信越線電車立ち往生事故を弾劾する! 責任は民営化を進めたJR

2019年7月31日

月刊『労働運動』34頁(0336号09/01)(2018/03/01)

信越線電車立ち往生事故を弾劾する! 責任は民営化を進めたJRにある!

(写真 事故で最長16時間車内に閉じ込められた翌朝、雪の中を歩く乗客)

星野 文男(動労総連合・新潟委員長)

 1月11日夜、新潟県三条市の信越本線東光寺・帯織駅間で乗客430名の電車がひと晩立ち往生、最長16時間半も缶詰めになる事故が発生しました。当日は、海岸部の新潟市内で80㌢以上の積雪を記録し、平野部の三条市周辺でも同程度の積雪でした。年配の労働者は口々に「国鉄時代はこんなことはなかった」と言います。
 原因は、民営化以来の要員削減と利益優先・安全軽視のJR東日本の経営姿勢です。同時に、新自由主義特有の「選択と集中」で地方切り捨てを進める国とJRの政策があります。JR体制が引き起こした事故であり、絶対に自然災害ではありません。

除雪体制も「選択と集中」

 新潟支社は民営化以降、新潟30㌔圏を優先的に除雪する「線区別優先順位」をとりました。そのために只見線や飯山線など地方へ行くほど、除雪も後回しにする「選択と集中」体制になっています。新潟支社は1993年に「今後の冬期対策の進め方」として基本的考え方を発表しています。そこでは、「経営問題及び地方交通線問題の観点から、輸送確保の重点化、省力化、要員運用の弾力化を推進し、一層の経営資源の有効活用を図り、支社の経営基盤を強化する」として、「コスト削減、効率化」「大雪は異常時」「潜在化していた地方交通線問題を経営の観点から検討する」など、冬期に特別なコストをかけない方針を採ってきました。これが民営化JRの本音です。
 当日は、優先線区の新潟30㌔圏の除雪に追われ、それでも多数の運休・遅れが出ていました。当該電車は、運転途中に雪の重さでパンタグラフが降下して停車したり、雪溜まりに突っ込んで停車したりしながら運行していました。この時点で排雪作業の必要性は明らかで、除雪体制をおろそかにして運転を強行した新潟支社に最大の責任があります。

外注化と人員削減、コスト削減

 信越本線は、東三条駅から長岡駅間の8駅で、東三条と長岡駅を含む全駅に列車運行を判断する駅員はいません。切符を売るだけの駅員です。新潟支社発足時の駅員数は1200人でしたが、現在、列車運行に携わる駅員は100人以下にまで削減されています。列車運行を指揮しているのは新潟支社指令室です。指令室では「支社内各地の降雪状況は乗務員から情報収集」して運行を判断しているのです。そこまで人員削減が進み、人海戦術の除雪もできない中で、運転士ら数人で3時間近く除雪するという驚きの事態です。
 さらに、JRの徹底したコスト削減です。馬力のある排雪車両だったディーゼル機関車は廃止され、大型モーターカー並みの排雪車両で機能低下と配備台数不足になり、排雪作業の外注化によって立ち往生を長引かせたのです。また、中間の駅にあった待避線を廃止して、後続列車が先行列車を追い越せない線路状態にしてきました。
 運行業務の要員の削減、排雪車両の機能低下と外注化、税金軽減のための待避線の廃止などコストをかけない冬期体制なのです。

車両の軽量化

 また事故車両のE129系はステンレス製の32~37㌧の軽い車両で雪に弱いことです。従来の鋼製の115系車両は、42~44㌧で、7~10㌧も軽くなり車体も低くされています。2014年にJR新津車両製作所を、総合車両製作所(J‐TREC)とJR東日本テクノロジー(JRTM)へ子会社・孫会社化した新潟支社の目玉の新型電車ですが、軽量のために車体の下に雪を抱き込んで浮いてしまうことが露呈しました。 第4章 運行優先のJRの社風
 当該電車は、新潟駅から通常の倍以上の時間で現場まで行きました。東三条駅で乗務員が前途運行不能を決断・報告、輸送指令が判断するべきだったのです。事故を未然に防げなかったのは、特急いなほ脱線事故以来のJRの運行優先の社風そのものです。山手線電柱倒壊や新幹線台車亀裂など、死亡事故につながりかねないことが連続的におきています。JRの労務支配と御用組合の責任が大きいと考えます。

住民の命まで奪うJRの冬期体制

 JRは2011年2月には飯山線の踏切で、自動車運転手の死亡事故を引き起こしました。
 信濃川から水泥棒をしていたことが露見して、設備投資をしないまま飯山線を長野支社から新潟支社に移管したことが原因です。
 2016年12月には、三条市の踏切で高校生の死亡事故を起こしています。下り列車が行き過ぎたために踏切に入り上り列車にはねられた事故は、冬期間の踏切遮断棒を外していたことが原因です。
 コスト削減のJRの冬期体制は、住民の命を奪っているのです。

責任感皆無のJR

 2月13日、JR新潟支社の総務部長は「除雪をすれば運行に支障はないと判断した」と運行継続判断を居直っています。支社長が謝罪に出てこないことが、新潟支社の反省のなさを物語っています。後日、今井新潟支社長が、また冨田社長が会見を開いていますが、「JRは心から悪いと思っていない」という感想が寄せられています。
 「安全よりも金儲(もう)け」というJR東日本に対して、動労総連合・新潟は、合理化反対・安全輸送体制確立の立場に立って、JRに乗客の安全・労働者の安全を要求していきます。同時に、JRの100%子会社NTS(新潟鉄道サービス)の八代組合員解雇に「関与していない」と逃げ回る新潟支社を許さず、不当労働行為弾劾・解雇撤回、3月ダイ改粉砕へ現場から18春闘を闘うことを宣言します。

国鉄/JR,記事0336

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