労働組合運動の基礎知識 第3回 試用期間満了後の解雇問題について

2019年7月31日

月刊『労働運動』34頁(0298号04/01)(2015/01/01)

労働組合運動の基礎知識 第3回 試用期間満了後の解雇問題について



労働組合運動の基礎知識 第3回
試用期間満了後の解雇問題について 小泉義秀(東京労働組合交流センター事務局長)

★試用期間とは

 試用期間とは、採用後における、従業員の適格性判断のための調査期間とされています。法律用語で言うと試用期間中の労働契約は、「留保解約権」=「使用者の解約権が留保されている労働契約」と解されています。
 採用決定の時には資質、性格、能力その他の適格性の有無に関する事項について、必要な調査を行い適切な判定資料を十分に集めることができないため、後日における調査や観察によって最終的な決定を留保している段階であるということです。試用期間が経過した際に、本採用するかどうかは、会社が自由に決められるわけではなく、「最終的に不適格と断定できないときは社員登用しなければならない」のが原則です。試用社員について、会社があたかも自由にその地位を左右できるかのように考えている会社も少なくないし、労働者の側もそう考えている場合もありますが、そうではありません。
 また3か月の試用期間を本人の同意なくして勝手にまた3か月延長するのは違法です。いわき合同ユニオンのK君のケースは本人の同意なくして一方的に会社が延長したものであり、違法です。

★試用期間の解雇と通常の解雇とは解雇であることに変わりはない

 留保解約権に基づく解雇は、これを通常の解雇の場合よりも広い範囲における解雇の自由が認められてしかるべきものとしています(三菱樹脂本採用拒否事件1973年12月12日最高裁大法廷判決)。しかし、同判決ではいったん特定企業との間に一定の試用期間を付した雇用関係に入った者は本採用、すなわち当該企業との雇用関係の継続についての期待の下に、他企業への就職の機会と可能性を放棄したものだから「留保解約権の行使」は、解約権留保の趣旨、目的に照らして、客観的に合理的な理由が存し社会通念上相当として是認されうる場合にのみ許されるものと解するのが相当であると述べており、試用期間中であるからといって企業の解雇権を無限に認めているわけではありません。
 試用期間満了とともに本採用拒否をする場合は、雇用契約の解約であることから会社からの解雇に当たります。なぜなら、その労働者はすでに会社に契約期間の定めなく、採用されているからです。そもそも、解雇が認められるには、合理的な理由があり、かつ解雇を選択したことが相当である場合でなければなりません。このことは、試用期間中または試用期間満了時であっても同様です。
 採用時に試用期間である旨を明示していることから、適格性判断で不適格と評価されれば本採用拒否も認められることになります。しかし、たとえ不適格と認められても解雇が相当であるかは別な判断となります。つまり、不適格であっても、解雇ではなく、教育訓練で対応するというのが相当であると考えられるからです。いろんな資格や学歴があっても現場の仕事は先輩に教えてもらって徐々に覚えていくのが普通です。この教育訓練を行わないでいきなり解雇というのは許されないのです。