訪米報告座談会 アメリカの鉄道労働者とつながった

2019年7月31日

月刊『労働運動』34頁(0315号05/01)(2016/06/01)

訪米報告座談会
アメリカの鉄道労働者とつながったことは大きい!
職場で労働者と団結することが国際連帯につながる!

(写真 世界鉄道労働者懇談会で発言する中村執行委員)

 【参加者】
中村仁さん (動労千葉執行委員、争議団)
山本弘行さん(動労千葉国際連帯委員会)
瀬戸忠さん  (動労千葉国際連帯委員会)
三木芳さん  (動労千葉国際連帯委員会)

※訪米の経緯

瀬戸 3月30日から4月4日まで訪米しました。経緯は以下の通りです。
 2003年に動労千葉の川崎昌浩さんと山本弘行さんがサンフランシスコに行き、オークランド港で働いている鉄道労働者とつながりました。鉄道労働者は労働運動の中で戦略的位置を占めていて国家権力の重圧を受けながら闘っているので、共通の闘いがあると思います。昨年11月労働者集会にRWU(鉄道労働者統一委員会)議長のロン・カミンコウさんが来日予定だったのですが、直前に来られなくなりました。今回、動労千葉にRWUの2年に1度の大会への招請状が来て行くことになったのです。
 レイバーノーツ(LABORNOTES、ランク&ファイル=現場労働者の活動家の全国組織)大会は、RWUの大会と同じ場所で4月1日から3日まで行われました。レイバーノーツはいろんな傾向の人がいますが、全米でランク&ファイルの活動家が集まるのはこの会しかない。貴重な機会なので参加しました。

※RWU大会に参加し発言

中村 動労千葉として参加し、発言もあるので準備して行きました。
 3月30日着いた日に、RWU大会には労働組合の代表が集まっていました。韓国とフランスの仲間も来て話していました。闘う動労千葉でRWUと共に闘っていると紹介されて、「ストライキで闘っていることがすごい」「なんでストライキができるんだ」と聞かれました。アメリカはストライキに対する制約があるみたいです。日本とは労働組合運動の状況が違うことを感じながら参加しました。
 翌31日はRWU大会に参加して発言しました。今回のテーマは安全問題でした。「動労千葉は国鉄分割・民営化に対してストライキで闘って、今も絶対反対の闘いを継続し、安全闘争を闘っている組合だ」と話し、交流を深めました。韓国やフランス、世界の現場での発言もありました。その後は歓迎会、交流会でした。
 翌4月1日11時から、RWU大会2日目に参加し、「国鉄分割・民営化攻撃に対して唯一ストライキで闘って解雇された当該で、30年間闘い続けて、国家的不当労働行為を暴き出した。そして今も解雇撤回、外注化阻止で闘っている。この闘いは動労千葉だけの問題ではなく非正規労働者が40%を超す今、労働者全体の問題であり、これに反撃し勝利することが、労働者が生きられる世の中をつくり出す道だ」と報告しました。

※シカゴ教組のストライキ

 実は、RWU大会の1日目(3月31日)の後に、UTLA(ロサンゼルス統一教組)のアーリーン・イノウエさんから「シカゴの学校で教師がストライキをしているので一緒に支援に行こう」と誘われました。
 翌4月1日朝5時半に結集して、ルーズベルト高校に行きました。現地の人が何人も結集していました。玄関前で教師が話した後、高校生の男女が一人ずつ先生のストライキに賛同する立場で話していて、カルチャーショックでした。州立大学の人たちも来ていて、イリノイ州の大学予算が停止されていると聞いて驚きました。賃金が安いというレベルの話ではなく、賃金が払われないなんてひどい、すごいことが起こっている、怒って当然だと思いました。「予算配分で別のところに使っていて、自分たちの給料を払わないのは絶対に許せない」と怒っていました。みんながストライキに賛同し、労働者のストライキに生徒や地域の人が共感できるくらいまで運動を広げていることが大事だと印象を持ちました。ストライキと言っても学校の周りをプラカードを持ってぐるぐる回るのです(アメリカは立ち止まってはいけないので歩く)。力関係で立ち止まって集会をやっていましたが、アメリカの常識ではピケットは歩くことなんです。歩道を歩くので脇にクラクションを鳴らして賛同する車が多く通っていきました。市全体がゼネストのように止まっている状態でした。
 次に、マクドナルドで「最低賃金15ドル」を要求して闘っている労働者を支援するために、アーリーンさん、韓国民主労総ソウル本部のソン・ホジュンさんと一緒に参加しました。店の周りを回りながら抗議行動し、最終的に市営バスの活動家で解雇者のエレック・スレーターさんの車で送ってもらって、RWU2日目の大会に参加しました。

(写真 4・1シカゴ教組のストライキ、デモ行進)

※レイバーノーツ大会に参加

 翌4月2日はレイバーノーツ大会で、全体会があり、その後分科会でした。全体会の基調提起はアーリーン・イノウエさんがやり、基調にみんなが賛同しました。その後、ゼルツァーさんの会合に行きました。
 4月3日午前中に、レイバーノーツの「世界鉄道労働者懇談会」のパネルディスカッションがありました。米国・日本・韓国・フランス・中国の鉄道労働者の「鉄道の労働者と乗客の安全」というテーマの集まりです。動労千葉の闘いを紹介しました。「1972年に列車と列車が追突する船橋事故があり、この事故を運転士個人の責任にせず、合理化が問題であり同じ仕事をする労働者一人ひとりの問題であるとして闘った。この闘争を闘えたからこそ20万人労働者の首切り、国鉄分割・民営化攻撃にストライキで闘い、今も外注化・非正規化攻撃に絶対反対で闘えている。だから『闘いなくして安全なし』という闘いを今までできている」と訴えました。中国や韓国からも報告があり、討論の中でアメリカの鉄道の実情や日本の実情などいろいろ話しました。ソン・ホジュンさんが「鉄道を一つの職種の問題ではなく労働者全体の問題、世界の労働者全体の問題として考えていくことが今回集まった意義だ」と話してくれて、みんなが賛同しました。私もそういう視点が重要だと思いました。
三木 RWUとレイバーノーツの大会の二つで、各国それぞれの鉄道労働者の報告があったのですが、いずれも民営化や安全問題に関する報告で、世界の鉄道労働者の闘いと課題が新自由主義への闘いとして完全に一つになっているのを感じました。レイバーノーツの大会では、さらに中国の参加者から、中国の労働者の状況と工場閉鎖や賃下げに対して続発するストライキの報告もありました。中国の労働者も、今、国際連帯を求めて立ち上がりつつあります。 第5章 ※アメリカの労働運動について
― RWUについて説明してください。
瀬戸 RWUは、アメリカ鉄道労働組合の中のフラクションです。場合によっては支部長だったりすることもある。例えばオークランド港の操作場(荷物を運び出す)支部では、ブライアン・ルイスさんというRWUの元支部長がいる。鉄道労働組合の中心的活動家集団で、それ自体が労働組合ではない。アメリカには20以上の鉄道労働組合があるが、そんなに四分五裂していたのでは仕方ない、統一していこうという主旨の集まりです。一つの労働組合がストライキやっている時に、他の労働組合がスト破りをやっているのではどうしようもないということです。
 今年の焦点は、特に安全問題です。去年アムトラックの脱線事故があり、その前にはカナダで石油を積んだ列車が大爆発を起こすという事故があった。もう一つは、列車の一人乗務問題。運転士だけで長い何キロに及ぶ石油のタンクを積んだ列車を運転する。それ自体が安全問題だということで、安全問題に焦点を絞って論議が行われた大会だった。
山本 RWU全体の組織はどうなっているのですか。
瀬戸 全体としてはわからないところもありますが、去年は一人乗務についてある組合が経営側と暫定で労働協約を結ぼうとした。RWUは組合内の少数勢力でしたが反対運動を起こして組合員全体の一票投票で勝った。今回のRWU議長の総括では、「われわれは経営側にも、労働組合御用幹部に対しても闘争につぐ闘争をやった。しかし、これでいいのか。その分組織強化をおろそかにする傾向があったのではないか。RWU組織を強めていかなくてはいけない。もう一つは、RWUの指導部、執行委員会が少人数で動くのではなく、全体が活動し組織強化することが大事だ」と言っていました。闘いと組織強化は両方うまくいくのは大変で、実際には忙しくて組織が疲弊することがよくありますよね。RWUは全米で機関誌を数千部配っています。
― アメリカで労働組合をどのように組織するのですか。
中村 アメリカは、労働者の50%プラス1人を組織しないと労働組合はできない。でも分母はどういう風にするのですか。
瀬戸 事業所単位です。職種別に分離することもある。事業所も法律に明確な定義がなく、判例の話になる。経営側と労働側の綱引きがある。経営側は分母を大きくして50%を超えさせないようにする。お互いに争って裁判闘争になったりする。
中村 「労働組合として51%を組織し俺たちは立ち上げたぞ」と言っても、経営側は「いやあなたは51%じゃないから労働組合として認めません」ということもありうるんだよね。
山本 レイバーノーツの性格について話して下さい。
瀬戸 レイバーノーツというのは、トロツキストの一つの党派が始めた運動ですが、今はいろいろな人が集まっている。アーリーン・イノウエさんが全体の基調報告をしましたが、彼女がレイバーノーツ大会に参加するのは初めてです。トロツキストの人以外の人もたくさん集まっています。公式のナショナルセンターに下から対抗して新たなものをつくろうという人たちの集まりとしては全米的な大きさをもった組織はこれしかない。月刊誌で『レイバーノーツ』を毎月発行している。アメリカ大統領選挙については「2大政党は資本家の政党である。われわれは新たな政党、ないし別の勢力をつくらなければいけない」というのが決議案です。レイバーノーツ大会は1000~2000人集まっていました。

(写真 CTUストライキに韓国民主労総の仲間と一緒に参加)

※職場の団結づくりが国際連帯

中村 国際連帯をするというのは、日本でも一人ひとりの労働者とつながり、その大きな和が国際連帯になるとすごく感じました。現場を大事にしながら活動して、労働者の輪を大きくしていければいいと思いました。世界の労働者の現実を知ったことによって、動労千葉の非正規とつながる闘いが労働者としての闘いだと改めて感じたし、その闘いが必要だとすごく思いました。動労千葉の一人として進めていきたいと思います。
 通訳や国際連帯に関わっているみなさんのおかげで行けました。こうした労働者同士のつながりをもっと大きくしていければ、労働者の側に立ちきった変革ができるのではないかと思います。
瀬戸 RWUの鉄道労働者の闘いとつながったのはものすごく大きいと思います。あらゆる職種の労働者とつながることは大事だけれど、動労千葉として鉄道の労働現場で仕事を通じてつながり、そこを基礎にした信頼関係、労働組合の話ができるようになりました。今までメールでしたが、顔を見て話せてよかったと思います。11月集会で会うだけでなく、11月に向けても絶えず関わりをしていきたいと思います。
三木 1886年5月1日アメリカの8時間労働制を求めたストライキとデモがメーデーの始まりです。翌々日の5月3日に労働者4人が警官に射殺され、4日にシカゴ市内のヘイマーケット広場で数万人の抗議行動があったのですが、その場所に当時の像が建っていました。労働者は実力闘争の中で一つひとつ権利をかちとってきたことを、シカゴに行って改めて実感できました。像の前でみんなが写真を撮って、誰とはなくインターを唄い出すということは感動的でした。
 もう一つは、11月集会での国際連帯の新たな発展、強化につなげる可能性を感じてきたことです。
 アメリカは物価がものすごく高いことには驚きました。ペットボトル1本が3ドル(350円)もする。最低賃金15ドル運動がよくわかりました。
― ソン・ホジュンさんはどんな話をされたのですか。
山本 ソンホジュンさんは、「日韓米の恒常的連帯をつくっていきたい。アメリカから11月も日本に来て、韓国に来てほしい。恒常的にやっていきたい」という話をしている。
 訪米時にワシントンで核サミットがあって、安倍とパククネとオバマが話していた。その時にシカゴで大ストライキがあって、日韓米中の労働者が連帯して大きなステップを踏んだことは本当に大きいと思う。
 11月集会を国際的な資本と対決して、もう一歩大きな国際連帯集会として成功させる展望を感じました。
 (敬称略)

特集0315

Posted by kc-master