労働組合運動の基礎知識 第2回

2019年7月31日

月刊『労働運動』34頁(0297号04/01)(2014/12/01)

労働組合運動の基礎知識 第2回

鈴コン9・30勝利和解の持つ意味
 小泉義秀(東京労働組合交流センター事務局長)
 9・30に鈴コン分会は、解雇撤回・原職復帰の大勝利を勝ち取りました。これは形式的には高裁での和解ですが、内容は完全勝利判決以上の意味を持っています。なぜなら勝利判決を勝ち取ったとしても鈴木資本が判決を認めず最高裁に上告し、更に職場復帰を永遠に拒み、偽装倒産攻撃を仕掛けてくる可能性もあったからです。しかしこの和解はそれらの攻撃すべてを粉砕したのです。その意味でこの和解はこれまでの幾多の裁判や労働委員会での和解とは全く違う性格のものです。
高裁裁判官―鈴木資本を相手に鈴コン分会の路線を資本に強制し、ねじ伏せて職場復帰の日まで確定させた完全勝利です。また極めて重要な点は和解につきものの秘密条項がないことです。何故なら秘密にするような内容は全くないからです。秘密条項は金銭が絡んだ場合にそれを表に出さない形で付け加えられます。しかし今回の和解には解決金が1円もないのです。
 「和解」は「解雇撤回・原職復帰」だけではなく、3名の「3ケ月雇用」について、「期限のない雇用」として認めさせました。3ヶ月雇用を10年、20年も更新してきた場合は有期労働契約であっても期限の定めのない雇用として扱われるのが一般的です。改正労働契約法第19条(2012年8月10日公布・施行)は雇い止め事件の最高裁判例である東芝柳町工場事件と日立メディコ事件を法制化したものです。しかしこの判例や労働契約法の条文を鈴木資本のような輩が守るとは限りません。20年間契約を更新してきたとしても、有期労働契約であることに変わりはないのです。3年前の解雇も契約満了の雇い止めという形で行われ、資本は「契約満了であり、契約更新をしないだけで解雇ではない」と主張してきたのです。またこの判例や労働契約法の条文の適用・解釈には幅があり絶対的な基準ではありません。その意味で和解調書に「期限の定めのない雇用」であることを認めさせたことは有期労働契約そのものを粉砕することを意味します。
 更に重大なのは、「解雇撤回・原職復帰」と一体で和解調書に東豊商事と鈴木コンクリート工業という二つの会社の名前を入れてこの両方の会社が不当労働行為をしてはならないという一文を入れさせたことです。これは鈴コンの下請け会社であり3人の直接の雇用主である東豊商事を偽装倒産させて、組合潰し攻撃を許さないための条項です。この文言が入ることにより分社化・下請け化という形で組合破壊を画策してきた鈴木資本はこの方法によっては労組潰しができない縛りをかけられたことになるのです。当初裁判所は「不法行為」一般で流そうとしましたが、断固として「不当労働行為をしない」を入れさせたのです。この攻防は単なる法的やりとりではく、「不当労働行為」を許さず、労働組合の団結を守り、拡大していく労働組合運動の真骨頂があるのです。