2006年6月号(No.195)目次
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労働者の目 労働者の団結と闘いが勝利への道!

・国会闘争に総決起しよう

  ●政府案・民主党案を廃案に! 教基法改悪阻止の国会闘争に総決起しよう
 ●都教委による教育基本法・憲法違反を徹底追及

幕張構内事故への不当処分粉砕!反合・運転保安確立!

安全運転闘争への不当処分撤回、安全確立に向けた闘いの禁圧を許さない署名運動へのご協力のお願い

4・24山手線・埼京線全面ストップの重大事故

全逓加古川分会の要員要求の取り組み

共謀罪を廃案に! いよいよ決戦のとき

やってられないぜ!  第11回 入札制度での労働条件

ひめじょおん−女性部から

書評 自民党新憲法草案との対決

労働ニュース  ●日誌

国労5・27臨大闘争弾圧裁判を傍聴して

闘う合同労組 第17回 アサヒアルミ工業分会の闘い

読者のページ


労働者の目

●労働者の団結と闘いが勝利への道!

       全国労働組合交流センター常任運営員 (動労千葉特別執行委員) 後藤 俊哉

 昨今、「春闘」という二文字が、あまり見あたらなくなっている。なぜだろう。今までは、どの労組も「賃上げ」を訴えて春闘を闘っていた。しかし、今の労働界を見てみると、軒並み「賃下げ」を強制させられている。そして、闘わなくなってしまっている。これは「連合」が資本に対して何も言わせなくしている。政府のお墨付きでつくられたとんでもない団体に取り囲まれているからではないのか。
 今、闘わなくていつ闘うんだ。われわれ動労千葉は、今春闘で「闘いなくして安全なし!」をかかげてストライキを含む「安全運転闘争」を闘った。これはJRで働く労働者へのメッセージであり、全労働者への訴えである。〈労働者は団結して闘うことしかないんだ〉ということを忘れてしまったのか。このままでは、労働組合はなくなってしまうのではないか。しかしわが動労千葉が呼びかけた「民営化・規制緩和と闘う4・24労働者総決起集会」はその暗雲を取り払う集会となった。動労千葉の「闘いなくして安全なし」の闘いに対して、「田中委員長の報告を聞いて、まったく同じという思いを強くした。JRでも航空でも、共通していることは、労働組合が闘っている時は、事故は起こしていない」と発言した航空労組連絡会・元副議長の村中哲也氏、大弾圧と闘いながら、コンクリートの品質は労働者の手で守るという関西生コン支部の城野正浩氏、職場のアスベスト問題と闘う日本板硝子共闘労働組合の小貫幸男氏など労働組合で本当に闘い抜いている者の感動的な集会だった。
 われわれは、春闘を復活させ、あの希代の悪法「共謀罪」を労働者の団結で粉砕しよう。
 今の国会を完全に機能停止に追い込み、ガタガタにすることが出来るのは「労働者の団結」だ。どんな法律も、労働者の団結の前にはなんの効力もないことを思い知らせてやろう。そのためには、連合・全労連・全労協のカベをとっぱらい、すべての労働者が立ち上がることだ。それは、可能なことだと信じている。諸悪の根源である資本主義を葬り去ろう。

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●政府案・民主党案を廃案に!教基法改悪阻止の国会闘争に総決起しよう

                              教育労働者部会

 今通常国会は、改憲阻止決戦の本番となった。小泉内閣は、4月28日に教育基本法改悪案を国会に提出、衆院に特別委員会が設置され、法案審議が始まった。さらに、国民投票法案も与党単独提出を決定、会期大幅延長によって改憲攻撃の正面突破をねらっている。
 いうまでもなく、教育基本法は、その前文が示すように憲法と一体の法律であり、その改悪は、改憲の一大突破口だ。戦争を支持し担う国民づくりの攻撃であり、教育労働者をその先兵とする攻撃だ。
 国会前では、共謀罪に続いて、教基法改悪反対の座り込み行動が開始され、闘う県教組や「日の丸・君が代」処分者が日教組本部の屈服をのりこえて闘いの戦闘的高揚を切り開いている。〈国会前〉こそ、改憲阻止の最前線だ。

 愛国心強制法・教育の国家統制法

 政府案は、教育のあり方を主権者たる国民に委ね、教育行政の任務を条件整備に限定した現行法の性格を180度逆転させている。「伝統と文化を尊重し、我が国と郷土を愛するとともに、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養う」など、教育の目標として20を超える徳目を盛り込み、〈国民道徳〉として法律で強制しようとしている。
 これらの徳目は、学習指導要領の道徳の目標に掲げられている内容だが、それが公教育そのものの目標に祭り上げられている。戦前教育は、修身を筆頭教科とする教育勅語教育だったのと同様、改悪教基法下では、教科教育も愛国心育成のために総動員される。学校教育法の教育目標の改悪→学習指導要領の大改訂→教科書検定基準の改訂によって、国語など全教科の教科書に愛国教材が満載されるだろう。
 政府案は、教育行政の任務を条件整備に限定した現行法10条を完全に解体している。「不当な支配に服することなく」という文言を残しつつ、「国民全体に対し直接責任を負って」を削除し、「この法律(=改悪教基法)及び他の法律の定めるところにより」と置き換え(16条1項)、さらに「教育に関する施策を策定・実施する」国と自治体の権限を明記した(同2項・3項)。この文言変更につき、小坂文相は、「法律に定めるところにより行われる教育は『不当な支配』ではないことを明確にしたもの」と言い、「国民全体の意思を代表しない一部の勢力(日教組や解放運動をさす)の不当な介入を排する趣旨」だと言い放った。さらに、教育振興基本計画による新たな教育統制手法が導入されている(17条)。
 〈教育行政の教育内容への介入は抑制的であるべきで、法律にもとづく教育行政の行為でも「不当な支配」となる場合がある〉というのが、最高裁も認めた10条1項の趣旨だ。政府案は、〈法律で決めれば、教育振興計画を閣議決定すれば、なんでもあり〉とし、行政権力の教育内容への介入の歯止めを完全に取り払った。
 改悪教基法下では、〈愛国心に燃え国際平和のために戦う国民の育成〉が教員の「崇高な使命」となり、「君が代」を歌わない歌わせられない教員は、教員不適格として免職の対象となる。国会答弁で小泉は、愛国心指導は教員の「職務上の責務」であり「拒否できない」と明言し、小坂文相は、愛国心指導の状況を点検するとした。08年度から導入される免許更新制を現職教員にも適用し、不服従教員の一斉パージを企んでいることは明らかだ。

 政府案よりひどい民主党案を支持する日教組本部

 民主党が「対案」として提出した「日本国教育基本法案」は、現行教基法を廃止する新法の提案だ。前文に「日本を愛する心を涵養し、祖先を敬い、子孫に思いをいたし…」と謳い、学校教育(4条)にも「我が国の歴史と伝統文化を踏まえ」と盛り込み、生命・宗教に関する教育(16条)で「宗教的感性の涵養」を明記している。
 普通教育・義務教育(7条)で「国は普通教育の…最終的な責任を有する」とし、教育行政(18条)で「地方公共団体が行う教育行政は…その長が行わなければならない」と教育行政の独立性を否定し、教育委員会制度の廃止に道を開いている。
 民主党の検討会では、日教組出身の日政連議員もこれに合意し、同席していた森越委員長も「黙認」したという。事実、「民主党要綱に対する書記長談話」では、愛国心を前文に盛り込んだことは問題だといいつつ、学習の権利保障の規定や財政措置の保障などを評価している。5月18日に連合中執が決定した「教育基本法『改正』問題に対する連合の基本スタンス」は、〈政府案・民主党案両方を俎上にのせ議論せよ〉という代物だ。
 民主党との修正協議を通じて、政府案のさらなる改悪の危険性さえ生まれている。日教組本部の転向は、ここに極まった。

  愛国心教育を踏み絵とする日教組解体攻撃

 いま、なぜ、教基法改悪なのか。開店休業が続いてきた与党協議が一挙にまとまり、法案上程が強行されたのは、直接的には、9・11自民圧勝と大連立もテコとした圧力に公明党が屈服したからだ。より根本的には、帝国主義争闘戦下の日帝の危機の深まりが、集団自衛権の解禁、海外での本格的武力行使のための9条改憲を一刻の猶予もならない課題としているからだ。
 衆院では改憲反対派の議席はわずか16だ。しかし、世論調査でも9条改憲には依然として国民の過半数が反対し、沖縄と全国の米軍再編反対運動の高揚は、戦後的平和意識の強固さを示している。改憲強行に踏み切るためには、反対運動を封殺する国民投票法が不可欠であるとともに、護憲平和運動の中心部隊である日教組や自治労を徹底的に弱体化し、連合を丸ごと改憲勢力化することが至上命題なのだ。
 行革推進法・市場化テスト法案が民営化による自治労解体攻撃だとするならば、教基法改悪案は、愛国心教育を踏み絵とする日教組解体攻撃だ。教育労働者の団結と抵抗を一掃し、国家権力が教育をほしいままに支配し、次世代の意識を愛国主義で掌握し、戦争にかりだそうというのだ。

 戦争協力拒否闘争として闘おう

 文字通り、組織の存亡が問われる情勢の中で、日教組運動には巨大な分岐と流動が生まれている。翼賛国会に教育を委ねるに等しい「調査会設置要求」署名は、ボイコットする県教組が続出し、民主党案は憤激の的となり撤回要求が爆発している。
 教基法改悪阻止闘争の中軸を担い、牽引しているのは、「日の丸・君が代」闘争を闘う勢力だ。3年間の不起立闘争の継続・発展は、石原・都教委による教基法改悪の先取り攻撃をうち破ってきた。クビも覚悟で違憲違法の職務命令への不服従を貫く主体が登場している。この闘いの中に、改悪教基法をのりこえて闘う力が育まれてきている。
 教基法改悪阻止の国会闘争は、この分岐・流動を徹底的に促進・拡大し、不起立闘争の質を教基法闘争に持ち込み、戦争教育拒否の決意を生み出していく闘いである。それは、〈改悪教基法下への不服従運動〉=戦時下の階級的教育労働運動を準備していく闘いでもある。「日の丸・君が代」被処分者こそ、闘いの伝道者となって巨万の国会包囲闘争をつくりだそう。戦争協力を拒否する職場生産点の抵抗闘争をすべての産別に広げ、労働組合が主体となった改憲阻止闘争をまきおこそう。
 

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●都教委による教育基本法・憲法違反を徹底追及
     被処分者7団体共同の大人事委員会闘争かちとる

 5月17日、「君が代」不起立処分撤回を求める被処分者7団体共同の都人事委員会審理が都民ホールで行なわれた。2年に渡る人事委闘争が、日教組分裂以来初めての組合の枠を越えた大併合審理を実現させた。会場は、請求人150名、傍聴人50名で満杯となり、この日の証人である近藤精一前指導部長、臼井勇前人事部長への怒りと闘いへの熱気であふれた。被処分者が、「日の丸・君が代」強制と処分の張本人をひきずりだし、徹底追及する〈大衆団交〉がかちとられたのだ。

 「法律家ではないから教育基本法は分からない」!?

 処分者側(都教委側)の尋問の目的は、「10・23通達」を企画立案、発出した当時の指導部長近藤に「通達」の、処分発令時人事部長臼井には「処分」の“正当性”を証言させることだった。近藤の証言は、全く自信のない弱々しい声で、会場から「はっきり言え」と抗議が何度も起こった。臼井は、手がブルブル震えて宣誓書を読めず、机上に置いて読み直すありさまだった。
 「通達」発出の経緯は、「『国旗・国歌』の実施が形式的」「教職員は職員会議を最高機関と考えている」「実施に抗議して日直業務を拒否し校長に口もきかない」「式の準備も校長、教頭だけで深夜まで行なっている」など、近藤の証言内容は、教育現場が教職員によって自主的に運営されていることへの都教委の苛立ちを暴露したものだった。「10・23通達」は、こうした教職員の抵抗を封じ込めるための処分恫喝を背景にした攻撃なのだ。
 請求人の反対尋問は、「10・23通達」の違憲・違法性と処分の不当性の追及が軸。弁護人側は「10・23」通達が憲法、教基法に反するものであることを鋭く追及した。責任逃れに終始する近藤は、「学習指導要領のもとで生徒を適切に指導するため」を繰り返すだけ。職務命令と指導、助言の違いや、教基法や最高裁大法廷判決に違反することを追及されると「法律家でないから分からない」と、恥ずかしげもなく開き直る近藤に激しい抗議の声が飛んだ。
 近藤は、「『国旗・国歌』を拒否する先生に教えられた生徒が、サッカー会場などでただ一人拒否するような状況に追いやっていいのか」と、一度だけ自分の信条を正直に吐露した。都教委のめざす教育は、お上に従順な人間の育成であり、横山前教育長のいう「日本人のアイデンティティーの育成」である。「通達」は極めてイデオロギー的攻撃なのだ。

 審査委も開かず、書類の回覧だけで処分を決定

 臼井に対しては、「不当な支配」と処分手続き、処分量定についての尋問がなされた。この間の校長尋問を通じて明らかとなった都教委による「不当な支配」の具体的内容を突きつけて追及が行われた。臼井は近藤以上に偽証を繰り返し、公教育の根本規範は憲法、教基法であることを渋々認め、対策会議ではその検討されていないことを自認した。旭川学テ事件の判決も、「法律家ではないから知らない」などと傲然と言い放った。
 懲戒分限審査委員会の答申にいたる手続きは、不起立者の事情聴取から2時間後に各委員の回覧協議でハンコを押したという。大量処分が入学式への見せしめのため極めて杜撰に行なわれたことが具体的に暴露された。都教委の〈始めに処分ありき〉の姿勢、「通達」が処分を背景とした教職員への恫喝であったことがより鮮明になった。
 人事委終了後、7団体共同の報告集会が開かれた。「10・23通達」を事実上打ち破っている被処分者は、近藤、臼井の傲慢で恥知らずな答弁にますます怒りをつのらせ、「改めて怒りを感じる。負けない大きな闘いを」と、新たな決起を誓いあった。
 この日は、日教組や北教組による教基法改悪阻止の国会前座り込み闘争も闘われた。
 「日の丸・君が代」強制こそ、教基法改悪の先取り攻撃だ。処分撤回闘争は、強制の張本人を引きずりだし、被処分者の手によって〈裁く〉までに闘いを前進させてきた。この闘いこそ、教基法改悪阻止の最前線だ。

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●幕張構内事故への不当処分粉砕! 反合・運転保安確立!
        5・16緊急行動に140名超える組合員が決意の結集!

 「幕張車両センター構内事故への不当処分粉砕! 反合・運転保安確立、5・16緊急行動」が、千葉市民会館3階特別会議室において開催され、断固、事故責任を当該の労働者に転嫁する攻撃粉砕に向けて、組合員140名を越す大結集を勝ちとった。

 事故責任の転嫁を断じて許すな

 集会は冒頭、田中委員長が登壇し、「4月6日幕張構内脱線事故に対して、当局は処分を決定しようという緊迫した状況にある。鉄道で働く労働者である限り、退職までの40数年間、誰も事故を起こしたくないが、ミスや事故から逃れることは誰も出来ない。本当に安全を守って、ハンドルを握っている労働者に対する処分策動には激しい憤りを感じる。これが尼崎事故以降のJRの現実だ。事故には運転士や検修職のミスがからんでいる場合があるが、非難されマスコミに叩かれ家にも居られない状況に置かれるのは労働者だ。処分すればそれで済むのか。絶対に事故責任の転嫁を許してはならない。ATSは43年前から導入されてきたが、構内は放置され続けてきた。その間、構内での脱線事故は何回も発生している。本社は首にしろと喚きたてている。ひとりの仲間を守るためにはストも辞さず、あらゆる手段を使って当該の乗務員を守っていく。安全運転闘争への処分が強行されたが、レールがバタバタ折れる。尼崎事故以降も、羽越線事故で5名の生命が奪われた。その中でハンドルを握っている。今日のビラ配りにも当局は、乗客に不安を与えるとして中止要請をしてきた。レール破断などを放置している当局にこそ責任がある。今日の闘いを期して反合・運転保安闘争を強化する。今週・来週が勝負であり、不当な処分は絶対に許さない!」とあいさつを行なった。

 安全対策の不備は事実明らか!

 続いて、川崎執行委員より、団交報告が行なわれ、幕張構内について、主要な箇所にATSを設置する。作業実態については今後調査するということが確認された報告があり、事実上安全対策の不備を認めざるを得ない状況に追いつめたことが報告された。

 芯から問われる原点の闘い!

 基調提起として長田書記長より、「事故という問題は他人事ではない。事故を起こした組合員を守らずしてどうするのか? 反合・運転保安闘争が芯から問われている」と口角泡を飛ばした決意が述べられ、今回の事故の要因となっている構内の問題について事実が明らかにされ、ストも辞さずいつでも闘いに起ちあがれる準備体制の構築が提起された。

 重処分策動を粉砕する先頭へ!

 集会は、最後に幕張支部・山田支部長、当該の福田さんが登壇し、「構内脱線事故について、当局は不当な重処分を押しつけようとしている。3年前の12月の労働安全衛生委員会でATS設置を求めてきた。その経過を団交では議事録にはのっていないなど言ってきたようだが、労安委員の構成から、その案件は出してあることを確認している。とぼけることなど出来ない。また東労組の処分を煽るやり方も断じて許されない。メール解雇での対応に見られるように、どちらの組合が正しいのか平成採の労働者もわかってくれると思います。幕張は福田さんを守って先頭に起って闘う!」と、まなじりを決した決意が表明された。
 集会後、千葉支社抗議行動、千葉駅頭での宣伝活動を展開し、構内への安全対策が放置され続けてきた実態を社会的にも明らかにし、重処分を策動する東日本当局に対して怒りの抗議を叩きつけてきた。いまこそ船橋事故闘争から続く動労千葉の反合・運転保安闘争の真価が問われている。全力で処分策動を粉砕しよう。
 大失業と戦争の時代に通用する新しい世代の動労千葉を創りあげよう!(日刊動労千葉6249号より転載)

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●安全運転闘争への不当処分撤回、安全確立に向けた闘いの禁圧を許さない署名運動へのご協力のお願い

 動労千葉は、今年3月10日から18日まで、運転する各線区の最高速度を抑える、無理な回復運転はしないなどの安全運転闘争を実施しました。これは、尼崎事故や羽越線事故、レールの破断が多発するなど、JRの安全が危機に瀕している状況に対し、抜本的な安全対策を求める行動でした。
 ところがJR東日本は、この行動を「運行管理権を奪う違法争議」と称して、職場に「警告書」を掲出するとともに、動労千葉の組合員が運転する列車の運転席に監視・現認のために2人の管理者をはりつけ、事後には、組合員を「事情聴取」に呼び出して不当処分を強行しました。出された処分は、本部役員が戒告(一時金10%及び昇給カット)、現場の組合員は厳重注意でした。
 私たちは、昨年の尼崎事故の後にも、同様の惨事がいつ起きてもおかしくない現状を訴えて百日間にわたる安全運転行動を行い、数百箇所のレール交換を実現するなど、大きな成果をかちとりました。しかし、JR東日本は、これに報復的な処分をもって臨み、今回は、一度処分したにも係わらず再び繰り返したことを理由として、処分の量定がエスカレートされています。
 これは現場から安全確保に向けた声をあげることそのものを一切禁圧しようとするものです。また、労働組合の争議権、団結権をふみにじる行為です。
 鉄道輸送業務にとって、安全の確保は最大の使命です。また私たちにとって反合理化・運転保安確立の闘いは、労働組合としての原点をなす課題です。絶対にゆずることはできません。
 また、私たちは、尼崎事故1周年の4月25日、事故発生時刻(9時19分)に、107名の犠牲者への追悼、安全を軽視するJRへの抗議、二度と同じような事故を起こさない決意を新たにする思いを込めて、汽笛吹鳴行動を行ないました。ところがJR東日本は、このささやかな行動に対しても、「かかる行動は勤務時間中の組合活動にあたるとともに、お客さまに迷惑をおかけする……厳重に対処せざるを得ない」と称して、再び2名の管理者をはりつけて監視し、処分を発令しようとしています。
 さらには、安全対策の強化を求める駅頭でのビラまき行動に対してまで、JR東日本は「お客さまの信頼をいたずらに損ね、当社の信頼を失墜させる意図をうかがわせる」と言って、組合に中止を申し入れています。
 そればかりか、保線職場で働く国労の組合員が、週刊誌のインタビューに応えて線路保守の危機的現状を率直に語ったことまで処分したのです。理由は「勤務時間外に雑誌のインタビューに応じ、会社の信用を傷つけた」というものです。まさに本末転倒、言語道断の不当処分です。
 4月6日、幕張車両センターの構内で、列車の入換中に脱線・衝突事故が発生しました。本線上ではなかったため幸いにして怪我人はでませんでしたが、JR東日本は、関係した現場の労働者への重処分をもってこの事故を処理しようとしています。しかしこの事故は、安全対策を全く置き去りにし続けてきたことの必然的な結果に他なりませんでした。車両基地の構内は、永年にわたる組合からの要求にも係わらず、「費用がかかる」という理由でATS等の保安装置も全く設置せず、運転士の注意力だけによって、安全が確保されているのが現状なのです。私たちは今、運転士ひとりへの事故責任の転嫁を許さないために、全力で新たな闘いに起ちあがっています。
 今、JRの職場は、こと安全問題に関してはまさに異常な戒厳状態です。「絶対に現場から声をあげさせるな!」というのです。安全よりも組合憎し、安全の確保ではなく危険の隠蔽。これがJR東日本の姿勢です。しかしそれこそ、安全を崩壊させ、再び尼崎事故を繰り返す行為です。そしてこれはJRにおける安全がいかに危機に瀕しているのかを逆に示すものです。
 どのような攻撃を受けようとも、運転保安確立に向けた闘いをここで止めることはできません。
 民営化ー規制緩和政策によって競争原理が野放しにされた結果、「安全の崩壊」が社会問題となり、他方では貧富の差が止め所なく拡大するなど、社会のあり方そのものが揺らいでいます。根本をたぐれば、同じ原因に突きあたります。私たちは、今後もこうした現実と闘い続ける決意です。
 以上の趣旨をご理解頂き、表記署名へのご協力を心よりお願い致します。
     ※署名用紙は、動労千葉のHPからダウンロードできます。

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●4・24山手線・埼京線全面ストップの重大事故
          「闘いなくして安全なし!」を貫ぬこう

                            国労共闘 吉野元久

 4月24日、JR高田馬場駅付近で大船発大宮行き普通列車が「異常な揺れ」で緊急停止し、以後約半日間にわたって埼京線・湘南新宿ラインと山手線が全面ストップするという重大事故が発生しました。「尼崎事故1周年」の前日に起こったこの事故に対して、国土交通省は「現政権を潰す気か!」とJR東日本清野新社長を罵倒したと言われている。
 事故は、JRが請け負った都道の拡幅工事が原因です。鋼製エレメントに生コンクリートを注入した際、誤って漏れたコンクリートによって路盤が押し上げられ、最大6・6センチも線路が隆起したのです。運転士のとっさの判断で緊急停止し、大惨事はまぬがれましたが、「これがもしカーブだったら確実に脱線していた」という重大事故でした。
 この線路下の道路拡幅工事は、「JES工法」(Jointed Element Structure)と呼ばれる工法で行われていました。特殊な継ぎ手で鋼製のエレメントを繋ぎ合わせてコンクリートを注入し、横圧を分散するもので、「安い・早い・安全」をうたい文句としてJR東日本が開発した工法です。「価格競争力を高める」ための「コストダウン」が目的でした。
 この工法による相次ぐ事故にもかかわらず、5月9日の記者会見で清野社長は、「工法が間違っていたとは思えない。なぜコンクリートがあふれ出たのか社内で検討中」と居直りました。2月20日山手線新橋―浜松町間で、4月21日にはJR青梅線で同様の事故が起きました。いずれも事故原因を「路盤陥没」と発表しました。JR東日本は、その原因を隠し通そうとしたのです。まさに「安全」をかえりみないJR東日本の経営姿勢を浮き彫りにしたものです。
 今回の事故は、国鉄分割・民営化の当然の帰結です。「構造改革」をかかげる小泉政権のもとで、国土交通省は安全の規制緩和を強行し、JR東日本はこれにそって「ニューフロンティア21計画」を実施してきました。「設備メンテナンスの再構築」など保守部門全般の大合理化・外注化=丸投げ委託を大々的に進めました。その結果、鉄道事業者としての最低限の運行技術さえ解体してしまったのです。
 これまでJR東日本は、尼崎事故にたいして「あれは西の問題。わが社の安全対策は万全だ」と豪語してきました。最近では、「尼崎事故1周年」を前に安全運転行動に立ち上がった動労千葉にたいして、不当極まりない懲戒処分の攻撃を加えてきました。
 問われているのは労働組合の闘いです。闘いなくして安全は絶対に守れません。動労千葉は、レール破断など鉄道の安全崩壊を弾劾し、反合・運転保安確立を訴えて闘いぬいてきました。今春闘では、反合・運転保安のストライキに立ち上がり、「安全問題」というJR体制最大の矛盾=弱点をとことん突きまくって闘いました。反合・運転保安闘争に立ち上がった動労千葉の闘いは、1047名闘争の勝利をもぎとる絶対不可欠の闘いです。
 ところが国労本部は、「責任追及ではなく原因究明を」なる東労組と同じスローガンをかかげ、安全無視のJR資本と徹底して闘うのではなく、逆に「労使関係の正常化」を宣言しています。国労西日本本部に至っては「労使の信頼なくして安全なし」と公言してはばかりません。
 今こそ国労本部を打倒し、何としても闘う国労を再生させましょう。その勝利の道筋は、国鉄1047名闘争と反合・安全輸送体制確立の闘いを一体化し、職場から闘いをまきおこして闘うことです。5・27臨大闘争弾圧への協力・加担・踏み込みを徹底追及し、国労再生と改憲阻止決戦の先頭に立って闘うことです。ともに闘おう!

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●全逓加古川分会の要員要求の取り組み

                       全逓加古川分会長  江 渡  績

 執行委員の提案から始まった取り組み

 加古川分会の要員要求の取り組みは、集配分会選出の永井執行委員の『3月36締結時に分会で要員要求を出してみては?』の提案から始まりました。郵政の36交渉は初めは1カ月毎でしたが、やがて2カ月に1度となり、2年前(?)からは年間締結となりました。交渉毎に当局の協約違反等を追及して、それなりに労働条件の低下を防いできた36交渉ですが、1年に一度の3月中旬の交渉のみとなりました。支部と分会との結合を希薄にさせる団結破壊攻撃そのものです。永井執行委員の提案はその年一度の時に、分会要求書を提出してはとの提案でした。

 役員会議と「躍動』による組織化

 さっそく2月下旬の分会役員会議で要求書案づくりに取りかかりました。
 まず叩き台を副窓口の力士書記次長が役員会議(毎月1回昼休みに開催)に提案。活発な討論を経て3月6日付の分会機関紙『躍動」(毎月第1、第3月曜日に発行)427号に要求書案を掲載し、同時にその号で「タダ働きを一掃しよう」と呼びかけました。その日の昼休み、集配分会の全体集会がゆうメイト組合員も参加して43名で持たれました。その場でもさらに追加要求が出され、それを付け加えて夕方には「要員要求を中心とした分会要求書」を当局に提出しました。
 要求書づくりを丁寧に、みんなの意見を反映して作ったことが、それ以降の展開に弾みを付けるものとなりました。折から年度の切り替わりに伴うカード類の書留が多く出されて、特に混合(速達等を配達)の夜間再配が連日破綻していました。同時に日勤と夜間の混合の実態調査も始めました。夜9時頃までには配達しなければならない夜間再配が10時過ぎはざらで、11時を回り始めたことに分会役員の危機感は高まっていました。「このままではいつか重大事故につながりかねない。何とかしなければ」との思いはみんなの思いでした。
 当局は3月14日に回答してきましたが、経費削減の「ケチケチ大作戦」を理由に増員要求にはゼロ回答でした。回答要旨は3月20日付の「躍動」428号に掲載され、食い入るように読まれました。22日の集配分会全体集会には今までで最高の45名が結集しました。

 2時間の分会窓口でとうとう決裂

 怒りと諦めが交錯する中、当局はタウンメール配達のために24日に36の5時間追加締結を申し入れてきました。2・3月間で40時間をオーバーしそうな組合員が少なからずいたからです。ゼロ回答への怒りと盛り上がりを背景に正窓口の東根書記長が2時間の交渉の末、追加締結を拒否する事態となりました。簡単に行くものとタカをくくっていた当局はあわてて支部に泣きつき、不払い労働の一掃と非常勤確保に向けて努力する旨の約束を取り付けて支部は調印しました。正窓口の2時間の踏ん張りは分会の怒りを当局に強く認識させるものとなりました。
 分会では夜間再配の破綻問題を柱にすえて、再度の要求書づくりに取りかかりました。3月25日には松本集配副分会長が2週間の混合実態調査一覧を完成させました。この一目瞭然の一覧表が4月には威力を発揮することとなります。

 4月に再度の要求書提出

 各班の班会議で上がってきた要求をまとめて、4月13日に「夜間再配問題を中心とした要求書」を提出しました。それを「躍動」430号に掲載し「再びゼロ回答なら実態暴露の駅ビラを!」と呼びかけました。駅ビラは角太副分会長の発案です。角太副分会長はこの間の闘争本部長です。「みんなのうねりをどう作っていくかだ」と役員会議で役員を叱咤激励しています。
 当局の回答は4月27日、28日の窓で行なわれました。この窓には1集課長が同席し、ほぼ全ての項目の回答をしました。現場をよく知っている1集課長でないと、組合を納得させられないと判断したのでしょう。窓で実態調査一覧を突きつけられた1集課長は、とうとう夜間混合の1名増員を約束しました。また総務課長は「もう非常勤の賃金単価アップしかないので支社に直接お願いに行く」と決意表明しました。この回答要旨は5月1日付の「躍動」431号に掲載されました。
 翌2日に集配分会全体集会が聞かれました。この全体集会である総務主任から「21時頃とは何時までと当局が答えられないなら、通知葉書の21時頃を消すように要求してくれ」「1時間の超勤発令でも2時間超勤するのは、仕方なしにやっているだけで、職員の方がさせてくれと言って来ると当局は言うが、お門違いもはなはだしい!」と怒りの発言がありました。早くも分会役員を突き上げる発言が出始めました。

 役員会議で成果を確認、班会議へ

 5月12日の役員会議ではわずか1名ですが増員の成果を確認し、駅ビラを見合わせることとしました。そして4人の総分会役員が各班の班会議を開催し、要員要求の取組みを引き続き強化していくことも決定しました。
 現在、連日各班に人って只働きの是正と、引き続き増員要求の取組みへの協力要請を行なっています。分会は1集2集あわせて7班あり、要求実現のためには班レベルでの団結強化が課題となります。「ブツが残る」取り組みとはつまり「ブツが残せる」団結づくりに帰着します。地を這うような闘いですが、ここを避けて要員要求の実現はあり得ません。分会の取組みはこうした段階に入りました。
 現在、どこの職場でも要員不足が叫ばれています。郵政現場は民営化攻撃とそれを先き取りするアクションプラン攻撃、さらにJPU中央の屈服と加担でどこも要員不足が深刻となっています。加古川分会は団結を打ち固め困難と諦めを乗り越えて、要員要求の取リ組みを開始しました。そして取リ組みの中で団結を強化する闘い方を模索しながら進んでいます。「加古川はブツだめ闘争に突入した」と早合点されている方もいますが、ありのままを知ってもらうためにも、そしてみなさんのところでも要員要求に取り組んでいく参考になればと、この原稿を書きました。
 まもなく全国大会、そして集配拠点再編、帰属会社の決定と全逓戦線でも本格的な流動が始まります。この過程で民営化への怒りは必ず巻き起こってきます。その時を信じて、そしてその時を反転攻勢の合図とするために、全国の闘う仲間とともにがんばっていきたいと思います。
(06・5・21)

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●共謀罪を廃案に! いよいよ決戦のとき

                          佐 藤   陽

 5月19日採決阻止の勝利

 5月19日午後に開催された衆院法務委員会で、ごく一部の関係者を除いて、誰もが自民・公明の両党が、共謀罪の採択を強行すると予想していた。前日から新聞、テレビなどもすべて採決を予想していた。
 しかし、民主党の平岡議員の質疑を終えた後、石原伸晃委員長は、たんたんと委員会の閉会を告げ、次回委員会は追って公報で通知すると述べ散会した。傍聴者は意外な成り行きにびっくりした。採決が阻止されたと実感がわくまで数秒を要した。
 小泉は、共謀罪採決を強行した場合の労働者民衆の怒りの爆発に恐怖し、今国会に提出した行革推進法案と、医療制度改悪に関する法案を含めて、民主党や社民党の審議拒否によって国会が空転すると一瞬揺らいだのだ。それが共謀罪採決強行に待ったをかけることになったのだ。
 その後、5月23、24、26日の委員会開催日になっても法務委員会は開かれていない。
 今年の通常国会に入って、与党は3回も採決を強行しょうとした。
 第1回は4月21日に、与党修正案を法務委員会き提出し、同時に採決日を4月28日と公言したが、民主党の修正案提出で阻止された。
 さらに、5月に入ると、9日、12日の両日ともに採決を構えたが、採決できなかった。
 そして、今回、最大の力を入れた採決も見送りとなり、次の方針がないままに、1週間、まるで宙ぶらりんの状態になったのである。

 共謀罪が新聞の1面トップに

 共謀罪採択が阻止された翌20日の朝日新聞の朝刊は、1面トップに共謀罪に関する記事を載せ、「共謀罪成立は困難」の見出しをつけた。
 共謀罪に関する記事が1面トップを飾ったのは初めてである。
 「現代の治安維持法」のレッテルを貼られた共謀罪は、とうの昔から1面トップで報じられるべきであった。共謀罪反対闘争を始めて4年、やっと朝刊の1面トップを飾る、長い長い闘いの成果であった。
 共謀罪がマスコミに取り上げられるようになったのは昨年からであった。大手紙だけでなく、地方紙を含めて新聞に記事がでるようになった。
 月刊誌、週刊誌にも頻繁に登場し始めた。
 今年になると3月頃からテレビで取り上げられるようになった。
 さらに、インターネット上では各団体のホームページへのアクセスが爆発的に増えていった。
 日本弁護士連合会、憲法と人権の日弁連をめざす会の活動、単位弁護士会声明、刑法学者の声明など法律家の活躍。独自の映画を作成したフリージャーナリストの活発な活動。音楽家の働きかけ、地方議会での反対または慎重審議を求める決議などが相次ぐと、日を追って共謀罪反対の声が強まっていった。
 また、労働者、労働組合の組織ぐるみの取り組みが立ち遅れている中で、国会請願署名運動が、労働組合の中に深く入り込み、開始してから6カ月もたたないうちに25万筆にも達しようとしている。
 盗聴法廃止署名は約2年かけて23万筆であったことを考えると、これをはるかに上回るペースで、いまなお署名数は増え続けている。
 そして、労働者の決起も開始されている。
 JNNの世論調査によると、今国会成立に「こだわるべきではない」に賛成79%、ヤフーでは共謀罪反対62%、賛成22%。ライブドアのニュースによると、修正案を支持しないが71・42%と、共謀罪反対の世論が圧倒的に上回っている。
 国会周辺には、全国から、200名、300名が自主的に自発的に集まってきている。特に市民活動家が、共謀罪の画板を自分でつくってきている。
 国会傍聴希望者も多数集まり、一度に16名しか審議室に入れないという石原伸晃委員長の制限にもめげずに、制限の2倍、3倍の傍聴者が殺到している。
 共謀罪反対闘争の軸には常に破防法・組対法に反対する共同行動が座っている。圧倒的多数の与党と対決し、不屈に闘い続け、日々勝利している。法案の成立を許していない。闘えば勝てる実践を日々繰り返している。

 共謀罪は現代版治安維持法だ

 合意した、会議で計画しただけで実行行為がなく、犯罪の結果も被害もないにもかかわらず、共謀を処罰する共謀罪は、戦前の治安維持法を上回る治安法である。
 共謀しただけで犯罪となる現存する法律は、内乱罪や競馬などギャンブルの禁止など、ごく少数が例外的に存在しているだけである。
 国際条例にあるからと、600を超える法律を網羅することは、現代の日本の法体系を根本からひっくり返すものだ。
 また、与党は、対象団体を「犯罪組織」に限るとの修正案を示した。
 しかし、「犯罪組織」とは何か。1から10までまるまるの犯罪組織はどの位存在しているのか。
 法務委員会で杉浦法務大臣は1億2千万の国民が対象ではない、対象はたかだか数万人だと発言している。
 この数字は、いわゆる「暴力団員」を指しているように見える。もしこのように絞ったとすると、その団体、すなわち共謀しそうな団体を監視することになるだろう。犯罪を未然に防ぐために想定した団体を監視するのが共謀罪の狙いだ。
 また、修正案には、「労働組合その他の団体の正当な活動を制限するようなことがあってはならない」と記されている。
 「正当な」とは何か。誰がそう判断するのか。警察であり、裁判所である。
 われわれの常識から言えば、正当な労働組合とは、労働者の利益のために必要な場合は、実力をもって闘う労働組合である。
 さらに、杉浦法務大臣は、民主党議員の「法務委員会における質疑は裁判所を拘束するのか」という質問に「拘束されない。が、重要な資料となる」と答えた。要するに裁判官が拘束されるのは、あくまでも法文そのものというのである。共謀罪は無限に拡大解釈できる悪法であり、治安法だ。

 共謀罪を永久に廃案にしよう

 共謀罪法案が今国会で成立するか、どうなるか、現状ではまったく分からない。
 国会会期の延長は、1週間程度の小幅とされているが、果たしてそうなのか。
 石原法務委員長は、5月26日に民主党に対し、与党と3名づつの弁護士などによる実務者で修正を協議する協議会をつくろうと提案した。
 民主党はこれを受けて、「何時間で結論を出すなどと言えるものではない」と述べ、期間を区切ろうとする与党と対決している。
 しかし、与党はなんとか民主党を取り込み、裁決の強行を避けたい一心だ。
 この協議がどうなるのか、まったくわからない。
 協議が整えば、衆院の採決は簡単だが、それでも参院での成立はまともに審議しようとすれば、もはや不可能だろう。協議が決裂すれば、民主党は廃案を要求するだろう。与党はどうするのか。共謀罪法案を棚上げしたまま、ほかの法案を審議するのか。
 5月28日に始まる週の1週間が重大な岐路になると考える。
 闘う仲間と共同で闘おう。
 6・10「1億2千万共謀の日」で全国で共謀反対を共謀し闘うのである。
 また、提起されている6月13日、3野党による大集会(日本教育会館)の成功のために全力をあげていくことである。交流センターの労働者はいま一番ホットな階級闘争の現場である国会に行こう。

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●やってられないぜ! ―悪化する労働者の現状
                     第11回 入札制度での労働条件

 4月になって近所の市立図書館に行ってみると、雑誌コーナーの棚にいくつも同じ文句の紙が貼り付けてある。「○○号をもって購入中止しました。」文教予算の削減で雑誌に予算がまわせなくなって何種類もの購入が止められているのだ。
 また、4月をもって図書館の臨時職員が一斉に替わっていて、作業手順にまだ慣れていないからか貸出手続きに時間がかかり、日曜日の繁忙時間帯にはカウンター前に順番待ちの列ができていた。3月までの見慣れた臨時職員がひとりも残っていないのには驚いた。図書館臨時職員の例は、市の直雇用であるが、官公庁の委託業務では入札制度のなかで雇用は民間会社である。
 建物の管理請負の業界(以下、「ビル管業界」と略す)においても、官公庁物件で3月末に業務委託契約が終了した、ということを理由に雇い止めが多く発生していることはよく耳にする。官公庁の入札制度のもとで、専門性や恒常性のある多くの業務がどんどん単年度の委託契約にされ、その結果、非正規化された雇用条件で働く労働者は毎年3月が近づくと不安な気持ちにさらされる…なんて、やってられないぜ!

 ビル管業界の雇用不安定性

 官公庁物件を扱うビル管理会社は、2〜3月は入札のために多忙をきわめる。「お付き合い」も含めて札を入れるのは、本気で受注する気のある案件の数倍か、それ以上である。
 「事実上の談合」=札合わせが行われ、現状の会社が継続して業務を行うように仕組む場合も多いが、業務拡大を狙った会社が現れれば、現状の受託金額を下まわった金額で入札してくることになる。そしてもし新規会社が受注すれば、既存の会社はその業務から撤退することになり、これまで現場で働いていた労働者は既存の会社の人間としてはその現場にいられなくなる。そのため、こういう現場の労働者に対して、3月31日まで限りの労働契約を毎年、1年ごとに延長していくということもビル管業界では横行している。
 新規会社がその現場の労働者を「引き取る」ケースもあるが受注金額は下がっているのだから、待遇がよくなることは難しい、・・どころか、「新規採用」扱いとなり、有給休暇や一時金などで不利になることも珍しくはない。
 団結して職場を守るのが労働者の原則的立場であるが、労働者が団結して組合を結成したがゆえに、会社がわざと落札をしないような金額で札を入れて職場を放棄・破壊することすらあって、団結を形成・維持するのが難しい環境であるのは否めない。
 それを打ち破るには、期間を3月31日までに限った1年ごとの有期雇用にさせないことと、労働者の団結が肝心である。

 団結を守った常南交通労組の闘い

 入札案件の官公庁相手の業務の職場でも団結を守って闘うことの展望を示しているのが、常南交通労組の闘いである。@団結の維持・強化 A地域での共闘 B業務の意義の深化において重要な闘いを切り開いている。
 常南交通株式会社は茨城県下の県立養護学校の送迎バスの運行を行っている。02年に入札問題が起こった当初、組合においても論議したが、「県が決めることだから闘っても無理だ。労働組合は車が無くなったら組合員の退職金を上積みするために交渉していく」程度のことしか考えつかなかった、という。運動を作っていかなければならないということはわかっていても、どのようにしたらいいか悩んでいた。やがて組合員との論議のなかから、署名運動を編み出し方針とした。
 署名運動は、これが職場と仲間を守る運動なのだと理解したときに組合員みんなが組織者となり、創意工夫した運動へと飛躍した。ある一時期を境に署名運動は爆発的に発展していった。そしてついに1万6千000名の署名を集めきった。この力を県庁行動という大衆行動方針につないでいった。05年2月23日の会社との団体交渉では100名たらずの組合組織で78名の結集となった。
 05年3月7日の入札当日は全組合員が固唾をのみながら結果を待っていた。しかし、K養護学校の送迎業務を失ってしまった。だが、ここから組合が大きく変化を遂げていった。ただちに組合としての態度を決定し、団結を呼びかけた。最後の最後まで、生活を守っていく方策を講じて団結のなかでの年度越えを闘いとった。

 保護者・教師との連係

 常南交通労組は、保護者・教師と乗務員という具体的、日常的な関係性を媒介に、入札問題を共同闘争のテーマにした。当該組合だけの力で運動を作りだしたのではない。保護者、教育労働者との結びつきの中から多くのことを学び、そして自らが飛躍し、それに保護者、教育労働者が応えていくという循環の中で運動が発展した。児童・生徒、保護者とともに闘うためには、その置かれている立場を理解することから始め、学びながら共に行動してきた。04年8月の署名提出行動では保護者が前面に立って、県に対して怒りをぶつけた。それに続いて組合や地域の仲間が怒りをぶつけた。それは糾弾集会になった。
 その後も運動は発展している。闘いを通して強い絆が結ばれて、実に素晴らしい陣形として作り出すことができたのだった。

 障害者差別との闘い

 05年4月からK養護学校の送迎業務は常南交通に替わってI観光の運行が開始されたが、必ずや破産していくだろう。なぜなら、入札そのものが不正に行われ、県の担当者が逃亡し責任を回避しようとしているからだ。その結果、一切の矛盾がバスを利用する児童・生徒とその保護者にしわ寄せされるのである。県行政による障害者差別事件といっていい。
 資本と闘う姿勢を持っているからこそ、差別的な状態と向き合うことができるのだが、入札価格を安くしさえすれば業務を拡大できるという姿勢だけでは差別が横行する。
 県下では来年4月に「T校」が開校することが決まっているが、知的と全身性の児童・生徒が混合の学校で、送迎バスも混合乗車になろうとしているが、このことの問題は大きい。とりわけ通学のバスの中で混合にするということは、どういう意味をもつのか?
 現在全身性の子どもの中には、車いすでヘッドレストを固定することによって、かろうじて気道を確保し呼吸している生徒や、骨格が脆弱でわずかばかりの衝撃で骨折する生徒など様々な障害をもちながら通学している生徒がいる中で、元気のいい知的の生徒が何の悪気もなく、挨拶のつもりで全身性の生徒に触れたことで生命の危険にさらされる可能性まではらんでいるのだ。結局、知的の生徒が犯罪者にしたてられようとしているとさえいえる。このような状況下でバス乗務員として2人ないし3人で責任を負わされようとしている。
 しかもこの送迎業務の入札は、激しい金額の競争となる。経営の危機さえはらむ金額の競争になる。結局は人件費を一番削った業者が落札するということにならざるを得ない。金額が安ければ、子どもたちが危険にさらされようが関係ないというのが規制緩和・競争入札の本質なのだ。
 この混合方針は実は文科省の方針である。障害者自立支援法と同じく全ての障害児を一本化する方向での再編が進められるということだが、こんなことは労働者として、人間として許せるものではない。
 労働者間に分裂をつくりながらこうしたことが進められようとしても、労働者階級の団結で反撃するところに展望の鍵がある。(礫太)

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ひめじょおん−女性部から

       教基法改悪を許すな!

                  女性部副部長 陶山喜代子

 教基本改悪案が国会に上程され、小泉政権は今国会で成立を狙っている。日教組は現場からの怒りに押され、職場集会やビラまき、全国集会・国会前座り込みを指示した。
 教育現場のみならず、全国民にかかわる、国の行く末を決する問題なのに、教育現場や保護者・国民の意向には一切耳を傾けていません。国会に押しかけ、全労働者の闘いで廃案に追い込もう。

家族イデオロギーの強化
 教基法の改悪の問題点は、多々あるが、ここでは女性にかかわる部分について取りあげる。
 現行第五条の(男女共学)に関する部分が政府案も民主党案も削除されている。
 【第五条 男女は互いに敬重し、協力し合わなければならないものであって、教育上男女共学は、認めなければならない。】
 これは、現憲法に定める男女平等に関して、男女共学を定めているものだ。しかし政府は「現在では男女共学の趣旨が広く浸透するとともに、性別による制度的な教育機会の差異もなくなっており、男女の共学は認めなければならない旨の規定は削除することが適当である」として削除した。
 しかし、日本社会の現状は本当にそういえるだろうか。男女平等教育どころか、教育を通して性別役割分業意識や職業における性別分離の構造が再生産され続けているのが現状だ。一方では「性教育」や「男女共生教育」の実践に対して、激しい非難・攻撃も起こっている。
 さらに関連して、第十条(家庭教育)、第十一条(幼児教育)、第十三条(学校、家庭及び地域住民等の相互の連携協力)を新設している。
 子供の権利条約(第十八条)で「国家は家庭教育に介入しない」と原則を示しているように、国家の役割はそれが充分に行われる環境作りに限定されるべきもの。しかし国家が家庭の「責任」や「家庭教育の役割」を規定し、それを実践することになれば、まさに国家が一定の教育方針や思想を市民一人ひとりに強制する契機になるのだ。
 教育理念として「郷土や国を愛する心」や「日本の伝統・文化の尊重」といった国家主義が、子供だけでなく、家庭や親・地域住民にまで強制されることになるのだ。さらにその連携・協力によって、地域住民による学校教育の監視や地域住民同士の監視が行われれば、かつての隣組制度のように、国家主義と異なる価値観をもつ人間は「非国民」とされていく。こうして社会全体を戦争体制づくりに組み込もうとしているのだ。
 5月15日、民主党が政府案に歯止めをかけると、「日本国教育基本法案要綱」を決定した。民主党案は、前文に「日本を愛する心の涵養」を掲げるなど政府案以上に悪質なものだ。

先行する「心のノート」
 02年に、道徳の副教材として『心のノート』が全小中学校に送付された。著者名も出版社名も記されておらず、ただ「発行 文部科学省」とのみ書かれている。事実上国定教材である。
 『心のノート』はパステルカラー調で書かれ一見どこが問題なの?と思わせる。その内容は、「現存する秩序やルールを素直に受け入れて感謝の心を持つべきである」と、物事に対する懐疑精神や社会に対する批判精神にはふれられず、「従順さ」のみが重要視されている。さらに道徳や愛情は家庭から学校、地域、郷土へと同心円上に「自然に」拡大していき、最終的には「国」や「日本」へと行き着く展開になっている。『心のノート』は「日本人」の「心」をつくる教材なのです。『心のノート』の使用は、配布状況調査の形で強制が進んでいる。「日の丸・君が代」強制と同じだ。いま、「郷土を愛する心」「公共の精神」を書き込む教基法改悪がなされれば、国家による心への介入がいっそう本格的に進むことになるのだ。教基法改悪絶対廃案あるのみだ。

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●書評 『自民党新憲法草案との対決』

 自衛戦争を認めていいのか

 国会闘争の武器として、そして日教組、自治労などの改憲勢力化=「平和基本法」を粉砕する職場討議資料として、『自民党新憲法草案との対決』(鈴木達夫弁護士著/労働者学習センター・ブックレット/400円)の活用をすすめたい。
 今国会は完全に改憲決戦への本格的突入である。現代の治安維持法=共謀罪、戦前の教育勅語への復活=新教育基本法(教育基本法改悪)、そして、クーデターを狙う「憲法改正国民投票法案」を強行しようとしている。戦後の平和と民主主義体制を解体し、「戦争のできる国」へと大転換させる攻撃である。小泉政権は、どんづまりの危機にかられて、6月18日までの会期を延長しても、この三つの法案を、共謀罪の衆議院法務委員会採決を突破口に強行しようとしている。しかし共謀罪に対する怒りが全国に拡大し、それを背景とした国会闘争によって阻止(5月19日)している。いまこそ国会闘争にたちあがろう。
 次に小泉政権は、改憲を強行するために、連合―日教組・自治労・全逓、国鉄を改憲勢力化しようとしている。日教組、自治労などを改憲勢力化することなしに改憲は不可避である。
 その内容の核心こそ、自衛軍容認方針(連合中央の安全保障基本法。日教組、自治労は平和基本法)である。自民党の新憲法草案では、現憲法の9条2項にある「戦力不保持」と「交戦権否認」を削除して、そこに「自衛軍保持」を明記している。
 この「自衛軍=防衛戦争を容認していいのか」の、9条2項をめぐる決戦こそ改憲決戦の核心である。同時に日教組、自治労の改憲勢力化を許すのか否かの決戦である。このブックレットは、鈴木達夫弁護士が、日弁連内の改憲阻止闘争をつくりあげる実践を通して、「自衛軍容認=国家防衛権は、結局侵略戦争の口実である」ことを非常にわかりやすく打ち出している。
 そして、日本共産党の「日本国家を防衛する防衛戦争を認める」を徹底批判し、社会民主主義者の非武装中立論をのりこえる9条2項決戦論を提起している。連合の改憲勢力化を阻止する闘いの必読書としてぜひ活用してほしい。
 そして、憲法とは何かについて、「政治と歴史、ずばり言えば革命の所産である」「国家権力がいかに人民を統治するかという統治形態、権力と人民の基本的関係」と、革命の問題であると提起していることが重要である。そして、1789年のフランス革命―ブルジョア革命と、1917年のロシア革命―プロレタリア革命を具体例としてあげて憲法を論じている。改憲問題を、革命とクーデターの問題としてつかむことが決定的である。
 改憲阻止闘争は、連合の改憲勢力化を許すのか否かにかかっている。このブックレットは、動労千葉の労働者学習センターが開いている労働学校における05年12月の講演をもとにしたものである。このブックレットを、すべての闘う労働者に、とりわけ日教組、自治労の労働者にすすめたい。労働学校もこの4月から第6期が始まり、青年労働者を中心に毎回熱気に満ちた学校として、マルクス主義を主体化している。この労働学校への参加も呼びかけます。

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●労働ニュース(06年4月16日〜5月15日)

メーデー4万4000人
 全国30都県で29日、連合主催の中央メーデーが開かれた。東京・代々木公園の中央大会には、約4万4千人が参加し、高木剛会長は「格差社会がもたらす負の側面から脱却するため、できることから実行していかなければならない」とあいさつ。式典後も正社員と非正規社員の賃金や待遇などでの格差解消をめざす集会を開くなど、「脱・格差社会」を強調したメーデーとなった。

 改正案を閣議決定 教基法
 政府は28日午前、教育基本法改正案を閣議決定した。午後、国会に提出する。改正案は「公共の精神」や「伝統と文化」を尊重する態度を身につけることを求めており、審議の焦点は、いわゆる「愛国心」の表現や、教育における「不当な支配」の排除に関する条文などだ。

 指導要領改定に影響も
 28日の閣議で決定された教育基本法改正案が成立すれば、中央教育審議会で進む学習指導要領の見直し作業にも影響がでることになりそうだ。文部科学省は、改正案の理念を踏まえた制度改正などを「積極的に推進する」(同省幹部)方針で、成立後ただちに教育政策の基本的方向、目標などを示す教育振興基本計画の策定作業に入る。

 子が病気でも「仕事休めぬ」
 子どもが病気になっても仕事を休めにくい実態が、夜間や休日の小児救急外来に訪れた家族を対象とした厚生労働省研究班の調査でわかった。我が子の病気を理由として、休んだり早退することに、職場の理解・協力を得にくいと感じている人は3割を超え、不満や不便を感じていない人を上回った。

 パート加入義務拡大
 政府は13日、厚生年金の加入が義務付けられるパート労働者の範囲を大幅に拡大する方針を固めた。労働時間が「おおむね週30時間以上」の加入基準を、「週20時間以上」に広げる案を軸に検討する。「再チャレンジ推進会議」(議長・安倍官房長官)が5月中にまとめる中間報告に盛り込み、09年をめどに実施を目指す。

 伸びる労働時間
 景気回復で企業の従業員の残業時間が増えている。厚生労働省の調べによると、時間外労働(残業)時間が労働基準法の上限である年間360時間を超える事業所は7・3%になり、前回調査(02年度)を0・3P上回った。企業が人員をスリム化した結果、従業員一人あたりの仕事量も増えており、労働時間が長くなる傾向が鮮明になっている。

 勤め人の6割「収入格差拡大」
 働く人の6割が「5年前より個人の収入の格差が広がっている」と感じていることが連合総合生活開発研究所(連合総研)の調査で分かった。景気回復にもかかわらず、失業の不安を感じる人が依然5人に1人おり、連合総研では「非正規雇用など不安定な雇用の広がりが、働く人全体の意識に影を落としている」と分析している。

 派遣社員 厳しい実態
 厚生労働省が実施した派遣労働者に関するアンケート調査で、派遣労働者の賃金が平均月額20万6000円であることが分かった。賞与・一時金の支給も約4割にとどまっている。同省がまとめた05年の事業所規模5人以上の平均給与総額は月額33万4910円で、派遣労働者の賃金水準の低さが浮き彫りになった。

 職場復帰を支援
 人事院はストレスや過労などで心の健康(メンタルヘルス)を損ねて休職中の国家公務員の職場復帰を支援する体制を整える。心の病気で休職する公務員が増えているためで、公務員削減を進めるのに合わせ、きちんとした対策が必要との判断がある。

 子どもほしいけど…「増やさない」53・1%
 内閣府は27日、「少子化社会に関する国際意識調査」を発表した。ほしい子どもの数より実際の子どもの数が少ない人に聞いたところ、日本では53・1%が「今より増やさない」と回答した。理由は「子育てや教育にお金がかかりすぎる」がトップだった。

 『心の健康』対策で指針
 労働者のメンタルヘルス(心の健康)対策で、厚生労働省は企業に職場の実態把握や研修制度の整備などを求めた新たな指針を作成した。メンタルヘルスに配慮した取り組みを進めることで、労働者の心の不調を未然に防ぎ、休職後でも復帰しやすい職場づくりを目指す。

 公務員の分限免職 厳格適用を検討
 政府は11日、勤務成績や能力に問題がある国家公務員を解雇する分限免職を厳格に適用する方向で検討に入った。分限は国家公務員法に基づく処分だが、労働基本権のない公務員の身分に配慮し、省庁は行使に消極的。人事院が中心になり、今年夏にも勤務態度が改善しない職員の処分の判断基準を作成し、「ぬるま湯体質」との批判をかわしたいかんがえだ。

 「5%減」後も削減継続
 経済財政諮問会議の民間議員は27日に開く会合で、公務員の定員を11年度以降も継続して削減するよう提案する方針を固めた。政府は11年度までに公務員を5%純減する計画を定めているが、それ以降も削減を続けて人件費を抑制する狙いだ。国家公務員給与の水準を定める人事院勧告制度の見直しも求める。

 厚生・共済年金一元化
 政府は28日の閣議で、会社員の厚生年金と公務員・私学教職員の共済年金の一元化案を盛り込んだ基本方針を決定した。来年の通常国会に制度改正法案を提出する方針だ。

配置転換3000人規模
 中央省庁の垣根を越えた人員の配置転換を円滑に進めるため、政府は5月下旬にも国家公務員雇用調整本部を内閣に新設する。政府は今後5年間で国家公務員定員約33万人の5%(約1万6千人)以上の純減を目指す方針。

国立大にも年俸制
 北陸先端科学技術大学院大学(石川県能美市)は、今年度、研究ポストの一部に年俸制を導入した。文部科学省によると、年俸制はこれまで、企業からの寄付講座などのポストにみられたが、国から受ける基幹的な予算である運営交付金を使って国立大学が年俸制を導入するのは全国初めて。

 職員削減6万人
 都道府県の職員が、10年4月までに少なくとも計約6万人減る見通しとなった。総務省が、行財政改革の方針を盛り込んだ都道府県の「集中改革プラン」を集計した。

 

 労働日誌(06年4月〜5月)

4月17日
金融庁から業務停止処分を受けたアイフルは成果主義賃金を撤廃した。

4月21日
若者向け雇用制度(CPE)で揺れたフランスで、CPEと同様、解雇時に説明が入らない雇用契約(CNE)が新規採用の1割を超えていることがわかった。(CNE=採用から2年までは説明なく解雇できる雇用契約。CPEのような年齢制限はないが、従業員20人未満に限定。2年たてば無期限契約に変更される)。

4月25日
女性であることを理由に昇給や昇進で差別されたとして、住友金属工業(大阪市)の女性社員4人(1人は定年退職)が過去の差額賃金や慰謝料など総額約3億4千万円の支払いを求めた訴訟の控訴審が、大阪高裁で和解した。同社が女性労働者の処遇について今後も十分に配慮し、原告に一審・大阪地裁判決が認定した賠償額を1300万円上回る計7600万円を支払うとした和解条項を両者が受け入れることで合意した。

4月26日
最低賃金制度の見直しを検討している厚生労働省の専門部会(会長・今野浩一郎学習院大学教授)は、特定産業ごとの産業別賃金を廃止し全労働者が対象の地域別一本化する最低賃金法改正案について、来年の通常国会を目指すことを確認した。

4月28日
総務省が発表した3月の完全失業率は、約8年ぶりの水準となった前月と同じ4・1%と、改善傾向が鮮明になってきた。これにより05年度平均は、前年度より0・3P低い4・3%と3年連続で改善した。厚生労働省が同日発表した3月の有効求人倍率も1・01倍と4カ月連続で1倍台。05年度の新規求人数は初めて1千万人を超え、過去最多となった。

5月1日
インドネシアの主要労組は5月1日のメーデーに全国で10万人規模のデモを計画している。退職金削減や解雇条件の緩和につながる労働法改正を阻止するのが狙い。ユドヨノ政権下では最大のデモに発展する勢いだ。

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●「池田への暴行」はデッチ上げ − くるくる変わる黒執証言はその証拠

                   国労5・27臨大闘争弾圧 公判報告

 4月19日と5月10日に「国労5・27臨大闘争弾圧」事件の第56、57回公判が東京地裁104号法廷で行われた。
 2回廷で、裁判官交代に伴う更新手続きとして被告および弁護人の意見陳述と、裁判所によるこれまでの証人の証言要旨の陳述が行われ、その後に前々回に引き続き長野地本の黒執証人への弁護側からの反対尋問が行なわれた。黒執は検察側の最後の被害者証人で、終了すると弁護側立証となる。攻守が入れ替わり、被告・弁護側が正義と大義を全面的に明らかにすることになる。

 検事の二つの虚構をつきつける

 56回公判での被告・弁護人の陳述は、前号で紹介された「奴隷の道を拒否せよ」の本とも併せて、この事件全体の構図を見事に明らかにした極めて優れたものであった。この陳述において浮かび上がらせた、検察側が立件の基礎にしている二つの大きな嘘、虚構、デッチ上げについて確認しておきたい。
 その第一は、国労組合員以外の外部勢力が、5月27日の当日の朝に宿舎前に集合し、大会の開催を阻止するために暴力行為をはたらいた、という虚構である。第二は、これを根拠付けるものとして、00年7・1臨大の会場内で、「中核派が闘争団を扇動して、演壇を占拠するなどして」大会を破壊した、というものである。
 しかし、これらの検察側主張は、真っ先に当の闘争団が否定する。いずれも事実をねじ曲げた虚偽、虚構であることは、これまで多数の事実で証明されてきた。後者は4党合意受け入れのために議運が突然、「議事打ち切り、拍手による一括承認」という乱暴きわまりない大会運営を強行したため起きた。前者の検察が暴力といっている身体の接触、もみ合いは、国労本部側の3列縦隊によるビラまき・説得への強引な突進の結果である。すなわち実態・事実はこれら検察の主張とまったく180度正反対のものである。国労本部派が、本来は介入を許してはならない警察・検察と一体となって、同じ国労組合内の反対の意見を排除するため、逮捕・起訴・拘留という弾圧行為を行ったものである。まさに白を黒と言い換えようとするものである。

 「池田への暴行」も検察側の虚構

 検察が逮捕起訴の根拠とした「暴力行為等の処罰に関する法律」(暴処法)は、団結活動を犯罪とするもので、治安維持法と同時に破棄すべき法律である。さらに検事は、この事件では8人の被告は、現場で共謀が成立した共謀共同正犯だと強弁し、何も実行行為がない人まで起訴されている。
 現場で共謀が成立したとするために検察側が唯一主張しているのが、本部派が3列縦隊で押し出して来る以前に、長野地本の池田が一人だけ外に出てきたところで暴行を受け、それを見ていた被告たちに「暴行で大会を阻止する」という現場共謀が成立したというものである。
 このため検察側は被害者として池田本人を、歩道の側から見ていた目撃証人として浅川と黒執を証言をさせた。すでに池田への反対尋問で、彼自身が直前にひざげり受けたというビデオのシーンは、実は池田が橘さんを押しており、全く違う事が明らかになっている。浅川が暴行を見たとい立ち位置からは、複数の人物が邪魔になりまったく見えるはずもなかったなどの矛盾点がすでに明らかにされている。
 前々回公判や今回の公判で黒執は、「暴行があったのは歩道上」と一貫して証言しているが、池田も浅川も「ホテルの通路」と証言しており、決定的に矛盾している。また黒執は「ビデオに暴行が写っている」とビデオを見て検事に供述したが、暴行が写っていない事は検事も認めている。
 さらに黒執は今回の法廷で、「暴行とビデオの画面は、連続ではなく、間があった。訂正して下さい」と証言した。弁護人の「変える理由、きっかけは何か」との問に、まともに答えることができなかった。「検事に言われたからではない」、「自分で気付いた」という。そこで弁護人は「それならなおさら、何かのきっかけがあったのでしょう」と質問しても、口をつぐんでしまった。
 黒執は3点にもわたって「前の証言を撤回する。理由なし」をくり返した「語るに落ちる」とはこのことだ。
 そもそも黒執はもとより、池田も浅川も、松崎被告の暴行について、「池田さんの太腿をけった」「その直後がビデオのシーンだ」と法廷で証言した。しかし、問題のビデオのシーンで松崎さんは、しゃがんだ姿勢からまっすぐ立ち上がってくる動きをしている。この事実は動かない。座っている人がどうやって膝げりをするのか。池田への暴行についての黒執証言は、矛盾に満ち、訂正にも理由はない。逆に、そもそも松崎被告による池田への膝げりはなかったことが明らかになっている。検察側のいう「池田事件」「共謀」は、今や完全に崩れ去っているのである。

 8月から弁護側立証に突入

 今後の公判予定は、5月31日(第58回)、6月21日、7月12日、7月26日と予定されているが、8月22日の第62回からは弁護側立証に入ると予想される。弁護側立証は、中曽根元首相(不当労働行為を奨励する暴言をくり返している)、甘利4党合意座長(労働委員会では証人決定された)をはじめ、国労本部派の酒田元委員長、吉田書記長、そして何よりも4党合意と闘ってきた役員、鉄建公団訴訟の原告団、支援者など多数の証人申請が予想されている。
 この裁判でこそ、国鉄分割民営化と4党合意が国家的不当労働行為であったことが全面的に明らかにされるべきである。会員を拡大し、傍聴席を埋める絶好のチャンスが来ている。これからは攻めに転じる局面である。全力で闘おう。
  (「許さない会」東京南部会員)

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●闘う合同労組 第17回 アサヒアルミ工業分会の闘い

                   沖縄南部(南部)一般合同労働組合

 05年10月から泣Aサヒアルミ工業で不当解雇撤回・原職復帰闘争を求めて闘っています。沖縄県内のアルミ業界では老舗です。創業から30年経ちます。従業員は15名程度です。アルミ関係の工事とリフォーム業を中心とした零細建築会社です。
 私たちの闘いは、2名の不当解雇に端を発し、これとのたたかいのなかで労働組合を結成し、解雇撤回・就労要求の闘いとしてスタートしました。これから労働委員会を舞台とした本番の闘いに突入します。

  100日を越えた就労闘争

 毎朝の会社前の就労闘争は100日を越えました。「負ける訳がない、勝利できる」という実感をつかみました。なぜかというと、クビを切られようが、会社が差し向けたゴロツキに脅されようが労働組合を結成し「職場決起と団結」で闘う原則を貫いているからです。
 昨年の11月に会社は長さ5bの横断幕を会社入口に掲げました。「仕事もせず、他人の上にあぐらをかき、給料をもらっていた、元不良社員が、当社の営業を妨害し、近所の皆様に迷惑をかけています。」という内容です。給料ドロボウと私たちを不当解雇した労働者をののしっています。真っ赤なウソです。就労闘争にいかに打撃を受けているかを示しています。
 今年1月から2月末までは、就労闘争への妨害がエスカレートしました。わたしたち2名の解雇後にスキンヘッドの男を採用しています。その男は、アサヒアルミ工業・団体委員長を名のり、従業員の署名を集め、文書で警告をしてきました。「仕事もしないで、解雇されるのは当然だ。就労闘争をやめろ! 聞き入れなければ、警察の承認を得て、排除する」というものでした。その後、朝の就労闘争は従業員に包囲されたなかでおこなわれました。そのゴロツキが従業員を扇動したのです。そのゴロツキは私たちがかかげていた「不当解雇を許さないぞ」という文字板をたたき落とすところまでエスカレートしてきました。さらに「つぎに来たら、今度は破るぞ!」と恫喝してきました。2月24日の団体交渉の前日まで、就労闘争への妨害は続きました。しかし、団体交渉の後はいっさいがピタッとストップして現在にいたっています。いかなる妨害があろうと粘り強く就労闘争をやり抜くことでそのゴロツキとのせりあいに勝利しました!

  団体交渉を2回かちとる、しかし相次ぐ団交拒否

 団体交渉は2回勝ちとりました。
 第一回目、去年の10月26日。社長は団体交渉のなかで「30年やってきて、一度もこんなことは、なかった」と告白しています。ワンマン社長の悪徳経営がいつまでも通ると思ったら大間違いです。いままで何人もの労働者を路頭に迷わせてきたというのか。2年半見ただけでも、30名近くの解雇・退職強要があります。次回団交、11月11日で双方合意。にもかかわらず、11月1日、労働組合の要件を満たしていないからと難癖を付けて、団交を拒否しました。
 11月14日には、労働委員会に団交拒否の救済申立を行いました。ついに2月3日には労働委員会で「誠実に団体交渉を行う」という和解協定を勝ちとりました。会社は労働委員会に説得され決定に渋々従いました。そして、第二回目団体交渉を今年の2月24日に実現しました。次回、3月23日に合意。しかし、またもや4日後、思想信条を理由に社長は団交拒否を申し渡してきました。
 この団体交渉では、会社の不正、印鑑偽造による他社の見積書の作成と行使、同僚従業員の密告が社長にあり、その通報によって解雇したことを認めました。
 その後団体交渉の申し入れを6回しているが、拒否しています。
 5回目の回答書のなかで、社長は「私は刑務所に入ろうと死ぬまで闘う」と最後に書いています。社長が自ら不正をしていたことを認めているのです。6回目の回答は「団交を持つ気はさらさらありません」と開き直っています。こんなフザケタ態度は絶対に許せません。わたしたちはトコトンたたかってやろうと思っています。

 ついに労働委員会に不当解雇の救済申立(3月15日)

 会社との本番の攻防に入ります。わたしたちのねばり強いたたかいによって「解雇の連鎖」を断ち切っています。不当解雇について争っていきます。05年2月から11月をみただけで17名採用17名解雇・退職強要がこの会社では平然と強行されていた。新規採用の時には、事前につぎの解雇者が決定されているのである。ある労働者が解雇と思ったら翌日には新規採用されていたという例を実際に何回も見ています。ハローワークを使い捨ての道具に利用していたのです。社長にたてつく従業員を切っても、ハローワークで募集すればいくらでも労働者がくると思っているのです。労働基準法も守っていません。社長は「自分が法律だ」と思っているのです。
 わたしたちは3月15日救済申立を提出しました。答弁書いまだに出ていません。会社側は顧問弁護士からサジを投げられるわ、労働委員会からの問い合わせに居留守を使うやらで答弁書提出から逃げ回っています。
 とうとう労働委員会は呼出状を社長に出しました。口答で答弁させるためにです。

 闘いは必ず世界とつながる

 遠く海を隔てたフランスの300万人のデモは、アサヒアルミ工業分会の闘いと共通のたたかい、同じ質のたたかいです。勇気百倍の励ましになりました。
 隣同志でスクラムをくむようなたたかいになりました。わたしたちは、会社側の「解雇の連鎖」の現実。フランスでは「解雇自由法」と立ち向かう決死の闘い。と同じ解雇問題という争点はわたしたちの激励になりました。世界とつながっていると実感しました。

●展望はどこから出てくるのか?
 @この闘争がどういう意味をもつのか?
 ひとつは業務の「信頼と安全」。今の耐震偽装事件をみても分かるように、会社の信頼性や安全性が崩壊しています。泣Aサヒアルミ工業も同じ方向に向かっていたのです。泣Aサヒアルミ工業のようなデタラメな経営を許してはならない。
 もうひとつは「解雇の連鎖」。現従業員は15名ですが、昨年度の解雇ないしは退職強要は17名にも上っています。
 わたしたちは、クビをかけて、立ち向かい、労働組合をつくって、「解雇の連鎖」を断ち切るために、立ち上がりました。労働組合結成と就労闘争+ビラまき、労働委員会闘争で、以前のように簡単にクビを切れなくなっています。ここで気をゆるめれば、また同じ不正と解雇をするでしょう。

 A会社にどう打撃を与えているのか? どういう波及力を持つのか?
 ニセ見積書の問題で業界に広く知られるようになり、会社は公共関係の工事から閉め出されるようになりました。
 「解雇の連鎖は、許せないけど、不正には目つぶろう」というのでは、私たち自身が腐ってしまうと考えました。会社の不正と解雇の連鎖は一体の問題であるというのがわたしたちのスタンスです。
 この立場をハッキリさせたことが会社を追いつめ、一時は表情の硬かった従業員が組合の朝ビラを食い入るように見るという状況が生まれています。
 たたかいの原則をハッキリさせたことが、組合への信頼感を増し、職場の団結を生み出すチャンスがきています。

 B現場の従業員の困難さはいったいどこにあるのか?
 表面上の不正行為や「解雇の連鎖」は現在影をひそめています。今年はじめに、春闘要求をたたかいました。@定期健康診断(労働安全衛生法の義務)A年次有給休暇B時間外労働分に賃金支払い、を要求し、一定の前進をかちとりました。

 4・30集会成功!

 4月30日、会社の地元で集会を開催し成功しました。ゴールデンウィークのなか20余名が参加しました。3本の報告がありました。@泣Aサヒアルミ工業の不当解雇撤回闘争の報告A歯科医院でのセクハラとたたかう若い女性労働者の報告B首里城公園警備員の雇用継続拒否とたたかう労働者の報告、最後に「アサヒアルミ工業不当解雇撤回闘争を支える会」の結成と会員の募集を訴えました。集会参加者から続々と入会がありました。
 画期的な集会となりました。それぞれ職場もたたかい方も違う労働者が一同に会して勝利までたたかう宣言をしたのです。その中心に沖縄合同労組が立ったのです。
 こっちの職場でもあっちの職場でも、組合をつくってたちあがる以外ありません。その契機として、わたしたちのたたかいが役立てばという思いです。労働委員会を舞台に解雇撤回・原職復帰をめざして、わたしたちは、本番のたたかいに入っていきます。
 

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読者のページ

★書評 「奴隷の道を拒否せよ!」      愛知 坂野 忠

 国労5・27臨大闘争弾圧を許さない会から待望の書が、ついに出た。いままでもやもやしていたものが、スーと整理された。
 発起人を中心に労働運動11人、弁護士6人、学者7人、ジャーナリスト1人の計25人と被告や家族5人が急遽寄稿して出来上がったのが、この本だ。ほとんどの人が、「4党合意」(三与党声明)と「国労再生」(闘う国労)に言及している。5・27事件のキーワードは、この二つだと思った。「突いた、押した」の「暴行」は、キーワードではなかったのだ。
 「4党合意」とは何か。「国労がJRに法的責任がないことを認める」ことだ。国労は01年1月の続開大会で「4党合意」受諾を強行採決した。しかし闘争団の三分の一は闘う姿勢を貫いた。02年4月、三与党声明の「訴訟取り下げ」「組織内統一」要求に答えて国労本部が召集したのが5月27日の臨時大会だ。本件8名の被告は、この日に「奴隷の道を拒否せよ」とのビラをもって大会中止を訴えた。ここが5・27事件の核心なのだ(17〜18ページ)。
 「国労再生」とは何か。佐藤昭夫事務局長は「国労の路線はこの弾圧事件として大きな傷口をさらしたままだ。国労執行部の誤りを正して労働運動の再建」へと言う。加藤晋介鉄建公団訴訟主任弁護人は「四党合意は闘争団への裏切りであり『闘う国労』を信じて国鉄闘争を支援してきた我々への裏切りだ」と述べる。この本を読んで「4党合意」反対と「国労再生」は表裏一体のことだと確信を深めた。
 「Y被告の決意と家族の思い」は、感動なしには読めないところだ。東理恵さんは「国労本部が、組合員を権力に売るなど信じられない。夫たちは国労再生のために奮闘している。彼らの顔は確信に満ちている」と夫の闘いに信頼を寄せて「この本を読んでくださった皆さん、ぜひ、許さない会に入ってください。裁判を傍聴してください」と訴えている。また「労働組合のことは何も知らない」小泉鈴美さんは「『奥さんはこの弾圧で得をしたか損をしたか』とたずねられ、その時は『こんな苦労して損に決まっている』と思っていたが、今は言えます。得をしたと。この弾圧で労働運動や社会のことを知った」と。
 一瀬主任弁護人は「裁判は検察側立証の最終段階に入っている。1047名解雇撤回―国労再生の闘いと一体で裁判勝利へ」と結んでいる。感動の後は実践へ、だ。

★資本家最優先政策が、さらに大規模な耐震偽装を生み出す!  設計事務所勤務 大塩正道

 耐震偽装問題の核心をハッキリさせる前に、建築構造計算とはそもそもどういうものなのかを確認しておこう。
 一般に建築設計という場合、建物の外観―内観を意匠設計(デザイン)することを指し構造計算はそれを補完するものとして数段低く見られている。したがって、同じ一級建築士でも構造計算担当は、大多数が建築設計事務所の下請け(10数年前までの「徒弟」=構造計算サイドからデザインにクレームを出すことは絶対に許されない関係は今でも大きくは変わっていない。デザイン変更による納期の圧縮と単価切り下げの挟み撃ちが強まっただけ労働条件は悪化した)として働いている。
 この背景には、くりかえし大地震に見舞われてきた日本の木造家屋にはそれぞれの地に伝承されてきた経験的技術はあっても、それを汎用化するための構造計算を必要としてこなかったということがある。今日のような鉄筋コンクリート住宅の歴史は、戦後の高度成長を担う労働者のための中層住宅を大量供給してからであり、たかだか50年にすぎない。さらに、一般住宅に構造計算という概念が必要になったのはわずか20年前であり、それも大規模地震を想定しない超近似計算として出発した。そして、日本建築学会が建築構造設計基準に大規模地震荷重(近似値)をようやく取り入れたのは、1993年、つまり今から13年前のことなのである。
 しかし、その2年後に起きた阪神大震災で日本の建築業界は大パニックに陥った。それは想定を上回る地震力―被災規模ということよりも、利益最優先の設計と手抜き工事が表ざたになるという意味で、である。ここに目をつけたのがヒューザー・小島であり、総研・内河らである。こうして、耐震偽装の舞台は整えられ、あとは「主役・姉歯」の登場を待つだけとなった。
 ここで、姉歯の変質プロセスを本人の言動などから推測してみよう。
 姉歯はたびたび「そこに弱い自分が居た」と開き直っているが、恐らく建築士として最初に挫折感を味わったのは、大規模地震荷重が初めて導入された93年の基準改定直後であろう。この改定はそれまでの構造計算のレベルとは比べ物にならない飛躍を姉歯に迫ったはずである。多分、93年からの数年間は姉歯もこの基準と格闘したと思う(思いたい)。まじめにこの基準を守ろうとすると、第一次設計値(中規模地震時)と第二次設計値(大規模地震時)とを一致させるために何回も入力値を変えて収束計算を繰り返すことが必要になる。複雑な構造になると100回繰り返しても収束しないことがある。私自身の経験でも、収束しないまま納期が迫ってくると眠っていても頭の中を数字が踊っている状態になり、枕元にメモ用具を置かないと安眠できなかった。姉歯があきらめたのはどの段階かは判らないが、結局、彼は計算書付替えという最も安易な道に転落した。ここから先は「蛇の道はへび」である。小島―内河らと手を組むようになるには大した時間がかからなかったはずである。
 たしかに、転落は姉歯個人の責任である。しかし、姉歯と似た状況に追い詰められている構造計算の担い手を数万人の規模で放置している以上、耐震偽装は姉歯逮捕で一件落着というような問題ではなく、今後も形を変えて起きる土壌と根拠が大規模化に存在しているのである。(現在の建築士の有資格者数は1級2級合わせて100万人弱で1割が構造計算担当であるが、このうち93年の基準を理解しているのは数千人、98年の再改定基準にいたってはさらにその半数以下と言われている。それも一貫構造計算ソフトに頼って矛盾のしわよせの帳尻を合わせているのが実情なのだ。検査システムなどの形式をつくっても実体が伴わないので効力はゼロに近い)。
 93年の基準改定と同時にやるべきだったのは、構造設計のウェイトを改定基準に合わせて大幅に引上げることを前提にして、建築士制度自体を全面的に見直すことであった。だが、今にいたってもこのことは放置されたままである。それどころか逆に、政府・国交省は、98年再改定で「限界状態設計法」を導入することによって、建築業者が自由に構造設計のレベルを決定できるように緩和して住宅バブルへの弁を開いたのである。「技術者としての倫理観」にすべての責任を丸投げすると同時に、構造設計の知識のない住宅購入者に対して耐震基準の内容をあいまい化して遠ざけたうえで「経済設計」(自然科学の世界に経済設計などという概念はありえない。生活と生命に直結する安全確保と経済性優先とは相容れないからである。「経済設計」という言葉は主に金融界で使われており最近では人生設計にも使う連中が出てきたが、自治体では神戸市が5年前から工事監査でさかんに使っている、やはりというべきか)の甘言を弄してまがいものを売りつける建築業者らが暗躍できるスペースをさらに押し広げただけなのである。
 耐震偽装は、生活と生命に直結する安全よりも企業の利益を最優先するというこの資本主義社会によって大規模に生み出された。この構造は、JR尼崎事故と完全に同じである。

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