40年ぶりの労働基準法大改定の動き(2)
(前回つづき)例えば「労働者」概念について、フリーランスや副業・兼業、テレワークなどの多様な働き方を射程に入れることで曖昧化し、使用者と労働者の集団的労使関係ではなく「1対1の労働者と会社のコミュニケーションや対話」という次元の話にしている。
「事業所」概念に関しても、労働基準法や就業規則の「事業所単位」原則をはずす議論が展開されている。後述の経団連による「労使自治に委ねる」論と符丁を合わせて議論がなされている。さらに「過半数代表者制度」見直しも議論の俎上に。
そもそも労働基準法は労働者を保護するための最低限度の規制だ。同じ場所で働く労働者を一律に保護しなければ労働基準法の名に値しない。
水町教授は、安倍政権の「働き方改革」の旗振り役を務めた労働法学者だが、この過程で反動化をさらに強め、労基法の全面的解体の先頭に立っている。
経団連の「提言」
1月16日に日本経団連が「労使自治を軸とした労働法制に関する提言」を発表した。
「現行の労働基準法は工場労働者のような一カ所に集まり、始・終業時刻が固定的かつ労働時間と成果が比例する労働者を前提とした画一的な規制であり、職場実態をよく知る労使が多様な働き方を実現していくことが難しくなっている」「労働組合の組織率が低下していることもあり、自社にとっての望ましい職場環境のあり方を個別企業の労使が話し合い決定するという、日本企業の強みともいえる労使自治を発揮できる場面が縮小している」ーこれは提言の冒頭の部分だが、このあたりに労基法解体の問題意識がある。
ストレートに言えば「労使自治」の名目で労働基準を会社の意のままにしたいのだ。提言にある「デロケーション」は「適用除外」「例外」を意味する。
例えば、労使協定や就業規則の「事業所単位」を外して本社で一括で設定できるようにする。<働く場所や時間を自由に選択したい意識が高まっている。労使の合意があれば法律による労働時間の一律規制を適用しなくても良い>と言いたいのだ。
早急に対象化を
これは単に法制度レベルの問題ではない。労働組合を完全に支配する、労働組合を解体して社友会に置き換えることを意味する。強烈な階級闘争バージョンの主張である。
この間の関西生コン支部やJRなどで展開される労組破壊攻撃にストレートに直結している話としてしっかり認識する必要がある。
本当に大変な議論が始まっている.一定の議論と報告を踏まえ政労使で構成する労働政策審議会のステージに進むと思われる。多くの人の協力を得て、この問題を検討し、警鐘を発し、大きな運動にしていく必要があると思う。(おわり)
「連載・職場における労働法と諸制度を考える」第52回(『月刊労働運動』2024年6月号掲載)より抜粋