ら管理職が職員の接客ぶりをチェック。その結果を1〜4級の等級にランク付けし、最低の4級を取得できなければ、接客が禁じられる。等級は毎月、見直され、一度取得しても次回の評価が悪ければ取り消される気の抜けない仕組みだ。

年賀状1月2日も配達
  日本郵政公社は来年の年賀状配達を1月2日も実施する方向で、労働組合と調整に入った。実現すれば32年ぶりの再開。2日の配達は、職員の休暇を確保するため旧郵政省時代の73年を最後に中止していた。

生活保護94万世帯
  03年度に生活保護を受けた世帯数は、1カ月平均で94万1千240世帯と前年度より7万339世帯(8・1%)増え、過去最多を更新した。また児童相談所での虐待相談の処理件数は2万6千569件に上り、前年度を2千831件(11・9%)上回って過去最多だった。

早期退職800人募集
  三越は30日、05年2月に早期退職者800人を募集すると発表した。販売不振で赤字が続いている横浜店、大阪店、倉敷店を05年5月5日に閉鎖することに伴い発生する余剰人員を削減する。

西友、パート含め業績給に
  西友はパートを含む3万5千人の従業員に業績連動型の給与体系を導入した。正社員、パートで別々だった人事制度を一本化、会社の営業利益と個人の業績達成度に応じて給与や賞与を支給する。

富士重も成果主義賃金
  富士重工業は1日、課長級以上の管理職約1千100人の賃金について、勤続年数に応じた定期昇給と各種手当てを全廃し、全額を業績連動型とした。日本の自動車他社が相次いで成果主義賃金を導入しており、「家族的社風」を誇りとしてきた富士重も追随した。来春からは一般社員約1万3千人の賃金でも成果主義を強める方針。

大阪府教委も導入
  大阪府教委は06年度から、府内の公立学校の全教職員を対象に、勤務評価を給与に反映させる方針を決めた。東京都教委に次いで全国で2例目。

サービス残業238億円
  賃金不払い残業(サービス残業)について、03年度に全国の労働基準監督署から是正指導を受けて企業が支払った額は1千184社で約19万5千人分の計238億7千466万円に上ることが27日、厚生労働省のまとめで分かった。

アスベスト対策厚生労働省が新対策
  厚生労働省は29日、増加が見込まれるアスベスト(石綿)を含んだ建築物の解体現場での労災と二次暴露を防止するため、アスベストの吹きつけ作業や現場で使用した作業着の持ち出しを禁止することなどを柱とするアスベスト対策の省令規則を新たに定めた。来年7月に施行する予定。  

 労働日誌(04年9月〜10月)

9月24日
  国税庁の調査統計によると、民間企業の03年1年間の平均給与は、444万円となり、前年より3万9千円(0・9%)減少となった。減少は6年連続。

9月30日
  厚生労働省は、就労条件調査を発表。それによると、従業員1千人以上の企業での成果主義の導入は管理職の8割強、それ以外の8割弱に及んでいる。「うまくいっている」との回答は16%、「一部手直しが必要」が45%、「改善すべき点がかなりある」が30%だった。

10月1日
  総務省は雇用統計を発表。それによると、8月の完全失業率は314万人(前年同月比19万人減)となり、完全失業率は4・8%(前月比0・1低下)となった。男性は4・9%、女性は4・6%。25歳未満の完全失業率は9・6%と依然高水準が続いている。

10月3日
  政府は経済財政諮問会議で、郵政民営化の5つの基本原則を決定。一方、自民党はマニフェスト(政権公約)の骨格に「郵政民営化07年4月」を盛り込んだ。

10月6日
  政府・与党は公務員制度改革関連法案について臨時国会への提出を見送る方針を固めた。今後、通常国会への提出を軸に調整を進める。

10月7日
  「日の丸・君が代」の徹底を求める東京都教育委員会に反対する資料を都立板橋高校の卒業式で配って式を妨害したなどとして、警視庁は、同校の元男性教諭を威力業務妨害などの疑いで書類送検した。

10月10月
  国民年金の保険料を03年度までの2年間に1カ月以上納めなかった「督促対象者」が、加入者の45%に当たる約1千万人に上ったことが、会計検査院の調べで分かった。

10月14日
  政府は、郵政民営化で、全国の窓口業務を担う「窓口ネットワーク会社」の概要を固めた。日本郵政公社職員の過半数が移り、職員に「みなし公務員」規定を適用する。

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●「自民党に言われ、5・27臨大を開いた」と自認 ―強行開催した本部派こそ査問されるべき

 暴行は無いのに「組合員を厳罰に」と要求

  国労5・27臨大闘争弾圧 第30回公判

 10月19日東京地裁104号法廷にて「国労5・27臨大闘争弾圧」事件の第30回公判が開かれた。この日の公判では被害届を警察に提出した3人目の証人として東京地本の江田雄次執行委員が初めて出廷した。検察側が主尋問を行い、引き続き弁護団側から先の石井証人と同様に5・27臨大に至る経過についての尋問が行われた。

 暴行は実際は微々たるもので過激な言葉を聞いたと証言

 検察官は5月27日の当日、御茶の水グリーンホテルの玄関において彼が受けた暴行について証人江田に証言させた。富田被告から肩をつかまれたとか、橘被告が右手をつかんで引っぱったとか、バスに乗りこもうとしたとき後ろから引き戻され、入り口の取っ手をつかんでがんばっていた手が痛たかった、などおよそ暴行にあたいしない微々たるものである。これらの場面はほとんど甲175証の杉並ビデオに写っている。ビデオも再生されたが、暴行といえるようなものではないことが明らかになった。
その一方で証人江田は羽廣被告が「暴力なんてこんなものじゃない、血をみるんだ」と言ったと証言した。日ごろから暴力を日常的にふるう人々であることを印象付けようとして意図的になされた悪質な証言である。
  しかし後にそのような言葉はどこにもないことが判明した。さらに江田証人は、「被告を厳罰に処してくれ」と悪びれることなく証言した。

 本部派のごまかしと無責任は益々明らかに

弁護団側の経過に関する尋問は、まず大口弁護人がスタートをきった。「この5・27臨大のとき代議員であった江田証人はどんな発言をしたのか」と質問され、「覚えていない」という。再度の「あなたの代議員としての大会発言はほんとうに忘れたのか」との質問にも、「思いだせない」という。国鉄新聞に掲載された「これが問題解決への最後のチャンスだ、本部は解決の確信をもって相手の真意を確かめたのだから」と発言している記録をつきつけられ、やっと自分の発言を認めた。
  そこで弁護人からの「真意をつかんだとする判断の根拠は」との質問に対して「わからない」という。「あなたのいう真意とは何の真意なのか、つかんだという真意は、採用問題は、解決金などは」との問いにも、自分の発言の核心部分にもかかわらず、「私は知らない」という。まったく無責任極まりない態度で大会に参加していたということか。
4党合意を大会決議した後に、闘争団家族と面会した四党協議会座長の自民党甘利議員は「最高裁で戦って名誉の戦死か、人道的和解でプラスアルファーとるかだ、全員の雇用とか、何千万円の和解金とかの幻想をもってはならないと再三申し上げている」と述べている。大口弁護人は「再三申し上げているというのは、早いときから国労へはそう言っているという意味ではないのか。全員の雇用とか、何千万円の和解金とかの話は国労にそのようなことを言っていた人がいるということではないのか」と指摘され、「プラスアルファーのみ、ちょっと色をつける、これが甘利議員の考えでしょ」と尋問した。江田は「これは甘利議員の考えだと思う、交渉はまだなされていない」などとデタレメな証言をした。大口弁護人からすかさず「すでに交渉を重ねてきているでしょう」と指摘したが、「私はまだだと思った」と言い、「それなら本部に質問などして確かめたか」と質したのにも「していない」と答えた。
  「あなたは大会の代議員として5.27臨大で発言した時、解決のレベルについてはどう思っていたのか」との質問に「見当はつかなかった」と答えた。「最後の機会」という発言はいったい何なのか。長年にわたり解雇撤回闘争をしてきた人々に対して無責任の極みである。そしてその一方で、これらの闘う人々を査問委員会に送致しようとしたのである。5・27臨大がいかに不正義の大会であったかがここでもあらためて明確になったのである。

 5・27臨大の強行開催は3党声明の脅しによるもの

 この5.27臨大闘争弾圧はその本質は、暴行があったか否かではなく、この臨大がいかに国労の歴史にとって屈辱的なものであり、そこで討議されようとした内容が労働組合としていかに不正義なものであったかである。この公判でも江田証人の尋問を通じてさらに決定的に明らかにされたのである。
江田証人は大会召集の日が何日だったかは覚えていないと言う。「あなたは大会の中でも重要な大会と発言している」と指摘されたが、「覚えていない」という。実際、3党声明で自民党などから開催せよ言われて開いた大会であり、方針案は当日になってようやく渡されたのである。
弁護人からの「闘っている組合員を統制処分にするのだから本来なら十分に時間をかけて討議すべきではないのか」との質問に、「それは本部が考えること」と自分たちの責任をまったく自覚していない回答をした。「方針案もない、非民主的ではないのか」との問いにも、またも「当時のことは忘れました」という。さらに弁護人からの「なぜそう急ぐことになったのか」との質問にも「わからない」という。理由は簡単で3党声明で5月30日までに矛盾を解決せよと言われたからであり、このことをどうしても言いたくなかったのである。「これは組合への介入ではないのか」と指摘され、しぶしぶ「はいそうです」と答えた。
  「機動隊の要請は地本からか、地本委員長の酒田は警察とつながりがあると言っているが」との質問にも「知らない、聞いたことがない」と言う。そこで弁護人が「機動隊が阻止することは暴力ではないのか」と質したのにも、「居るだけであって暴力ではない」といい、機動隊に守られて組合大会が開かれることの異常さをまったく感じていないかのごとくである。さらに「国労の要請があるから来ているのではないのか」との問いに「多分そうだと思う」と認めざるをえなかった。

 ほとんどの時間は説得活動

 大口弁護人につづいて尋問に立った葉山弁護人が、5・27臨大で闘争団員を統制違反処分しようとすることに対する松崎さんと羽廣さんの言葉である「労働組合の原点を思いだしてくれ」「自分の心が痛むぞ」を取り上げ音声反訳を示しながら証人の見解を質した。江田証人は、「査問委員会への送致は方針に従わず、規約を守らないことの措置である」と開き直った。そこで弁護人の方からの「それまでの経過をみて5・27臨大は自民党がいうがままなのではないのか」との問いにも「それはその人の考え」とまったく開き直りの強弁をくりかえすのみであった。
  次いで、先の松崎、羽廣発言が含まれる7時7分ごろからのバスの乗降口でのやりとりの場面が上映され、多くにお時間が説得のための時間になっていることがあらためて示された。また鈴木ビデオで撮影されているバスの内部での証人江田の写っている場面とそのときの音声などを総合して、主尋問で出た羽廣さんが言ったという「『暴力はこんなものじゃない、ほんとうは血をみるぞ』はないのではないのか」と質したの対して「ビデオにはない」と答えた。そこで弁護人が「この画面と音声との対応から無いということは推認できるのではないか」と問い詰めると、「私は実際にその言葉を聞いている」言い逃れしようとした。
江田証言は、本部派が国鉄闘争の勝利を目指すどころか、終結=敗北を望んでいたことを明らかにした。統制処分されるべきは本部派なのである。   (「許さない会」南部会員)

 公判日程  第31回 11月8日(月)  第32回 11月29日(月) 第33回 12月21日(火)  第34回 05年 1月13日(木)  第35回 2月8日(火)   第36回 2月23日(水)   第37回 3月16日(水)  第38回 3月29日(火)
 ★集合時間12時30分  東京地裁

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特集 戦争と民営化との闘い

●小泉構造改革と公務員制度改革

 郵政事業の民営化を最重要課題にあげる第2次小泉内閣が発足した。郵政事業の民営化は小泉政権の政治政策をうちだしてきた経済財政諮問会議(「骨太方針W」)の主柱である。
  6月に発表された「骨太方針W」は、「『官から民へ』『国から地方へ』の本格的(重点強化期間05年〜06年)に取り組む」として、郵政民営化と公務員制度改革の実施時期を07年と明記した。

 「骨太方針W」は「官の改革」が柱

 「骨太方針W」は「官から民へ」と同時に、「官の改革」を柱にすえた。行政改革にはじまる公務員制度改革である。
  小泉政権は、公務員の労働三権の制約を解除する意向を固めた。今後は労使直接交渉によって賃金などを決定することとなる。当然、公務員組合はスト権を有することになる。このことは小泉政府は 05〜06年過程の民営化で、公務員労働組合にストなどうてない状態においこむ並々ならぬ決断をしたということである。実際すでに民間では争議権は事実上凍結され、交渉権は職場協議会におきかえられ、いまや攻撃のほこ先は団結権の破壊に向けられている。
  「骨太方針W」が、「官から民へ」だけではなく、「官の改革」を主柱にすえたのは、この公務員労働組合の団結権を解体し、根絶するためなのである。

 団結解体から国家忠誠へ

 しかし公務員制度改革の目的は、単に効率化や利潤の追求ではなく、国家に対する忠誠度を求めることにある。組織目標(国家目標)に対する公務員管理(目標管理)とは国家への忠誠度! このことはすでに教育労働者に対する「日の丸・君が代」強制で明白になっている。
  国家・地方公務員など公務員は、国家権力機構のなかに階級的団結体を形成してきた。これは戦後革命の敗北の代償として得た限られた団結と権利とはいえ、いまや戦争に向かおうとする政府にとって、放置できない障壁になっている。なによりも国家の政策と意思を実現すべき公務員が、最大の階級的団結体となっていることは、由々しき事態なのである。
  「行政機構改革だけでは不十分である。国と地方の業務範囲のみなおしとともに公務員の意識改革・行動原理そのものを変えなければならない」(野中広務元政府行革推進本部長)。「公務員制度改革とは公務員に魂をいれる作業」「新しい政府で働く者は新しい公務員でなければならない」(福田前官房長官)国鉄・分割民営化の「血のいれかえ」とまったく同じ考えである。

 国家改造の決着点

 小泉構造改革の軸心をなす経済財政諮問会議の「骨太方針W」(04年)の副題は、 「新世紀維新―日本再生のシナリオ」というものであった。明らかに日本崩壊の危機に直面しているのだ。「この国のかたち」論として一括されるこの認識は、戦後だけではなくて、明治維新以来の近代日本社会そのものの解体、すなわち資本主義の生成・発展・没落の過程を経て、帝国主義の崩壊(打倒)か延命(戦争)かが問題になっているのである。小泉構造改革とは日本の社会、経済、財政など国全体の崩壊的危機に対する延命としての国家再編―国家改造の大攻撃なのである。これらは「政治と経済は不即不離の関係である」と完全に一体となっておしすすめられ、政治経済攻勢として労働者階級におそいかかっている。とりわけ「官から民へ」の大民営化攻撃として、郵政、自治体、教育、医療労働者など、いわゆる「公務員労働者」へ激しくおそいかかっている。郵政民営化はその先端に位置し、「三位一体」「市町村合併」「公企体の独立行政法人化」と完全にひとつながりになっており、その決着点に公務員制度改革が位置づけられる一連の攻撃である。もって日本の金融、財政、行政機構のすべてにわたる再編・改造の突破口をなすものである。
  こうしたなかで人事院勧告も、定昇制度の廃止をうちだし、人事評価と能力主義の推進をうちだし、俸給表の全面的再編となる地域給の改定に踏み切った。この攻防として、04年公務員賃金確定闘争は激しく闘われている。

 全員解雇と選別再雇用

 さらにこうした経営形態の転換にだけ目的があるのではない。民間への移管時には、いったん〈全員解雇→選別再雇用〉という関門を設けることになる。小泉政権は、郵政職員、教職員など410万人公務員労働者の全面的「非公務員」化に打って出ようとしている。これが全国の公務員労働者に対する激しい差別・分断・選別・排除がともなうことはまちがいない。そして、〈全員解雇→選別再雇用〉という関門の過程で、必ず当局の気に入らない職員の選別排除が行われる。特に労働組合活動家は「研修センター」「人材活用センター」におしこめられ、職場からの排除を狙っている。小泉政権の大民営化攻撃とのたたかいは、現代のレッドパージとの激しいたたたかいとなることはまちがいない。

 改憲と戦争国家化

 これらの動きは99年の日米安保ガイドラインから有事法制による戦争体制と一体で進捗してきた。99年成立の地方分権関連一括法、中央省庁等改革基本法、市町村合併特例法などは戦争と国内統治はメダルの両面であることがますますはっきりとしてきた。
  9月7日、国民保護法制整備本部は指定公共機関160団体を指定した。今年度中には、「国民の保護に関する基本方針」を策定し、この基本指針に踏まえて、都道府県は05年度中に、市町村は06年度中に「国民保護計画」を策定する義務を負う。地方自治体で働く者の戦争業務への従事命令はにわかに現実味を帯び、組合として拒否闘争をたたかえるかどうかは、大決戦になる。
  こうした動きのなかで、自治労第75回定期大会で、連合笹森会長は、「9条2項の削除による改憲」発言がとびだした。運動方針案もついに「護憲」という表現が消滅した。連合内では、造船重機・鉄鋼・電機・自動車など基幹産業に戦争特需への期待がひろがっている。

 労働運動の階級的再生で反撃を

 この 05〜06(〜07)年過程は同時に、労働運動の命運をかけた歴史的決戦となる。教育基本法・改憲攻撃とともに、「骨太方針W」=大民営化をめぐる歴史的階級決戦となることはまちがいない。
  〈戦争と民営化〉とは、国家のあり方を根本的に変える改憲と戦争への道である。それがどんなに破綻的であろうと、延命にかけてこの道を進む他ない。
  小泉政権にとっては、イラク派兵―有事法制をもって絶望的・飛躍的に〈戦時〉に突入し、そのエスカレートが歴史的に至上課題である。そのために新たな〈産業報国会〉、労働運動・労働組合の徹底した解体、とりわけ労働運動内部の階級的・戦闘的潮流の根絶・一掃を不可欠の課題としている。40万人の郵政職員の非公務員化を打ちだした郵政民営化と、公務員410万人を対象とする公務員制度改革は、その最大の火点である。
  このときわれわれはいかなる立場で攻撃にたちむかうのか。
  「われわれ労働者が資本家階級を上回る迫力を身につけなければならない」「資本家の時代は終わったのだ。次は俺たち労働者がやる。労働者に権力をよこせ。この立場に立たないかぎりなにひとつ前進しない時代が来た」(中野洋前動労千葉委員長)
  郵政民営化を突破口とする公務員制度改革攻撃に対して、階級的労働運動の戦闘的再生をかけて闘おう。     (中島 忍) 

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特集 戦争と民営化との闘い

●戦争国家づくりを許すな!

 「国民保護法」が施行―戦争推進体制づくりが具体的に始まった

 全国労組交流センター自治体労働者部会   

 9月17日「国民保護法」が施行され、同時に政令等が出されて、有事法制―戦争を推進する国家総動員体制づくりが具体的に始まりました。6月の法案の国会通過以降、内閣府の「国民保護法制整備本部」で検討が行われ、同本部は9月7日に解散しました。今後は、7月2日に設立された同法推進本部(総務省消防庁)が、国と地方自治体の連絡調整にあたり、安全保障会議と内閣官房の強力な権限のもとに、法で定めた具体的な戦争体制づくり、そのための推進計画策定が06年度を目標に進めます。

 戦争体制推進のために―160事業者を「指定公共機関」に

 今回の法施行と政令等の発布により、「国民の保護のための措置を実施する指定公共機関」を決定しました。「国民保護措置」とは、「武力攻撃事態等」に対処するために、「警報、避難、救援、復旧、保健・衛生確保、社会秩序維持、輸送・通信、国民生活保護」の名目で、現実の戦争を遂行するために、国家・地方自治体・民間事業者総がかりで、必要な「人・物」を総動員し、徹底管理することです。そのために、160事業者を指定し、戦争遂行体制の基盤を構築するのです。
  今回指定された事業者は別表のとおりです。「災害研究機関」をはじめ、9つのくくりの中で、160の事業者を指定しています。 「災害研究機関」では、建築、情報処理、森林、水産、土木、農業、生物から原子力まで、あらゆる分野で最高の技術を総動員するために研究機関を網羅しています。
  「医療事業者」では、日本赤十字と国立病院を指定し、これに自治体病院や「地方指定公共機関」にそのほかの病院を指定し、戦時医療体制をつくろうとしています。
  「公共施設管理者」では、河川・空港・道路をおさえるための体制をつくっています。
  「電気・ガス」は全国すべての電力会社と、8割のシェアをもつ4大ガス会社を指定しています。
  「運送」は全体の約半数の78事業者。指定公共機関の軸として、陸・海・空の主要な運送事業者を網羅しています。鉄道では、JR7社はもちろんのこと、首都圏・中京・関西の大手私鉄をすべて指定しています。
  「電気通信・放送」は、戦時には、国内の通信・放送をすべて国家の管理統制におくしくみです。
  「その他」の2機関は、戦時下での「金」の流れを統括するものでしょう。
  こうしてみると、「指定公共機関」に戦争遂行体制の骨格をはっきりと見てとることができます。

 政令で具体化される恐るべき戦争体制づくり

 法施行とともに出された政令では、他にも法を具体化する事項を定めています。「自衛隊派遣の手続き、自衛隊の担当部隊と責任階級、救援や救援物資、医療関係者の範囲、外国人医療関係者の取扱い(戦争だから敵国を想定)、住民情報の収集・整理、死亡・住民の死体の取扱い、戦時の生活関連施設の指定、危険物質の取扱い、土地立ち入りの手続き、墓地埋葬法の特例措置、etc」などです。
  たとえば、戦時に医療業務を「提供」する「医療関係者」とは、「歯科医師、薬剤師、保健師、助産師、(准)看護師、臨床検査技師、歯科衛生士」など、およそ医療に携わる人々すべてを含むと決めています。
  また、「避難住民情報」については、「避難指示」のときから「復帰措置終了」まで、つまり戦争が終わるまで、「住所・氏名・生年月日、国籍、そのほかの個人識別情報(指紋、虹彩、健康などどんどん拡大できる!)」を、市町村長が速やかに収集・整理し、継続して「居所、負傷・疾病状況、そのほか必要情報」を収集・整理することを定めています。警察・消防・医療機関などに照会し、あらゆる住民の個人情報を「本部」に集中し、その権限で、「情報提供」をできる仕組みなのです。もはや、「プライバシー」もへったくれもありません。戦争遂行中は、すべての住民(外国人も含む)を徹底して管理する仕組みがつくられようとしているのです。住民基本台帳ネットワークがこの働きの要をなすことは言うまでもありません。このシステムのもとでは、「避難指示」をした住民を徹底掌握することは、それ以外の全住民にとっても同じことです。

 全自治体に「協議会」が設置され「計画」がつくられる

 今後、今年中に国の「基本指針」の要旨が公表され、年度内には、「基本指針」がつくられます。これに基づき、05年度中に、都道府県の「計画」・指定公共機関の「業務計画」がつくられ、また、指定地方公共機関が指定され、06年度には、全国全市町村の「計画」と指定地方公共機関の「業務計画」がつくられます。また、計画づくりの前に「市町村国民保護協議会」が設置されます。つまり、この2年間で戦争遂行のための組織・計画づくりが行われるのです。消防庁長官は法施行の同日に複数の通達を出し、都道府県の対策本部や協議会条例モデルを示しています。上位下達で、全自治体で一字一句違わない法文と組織がつくられるということです。
  また、自治体側でも「全国トップ」といわれる鳥取県では、作業計画をつくり、ワーキンググループを立ち上げています。その担当者は、自衛隊の監修と指揮・助言を受けながら必要な知識・技能習得のためのトレーニングが行われています。まさに、軍隊の指揮のもとに自治体労働者が戦争業務を担う構図です。この片山鳥取県知事と対談し、「計画づくり」に労組が参加し、職員の動機づけにしよう、と主張しているのが自治労本部なのです。

 11月集会で反撃ののろしをあげよう

 この2年間は、郵政民営化を突破口とする、小泉の「骨太方針W」の対決とピッタリ重なります。まさに「戦争と民営化」は一つの攻撃です。
戦争体制づくりを具体的に進めるために、労働組合・労働運動をたたきつぶし、国家の戦争政策を忠実に担う職員・組織をつくりあげようとしているのです。だとすれば、「指定公共機関」と国・自治体の全労働者が団結して立ちあがれば、戦争を止めることができます。
  11月集会に、かつてない結集をかちとり、反撃ののろしをあげよう。全国全労働者の決起をかちとろう。共に闘おう!

 ☆指定公共機関の対象事業者 総計160事業者

 【災害研究機関】18
  日本原子力研究所などの独立行政法人
 【医療事業者】  2
  日本赤十字社、(独法)国立病院機構
 【公共的施設の管理者】8
  道路公団、成田・中部・関西空港梶A(独法)水資源機構など
 【電気事業者】12
  電力10社プラス電源開発、日本原子力発電
 【ガス事業者】4
  大阪、西部、東京、東邦のガス4社
 【運送事業者】78社
  フェリー会社など11旅客船業者、全国25バス事業者、航空9社、JR各社・大手私鉄各社など鉄道23社、海運5社、日通・佐川・ヤマトなどトラック5社
 【放送事業者】20社
  NHK、全国主要民間放送社
 【その他】
 
日銀、日本郵政公社

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特集 戦争と民営化との闘い

共謀罪成立を阻止しよう!

 10月12日に始まった今秋臨時国会は、12月3日まで53日しかない短い会期だが、共謀罪成立を許すのかどうかの決戦の国会だ。政府法務省も面子にかけても押し通そうとしている。共謀罪は昨年春に国会上程されて以降一回の審議も許していない。今国会で審議入りを許さなければ、その先に廃案を展望できるかもしれない。
 短い会期に衆院法務委員会には重要法案が8本もあり、さらに来年通常国会にも重要法案がたくさん予定されている。
 われわれの方針は明確だ。一切の審議入りを許さないことだ。すでにその闘いは開始されている。10月3日、共謀罪新設阻止の集会と山手線全駅ビラ情宣が行われた。また5日と13日には国会内の集会が開かれており、かつてない数の国会議員が参加している。
 戦前の治安維持法を上回る共謀罪という弾圧法を警察の手に渡してよいのか! 有事法制を手にし、イラク侵略を行う日本国家に、相変わらず犯罪の絶えない警察に共謀罪という新たな弾圧法規を持たせてよいのか。今秋決戦を全力をあげて闘い抜こう。

  共謀罪とは何か?

 99年の盗聴法制定と同時に制定された組対法(組織的犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律)の一部改正するものとして共謀罪が上程されている。複数(2人以上)の人間が犯罪を行うことを合意したことを犯罪とするという法律である。
 2人以上の人が犯罪を考えて犯罪の結果がでるまで次の経過がある。
 共謀=2人以上で犯罪を行う合意
 予備=道具など具体的な準備
 未遂=犯罪の実行に着手
 既逐=犯罪の結果が発生
 共謀罪とは、この4つの段階の1番最初の段階を犯罪とする。現在の刑法の思想は罪刑法定主義で、最後の犯罪の結果が発生してから捜査が着手される。犯罪があって罰がある。
 共謀罪は共謀共同正犯と間違われることがあるが、共謀共同正犯は、犯罪が実行されて、従犯であっても正犯と同様に罰せられるというもので、あくまでも犯罪が実行されることが条件だ。
 ところが共謀罪とは、共謀という言葉そのものが犯罪めくが、話し合う・相談する・会議で決める・暗黙の合意するということを犯罪とするものである。なんらの実行行為を必要としないのは、いま国会に上程されている日本の法案だけである。アメリカにも共謀罪はあるが、何らかの行為が必要とされている。
 なお日本で、予備罪が処罰される場合があるが、殺人罪、強盗罪、爆弾関係の法律などごく一部だけである。
 ところが、いま上程されている共謀罪には処罰の対象となる法律は560以上もある。しかもこれからも刑事罰が課される法律や条令が増加するのでさらに増え、全く新たな刑法体系がつくられることになる。日本の刑法体系の全面的な転換とさえいえる。

 2人以上で合意すれば罪

 共謀罪は実にシンプルな法案である。2人以上で犯罪の合意に達すれば罪となる規定、実行の着手前に警察に届け出れば、届け出た人の刑が減免されるということだけである。シンプルだということは、それだけ警察に自由裁量を与えるということであり、警察の意向によってどうにもなるということである。
 ではどのような犯罪の合意が罰せられるかというと次の通りである。
@死刑又は無期若しくは長期10年を超える懲役若しくは禁錮の刑が定められている罪、5年以下の懲役又は禁錮。
A長期4年以上10年以下の懲役又は禁錮の刑が定められている罪、2年以下の懲役又は禁錮。
 @は比較的重い刑で、Aは軽い方の刑であり、例えば暴行罪は2年以下の懲役又は禁錮で、軽犯以外の大半の罪が対象となっている。
 次に共謀罪には組織についての規定が全くない。組対法では、2人以上となっている。したがって2人以上の組織であれば、どんな組織でもない。国連条約では、マフィアや麻薬の取り締まりが対象とされているが、日本の共謀罪には、そうした規定が全く存在しない。労働組合、市民国体、NGO、趣味の団体でもよい。恒常的な団体でさえなくてもよい。
 証拠についての規定が何もない。犯罪事実もない。被害者も被害物もないなかで、どのような証拠で罪となるかの規定がない。話し合った・相談したという録音テープが必要なのか、前述した、事前に警察に届け出た人の自白だけでよいのか。あるいは労働組合であれば、例えば執行委員会決定の議事録が必要なのか。しかし裁判が行われ、有罪となるには証拠が必要である。

 共謀罪の証拠集めはどうするのか

 共謀罪を法律化したといっても、人の内面にあるものを罪とするためには、何らかの新しい捜査方法が必要になるのは明らかである。従来の犯罪が発生してから捜査する方法では、現場から手がかりを得ることができる。
 したがって、全く別の方法を考えてくるであろう。先に述べた、刑の減免制度を大いに利用するであろう。あらかじめあらゆる分野に警察に密告する人を入れておき、場合によって犯罪をそそのかし、でっちあげを行う。
 いま街に犯罪パトロールなるものが無数に組織されている。不審な人探しや密告にこういうグループが使われるかもしれない。
 街に高性能な監視カメラが設置されている。このカメラと同時に盗聴法の大幅な拡大がすでに計画されている。現在の盗聴法は、「面倒な手続き」をとって、盗聴しなければならない。これでは共謀罪は実効性をもたない。したがって、警察が必要だと考える組織の事務所、個人の家庭、集会室、会議室にあらかじめ盗聴器を仕掛けておき、常時盗聴できる体制をとっておく。携帯電話、メールの盗聴、メールの保全、リアルタイムの傍受など。集会での決意表明、シュプレヒコールでさえ共謀罪の問われる可能性がある。共謀罪は暗黒社会をもたらす。

 グローバルな闘いを

 日本帝国主義はいま、日米安保を世界安保へと転換し始めている。そのために共謀罪が必要なのだ。グローバルな敵の攻撃には、われわれもグローバルな闘いをもっていかなければならない。
 実行委員会は、ワシントンの百万人行動へ参加し、愛国法と闘う労働者との連帯、共謀罪反対の国際的闘いに向かって5名の仲間を派遣して、闘いの一歩を進めた。
 共謀罪をはじめ、さまざまな治安弾圧立法を今後とも許さないために全力で闘い抜こう。

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アメリカ労働者階級の壮大な挑戦が開始された!    10・17ミリオン・ワーカー・マーチ報告

 11・7へ、日比谷野音を埋めつくそう

 国鉄千葉動力車労働組合      

 それはある意味で途方もない挑戦であった。ミリオン・ワーカー・マーチ(MWM)を呼びかけたのはILWUローカル10というわずか1200名の支部に過ぎない。だが、サンフランシスコ大ゼネスト(1934年)以来の闘いの伝統を守りぬいてきたその小さなローカルが、自らの全存在をかけてMWMを全米に呼びかけ、ワシントンに攻めのぼることを決意した。その一点の火花は、またたくまに全米に波紋を広げた。04年10月17日は、アメリカの労働者階級が真の意味で社会の主人公として登場することを宣言する歴史的な日となった。

 われわれは再びここにやってくる!

(1) われわれは歴史をつくる!

 これはひとつの偉大な運動だ。断固としてこの道を進もう。われわれは再びここにやってくるだろう。そしてその時、われわれはこの国の活動全体をストップさせるのだ。すべての権力を人民へ!(クラレンス・トーマス/MWM共同議長・ILWUローカル10)
 これは始まりにすぎない。いや、非常に重要な出発点だ。ホワイトハウスをわれわれの手にとり戻そう。この世界で、血と汗と涙と真の警戒心と徹底性なしに獲得できるものは何ひとつない。人民だけが支配階級をゴミ箱に投げ込むことができる。闘い続けよう。組織し続けよう(ブレンダ・ストークリー/全米州・郡・市労組AFSCME1707地区協議長)。
 私たちは歴史的な運動のためにここにいる。これは歴史的な挑戦だ。われわれはもはや後戻りできないことを自覚している。われわれはランク・アンド・ファイルの組織だ。だが、われわれは自分たちがもっている力を自覚し、前進する。そしてわれわれの仕事をやりとげる。われわれは歴史をつくる者たちだ(ダニー・グローバー/俳優)。
 団結した力だけが変革をなしとげる。団結すれば、私たちは負けることはない。私は希望をもち続けている。アメリカで3千600万の人々が飢えに苦しみ、4千万人以上の人々が健康保険もないまま放置されている。いつまでこうした状態が続くのか。父は言っていた。大勢を待つのではなく、闘いを続けること、執拗に闘い続けることだと。だからこそ、少数でも60年代の成功をおさめることができたのだと(マーティン・ルーサー・キングV)。
 われわれは、全国各地で組織化を重ねてここにいる。270万人を擁する全国教育協会NEAは、1万2千人の代議員による全国大会でILWUローカル10の呼びかけに賛同した。アメリカ郵便労働者組合APWU35万人は、全国大会で賛同を決定した。州・郡・市従業員組合AFSCMEは、第1707、第37、第2、第92地区協議会が賛同している。そして農業労働者組織化委員会、移民のための権利協会、黒人労組活動家連合、ニューヨークの鉄道労働者などが、ランク・アンド・ファイルのイニシアティブでMWMへの賛同を決めた。われわれは数百万人の人びとを代表してここにいる。われわれは、自らの名をもって、今日ここからアメリカを変える運動をはじめる。(ラルフ・ショーンマン/MWM渉外議長)

 (2) 制動と弾圧をはね返して

 「ユニオン! 仕事を! 健康保険を! 戦争反対!」のプラカードが、MWMに結集した多くの労働者たちの要求を代表していた。
 「AFL―CIOの指導者たちは、昨日の集会を支援することを拒否した。主催者はAFL―CIOの決定が集会を傷つけたと語った。だが彼らは、一銭のカネもないなかからはじめたこの集会は広汎なランク・アンド・ファィルの努力の成果だと誇り高く主張した」(ワシントンポスト)。
 権力も激しい弾圧を加えた。30台ものバスが会場のリンカーン記念広場に近づくことを阻止され、全く違う場所につれていかれたのだ。しかし、こうした攻撃をはね返して、5時間におよぶ熱烈な訴えが続いた。会場は、63年にILWUの名誉組合員でもあったマーティン・ルーサー・キング牧師が、「私には夢がある」という歴史的な演説を行なった場所だ。彼は68年に暗殺される。参加者は同じ場所で新たな闘いを開始する燃えるような決意を誓いあった。
 動労千葉の佐藤支部長は、「動労千葉は日本のローカル10だ」という紹介で登壇し、日本の労働者を代表して発言した。

 (3) 歴史をぬり変える壮大な挑戦

 アメリカの労働者階級のまさに壮大な挑戦が始まった。「ランク・アンド・ファイルの力で、独立した労働者の運動と歴史をつくりあげる」‥‥‥AFL―CIO幹部の屈服・官僚化と、制動・妨害くい破って、アメリカの労働運動史をぬり変えるような闘いが開始されたのだ。
 アメリカという帝国主義の最中心国―基軸国で始まった労働運動の巨大なこの分岐は、アメリカのみならず、全世界の労働運動に巨大なインパクトを与えることになるであろう新たな闘いの始まりをも意味する。
 掲げられた22の「諸要求リスト」(スローガン)もすごいものだ。まさに社会の根本的な変革に向けた闘争宣言である。ローカル10は、この諸要求リストに基づく闘いを、「ブッシュもケリーもNO」を掲げて、大統領選挙の直前に首都ワシントンで提起したのだ。MWMの最も中心的な組織者であるジャック・ヘイマン氏は、「MWMは共和党、民主党に変わる新たな労働者の党をつくりあげる出発点だ」とも提起している。
 「9・11」とイラク戦争は世界の歴史を一変させたが、その激流のなかで、今、労働運動の歴史が変わろうとしている。
 7月の都高教大会では、処分撤回闘争や予防訴訟を組合として取り組むなど、闘う方針を求める40本の修正案が可決された。執行部に事実上の不信任を宣告する歴史的大会がかちとられたのである。被処分者の転向と思想改造を迫る再発防止研修の強行に対しては、会場内外を貫く一大抗議闘争が叩きつけられた。被処分者たちは、堂々と胸を張って入場し、会場内では都教委を追及し、全員が「反省」拒否を貫いた。
 8・6ヒロシマ行動の高揚と教育労働者団結交流会の成功は、東京の闘いを全国に広げる出発点を築いた。8・30都教委包囲行動の高揚は、この闘いが教基法改悪阻止の一大焦点に押し上げられたことを示した。
 当初は、教員の良心に基づく抵抗として自己の闘いを表現していた被処分者たちは、いまや教育労働運動の新潮流としての意義と使命を自覚し、全国の仲間に決起を訴えるまでにたくましく成長しつつある。

 運命的な出会いは固い団結へ

 動労千葉は、MWMの前夜に開催された国際代表団歓迎会でも、「ILWUとベリー・マッチ・ライク(そっくり)だ」と、海外代表の一番手で紹介された。またMWM後の総括パーティーは、サンフランシスコだけでなく、シアトルやタコマなど、初めて会うILWUの各ローカル代表が次々に「11月7日にはぜひ日本に行きたい」と、話しかけてくるなど、闘いをともにつくりあげた熱い思いで一体となるすばらしい場となった。
 動労千葉とILWUローカル10、34との出会いは偶然のきっかけで始まったものであった。しかしそれは固い絆となり、予想もつかないほどの大きな可能性をもとうとしている。
 偶然のなかには必然が宿っている。動労千葉が国鉄分割・民営化攻撃で直面した課題と、ILWUが02年の協約改訂闘争で直面した課題は、全く同じものであった。われわれも、ローカル10も、労働運動の再生・変革に向けた努力を行なうことなしに、一歩も前に進むことができない状況にぶちあたって、その困難な課題に真正面が挑むことを決断したのである。
 しかも、帝国主義の本質が、イラク戦争や全世界への弱肉強食の論理の貫徹となって労働者に襲いかかる状況のなかで、もうひとつのキーワードは「労働者の国際連帯」であった。階級的労働運動を必死に守りぬいてきたそれぞれの闘いがあり、それが新たな情勢のなかで固く結合して巨大な可能性を生み出そうとしている。MWMは、われわれが日本においてめざしてきたもの、われわれがつくりあげようと努力してきた運動そのものだ。

 日本におけるMWMめざし11・7へ

 日本におけるMWMの出発点として、全力を尽くして11・7集会の成功をかちとろう。11・7集会を日本の労働運動をぬり変える新たな一歩にしよう。

 (1) 教育基本法―憲法改悪そして安保・沖縄

 イラクへの自衛隊派兵、有事立法の制定に続き、ついに教育基本法―憲法改悪に向けた動きが具体的な政治日程に上ろうとしている。しかし、「日の丸・君が代」の強制に反対して起ち上がった教育労働者の闘いが全国に大きな波紋を広げ、教基法―憲法改悪阻止に向けた具体的な展望を示している。
 ブッシュ政権は、全世界に展開する米軍基地の再編計画(トランスフォーメーション)で、在日米軍基地の飛躍的強化と、日米安保同盟の「極東安保」から、「世界安保」への質的エスカレーションを宣言した。しかし沖縄では、米軍ヘリの墜落・炎上事故をきっかけとして、基地即時閉鎖・新基地建設中止を求める新たな闘いが燃え上がっている。第三次安保・沖縄闘争が本格的に始まろうとしている。
 しかもこうした状況のなかで、われわれは、アメリカの労働者の闘いと結合したのだ。米軍基地撤去闘争の勝利は、日本とアメリカの労働者が団結して起ちあがったときにこそ、その具体的な展望をもち始める。

 (2)小泉―奥田路線との対決

 小泉―奥田は、「骨太方針W」や「奥田ビジョン」を掲げて、郵政民営化や公務員制度改革など、大民営化・非正規雇用化、労働組合解体攻撃を強行しようとしている。これは、権力機構のなかに組織されている労働組合を叩き潰し、「労働者の9割の非正規雇用化」を貫徹しようという攻撃だ。小泉政権のわずか3年間で、260万人の正規雇用が失われ、それにとって変わったのは195万人の超低賃金、無権利の非正規雇用だ。そして年金や医療制度など社会保障制度が根底から解体されようとしている。しかし、自治労で、全逓で、教組でこれまでにない反乱が始まろうとしている。
 何よりも、国鉄1047名の解雇撤回闘争が、様々な困難や危機に直面しながらも、今も闘い続けている。小泉はそうした状況のなかで、新たな大民営化攻撃を行なわざるをえない。これは1047名闘争が新たな可能性と求心力をもとうとしていることを意味する。
 小泉―奥田は、「東アジア自由貿易圏」の形成に、日本資本主義の唯一の延命の道を求め、とくに韓国とのFTA交渉を進めている。日本政府が韓国政府に要求している第一の条件が労働法制の抜本的改悪と民主労総の激しい闘いの鎮圧だ。こうした情勢のなかでわれわれと韓国・民主労総ソウル本部との連帯闘争が開始されている。

 (3) 労働運動再生への無限の可能性

 共謀罪の新設や、労組法の改悪による団結権破壊の攻撃など、労働運動への弾圧も強まっている。しかし、イラク侵略戦争が、全世界で燎原を焼き尽くすような労働者、民衆の闘いを生みだし、アメリカや日本の支配者たちが果て知れぬ泥沼にはまり込んでいるように、労働運動への激しい攻撃は、新たな労働者の怒りの声と団結を生みだそうとしている。
 11・7労働者集会は、こうした情勢のなかで、無限の可能性を秘めた日米韓労働者の国際連帯集会として開催される。われわれは、ここから新たな歴史が始まるであろうことを確信し、この闘いの成功に勝負をかける。
 いまこそ、資本にからめとられ、その手先となった既成の労働運動を現場から覆し、彼らに引導をわたさなければならない。連合のなかからは、「軍需産業を推進する以外に日本経済の危機をのりきることはできない」と主張する部分が生まれ、不気味な対立が始まっている。全労連は、現場からわきあがる怒りの声、ナショナルセンターやイデオロギーの違いをこえた労働者の統一行動の実現に向けた気運をおし潰し、分断する最悪の役割を果たしている。反動も激しく渦巻いている。しかし、労働運動の再生への胎動は、激しい分岐と流動のなかからしか生まれない。
 一人ひとりの労働者がもつ無限の可能性、その力が団結したときにもつさらに大きな可能性に確信をもとう。全国から11・7労働者集会に結集を! 怒りの声で日比谷公園を埋め尽くそう。 (動労千葉 DC通信No53より転載)

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●闘う合同労組 第3回

 シャープ東広島工場の偽装請負(うけおい)会社の実態と739スタッフユニオンの闘いの報告(続)

 広島連帯ユニオン

 739スタッフユニオンを20名の参加で結成!

 03年10月19日、請負会社SとW社の仲間、合計20名が参加して、739スタッフユニオンが結成されました。「739」は東広島市西条地区の郵便番号の上3桁で、地域の仲間との連帯をあらわす意味で命名されたものです。
 門前ビラ配りの効果は、予想以上のものがありました。配布の翌日から請負会社では、工場の請負社員全員を招集して、「今まで派遣社員と言ってきたが、本当は請負会社の社員にあたる。部外者に聞かれたら請負と言う様に」と文書で訓示しました。
 また、これまで「最速ライン」を形成するために、請負各社の労働者を混在させてきた工場の製造ラインを、請負業者ごとに配置し直すという行政監査対策も行いました。しかし、うまくラインが稼動せず、労働者に『調整休』を強要する結果になりました。まさに一枚のビラで職場は大混乱に陥いったのです。
 ついにシャープは、請負会社をK社に一本化することを決断し、他の請負会社は締め出すという強硬手段でのりきりを謀ってきました。この中で雇用が極度に不安定化するという事態が生み出されました。ここにおいて、ユニオンは討議して次の方針を決定しました。
@雇用不安定の原因と責任は、シャープ・K社とその他の請負各社にある。雇用契約書は「期間の定めのない」契約であるから、退職強要や本人の希望しない解雇は不当であり、許さない。
A有給休暇取得、『調整休』分の賃金獲得は必ず勝利できる。労基署闘争、団体交渉など闘いを強化してシャープで働く請負・派遣の仲間の要求を実現していこう!
BAさんを代表世話人にして、団結して闘っていこう。

 偽装請負会社の「出先機関」と化したハローワーク(職安)

 シャープ東広島工場は、03年10月下旬、請負会社をK社に一本化しました。他の請負会社は撤退を余儀なくされました(K社を通さず初めから直接入っていたクリスタルグループ―アクティス・ダイテックなどの大手請負会社は残りました)。
 03年10月28日、ハローワーク西条とユニオンの交渉が持たれました。田中所長は「K社以外のシャープ請負会社従業員の方は、『面接』はあるものの全員K社員になってもらう」と発言しました。しかし、同月20日の段階で、K社の社長は、関連会社の請負社員を集めて「広島連帯ユニオンに入ったら東広島では孫の代まで働けないようにする」と不当労働行為発言を行っていたのです。ユニオンはこれを組合員排除攻撃と捉えて、抗議しました。
 ハローワークは、第37号告示と労働法に基づいて法的処置をとるようにというユニオンの要請に対して、何ら対処することなく偽装請負会社が生き残ることを助けて、会社説明会や面接の会場に施設を提供する始末でした。
 今や求人先は請負会社や派遣会社などの非正規雇用が大半を占めており、その求人を確保するために、ハローワーク自身が、請負会社などの「出先機関化」しているのです。

 退職強要を拒否して『調整休』分賃金をもぎ取る!

 実際、シャープとハローワークがいうような「面接してK社で雇用する」ことは実現しませんでした。請負会社Sが反対して、拒否の立場をとったためです。偽装請負会社にとって、請負社員は「金の成る木(一人当たりいくらで、シャープから金を引き出す材料)」であるからそれを、むざむざK社には渡したくないということに過ぎません。結局、労働者の将来のことなどまったくお構いなしに、シャープで働いていた仲間は「退職」ということにされてしまいました。
 ここで重要なことは、「会社都合で退職」にしなかったことです。会社都合にするとハローワークからの各種の膨大な「助成金」を返却できないから、会社都合の退職にはしなかったのです。
 会社都合で、本人の意に反して無給で休ませていた『調整休』に対して、賃金を支払わせる闘いが、Aさんを先頭に、労基署との労基法第26条に基づく闘いとして推し進められました。739スタッフユニオンで会社と団交を行い、また労基署に押しかける闘いをやり抜き、組合員以外のシャープ関連の請負社員全員に対して賃金を全額支払わせる大勝利を勝ちとりました。
 ただ、最も悪質なS社は、退職を強要するテコにしようと、この調整休分賃金の支払を先延ばしにしてきました。03年11月17日、S社の組合員、本部役員、B特別執行委員など計15人がS社に押しかけ交渉しました。まるで大衆団交のように次々と仲間が、退職強要に反対の意志表示を行い、本部役員の立会のもとで、各人の調整休分賃金を会社と確認の上、S社に未払い賃金を支払わせる勝利をかちとりました。

 社会保険未加入をなくす闘い

 偽装請負会社の特徴の一つは、社会保険未加入が圧倒的に多いということです。シャープでも元締のK社を除いて、その他の5つの請負会社は社会保険に未加入でした。最も悪質なS社は、雇用保険すらありませんでした。雇用保険に未加入でいることで、労働者を雇っていた痕跡さえ明らかにしないという徹底ぶりでした。
 社会保険庁は、なかなか動きません。広島県に本社が所在しているS社とW社について組合員の給与明細書を2年分提出しないと何もしませんでした。組合員が給与明細書を公にするということは、自分がユニオンの組合員であることを会社にも知られることになります。そうして初めて社会保険庁が動き出したのです。組合員にとっては、公然と会社と対決して、こんな会社はつぶれてもかまわない!という決意を固めて、初めて可能となる闘いなのです。
 こうして、やっと「過去2年間に遡って社会保険未納分を会社から徴収」するという判断を社会保険庁から引き出すことができました。W社は、未納分全体を払えずに倒産してしまいました。S社は、西日本に1200人の従業員がいますが、社会保険庁の調査官が、『総勘定元帳』の開示を求めなかったために、財務状況の全ぼうが解かりませんでした。このために、S社は、シャープのせいぜい70名程度の従業員について報告して、うやむやにしてしまったと推測されます(S社は、現在も広島でシャープ以外の会社に請負社員を送り込んでいます。また、同じ社長が別名の派遣会社を経営しています)。
 組合員には、S社勤務期間に保険がなく、やむをえず国民健康保険(国保)に加入していた方もいましたが、会社が2年間遡って社会保険に加入したために、国保の2年分の掛金が還付されました(多い人では総額70万円程度)。また、社会保険は全額会社持ちで加入できた人もいます。闘えば、予想さえしていなかった『果実』を勝ちとることもできると組合員は実感しています。
 この闘いにおいて、ユニオンでは非正規雇用の労働者の切実な問題として、社会保険未加入の問題があるとということを学びました。そこで東広島地域の非正規の仲間に広く訴えて、社会保険未加入をなくす運動を立ち上げています。『若者に仕事・生きがい・未来を!東広島から社会保険未加入をなくす運動』と称して、ユニオンの地域組合員も全面的に協力して、労組や民主団体に働きかけて賛同の輪を拡大しています。現在、教組や公務員職組などの支部・分会が多く賛同を寄せています。今後、集めた賛同署名を、社会保険事務所やハローワーク、東広島市長(行政)に提出して請願行動を行う予定です。

 K社の社長発言を糾弾!

 04年3月8日、大阪市にあるシャープ本社に赴き、交渉を行いました。東広島工場の偽装請負の実態を暴きだし、シャープ社員の役割、請負会社と一部幹部の馴れ合いや癒着の下で、労働者の生活が破壊されていること、正社員もこの腐敗に憤りをもっていることなどを具体的に示しました。これについては、シャープ本社の責任を追及しました。また、この場でK社・社長の組合員排除の不当労働行為についても糾弾し、シャープの責任で事態に対処するよう要求しました。
 現実に、組合員の生活は大変です。組合員はシャープ関連には就職できない(ブラックリストで排除されている!)状況でした。
 K社・社長発言については、K社でも追及を行い、本年5月末、この発言で被害をうけている組合員に対して4カ月分賃金の額で解決金を勝ちとりました。

 現在の状況

 最後までパージされて就職できないでいたスタッフユニオン・代表世話役のAさんは、この7月から東広島の機械関連会社の工場で、派遣労働者として働いています。
 Aさん、そしてBさんの献身的な活動に支えられ、739スタッフユニオンの闘いを、今後も地域全体の非正規雇用の仲間に拡げてゆきたいと考えています。さらに、『社会保険未加入をなくす運動』も粘り強く続けていきます。闘いは、まだまだ継続中です。また試行錯誤をしながら進めていきたいと思っています。
 ユニオンには、組合員さん一人一人の原状をつかみ、共に悩み、要求をまとめて、共に闘うということが、今、求められているということです。
 地域に多くのユニオンの看板を設置して、地域を制圧するユニオン運動を組織しようと準備しています。この過程は、11月労働者大行動へと登りつめる過程に他なりません。粘り強く組織化に取りくみます。
 最後に、闘いの経過報告を中間報告としてまとめたのは、全国の闘う仲間に何らかの役に立てばと思ったからです。皆さんの闘いに少しでもプラスなれば幸いです。
批判やご意見・ご質問を広島連帯ユニオンに集中して下さい。

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全医労不利益・雇い止め是正裁判』への支援のお願い

 『全医労不利益・雇い止め是正裁判』原告 田村祐二(全医労宇多野支部)

 7月28日、全国の国立病院では新たな闘いが始まりました。
 4月1日よりの国立病院が独立行政法人国立病院機構への移行に伴っての「一方的な賃金引き下げ、雇い止め・パート化は断じて許さない」と組合(全日本国立医療労働組合)代表28名が国立病院機構を相手取り東京地裁に提訴したのです。働く者の権利を取り戻す闘いです。ご支援・協力をよろしくお願いします。
 国立大学と同様、全国154カ所の国立病院・療養所は、この4月1日より全国で単一の「独立行政法人国立病院機構」に移行しました。病院機構は、その事業をすべて引き継ぎながら、@役職を除く35歳以上の一般常勤職員全員の賃金を一方的に切り下げ(切り下げの最高額は月額4万1200円にも及ぶ)、A約6000人の賃金職員(定員外職員)全員の雇い止めを強行し夜勤の出来る看護師や検査技師等(約3000名強)は常勤で採用したものの他の職員は6時間パート(約1000名)や委託・派遣(約1000名)でしか採用しなかった。年収平均は233万円から150万円への大幅な引き下げである。そのため退職を余儀なくされた人が続出(約1000名)し、それは4月以降も続いている状況です。
 これに対して、反対闘争が全労連に本部が立ち上げられ100万人署名の取り組みや毎月の厚労省前座り込み、そして片や施設への地域からの申し入れ行動が取り組まれ、闘いは内外で大きな広がりをつくり出すことができました。とくに私の施設(支部)では病院給食・検査部門の委託、さらには病院の出入り業者(職員食堂や売店)との契約打ち切りが強行され、これらの攻撃との一体的な反対闘争の展開となりました。一方、これらの計画発表・通告と同時に発表された新たな就業規則(案)とその作成に関わる労働者代表の選出をめぐって支部では78%の委任状を集めきって先制的に闘いに立ち上がりました。これに対して当局は対立候補を擁立し、結局、選挙になりましたが選挙でも圧勝しました。直後の「職員食堂激励会」では看護学生や地域からの参加もあり、120名の参加で大成功を納めることが出来ました。続く国立共闘会議の激励会にもやめていく仲間や職場に残る仲間が参加し、ともに奮闘を誓いました。
 いよいよ4月1日からの新たな闘いの始まりです。労働基準法、労組法をはじめとした労働3法適用下での闘いです。中央でも支部でもこれまで管理運営事項や権限外事項の名目で抑圧されてきた団体交渉の再開に向けて闘いが始まっています。国立病院時代同様、交渉拒否を続ける機構本部に対して中労委への提訴で追いつめ、交渉の場に引き出し、要求の前進へと闘いが進められ、非常勤の仲間が初めて参加した非常勤問題での交渉では、年休取得の前倒し実施、通勤手当の一部改善も実現させました。私の支部でも9月28日に団体交渉を実施できました。実に13年ぶりです。労使交渉での闘いと併せて今回の提訴が行われ裁判闘争がいよいよ始まりました。
 裁判闘争を含む闘争方針をめぐっては当初より様々な意見が出され、当該の職員、地方協、本部、共闘、弁護士との間で意見がまとめられ(残念ながら、退職をせざるを得なかった人については参加できる枠にはなりませんでしたが)、院内保育所をはじめとした委託や派遣に行かざるを得なかった仲間も参加できる枠組みになりました。また、名称についても最終的に「全医労不利益・雇い止め是正裁判」に決定しました。退職せざるを得なかった仲間の悔しさの分までこの裁判の中で闘おうということです。

 国立大学や試験研究機関などが国から独立行政法人に移行していますが、大幅な賃金切り下げや6000人もの定員外職員の全員雇い止めを行ったのは国立病院機構が初めてであり、裁判で争うのは独立行政法人では初めてです。社会的にも注目される裁判になりました。また、小泉構造改革(「骨太方針W」)のもと郵政の分割・民営化が推し進められ、また国に続き地方自治体でも「地方独立行政法人法」が成立、民営化・非正規雇用化攻撃がかけられています。また先述の国立大学でも先送りされた3年後をめぐって攻防が始まっています。またそれらと一体で医療・社会保障の切り捨て攻撃が進められ国公立、公的病院の縮小・再編成攻撃がかけられています。
 今回の裁判は小泉構造改革(「骨太方針W」)の民営化・非正規雇用化・社会保障の切り捨て攻撃とそのまっただ中で対決する裁判になります。また今回の攻撃は国鉄やNTTにかけられた攻撃と全く同様の攻撃であり、その闘いを引き継ぐ闘いであることは勿論言うまでもありません。
 そして何よりも民間や公務で働く臨職やパート・非正規雇用の労働者の闘いにつながる闘いでもあります。
 闘いの課題はどれだけ闘いの輪、支援の輪を広げていけるかです。闘いの勝利もここにかかっています。原告をはじめ国立病院機構で働く労働者のたたかいは、垣根を越えたたたかいへと発展していくことを確信しています。陸海空港湾20団体のたたかいに学び、ねばり強く、幅広く、勝利に向かって団結を強めます。ぜひともご支援をよろしくお願いします。

 10月27日 第1回口頭弁論 東京地裁、 11月8日  第2回 東京地裁

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●10・13労組法改悪反対国会請願行動報告

 関西合同労組書記長 蒲牟田 宏

 10月13日(水)に全国から集まった労組法改悪反対の国会請願署名(労組67筆、個人54筆)を国会に提出するために国会請願行動に取り組みました。
 午前10時に衆議院第一議員会館ロビーに、全員で11名が結集しました(ス労自主4名、動労千葉1名、労組交流センター2名、関西合同労組4名)。
 意志一致のあと、二人一組で衆議院の野党の厚生労働委員オルグにまわりました(議員対応は後述)。
 分かったことは、民主党がこの日午前の厚生労働委員の会議(代表・横路孝弘)で、労組法改悪案に対して修正を求めないと決定していたこと、共産党も社民党も法案に賛成を決めていたことです。
5月には私たちの主張に理解を示していた議員も、そっけない対応をしたりして変化していました。
前回の、国会請願署名の紹介議員になってくれた辻恵議員(大阪選出、厚生労働委員ではない)は、「連合大阪から、紹介議員になったことにクレームが来た」とのことで、労組法改悪案の問題点には理解をしめしながらも、今回紹介議員は検討させてくれとのことでした。
 正午から開かれた共謀罪新設に関する院内(衆議院)集会に全員で合流しました。
 辻恵議員や福嶋瑞穂社民党党首など衆参の多数の議員が参加し、総勢70名ほどの参加で、共謀材成立を阻止しようと気勢をあげました。共謀罪について海渡雄一(日弁連国際刑事立法対策委員会副委員長)弁護士から、わかりやすく説明があり勉強になりました。
 「共謀罪」は、イギリスで労働者が資本家に対してストライキを「共謀する」ことを禁止するためにつくられたのが始まりです。まさに労働基本権、団結権破壊の方向性が、国が今国会で成立させようとしている法案に表れています。
 議員の多くが共謀罪反対の発言をしましたが、敵の攻撃の全体性から見れば労組法改悪の邪悪な意図が丸見えなのに、なぜその危険性がわからないのか、ほんとうに歯がゆい思いでした。
 昼食の後全員で協議して、国会前でやることにしていた情宣ビラまき行動をやめて、国会請願署名の紹介議員のオルグを全員でやることとし、照屋寛徳衆議院議員と糸数慶子参議院議員の、両事務所をたずねオルグしました。
 両事務所とも、議員本人は不在でしたがいずれも秘書の方に心安く請願署名を預かっていただきました。対応した糸数議員の秘書の宮田さんは、全水道出身で佐世保で地区労にいた方で、労組法改悪案の危険性について熱心に話しを聞いてくれました。
 そして、照屋寛徳事務所から10月14日に衆議院に提出したとの報告がきました。
 糸数議員の方からはまだ連絡はありませんが、必ず提出してくれるものと思っています。
 関西合同労組では本行動の前に、組合全体の取り組みとして厚生労働委員オルグを行なってきましたが、反対の声を議員に届けつづけることが大事です。本行動の翌日には、「労働法制改悪反対・職場闘争勝利! 労働者連絡会」が議員オルグに入っています。
 とにかく労組法改悪反対の声を上げつづけ、仮に成立したとしても運用面での現場での攻防の闘いに結び付けていくことが大事だと思います。
 共に闘いつづけましょう。

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●たたかいは進む

 ★全国各地でMWM連帯行動

 10月17日、アメリカ・ワシントンDCでのMWM(ミリオン・ワーカー・マーチ)に連帯して、イギリス、韓国など世界各国の国際連帯行動と一環として、日本でも東京・渋谷に620人が集まりデモを闘いぬいた。大阪では300人が中之島公園で集会とデモ。広島では130人、仙台で80人、福岡など各地で闘いぬかれた。

 ★昭和シェル石油労組 賃金差別で勝利命令

 昭和シェル石油労組は、昭和シェル石油とシェルケミカルズジャパン両社を相手どって、同労組の組合員64名に対し、組合活動を理由に不公正な給与査定により給与差別を行ったと救済を申したて闘ってきたが、9月29日東京都労働委員会から全面勝利の命令をかちとった。
 命令は、85年以降の査定が対象で、職能資格等給も是正するよう命令した。同労組に支払われるべき差額は少なくとも13億円に達する。
 会社側は「1年を経過したもの」ということを理由に救済申立の却下を主張したが、「継続する行為」として命令をかちとった。これで同労組は大阪地労委、兵庫地労委に続いて3つの労働委員会で勝利命令をかちとったことになる。同労組は現在、命令完全履行を要求して闘っている。

 ★JRで初の解雇撤回勝利判決

 9月27日、東京地裁民事第36部(難波孝一)は、国労鶴見駅分会不当労働行為事件で、中労委命令の取り消しを求めるJR東日本の請求を棄却する判決を下した。
 この事件は、90年11月、国労鶴見駅分会の組合員が同駅主席助役による侮辱的言動に怒ってもみ合いとなったことを口実に懲戒解雇され、それを前後して分会副委員長、書記長がベンディング事業所に強制配転されたもの。国労はこれを分会への組織破壊として救済を申し立て、神奈川地労委ならびに中労委の全面勝利命令を得ていた。
 今回、東京地裁は「解雇などは国労を弱体化する目的でなされた」と認定してJRの訴えを全面的に退けた上、緊急命令と付して中労委命令の即時履行をJRに迫っている。その内容は懲戒解雇の撤回と強制配転者の原職復帰だ。JRは厳しく断罪された。

 ★今秋共謀罪阻止決戦

 10月3日午後、東京・文京区民センターで、実行委員会主催により、一切の治安弾圧許すな、自衛隊はイラクから撤退しろ――共謀罪廃案へ! 10・3集会が開かれた。午前中、山手線全駅ビラ情宣を雨中決行して約200名が参加した。
 集会では各団体のあいさつのほか、スティーブ・ゼルツァーさんからメッセージが紹介された。
 海渡雄一弁護士が、共謀罪について明解に講演した。また、10・17ワシントン百万デモに参加するとともに、愛国法と闘う労働者とともに共謀罪反対の国際連帯を行うために、5名の仲間を派遣することになり、渡米する5名が紹介された。
 主催者側から、共謀罪審議入り阻止・廃棄に向かって、10月21、22、23日に国会前でハンガーストライキ闘争に入ることが明らかにされた。

 10・5院内集会
 10月5日午後1時から衆院第2議員会館で共謀罪を考える集会が実行委員会主催により開かれ、国会議員のほか、初めて労働弁護団幹事長の鴨田哲郎弁護士が労働弁護士の立場から共謀罪批判を行った。

 10・13院内集会
 10月13日1時から衆院第1議員会館で日本弁護士連合会主催により、共謀罪を考える院内集会が開催された。
 集会には、社民党、共産党、民主党、自民党からの議員9人、秘書5人が参加した。共謀罪の院内集会では、いままでで1番多い国会議員が参加し、国会議員の中に共謀罪反対の気運が拡大していることを示した。
 集会は山下幸夫弁護士が行い、海渡雄一弁護士が基調報告を行い、各議員、市民団体、弁護士が発言した。

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読者のページ

 ★書評 「戦前の労働運動は、なぜ、戦争を止められなかったのか?」(斉藤弘平著)
      「労働運動史・戦前編」(労働者学習センターブクレット

 東京 小野 千鶴

 私が、「労働運動史・戦前編」読んだ目的は、このパンフの副題通りはそのまま「戦前の労働運動がなぜ戦争を止められなかったのか」を学びたかったからです。
 私たちは今まで、戦前の労働運動を語るとき「共産党が転向した」とか「獄中何年なんて威張っても反戦運動を組織できずに獄中だけしか残らなかった」という批判を結構気軽にしてきました。でも自衛隊がイラクの戦争に参戦して有事立法が成立した今、人ごとみたいに批判して済む問題ではありません。私たちが路線が正しいと思っていても労働運動で勝利できなければ戦前の共産党と同じになってしまいます。そういう切実な問題意識で読みました。
 戦前の労働運動というと「暗い」という印象が先に立ってしまうのですが斉藤弘平さん(元総評のオルグ)の戦前史は本当に面白かった!!!です。労働組合運動の決定的な重要さを再確認しました。結論的に言って共産党が労働運動の中に根を張ることができなかったことが戦争を阻止できなかったことの最大の原因です。このパンフレットのすごいところは当時の全協(共産党が指導した労働組合)のビラや新聞を丁寧に検証していることです。そして戦前の弾圧の中で労働運動に根を張ることが不可能だったのかというと決してそうではないということを結論づけています。考えさせられました。
 思いついたことから書きます。ロシア革命の影響はものすごく日本の労働運動に影響を与えたけど、レーニンが死んでスターリンが覇権を確立する頃に日本の共産党がつくられたことから来る問題が大きいと思いました。経験も浅い活動家が共産党を結成してスターリンのコミンテルンに引き回されて様々な間違いを犯して労働組合を潰したり現場に離反されたり、それも一度や二度や三度ではない。実際に当時のビラや新聞で具体的に批判していて説得力があります。そもそも共産党の結成から問題です。結成するのはあの有名な浜松の日本楽器の争議の最中です。激烈な闘いの中で共産党員は闘いを途中から投げ出すような指導をしている。その裏にはコミンテルンにせっつかれて共産党再結成を焦っていて、早く争議を収拾させたかったのだとあります。日本楽器争議に勝利するために浜松の他の工場でもストに入ろうと言う意見が現場の労働者から出され、入る条件はあったのにそれを否定してしまうんですね。そして治安畑から来た日本楽器社長の敷いた大弾圧で潰されていったんです。労働運動の前進と党建設を一体のものとして考えることがはじめから無かった、というか希薄だ
ったのですね。
 引き回しというのはいくつもあるのですが、共産党の綱領である「天皇制打倒」を、当時の労働者の意識とは全く関係なく、また討論が全くされていない中で、やっと結成した労働組合のスローガンに掲げさせる。そして激しい官憲の弾圧(治安維持法)を引き出し潰される。その一方で「天皇制打倒」を党の綱領にしながら実は党自身が天皇制を打倒する路線も決意も全くなかった。あるいは弾圧で左翼的労働組合が潰されても中間主義的組合が活性化し、裏切り幹部と組合員大衆が離反し組合の中に「革反」という組織を作り東交のストのような闘いを指導するけど、結局は、「党のひきまわし」体質を乗り越えられず、組合員大衆から離反し失敗していきます。
 排外主義・愛国主義との闘いが無いことも決定的でした。全協に加入した朝鮮人労働者の大半は自由労働者で全国の工事現場で流血を伴う激しい闘いを展開していました。共産党は例えば岸和田紡績争議にみるように朝鮮人労働者の怒りのエネルギーを無謀な戦術に利用し彼らに多くの犠牲を強いています。大船渡鉄道工事争議では党の制止を振り切って支援に駆けつけた伊氏をスパイ容疑で射殺しています。その背後に1928年のコミンテルン決議で朝鮮人の独自組織を日本共産党に合流させたこと、朝鮮人労働者の「日本人労働者は抑圧者だ」という批判を受け止められない党の排外主義思想がありました。一方、争議で労働者は軍歌を歌って気勢を上げ、ビラでは「大和魂の腕を見せようか」などと言う言葉が盛んに使われた、と斉藤さんは批判しています。満州事変は「ソ同盟への侵略」などといい闘いらしい闘いをしていません。
(中略)
 このパンフは共産党の批判のパンフではなく労働運動の歴史が書かれているのですが、私はついつい党(共産党)と労働運動との関係として読んでしまいました。労働運動から孤立して壊滅した共産党から反面教師として学ばなければならないこととがたくさんありました。パンフレットの最後で斉藤さんがいくつかの教訓を列挙して「最大の思想的問題点は、階級闘争を闘うなかで労働者階級自己解放闘争を闘う主体の形成を意識的に追求する階級形成論の欠落にあった」と言ってます。又別のところで「弾圧されても弾圧されても犠牲を恐れずに、全人生を労働者解放の歴史的事業に捧げて闘い抜こうとした労働者がかなりの数で存在したことを、私たちは誇りを持って受け止めるべきであると思います。彼らが誤った指導に終始した共産党の規範から自由で無かったところに悲劇があった」と書いてます。私がこのパンフレットで感動したことは共産党の指導で潰されようとも職場から工場から闘いに立ち上がった労働者の歴史でした。今度は絶対に負けてはならないんだ、党と労働運動は勝利しなければならないと思いました。

 

 ★73年末闘争、2・22処分、私の原点 神奈川 全逓 桜井隆夫

 「来年の1月2日は休暇ではなく、3日と同じように出勤して配達をする。このことはすでに本部と本社で決定されている」
 こんな重大なことを、7月に開催した支部大会後最初の職場集会で聞くことになろうとは、しかも、事前に職場の組合員の声を聞くこともせずに決定してしまうとは。
 これが、全逓という名を捨て去り、「権利の全逓」という「権利」を捨て去って作られたJPUの正体だ。
 そもそも「2日休配」がどのような経過で実現されたのか。
 1973年の年末闘争は「インフレ手当0・5ヶ月」「週休2日制」「1月2日3日休配」という要求を実現するため、「電撃的物ダメ」を戦術として闘われ、「インフレ手当0・5ヶ月」「74年9月より4週に1日の非番日導入(4週5休)」「1日2日休配」を勝ち取ったのである。それまでは、2週間から3週間連続出勤当たり前の職場だったのである。しかも、時間外労働は平常日は1日最高2時間が、12月から1月の2カ月間は4時間になるのである。
 連続出勤と時間外労働の中で年賀の元旦配達準備を、全逓労働者は長年行ってきた。こことに対し、「三が日の内の1日ぐらいは休みたい」ということで闘われ、実現させた。「2日休配」ということで全逓労働者は、「2日出勤者は元旦か3日に休む」という形で、3が日に1日は休日ということが確立された。
 それが、それが、何たることか、という思いである。
 「2日休配」については個人的にも、「自分の闘いで勝ち取った」という思いが強い。それは、73年末闘争に対する不当処分が、74年2月22日に発令され、全逓高津にも大量処分が出た。停職6カ月1人、減給15人、戒告1人、計17人である。そして、私は停職6ヶ月だった。さらに私と減給を受けた15人のうちの1人が全逓労組の犠救対象にならなかった。
 そんな個人的思いもあって「90年8・22文書」に対する強い反発心を持ったことは事実である。
 「理だけではたたかえない、情、心が必要である」われわれに欠けているのはどちらだろうか?

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