労働組合運動の基礎知識 第27回「罰金」や損害賠償について

2019年7月31日

月刊『労働運動』34頁(0322号07/01)(2017/01/01)

労働組合運動の基礎知識 第27回
「罰金」や損害賠償について

 労働相談の中で、よくあるのが「罰金」や損害賠償の事についてである。
 例1として、電気設備の小さな会社で、運転中に起こした車の事故の修理代を請求された件である。事故を起こした時は、「損害賠償金を支払え」などと言われたことがなかったのに、後日会社を辞めると言った時に、「あの時の事故の修理代に10万かかっているので支払え」というものだった。
 例2は、同じく観光バスの運転手が、バスを柱にぶつけてしまったケースで、その時は何も言われなかったが、やはり会社を辞めると言った時に、その修理代5万円を払えというものだ。
 労働基準法第91条は「就業規則で、労働者に対して減給の制裁を定める場合においては、その減給は、一回の額が平均賃金の一日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の十分の一を超えてはならない」と定めている。このような事故のケースが減給の対象になるかならないかは別として、仮に減給の対象になった場合でも5万円や10万円は不当な額であり、支払う必要はない。日当1万円なら5000円以上の減給は違法だ。20万円の月給なら2万円を超える減給は違法である。
 上記の二つのケースは、両方とも減給は1円たりとも認めさせなかった。例1は、1回の団体交渉でけりがついて、例2は、滋賀県の彦根に本社がある観光バス会社だったため、書面を送り撤回させた。
 私も今の仕事を始めた直後の20年前に、フォークリフトクランプで古紙のプレスを挟んで持ち上げたとき、親会社の施設の消火配管を破損させたことがある。クランプリフトの後ろの部分が持ち上がり、何か変だなと思った瞬間、消火配管が破損して、水がじゃあじゃあ漏れ出した。翌日の朝のミーティングで注意を受け、1年間、事故の事例として次の大きな事故が起きるまで何回も取り上げられた。消火配管の修理費は100万円を超えた。しかし、この時でも減給処分にはならなかった。資本の支配下の労働で起こした事故であり、減給処分などあり得ないのだ。その後も車両を破損させたりしたこともある。私以外の人も同様の事故をいくつも起こしている。
 車を運転していれば事故はつきものであり、そのたびに減給されていたらたまったものではない。したがって、基本的にこういう事故で減給はされない。車の事故や物損事故の場合に備えて会社は保険に入っているケースがほとんどで、たいていの場合は保険で賄われることが多い。そういう事故が多い作業は、多くの場合、必ず保険制度があるケースがほとんどである。上記2例はおそらく保険で処理されていたケースだ。だから減給や罰金は、保険と労働者から二重取りするような卑劣なケースといえる。私の事故の場合は、保険が適用されたか否か定かではない。
 他に、労働基準法第16条は「使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない」とある。遅刻や欠勤で罰金を取るような会社の事例も聞くが、全て違法だ。
 小泉義秀(東京労働組合交流センター事務局長)