■特集- 北海道事故、川崎事故で分割・民営化の破綻は明らかだ!

2019年7月31日

月刊『労働運動』34頁(0290号03/01)(2014/05/01)

■特集 国鉄分割・民営化は破綻! 職場に闘う労働組合を!

北海道事故、川崎事故で分割・民営化の破綻は明らかだ!

今こそ反合・運転保安で闘おう
 

 

(写真 2011年5月27日北海道石勝線事故)

 国鉄分割・民営化から27年目にして、北海道事故をめぐって、その破綻が明らかになってきました。ブルジョア新聞ですら「国鉄分割・民営化が根本的原因だ」といわざるを得ないところまできています。国鉄闘争をめぐる時代認識と路線の柱に、分割・民営化の破綻問題をすえることが大事です。
 今年2月23日に起きた京浜東北線川崎駅事故は、北海道事故と一体です。

【はじめに】

(1)民営化・外注化の破綻が明らかになった。

  一切の責任は国土交通省・政府にある!
 国鉄分割・民営化と外注化は同列の重大な攻撃です。北海道事故は、直接的には外注化の破綻です。自殺した北海道の坂本眞一相談役が、2002年当時JR北海道の社長として「スクラムチャレンジ21」をつくりました。JR東日本の「ニューフロンテア21」(鉄道業務中心のJRから、スイカなどIC事業や駅ナカ事業などを中心としたJRに変えた)とまったく同じです。どちらも外注化がその柱です。北海道事故は、外注化が直接の原因であることを、北海道新聞が「分断」をキーワードにして明らかにしています。国土交通省、政府の責任を明確にすることが必要です。なによりも国鉄分割・民営化が根本原因です。
 同時に、これは新自由主義そのものの破綻であることを明確にすることが必要です。自治体の民営化、教育の民営化、医療の民営化、社会そのものの民営化が決戦段階を迎えています。一番民営化がしづらいところに市場原理を持ち込んで商品化を行おうとしている。新自由主義による民営化はアメリカが世界で先行していますが、日本ではいよいよこれからです。国鉄での民営化・外注化との闘いはこうした社会全体の民営化・外注化との最先端の闘いです。

(2)新自由主義攻撃の柱は外注化だ

 村上世彰が書いた『アウトソーシングの時代』を読むと、「アウトソーシングは産業組織の米」と言っているように、外注化が新自由主義の基軸的攻撃だとよくわかります。外注化を見据えないと新自由主義はわからない。新自由主義の破綻は、国鉄分割・民営化に最も現れています。北海道事故はそのことを明らかにしました。

(3)労働者は賃金奴隷であり、同時に社会の主人公である

 鎌倉孝夫さんは、新自由主義批判の中で、「労働者は社会の主人公であるというマルクス主義の核心を、反合理化闘争に適用したのが動労千葉の反合・運転保安闘争だ。これはきわめてすぐれた闘いだ。今こそ動労千葉の反合・運転保安闘争を教育労働者運動に適用できないか」と言っています。教育というのは、もっとも反合・運転保安闘争が生きる領域だと彼は言っているのです。
 マルクスの書いた『賃労働と資本』の本に、「労働とは何か」で明らかにされています。「労働とは、労働者自身の活動であり、彼自身の生命の発現である」と。労働とは人間そのものであり、人間が人間たるゆえんそのもので、マルクス主義の核心的テーマです。「社会の主人公」論を労働運動に適用したのが反合・運転保安闘争だと思います。事故問題を通して、反合・運転保安闘争をつくりだすことが必要だと思います。

(写真 2014年4月1日毎日新聞)

(4)JR北海道問題は、JR東日本問題だ

 北海道新聞で事故を明らかにしています。
 さらに、安倍-葛西(JR東海会長)の意思を体現した、日経新聞で今年2月3日から5回載った特集は重要です。
 第1回「不作為と甘えの果て」では、JR北海道とJR総連北海道労組との結託体制がJR北海道の危機的現実をつくりだしている大本になっていること、中島社長と坂本相談役の自殺問題も結託体制にあったことが暴かれています。
 第2回「いびつな稼ぎ頭」では、2002年に出されたJR北海道の経営計画の「スクラムチャレンジ21」で出された、鉄道事業から駅ナカ事業に転換することによって「いびつ」な構造になってしまったことが明らかにされています。
 第3回「避けてきた廃線論議」では、JR北海道の14路線区全体で、黒字は千歳線だけで13路線区すべてが赤字、大胆な廃線化が必要だが、しかし鉄道なしの北海道はなく社会そのものが崩壊するという内容です。
 第4回「火中の栗、拾う者なく」は、JR北海道の最終的な切捨て宣言で、責任を取る者がいない、最終的にJR東日本が責任をとるしかないが、それはJR東日本の危機に転化するということが書かれています。
 第5回「新幹線、青函トンネルの先に」は、2015年一部開通の北海道新幹線は、JR北海道にまかせられないと暴かれています。
 安倍-葛西のJR北海道問題は、まずJR北海道の崩壊・破綻を自ら宣言したことです。それは国鉄分割・民営化、外注化(第二の国鉄分割・民営化)が原因であることを自認したことです。自民党の石破幹事長は「JR北海道の経営赤字はどうやっても解決できない」と公言しているのです。自民党が国鉄分割・民営化を強行しておいて、今さらこんな発言は断じて許されません。
 そして、JR東日本がJR北海道人事に全面的に乗り出しました。JR東日本がJR北海道に副社長として送り出した西野という人物は、社員労(分割・民営化過程で当局が管理職を集めて結成した御用組合)の幹部で、鉄道労連(後のJR総連)の専従でした。JR東日本がJR北海道の人事を遂行している背景には、北海道新幹線をJR東日本に任せる案が出ていることもあります。その思惑もあって、JR東日本から保線責任者も含めて送り出しているのです。

【1】北海道事故は、分割・民営化ー外注化の破綻であり、重大事故が必ず起きる

 毎日新聞の記者が「大事故が起きるのは不可避だ」と書いています。最近、北海道を旅行する人が旅行を取りやめたということも続出しています。安倍政権と安倍のブレーンである葛西敬之(元JR東海会長)が推進しているJR北海道に対する施策は、全面的廃線化も含むJR北海道をつぶしてしまうような問題もはらんでいます。解決しない問題なのです。「経営形態の変更は絶対しないでくれ」とJR東日本は政府に言っています。それは分割・民営化の破綻が明らかになるからです。そこまで問題は深刻化しているのです。

(1)2011年5月石勝線特急列車の火災脱線事故―ディ-ゼル動車の故障

 2011年5月に石勝線事故が起きて、その4カ月後の9月に、JR北海道の 中島尚俊社長が自殺しました。これは、1949年7月の下山総裁の死以来です。

(2)2013年9月函館線貨物列車の脱線事故

2014年1月15日に坂本眞一相談役が自殺しました。JR北海道のドンと言われていた人物が、完全にJR北海道関係から排除され、「自分は何のために北海道のためにやってきたのか」と嘆いて自殺したのです。

(3)レール異常の放置と検査記録の改ざん問題

 JR北海道の事故発生は、大手私鉄15社の28倍です。函館、大沼の両保線管理室が、レールの継ぎ目の隙間に生じた異常な広がりを、本来とは異なる方法で応急処置したまま放置していたことが明らかになりました。監査の前日にもデータ改ざんを指示し、野帳の焼却などの証拠隠滅も行っているのです。

(4)分割・民営化でJR北海道はどうなったか

①国鉄時代に2万2640人いた職員数が、JR発足時には1万2700人に削減されました。以降7年間で社員数を1万1800人から9200人にまで削減し、現在は7000人になっています。国鉄時代の3分の1弱の人員になっています。
②赤字経営の中で、コスト削減し、とりわけメンテナンスコストを削減したのです。列車の検査・修繕部門を、外注化した子会社の自給750円のパート労働者に任せるなど、安全崩壊は極地に達しています。
③道内を飛んでいた航空機と競争し、スピードアップで事故が頻発したのです。

(5)JR北海道の経営方針の大転換

 「スクラムチャレンジ21」で利益の軸を鉄道から鉄道外(駅ナカ、ホテル事業)へ転換したのです。

(6)株価至上主義ーJR本体とグループ企業全体の再編

 動労千葉の機関誌に書いてありますが、株価至上主義批判が必要です。それまでの日本や世界では、鉄道は「安全が第一」が建前としてあり、国鉄には安全第一の「安全綱領」がありました。そういうことを完全にやめたということです。会社経営の目的を、株主にどれだけ配当金を渡すかに変えてしまったのです。会社経営の理念は、株主利益をあげることなんだと。その核心は、利潤をあげるために労働者を搾取し、工場法以前の労働者の無権利状態にまでにもっていっても構わないということを公然と掲げたということです。

(7)結託体制と北海道事故

 それとJR資本とJR総連の結託体制の結果、事故が起きているという問題です。国鉄分割・民営化を資本と一体となって推進したJR総連(当時は鉄道労連)が、民営化後も外注化に率先協力して、外注化とまったく闘わなかった結果、事故が次々と起きているのです。
 事故は現場の労働者の闘いなしに絶対なくならないことをはっきりさせなくてはいけません。JR北海道の現場で、声をあげなくてはいけないと思っている膨大な労働者の怒りと結びつき、声をあげられる闘いをどうつくりだすかという問題です。これは、反合・運転保安闘争の核心問題です。

【2】2・23川崎事故をどう見るか

 JR東日本もJR北海道と本質的に全く同じです。JR資本の側は、ついに起きてしまった事故に対して、ものすごい危機感をもって動き、事故問題を闇に葬ろうとしています。
 事故問題は経営側と労働者側のどちらが主導権を握るかが決定的です。事故が起きた時こそ、事故問題を闘いに転化するのか、事故問題を労働者支配の強化に転化させるのか、その攻防になるのです。

(1)なぜ起きたのか。それは外注化による事故だったと明確にすることが大事です。

(2)1999年2月の山手貨物事故の時に「保守体制のルール変更」の通達を3月23日に出して「工事の施工にまつわる作業安全上の注意事項は不要でありこの欄を削除する」とJRの責任回避を徹底させているのです。今年の2月23日川崎駅事故の時には、JR社員は誰もいなかったのです。ここをちゃんと暴露する必要があると思います。川崎駅構内の全体の動きをつかんでいるJRの労働者が一人もいない状態で、事故が起こるのは当然です。

(3)ニューフロンティア21による外注化が一切の原因です。

(4)線閉体制について
 結局、事故の全体がわかるようにすることが大事です。外注化の結果、仕事全体がわからない人がみんなやっているからです。

(5)外注化による事故が多発している。
 千葉では、蘇我でも、銚子でも、幕張でも事故が起きています。無数に表に現れない事故が頻発しています。実際に労働者が怪我をすることがなくても、一つひとつの事故を調べて暴露する安全点検闘争を本当にやっていかないといけないと思います。東日本も北海道と全く同じ状況にあるのです。

(写真 2005年4月25日尼崎事故)

【3】尼崎事故、関越自動車事故、笹子トンネル事故、ボーイング787事故、ヨーロッパ、韓国で鉄道事故が多発

 今、ヨーロッパで事故が多発しています。韓国でも事故が多発しているのです。韓国鉄道労組は事故と強制出向との闘いに入っています。労働者が鉄塔にのぼって抗議しています。韓国では、これから分割・民営化の攻防に入っていきます。動労千葉も2波のストライキで分割・民営化に闘いました。分割・民営化、外注化との闘いが世界中でテーマになってきているのです。

(写真 総武線のレール交換させたと報じる日刊動労千葉)

【4】反合・運転保安闘争の職場からの実践が求められている

 動労千葉が取り組んできた船橋事故闘争、レール破断問題、幕張事故問題をめぐる反合理化・運転保安闘争こそ大きな課題です。
 事故問題をめぐる論議の半分はこの反合・運転保安闘争です。事故問題を論じても、労働者が暗くなるだけではだめです。闘えば事故はなくなる、闘うことによって事故をなくせるということを全面的に示さなくてはならないと思います。
 北海道問題は、反合・運転保安闘争で勝利していく課題が突きつけられたという問題です。動労千葉が反合・運転保安闘争を闘って、千葉のレール破断問題で、2005年、100日間闘争という「スピードダウン闘争」やストライキで闘いぬき、ついに60キロを超えるレール交換を強制させる闘いをやりぬきました。
動労千葉は、そうした力関係の中で今職場で闘えているんです。あれはすごかったです。動労千葉がレール破断の危険箇所を減速運転し、背面監視の中で運転して処分を受けながらもレール交換を要求して、反合・運転保安闘争で闘った。そして、JR総武線の各駅で宣伝すると、すぐJR千葉支社に抗議の電話が来る。そういう闘いの中で、JR千葉支社はレール交換せざるを得なかったんです。沿線の乗客と動労千葉の関係を強めて、動労千葉に対する信頼をかちとったのです。
 だから今、木更津での久留里線のワンマン化反対で街宣したら、乗客が乗務員に「がんばってください」と声をかけてくる。長浦駅では、袖ヶ浦市が25億円も出して駅舎の改築を行ったのに、全面外注化-無人化し、緑の窓口も閉鎖し、住民が千葉支社に抗議の声をあげたんです。そういう住民と労働者の闘いが一体化しています。こういう闘いが、動労千葉の団結を強化・拡大していっているのです。反合・運転保安闘争は、最も組織を拡大する闘いです。
 労働者は社会の主人公です。労働者の誇りを最も貫く闘いが反合・運転保安闘争です。 1047名解雇撤回闘争で10万筆署名を貫徹する闘いと、外注化阻止の闘いと、そして事故問題に対して反合・運転保安闘争で闘うこと、これが国鉄決戦の柱です。その闘いを組織拡大に集約していくことです。
 (国鉄闘争全国運動事務局)

(写真 2012年10・1検修外注化阻止で動労千葉スト)

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Posted by kc-master