地平線 入管法のさらなる改悪に反対!
地平線
入管法のさらなる改悪に反対!
田中 喜美子(牛久入管収容所問題を考える会)
安倍政権下の臨時国会において、外国人労働者の受け入れ拡大をめぐり、出入国管理・難民認定法(以後入管法と記す)の改定案をめぐる与野党の論議が一大焦点化しています。
安倍政権の「移民政策はとらない」の強弁をよそに、この国の人手不足・人材不足はあらゆる分野で極めて深刻です。新自由主義の世界的破産の中で貿易摩擦が深まり、国際競争力を高めることに政・財界は必死です。労働者なくして世の中は回りません。非正規労働、低賃金労働、現代の徴用工=奴隷労働とも揶揄(やゆ)される技能実習生制度の更なる拡大としての「特定技能1号・2号」の新設=外国人労働者の受け入れ拡大を必死で追求しています。そして、すでに日本には様々な形態で127万人の外国人労働者が存在します。彼・彼女らとの国境を越えた団結が求められています。
私が面会行動をしている牛久入管収容所の被収容者たちも、現在の国会論議・来年4月の入管局の「入国在留管理庁」への格上げに大いに注目し、「私たちに何か良いことが起きるのか」と聞いてきます。答えは「残念! これから日本に呼ぶ人たちや、いま技能実習生で働いている人たちのことで、入管に収容されている人や仮放免者、実習先から逃げているオーバーステイの人にはなーんも良いことはなさそうで、今いる外国人にとっては益々厳しくなる。ともかく私たちも、こんな日本の入管政策と闘ってひっくり返すように頑張る!」と話します。
入管法は俺たちを追い出すためにできた!
出入国管理及び難民認定法は、出入国管理制度(日本国への入国・帰国、日本国からの出国、外国人の日本国在留に関する許可要件や手続き、在留資格制度、入国管理局の役割、不法入国や不法在留に関する罰則等)、並びに難民条約及び難民議定書に基づく難民認定制度等を定めた日本の法令です。
この法律は1945年8月15日の日本の敗戦時、植民地支配されていた台湾省・朝鮮半島出身者210万人の法的地位をどうするかが元にあります。日本国憲法が発布された1947年5月3日の1日前、5月2日に最後の勅令として「外国人登録令」は制定されました。1951年出入国管理令が施行され、70年代には入管法上程に対する、在日の方々を始めとした激しい反対闘争が起き、入管法の成立は阻まれてきました。
1981年の国連難民条約の批准に伴い、難民の保護と抱き合わせの形式を取って、翌82年「出入国管理・難民認定法」として成立しました。その後も改定を重ね、2009年7月に「外国人登録法」が廃止、2012年7月より在留カード制(特別永住者を除く、全ての中・長期滞在者が携行を義務づけられている)が施行されています。
最近、私も出席した会合で、地位も名誉も財産もある在日2世の方が「入管法は俺たちを追い出すために出来たんだ!」と叫ばれたことに、その現実は良く表されています。
外国人を使い捨て労働者とする入管法改悪
国会では11月21日より衆院法務委員会において「今後5年間で、最大34万人、19年度は4万人の外国人労働者受け入れをめぐって」入管法の改定問題が実質審議入りしました。
法務省が19年度の受入人数の内、約60%を現在の技能実習生からの移行と想定していることにあわせ、技能実習生制度の様々な問題が噴出しています。
2017年末で技能実習生数は約27万4千人、そのうち実習先から「失踪」した実習生は7089人、この「失踪者」数には、違法残業や賃金未払い、実習先での暴力的扱いなど数多くの法令違反があります。
国会審議に合わせて法務省が提出した、「失踪外国人実習生への聞き取り調査結果」によると山下法務大臣の「より高い賃金を求めた失踪が約87%……」に対し、「最低賃金以下の平均時給500円程度、深夜まで働かされた」「残業代は時給300円、手元に入った給料はいろいろ差し引かれて6万円ぐらい」等々、実態を知る方々から猛烈な批判が起こり、山下法相は調査データ集計の誤りなどを認めました。しかし、法務省は「実習生側に問題がある」という立場を変えていません。
同時に、この制度では家族の帯同を認めない、永住権の適用年数にカウントはしない、人手不足が解消した分野では採用は廃止にする、等々まったく外国人を使い捨て労働者とする制度です。
しかも、安倍自民党政権・経済界は外国人労働者導入政策を推し進めない限り、国家の存立さえも危ぶまれるとの危機意識は強く、国会での与野党の論議もあわせて排外主義的論調も強まっています。「入管法改悪反対!」これのみです。
入管法違反で摘発された2982人の聞き取り調査の結果。そもそも摘発された多くの方が入管に収容されている、牛久の収容所にも退去強制令書が発付され品川入管などから移送され収容され続けている元技能実習生がいます。あるベトナム人は、実習先の建設現場で当初約束の給料16万円からアパート代やら、なにやらを引かれ手元にはいつも6万~7万円しか残らず、ブローカーに払った借金は返せない、一番嫌だったのは親方に「馬鹿野郎、この野郎」といつも言われ続け、蹴られたり、叩かれたりしたことだ、と言います。
入管収容所は、国家による「外国人」政策を強制する施設
全国の入管収容施設、ここに収容されている方々の最大の根拠は、「外国人である」ということです。日本人なら、例えかつて法律違反をした人であっても、刑期が終われば自由の身です。空港で難民申請したり、国内に入ってからの難民申請者でも、理由も知らされず仮放免が不許可になり、何故2年も3年も自由を拘束されなければならないのか! 非正規滞在の両親から日本で生まれ、日本で育ち、大人になって、なぜ国籍国へ「帰れ、帰れ」と言われるのか。
牛久入管収容所では11月20日から一つの収容フロアの全員と他のフロア合わせて31人が長期収容に抗議、処遇の改善を求めるハンストに入っています。
国家による外国人政策を強制する施設である入管収容所に通い続け、労働者の国際的団結と連帯を作り出していきたい。