労働組合運動の基礎知識 第10回

2019年7月31日

月刊『労働運動』34頁(0305号10/01)(2015/08/01)

労働組合運動の基礎知識 第10回



小泉義秀(東京労働組合交流センター事務局長)

「生活困窮者自立支援法」の改悪攻撃

戦争法と労働法制全面改悪は一体の攻撃

 7月11日13時より動労千葉の第15期労働学校・「公開講座」があり、動労千葉の田中委員長の講演の後、相模女子大講師の奥貫妃文先生(労働法)が「労働法『危機』の時代~いま、労働組合は何をすべきか~」というテーマで講演を行った。
 「労働者・労働法の弾圧は、戦前に直結するということ」と戦争法案と労働法制の全面改悪は一体であるという点が最初に提起され、そのあと「労働法解体5計画」についての解説があった。5計画とは、①残業代ゼロ法案、②「企画業務型」裁量労働制の拡大、③労働者派遣法改正、④解雇の金銭解決制度、⑤生活困窮者自立支援法についてである。
 私は⑤の「生活困窮者自立支援法」について、先生の講演を聞くまでは何も知らなかった。今回は、このテーマについて書きたい。

竹中平蔵が積極推進した「生活困窮者自立支援法」

 「生活困窮者自立支援法」はすでに4月1日から施行されている。先生のレジュメには「就業訓練事業(中間的就労)は労働法の適用外。生活困窮者自立支援事業の委託先で、パソナなどの民間人材派遣会社が目立つ。人材派遣で労働者を不安定・低賃金な環境で働かせ、働けなくなったら『自立支援』を名目にして二重に利益を上げる。まさにハゲタカの貧困ビジネスを国が容認している」と記されている。
 自立支援制度の目玉は就労訓練である。「ひきこもりで仕事をした経験のない人がいきなり仕事に就くのは困難だから、訓練付きの就労の場を保障してあげましょう」という。本格的な就労をする一歩前の訓練就労のため、中間的就労という言い方をしている。
 しかし問題は、労働法・最低賃金法が適用されないことだ。時給100円や200円で働かせることが可能であり、この支援事業の委託先で目立つのがパソナである。派遣会社を全国展開しているパソナは竹中平蔵が取締役会長を務めていて、竹中は内閣府のあらゆる会議に顔を出している。派遣労働の利害関係者が派遣法改悪や、こういう法律の作成に深く関与しているのである。ネットで調べてみると、確かに奈良市や世田谷、板橋など全国で就労相談・支援事業の委託先は株式会社パソナである。竹中平蔵は「私が貧困対策を重要だと考えるのは、解雇規制の緩和など、これからもっと規制改革を進めることによってこぼれおちる人々を救うためだ」(『週刊東洋経済』4・11号 73頁)と述べている。
 4月1日から全国の自治体900ヶ所に相談窓口が設置されてスタートした『生活困窮者自立支援法』は、生活保護を受けさせないための水際対策でもある。金銭給付支援は住宅確保金だけであり、給付期間も原則3か月、離職後2か月以内、ハローワークで求職活動をしていることが条件だ。「脱法ハウス」というレンタルオフィスや倉庫に多人数を詰め込み、労働法や最賃法を度外視した劣悪な労働条件の下で、ハゲタカ貧困ビジネスの温床となる危険があるということだ。