産別・戦線の闘い 第6回 八尾北労組の闘い

2019年7月31日

月刊『労働運動』34頁(0332号11/01)(2017/11/01)

産別・戦線の闘い 第6回 八尾北労組の闘い

(写真 八尾北まつりメイン企画―DVD上映)

八尾北労組の闘い

八尾北労組の地域ソヴィエトを展望した闘いの報告

八尾北医療センター労働組合

教育、自治体、郵政、医療など各産別の闘い、及び「労働者階級と諸戦線の闘い」を掲載しています。

 18年決戦〈戦争・改憲、労働法制改悪絶対反対にむけた闘い〉が、壮大なスケールで始まっています。なによりも朝鮮侵略戦争が差し迫っています。それは核戦争であり、第3次世界戦争の始まりです。「北朝鮮を破壊しつくす」という11月トランプ・安倍会談を黙ってみていることはできません。始まる前に戦争を止めよう!  11・5韓国・民主労総、米・ILWUと共にスクラムを組み、銀座を1万労働者の国際連帯デモで埋めつくしましょう。
 戦争の時代、それは同時に革命の時代です。この間の八尾北労組の闘いの経験は、労働者は国境をも越えて通じ合い、ひとつに団結する存在だと教えています。小さい芽でも、その団結、豊かな共同性の中で、闘って戦争を止め、この国を変えていく、それが地域ソヴィエトの建設ではないでしょうか。

【一】私たちが主流派だ―8・19八尾北夏まつりが示したもの

★みんな呼びかけを待っていた

 「民営化・更地化と闘って 八尾北医療センターを守ってきた 誇りある地域だ」「どんな悪らつな攻撃にも屈しない 八尾北労組・全国水平同盟 このもとに生きるための団結―つながりを新しくつくりだそう」。このように8・19八尾北夏まつりを呼びかけました。
 誰も予想できなかった300人もの老若男女が集まったのですが、それは、みんなが八尾北・西郡の闘いにずっと注目し、信頼を寄せてくれていたんだということです。
 祭りの日は、始まる前から参加者が集まり、八尾北労組の団結太鼓で開会しました。子どもも大人も出店は大にぎわいです。最後を青年たちの〝だんじり囃子〟が飾りました。佃文弘西郡支部青年部長は「更地化と闘う自分たちが地域の祭りもやっていきたい」とあいさつしました。

★これまでの枠を超えて実行委員会を作り積み上げていった

 労組が「まつり実行委員会」を呼びかけました。夏まつりの柱は住民訴訟です。あらゆる怒りをそこに集約することをはっきりさせて、企画を具体化させていきました。
 障害者総合支援法反対学習会に参加されてきた作業所の仲間や日本語学校の中国の人々にも呼びかけ、参加団体が広がりました。参加には至りませんでしたが地域の学校や諸施設の労組にも案内し、ポスターを貼ってもらいました。
 実行委の討論で「やる気が出てきたわ」と守る会の人が経験者に会いに行って、どういうゲームが今どきの子どもに喜ばれるかなど一から教えてもらいました。祭の総括の実行委では、「次はこうしよう」「あれをしよう」という話になっています。

★更地化への怒りを住民訴訟へ―メイン企画「映像でよみがえる西郡のあゆみ」

 生きるために団結して、住宅も病院も、上下水道も保育所も、すべて闘いとってきました。
 今、八尾北をつぶし、全部を奪って、地域をバラバラにしようとしている。もう黙っていられない! この思いをみんなに知ってもらいたいと、DVD「映像でよみがえる西郡のあゆみ」をメイン企画として作成することが決まりました。資料を掘り起こし、八尾北(労組)を縦軸に全体を編集しました。何度も議論し、ナレーションの吹き込みなど汗と努力の結晶です。ぜひ皆さんに観てもらえるようにしたいと思います。
 祭りの後も、地域の懇談会や、職場では全員に見てもらっています。「すべてを闘って勝ちとってきたことがよく分かった」「(子どもが)八尾北はすごい、歴史と闘いがある、つぶしたらあかん」「自分の中に誇りが湧いてくる」「待合で毎日流そう」「学校でも観てもらおう。ひとつになれる」「(新しい労組員)地域の人がここがなくなっては困る気持ちが分かる。自分もやれることをやっていきたい」と口々に感想を述べています。

★ 市営住宅への指定管理者制度導入について住民説明会を開かせた

 振り返ると、私たち自身の転機がありました。今年2月、「指定管理者制度導入について住民説明会を開け」と八尾市に文書で申し入れ、実際に説明会を開かせたことです。
 今までは〝絶対反対と言ってるだけ〟の存在だった、しかし、今こそ住民の怒りと結びつく――地域の人と一緒に怒りの先頭で闘い、行政の不正義をあばき、怒りを引き出し、トコトン怒りに依拠して闘う――ということです。6回にわたる説明会に地域住民200人が参加し、説明会は怒りのるつぼになりました。八尾北労組と全水西郡支部と地域が一体になって闘った経験が、主体を変革し、大きく力関係を変えたと言えます。

★青年労働者の結集

 もう一つ、支部青年部長の佃文弘さんを軸に、青年労働者の団結を作ろうと「職場交流会」の取り組みを開始して3年、昨年秋にはバーベキュー大会を開きました。50人近い労組、支部、守る会、関西青年実の仲間が参加し成功したことが、祭りのベースにあります。
 青年の組織化はまだまだじりじりした前進ですが、ここを組織拡大の柱に据えていきたいと思っています。

(写真 八尾北-6・28食事会)

【二】八尾北は団結・人間的共同性の中で健康をとり戻し、病気にならない医療を目ざす

★赤字倒産攻撃を見すえて立ち向かい団結に生きると決断した

 安倍政権と八尾市、大資本が一体になった更地化・赤字倒産攻撃に対して、私たちは、まず18年決戦が革命・ゼネスト情勢への突入だと時代認識をはっきりさせました。団結の砦として地域の〝生きさせろ〟の怒りと結合してゼネストに立ち上がろう、その時〝絶対八尾北をつぶさせない〟と地域の決起が必ず巻き起こる、「経営的に生き残る」道と決別し、労組を拠点に革命に勝利する、それができる労組の団結を作れているかどうかにすべてをかけようと決断し、具体的闘いを進めてきました。
 いま八尾北は、八尾北を守ろうと、地域、全国の支持者が、年金・窓口での寄付や、退職金などを投げうって寄せてくださる多額のカンパなどではじめて財政的には回っています。支えていただいているみなさんに、心よりお礼申し上げます。本当にありがとうございます。
 もともと聴診器ひとつから始めて数十年、明け渡し裁判も「追い出されてもテントからやればいいじゃないか」と腹を固めてこそ受けて立てたし、勝利できました。八尾北を守る(守ってきた)のは団結です。

★ どんな医療をめざすのか

 高い薬と検査づけの「金もうけ医療」に八尾北は反対です。どうすればより点数が取れるかという経営的観点を排し、本当に必要な医療とは何か、真正面から討論してきました。
 そして、「そもそも人間が本来もっている治癒力が、資本主義によって人間的共同性・団結が解体され、競争と分断、非正規化、長時間労働、貧困などによって奪われていることが病気の原因なんだ。だから何よりも人と人の繋がりをとり戻し、食事・運動・睡眠で健康を取りもどし、病気にならない医療を八尾北はめざそう」と打ち出しました。

★健康教室、談話室、食事会などをはじめる

 そこから「健康教室」を開くことを決め、昨年冒頭から着手し40回近くを重ねます。初めは、日頃の医療介護労働そのものが八尾北がめざす医療の実践だ、医師も職員も患者もみんなが主人公で対等、教えてもらい議論しながら一緒に内容を作っていこうと始めました。当初はパネルも手作りでしたが、今はパワーポイントです。会場も八尾北待合いから地域へ広げ、中国の人たちが多く通うデイにも出前教室を行っています。
 病気になって患者さんが通う病院から、誰でも寄れる八尾北に変わり、談話室を作り、無料のコーヒーも始めました。八尾北全体がデイといえるものをめざしています。食事会も始めました。様々な相談ごとも、一緒に考え行動し、合同労組や支部、守る会などの組織拡大につなげています。こうして、労組を土台に多岐にわたる大きな連帯の輪が作られ、いのちの寄る辺・団結の砦=八尾北が育まれてきました。

【三】デイのA君をめぐる「障害者総合支援法反対」学習交流会での討論

―労働者の協働とは、補い合い、助け合い、お互いに知りあうこと―

 労組の団結を作りかえた激しい現場での議論で、一番決定的だったのがデイの討論です。
障害のある青年A君を、いろいろあっても職場の団結でやっていけるだろうと採用したのですが、障害のため同じようにはできません。みんな一生懸命に仕事を教える。字が書けないということでドリルを買って教えたり、本人も昼休みに勉強したり努力しました。
 そういう中で、「同じ給料をもらっているのなら自分たちと同じようにできて当然ではないか」という考えで、「指導」という形をとったいじめが始まった。私たちは、彼らと徹底して話し合いましたが、「能力主義でなく団結で仕事を回す」という抽象論に終わり、A君と一緒にがんばろうとした部分もA君をかばいきれなくなって、A君は退職してしまいました。
 その渦中で、障害者総合支援法反対地域学習交流会をもちました。労組執行部はデイも含め全員が参加し、八尾北労組、医療介護・自治体・教育労働者、作業所を運営する人、障害者の仲間、A君のお母さんも来られ、この場に問題をそのまま出して討論しました。
 障害者と団結して共に働いていきたい思い、しかしA君が退職してしまった葛藤の中で、この日の討論は重要でした。
 ここでつかんだことは、障害者と一緒に働くという前に、そもそも労働者の協働=共同とは、すべて補い合い、助け合って全体の力と団結で生き、労働していくこと。そして、お互いに自分を出し合っていくことで、わかり合っていくこと。今回の問題は、A君その個人を知ろうとしたか、知り合ってきたのか、A君の必要なことを知ろうとしたか、手だてをしてきたのか、聞いたのか、総括すべき私たちのあり方が明確になりました。
 部落差別、障害者差別、民族差別、女性差別……すべて差別とは階級分断のために資本と国が作り出したもので、労働者は階級として一つだ、差別分断との闘いが団結の中身を深く豊かにしていくとつかんだ議論でした。

★ヘルパーサ責に労組執行部を―「仕事と組合は別」という労組分断との闘い

 その少し後に、「ヘルパーのサービス提供責任者(サ責)に執行委員Bさんが加わる」という提案をしましたが、ヘルパーのほぼ全員が反対しました。
 民営化を阻止し、労組が自主管理する八尾北を団結の砦に、地域と共に生き、仕事も労組が責任を取り、団結して回していく中で、反対が起こりました。「仕事と組合は別だ」と労組に分断をもちこみ組織して、ヘルパーの中に分岐が生まれ、数人の人が退職しました。
 いま残っているのは、亡くなっていった人たちも含めて「八尾北が生きる希望」と、団結してやっていこうとする仲間たちです。新人3人を加え、新たな出発をしました。
 また厨房でも組合への結集が進み、団結して新しい人を育てています。
 お互いをよく知り、わかり合って、助けあい補い合うという障害者交流会でつかんだ協働ということが、現場の闘いを通して実を結んできていると実感します。

★楽しかった! 10月10日ヘルパー3人の新規組合加入歓迎会

 歓迎会には、子どもさんを含め24人が参加し、労組室に笑いがあふれました。普段接することがない組合員同士が顔を合わせ、「お昼ご飯が楽しみです」という話を聞いて、厨房の仲間は「とてもうれしかった」と仲間意識がうまれています。
 11月1日の第17回定期大会、そして、11・11秋の患者交流会で、地域のみなさんにこの労組の姿をぜひ見ていただきたいと思います。
 自治体労働者や教育労働者、地域の人たちが、私たちの登場を心待ちにしていることを、夏祭りを通してひしひしと感じました。この中に飛び込んでいきましょう。民営化=更地化絶対反対! 今こそ声を上げよう!住民訴訟に打って出ます。
 斎藤いくま全学連委員長と共に闘いぬいた総選挙闘争のうねりを、さらに、11月労働者国際連帯闘争に引きつぎ、広げ、地域ソヴィエト建設に前進しましょう。

私の職場,連載0332

Posted by kc-master