ストライキで官製春闘をぶっ飛ばす!(三多摩労組交流センター)

2019年7月31日

月刊『労働運動』34頁(0302号03/01)(2015/05/01)

ストライキで官製春闘をぶっ飛ばす!

山口弘宣(三多摩労組交流センター・日本機械労組書記長)

 「低額回答は許さないぞ!」「会社は賃金構造を維持しろ!」「さらなる賃下げは許さないぞ!」「我々の生活を守れ!」「我々はストライキで闘うぞ!」とシュプレヒコールを工場中に響き渡らせながら、日本機械労組は春闘ストライキに決起した。3月24日1時間の時限ストに入った日本機械労組は、春闘を賃金闘争として復活させる闘いを行った。
 累積赤字解消が明らかになり、日本機械労組では「転換の春闘」と位置付け、「これまでの賃上げは、賃上げはない。実質的な賃下げだった」と全組合員に訴えて「年齢に見合った賃金を保証せよ」という闘いが起こったのだ。定期昇給制度のない日本機械では、賃金構造が維持できず、賃金水準が低下していた。この現実を執行部は全組合員に暴露、資本への怒りに火をつけた。
 本来、定期昇給は、定年退職者の賃金を回せば維持できる構造であり「総労務費は不変」だ。執行部が展開した「賃金構造維持分の金額を支払え」=定期昇給分確保という主張は、組合員の低賃金状態への不満を「今まで我々の賃金をかすめ取ってきた会社は、ブラック企業であり許せない」という怒りに転化した。この論理は会社も完全否定できなかったが、それでも会社は「労務費の固定化」を嫌がった。これまで労務費の削減で利益を生み出し、会社は赤字を解消してきた。賃金水準を固定化することは、資本の利益を阻害するものだったからだ。
 「利益の確保のためには1円も惜しむのが資本の論理だ」と会社は主張し、初回回答額を崩さなかった。組合に対して強固な対応で屈服を迫る会社に対し、残業・出張拒否闘争で組合は対抗するが、それでも会社は動かなかった。労使対立が深まるなか、闘争戦術を議論する拡大闘争委員会で、組合員は「一歩も引かない覚悟でやろう」「組合一丸となってやるべき」と闘う決意を表明し、ストライキ方針が決議されたのだ。
 翌3月24日昼休み前に執行部から闘争指定が発せられ、午後1時に全組合員が職場旗を先頭に隊列を組み、ストライキに突入した。実に2年ぶりとなるストライキだった。
 会社の業務を停滞させるストライキだったが、それでも会社の姿勢は崩れなかった。組合は、再び3月26日午前中の指名ストと午後からの全面ストを配置して闘争を強化した。会社と労働組合の力勝負の全正面衝突の状態に突入したのだ。
 そして、全面スト突入回避に動いた会社は、11年ぶりの水準となる4200円の回答を出さざるを得なくなった。回答水準は賃金構造維持分には届かなかったが、15春闘を日本機械労組は、「官製春闘」を打ち破る実力の賃金闘争として勝ち取った。
 ちなみに、日本機械労組ではストライキでの賃金カットを補填しない。ストライキに参加していない組合員からカット分を組合費として多く徴収し、それを再配分して全組合員が「ストライキを闘った」ことを共有することにしているからだ。