時代を解く(7)TPPは新自由主義攻撃の凶暴なテコ

2019年7月31日

月刊『労働運動』34頁(0310号05/01)(2016/01/01)

時代を解く (7)
TPP(環太平洋経済連携協定)は新自由主義攻撃の凶暴なテコ

 10月冒頭、TPP交渉が「大筋合意」に達した。安倍政権は、アベノミクス破綻の総括もできない中、「TPPは国家百年の大計」とうそぶき「日本経済をGDP600兆円へ成長させる」という空文句を掲げた。米・オバマは「中国に経済のルールは書かせない」と述べた。米では合意内容への不満(自動車への関税100%廃止、製薬資本の特許権への制約など)が強く、議会の批准は大統領選後まで行われないと言われるが、TPPが動きだしたのは間違いない。
 日本では、16年通常国会で批准と実行に関する法案の審議が行われる。TPPとは少しでも人を幸せにするものか。とんでもない。TPPは、巨大資本と帝国主義国(米日)が仕掛けた凶暴な攻撃で、どの国でも人を不幸にする許しがたいものだ。

*TPPに生き残りかけた安倍

 TPPは「環太平洋経済連携協定」と訳される場合が多い。この協定は元は2004年シンガポール・ニュージーランド・チリが始めた。2010年3月からは米主導下で環太平洋8か国が参加して拡大交渉が行われ、最終的に日本を含む12か国が参加した。地域を包括する自由な貿易体制、関税の原則撤廃や投資ルールの確立がうたわれたが、米が目指したのはアジアを自己の経済圏として支配することだ。オバマ政権のアジア・リバランス路線と重なって一気に具体化した。
 当時の民主党・鳩山政権は、東アジア共同体路線を打ち出し、日米同盟の「相対化」、中国との関係「改善」を志向した。米は「日本の動揺」を粉砕し、対中国の同盟に組み込む意図をもってTPPを強力に推進した。民主党の菅政権は鳩山政権の崩壊を見て米にすり寄った。そして第2次安倍政権が「強い日本を取り戻す」というスローガンを掲げ、集団的自衛権強行、日米同盟強化=戦争国家化へ舵を切り、TPP強行にも踏み切った。中国主導のAIIB(アジアインフラ投資銀行)、さらに軍事的対抗関係からも、TPPは日本が帝国主義として生きるために不可欠の選択とした。

*TPPの本質を見抜けず 屈服する既成政党と連合指導部

 安倍は「国益に反するならTPPにも反対」と言って12年12月の総選挙をやったが、ペテンだった。安倍のプランには、農業の破壊と大資本のためのTPP強行が最初から入っていた。自動車など輸出産業のためだけではない。鉄道や原発、軍事関連などインフラ戦略輸出でアジアからアフリカまでの侵略、争闘戦の柱として位置づけている。TPPは、貿易の自由化だけでなく「大資本の自由」のために様々な条項を入れていることが特徴だ。労働者の権利は踏みにじられる。農民も「消費者」も資本の餌食にされる。規制緩和の強行と民営化・外注化・非正規職化、低賃金化そして特区的自由化推進のバックグラウンドとなる。またTPPは、帝国主義の末期の搾取、侵略、戦争と結びついている。
 だが、既成政党や連合はこれに完全に屈服してしまっている。階級的労働運動の復権をかけて徹底的に反対し、闘っていかなければならない。

◆原参加国
シンガポール
ブルネイ
チリ
ニュージーランド

◆拡大交渉国
アメリカ
オーストラリア
カナダ
ベトナム
マレーシア
ペルー
メキシコ
日本

■参加検討国
台湾
タイ
パプアニューギニア

■参加検討表明国
韓国
インドネシア
フィリピン
コスタリカ
コロンビア

藤村 一行(動労千葉労働学校講師)