■特集- 幕張車両センターの事故、外注化の実態を聞く
■特集 国鉄分割・民営化は破綻! 職場に闘う労働組合を!
幕張車両センターの事故、外注化の実態を聞く
【参加者】
関 道利さん(動労千葉幕張支部)
木科雄作さん(動労千葉幕張支部)
2013年の構内事故は外注化の結果だ
○司会
京浜東北線・川崎駅構内で起きた脱線転覆事故は、業務外注化によって引き起こされた事故でした。幕張車両センターの構内でも同様の事故が起きていると聞きましたが。
●関さん
2013年10月に起きたポイント割り出し事故です。事故を起こしたのは、外注会社(東鉄工業)の保守用車です。夜中1時過ぎ、津田沼側から入ってきて、「南通路線」という線路に入り、ポイントを返して折り返し、19番線に行く作業でした。その日はそれと平行して、南通路線のすぐ隣の線路で別の外注会社(メカトロニクス)が洗浄機の点検作業をしていました。線路閉鎖をし赤色灯を出して作業していた。一方、保守用車側は通常だったら、南通路線に入ったらJRの運転当直(夜間の責任者)にポイントを19番線に開通するよう要請します。
運転当直のすぐ脇に信号所があってポイントを返したり線閉をしたりする仕事をしているわけです。しかしこの日、保守用車の運転士は、赤色灯が表示されているのを見て南通路の手前で止まり、運転当直に連絡しました。
業務がバラバラに外注化され、競合作業になっていることで相互に全く打合せられていなかったこと自体問題ですが、さらにそこに、信号所が1年前にCTSに外注化されていたという問題が重なって今回の事故になるわけです。外注化によってJRが直接CTSの信号所に作業を指示することができなくなっていた。東鉄工業とCTSの間も委託契約関係があるわけじゃないから直接作業を頼むことができない。だから、東鉄工業がJRにポイント転換を要請すると、JRはCTSの責任者に作業を発注。それを受けてCTS責任者が信号担当者に業務を指示するというマンガのようなことが起きるわけです。だけど、実際はそんなことをやっていたら仕事にならないから、運転当直のすぐ脇にCTSの責任者が来ていて偽装請負的に作業をしていた。それで、JRの運転当直が電話を受けたのを見たCTSの責任者は、保守用車が南通路線に入ったと思い込んで、ポイントを19番線に変えるよう信号所に指示してしまった。しかし、実際はその時、保守用車はポイントの上に居る状態だったわけです。車両が乗ったままポイント返し、動きだしたためにポイントを割り出してしまった。信号所が外注化されていなければ絶対に起きなかった事故です。
今まで団交でも「介在すれば絶対安全は崩壊する」と何度となく言ってきた。その典型ですね。「アイウエオ」と言って伝えても、誰かが介在すれば「カキクケコ」と言うかもわからないですよね。
●木科さん
普段の作業でも、検修当直はJRですが、その間にCTSが作業責任者として入っているんです。JRの時には、現場で僕らが仕事をしていてちょっと迷う時に、検修当直に判断を仰ぐ時は無線でよかった。「ちょっと現場に行って二人で見てみよう」というやりとりをしていた。しかし分断されてしまい、間に作業責任者を介さなくてはいけない。でも作業責任者は判断できないから、検修当直との間に立って僕らとやりとりをするはめになっている。僕が細かい作業内容とか言ったことを間に入った作業責任者が検修当直に報告し、検修当直が言ったことを作業責任者が僕に報告する。当然いつ事故が起きてもおかしくない。
●関さん
検修当直というのは、JRの検修作業の責任者で、うちの組合員もいる。助役ではないんです。車両のことを一番知っている者が当直としているんです。でも、外注化された結果、われわれはCTSの作業責任者としか指揮命令系統が無くなってJRと直接やりとりできないから、変な伝わり方をしたり、作業が遅れたりする。
●木科さん
作業をしないこともあります。CTSに検修当直がいないので、JRとやりとりしている間にCTSでは作業しないまま済ましてしまう。逆に場合によっては自分の判断でやってしまうこともある。
●関さん
伝言ゲームになるんです。今までは無線で検修当直と現場で話して「これで大丈夫か」と直接判断を仰いだ。いま、途中に入るCTS作業責任者は車両のことをよく知らない。不具合が発生した部位の名前を言っても、作業責任者なのに「?」みたいな反応をする人もいる。
●木科さん
4月からCTSが採用した新人が職場に来ています。だけど、CTSには彼らを教育する体制すらない。JRには「技術管理」という部署があって、技術指導や、どんどん導入される新しい装置についてみんなに教える仕事をやっています。でもCTSにはそんな組織体制はないから、俺たちに教えろと言うんです。われわれだって新しい装置はわからないですよ。「JRの技術指導に聞きに行ってもいいの」と言ったら、CTS吉野所長は「それいいんじゃないの」と言う。「おーそうですか」(笑)って。でも、「自らの経験や技術力で処理できなければ偽装請負になる」って厚生労働省の文書にも書いてあるんです。
●関さん
いまCTSで仕業検査や構内運転をやっているのは全部JRからの出向者です。逆に去年CTSで採用した者はJRに逆出向させてJRが教育している。つまり、外注化と言ったって全部JRがやっているんです。「出向」という形をとれば何でもあり。偽装請負そのものです。先日、車両の構造など何もわからない状態の新人を仕業検査の見習いに付けようとしたので「それはおかしいだろうと」と話したんですが、CTSとしての教育は無いに等しい。現場の労働者に丸投げ状態になっている。こんな状態で車両の検査修繕などできるはずもない。
CTSは清掃のことしかわからない会社です。でも、団交をやると清掃部門の部長が清掃ことさえわかっていない。清掃部門の現場の所長や副所長だって、自分の仕事のことが基本的にわかってないです。清掃をやってきた叩き上げは一人だけで、それ以外はやったことすらない。JRから天下りして高給とっているような人間ばかりです。人の手配すらできない。こんな状態で、仕業検査や構内運転を請負うなどできるわけがない。
外注化はなによりも将来が不安だ
○司会 外注化の現状と思いを話して下さい。
●木科さん
仕業構内の仕事は「日報」という作業計画書に基づいて車両を入換えたり検査する仕事です。でも、列車が乱れたり、故障したりすれば作業計画はどんどん変更されます。一日に何十枚も変更の指示書がでることもある。外注化前は計画をつくる部署と現場が一体だったからどんな輸送混乱時も協力して業務を回すことができた。だけど、外注化されてからはそういかなくなった。作業指示書も伝言ゲームになる。そこで時間がかかれば作業時間も長引く。一昨年の10月1日に外注化されて、10月中頃に結構なベテランの先輩が、信号が赤なのに電車を進めてしまう事故を起こしたんです。先輩は何十年やっていて初めての事故を外注化直後に起こした。夕方で、まさに指示書が乱れ飛ぶようなバタバタする時間帯だったんです。その事故は絶対に偶然ではないと思う。
●関さん
変更とか何かを、無線で作業責任者が飛ばした。それをいろいろ考えていて、信号が開いていないのに進行してしまったということですね。
●木科さん
2006年の幕張構内事故の後、ATSを着けさせた場所だったから事なきを得たんですが、もしなかったら違う電車と衝突していたかもしれないんです。JR側は「現場に不利益はない」などと裁判で言っていますが、まさに不利益を被っているんです。
●関さん
お互いに動いていれば正面衝突していたかもしれない。その場合は、死ぬかもしれないんです。
しかもJRは、どの業務を外注化し、どの業務がJR直轄なのかの線引すら明らかにしていません。「日々発注」だというのです。今朝発注したかしないかでその線引が決まるんだという論理です。CTSが独立して処理する業務など何も無いわけで、それ自身が明白な偽装請負です。しかも、われわれがCTSでストライキを構えた日は、「今日はその業務は発注しなかった」と言って、JRがスト破りを送り込むんです。外注化の名の下にスト権すら否定されている。明らかに動労千葉対策です。
●木科さん
精神的なものも大きいです。将来が不安です。原則3年でJRに帰ると言われているけれど、業務ごと外注されているから、戻ると言ってもどこに戻るかわからないですよね。その間もどんどん外注化が拡大されようとしている。戻ったから安心かと言えば、また外注化との闘いになる。結局、外注化、強制出向の先に何があるのかと言えば、「転籍」ということが見えている。そういう将来に対する不安が一番大きいと思います。
●関さん
3年で戻ると言っても戻るところがないんです。俺たちは今の仕事ごとJRに戻せと要求している。外注化自体がおかしい、本体でやるべきだと。
●木科さん
自分はJRに帰って運転したいと思っている。でもその場所ごと外注化されてしまったわけです。だからやはり業務ごと戻せと。
●関さん
昨年、CTSのプロパー社員が入ってきた時、話に行って、「君たちは本来JRに採用されるはずだったんだ。だから外注化を粉砕して仕事と一緒にJRに戻ろう」と木科が話したんです。私と支部長と青年部の5人くらいで、日刊動労千葉を持って「俺らこう闘っているんだ」と話に行ったんです。
●木科さん
組織拡大したいために行った。仲間をつくろうと思って行ったんです。
●関さん
阪急電鉄では、検修はもとより駅・車掌まで全部外注化した結果業務がまともに回らなくなって、業務を本体に戻したんですが、その時、下請け会社で採用された者も阪急本体の社員に全部転換させているんです。
06年幕張事故を反合・運転保安で反撃
○司会 2006年4月の幕張構内事故のことを教えて下さい。
●木科さん
俺はまだ東労組で、構内で見習いが終わって、臨検にいた時でした。
●関さん
事故が起きたのは、06年4月6日午前10時くらいです。車両の洗浄機が動いたランプにつり込まれて、信号が開いていなかったの行ってしまった。あわててバックしたために、丁度入区してきた列車とぶつかって列車が脱線して傾き、洗浄機も倒して、あらゆる面でえらい事故だということが誰が見てもわかるような状態でした。私は、まずうちの組合員かどうかを確認し、当該の組合員を確保して部屋に待機させるところから始まりました。
当日は20時か21時まで事情聴取をやられましたが、その後、動揺している当該の組合員を本部に呼んで「とにかく守るから」と話して気持ちを落ち着かせたんです。
その直後から、はっきり言ってクビとか言う言葉も出回っていました。3~4億円の損害という話も出た。そういう状況の中で、責任は当局にあるんだ、闘いに立ち上がろうと職場に訴えました。こっちが反転攻勢をかけられたのは、安全衛生委員会などで、以前からあそこは危険だと追及していたことが大きかったですね。話していた事実が明らかになったからです。基本的に洗浄機をかけてどこかの番線に移るわけだから、しかも、頻度からしたら一番使う番線なんです。「事故が起きる可能性があるからATSを付けろ」と要求していたんです。そのことを支部長が思い出して議事録を見ようとなった。議事録を出させたら、その部分だけが一行空白になっていて、どう見てもそこを削って議事録を出してきた。議事録が改ざんされている疑いが明らかになった。そのあたりから闘いの気運が燃え上がっていき、最初はクビだという勢いだったJR側のトーンがだんだん下がるのがわかった。いろんな意味でやりきった感じがしました。結果的にそこにATSが着いたんです。だから、外注化された当初の事故も防げたんです。
●木科さん
4月6日の事故は、僕が動労千葉に入るきっかけにはなっていると思います。そういう闘いを見せられて、労働組合というのはこういうものだと思った。それがオルグなんだと思うんです。そういうことを自分もやっていきたいと思った。一人を守ることが全体を守るわけですから。
●関さん
一人は万人のため、万人は一人のためということの実践を感じたのだと思います。こちらはそんなことを思って動いていたわけではないのですが、それを傍から見ていて、労働組合とはどういうものかを東労組と比べていたんだと思います。
●木科さん
俺が動労千葉に入ろうと思った直接のきっかけはやはり外注化です。東労組にいたのですが何もしない。動労千葉はストライキをやって外注化反対の旗で闘っていた。その中で自分が外注化反対なのにスト破りをやらされるのはおかしいと。東労組の青年に共通することです。
●関さん
当時の平成採は、スト破りに対して、結構敏感だったんです。「スト破りはできないので、会社からの呼び出しに対してどうしたらいいですか」と聞いてきたりした。ストライキは直前に通知するわけです。その後、当局は電話でスト破りのための休日出勤などを命ずるわけです。だから、「電話には出るな」と言いました。悩んでいる青年が多くいたということです。
●木科さん
今、そういう青年が少なくなっているのは俺たちのオルグが弱いからです。以前は周りが動労千葉で常にオルグされていた。
●関さん
それ以降は、スト破りも本体のスト破りを使わなくなったんですよ。支社から来たり、助役がやるとか方針を切り替えたんです。
組織拡大で外注化を粉砕する
○司会 最後に言いたいことをお願いします。
●木科さん
裁判も大事だけれど、現場の闘いが自分の土台で、組織拡大が大事だと思う。
●関さん
外注化を粉砕するためには組織拡大しかない。組織拡大を実現できれば外注化も粉砕できる。JRとCTS両方を貫く闘いをつくりあげる。現場で闘わないと裁判闘争も生きないと思う。偽装請負がこんなにあることを現場から発しないとわからないじゃないですか。外注化を粉砕してJRに復帰する。その時にはプロパーも一緒に来てもらうということです。これからも全力で闘いぬく決意です。