時代を解く (9)マイナス金利導入 日銀政策が破綻

2019年7月31日

月刊『労働運動』34頁(0312号10/01)(2016/03/01)

時代を解く (9)
マイナス金利導入 日銀「異次元緩和」政策が破綻

(写真 ダイヤモンド・ザイより転載)

 日銀は1月29日、マイナス金利の導入を決めた。年初来、同時株安が止まらず、15年10~12月期のGDP成長率も2期連続マイナスとなる中で、日銀は対応を迫られていた。黒田総裁は、絶対にありえないと断言していたが、前言を翻すかたちで、ECB(ヨーロッパ中央銀行)に続いてマイナス金利導入に踏み切った。マイナス金利は通常はありえない政策だ。日本経済(そして世界経済全体)がある意味で緊急非常事態に入ったのだ。
 具体的には、各銀行が日銀当座預金口座にもっている法定の準備金を超えて新たに預ける部分に対して、これまで日銀が支払っていた0・1%の利子をやめ、逆に各銀行が日銀に0・1%の手数料を支払う。手数料という形で、お金を預けている側が利子を支払うのだからマイナスの利子ということだ。日銀の狙いはこれを起点に各種利子率全体を押し下げて資金を流動化させ、経済活動を活性化させることという説明がされている。

※国債購入に走る銀行 長期金利もマイナスに

 日銀は各金融機関に対して、低利であっても資金を貸し出せと尻を叩いているが、実際にはそうはならない。メガバンクを含む市中銀行は、経済活動への融資ではなく国債購入を増加している。国債価格は上昇し、国債利回りは下がった。あっという間に、10年物の利回りもマイナスになった。すでにゼロに近かった利回りが一段と低下し、それに一定額の手数料が加わるので、マイナス金利(元本割れで損が出る状態)が生じるのだ。銀行は、日銀口座に支払うマイナス金利と比較して、国債を買って生じるマイナスの方が少なければ国債を買う。国債ならばあとで日銀に丸ごと買わせることもできるという判断だ。
 日銀政策で経営が圧迫された金融機関は、国債を買うだけでなく銀行預金利子を下げ、しわ寄せを一般大衆に転嫁しようとする。ゆうちょ銀や三菱UFJなどはそうした動きに出ている。住宅ローンが下がるのは大衆にとって有利という話は悪い冗談の類でしかない。サブプライムローンと同じで途中から大借金を抱えることになるのだ。

※安倍の経済政策全面破綻

 資本主義は末期的な状態に落ち込んでいる。資本の投下が高い利益を生み、資本の増殖・拡大をもたらすという経済成長の「好循環」はもはやありえない。まとまった資金が資本としての果実(本来の資本の利子)を生まない状態になっているのだ。
 マイナス金利は〈過剰資本・過剰生産力状態〉の普遍的表現だといえる。意表を突いた政策で、再び、円安・株高効果をつくりだし「好循環」の見せかけを演出しようとした意図は3日で挫折。株は下がり、円は上がった。黒田日銀のインフレ率2%という目標も全面破綻、国債暴落のシナリオすら浮かんできた。日帝・安倍政権の経済政策は根本から大破綻している。3月から4月にかけて、安倍政権が経済の面でもギリギリ追い詰められることは間違いない。
 藤村 一行(動労千葉労働学校講師)