最高裁決定を弾劾し、国鉄闘争の新たな発展にむけた座談会
最高裁決定を弾劾し、国鉄闘争の新たな発展にむけた座談会
JR採用差別は不当労働行為と認定!
戦争情勢下で国鉄闘争の火をさらに高く燃え上がらせよう!
―最高裁決定を弾劾し、国鉄闘争の新たな発展にむけた座談会―
【出席者】
葉山岳夫さん(動労千葉弁護団長)
伊藤晃さん(近代労働運動史研究家)
花輪不二男さん(国鉄闘争全国運動呼びかけ人)
山本弘行さん(国鉄闘争全国運動呼びかけ人)
田中康宏さん(動労千葉委員長)
石井真一さん(動労水戸委員長)
中村仁さん(動労千葉争議団)
阿部啓輔さん(国鉄闘争全国運動・新潟)
米山良江さん(国鉄全国運動・東京東部)
葛本京子さん(国鉄闘争全国運動・神奈川)
伊藤登美子さん(国鉄闘争全国運動・東京西部)
司会 動労千葉裁判の最高裁決定が出され大きな節目を迎えたので、それをめぐって論議し、これからの闘いの方向性を出す座談会にしたいと思います。
最高裁を揺るがした!
葉山 6月30日に最高裁第三小法廷の大谷剛彦裁判長が決定した。違憲の理由には当らないと、中身に立ち入って判断していない。原告、被告両方の上告を棄却した。
単なる事実誤認、法令違反決定になる場合は二通りあります。上告理由書を出した途端に3か月位して「上告理由にはあたらない」と切り捨てるパターンと、1~3年かけてバッサリというパターンがある。今回の場合は後者で、要するに簡単にはいかなかったということです。
その理由として、事実そのものが大変な問題だったということです。
第一は、葛西敬之(当時、国鉄職員局次長)と江見弘武(最高裁から出向)が作成した国鉄改革法自体の違憲問題です。決して軽々しい問題ではなくストレートに本件の判決に関係することでした。
第二は、井手正敬(当時、国鉄総裁室長)文書です。高裁段階で出した。そのこと自体は非常に重みのあるもので、国鉄改革法23条の中に「設立委員会が出したものは新会社に及ぶ」という明確な規定がある。国鉄分割・民営化に反対する労働組合に所属していた組合員を排除する目的でつくられたJR採用にむけた名簿不記載基準(不採用基準)が、こともあろうに設立委員会の斎藤英四郎委員長も関わってやったという事実は、ストレートにJRに及ぶ。これはJRの不当労働行為だ。したがって原状回復で解雇撤回・JR復帰としなければならない。
こういう非常に大きな二つの論点を抱えていて、簡単には切ることができなかった。
2013年に上告し、上告理由書を出したのは2014年1月、鉄道運輸機構側の上告理由書に対する反論は2014年6月に出した。それから1年経っている。その間8回にわたり署名簿の提出行動を行ってきた。提出前に小集会を開き、弁護団も一緒に署名を出したことも大きな要因になったと思います。「これは半端な構えではない。動労千葉は相当やる気だ」と最高裁も認識し、きちんとやらなくてはいけないとなったのではないかと思います。
その上で、国鉄改革法が憲法違反だとなると大変な問題になる。旧国鉄とJRは別法人で、関連するのは国鉄と清算事業団であり、JRという新会社は全く別法人だという、新自由主義下で強引なやり方をしてきた。十分に憲法違反であり得たわけです。ただ、この憲法違反の議論をまともにした場合は、中曽根が強行した国鉄分割・民営化そのものが根底からひっくり返るので、驚天動地の事態になる。うかつに違憲の判断はできないとなったのではないか。中身については知ることはできませんが、裁判官全員が一致してやれなかったのではないかと思っています。
もう一つは、斎藤も関わって井手と葛西が1987年2月2日午後あたりに、急遽JR採用にむけた名簿不記載基準を作成した。名簿不記載基準が設立委員会がらみになっていることをどう評価するかという点で真剣に考えた場合は重大な問題です。一審、二審で不当労働行為について認定していますから、その上で、設立委員会が関与ということになれば、JR東日本が関与ということになってくる。重大な論点として論議したのではないかと思います。3か月くらい経ってバッサリ切るのとは全く違う状況で、「単なる事実誤認、法令違反の主張にすぎず」という理由に敢えてしたのだと思います。非常に不真面目、反動的だと思います。起こる結果がどうあろうと裁判所としては審理を尽くすべきなのですが、反動的で安易な方向を選んで、双方ともに棄却するという決定を出してきた。
その結果として、東京高裁の難波判決が確定することになりました。「国鉄分割・民営化に反対する組合員を不当に差別する意思のもとに策定されたものだ」と。しかもこの問題に対しては、鉄道労連(後のJR総連)の強力な「採用において差別しろ」つまり「採用するな」という申し入れ等を、そういう圧力によって不採用基準=名簿不記載基準が出たということまで認定したわけです。難波判決は、東京地裁の白石判決を引き継いで認定した。これは覆しようもなかった。今年正月の弁護団会議では、最高裁は事実認定についてひっくり返すのではないかという意見も一部あったのです。今回それは出来なかったという状況だと思います。
難波判決でも白石判決でも「不当労働行為がなかったとすれば採用されたはずである」と認定した。しかし、どちらも解雇撤回は認めなかった。その上で、白石判決の場合は賃金について3年間(これもわけのわからない期間なんですが)明白な損害賠償を認定しました。難波判決では「ストレートに採用されたとは限らない」と言った上で、「しかしながら相当程度採用された可能性がある」と認定しました。そこで期待権を侵害した慰謝料を認定しました。最高裁はこれについてもひっくり返すことができなくて、難波判決が確定したということです。
最高裁決定は、当然の道理が通らなかったという点で許し難い反動決定だと言わざるを得ないと思います。
今後の問題は、運動の中でこれを解決していく、動労総連合の全国的結成と、それに基づくゼネスト体制の高揚の中で、解雇撤回・JR復帰を闘い勝ち取っていくことです。弁護団としても道理を徹底的に訴える中で、運動と連帯して闘うことができると思います。
労組の産報化攻撃と一体
田中 最高裁の決定については葉山さんがおっしゃった通りだと思います。棄却決定を絶対に許さない。あらためて全国の仲間たちに呼びかけて、解雇撤回、国鉄分割・民営化絶対反対の闘いを継続すること、もっと大きくしなければいけないと決意しています。しかし、僕らの闘いが最高裁を揺るがしたことも間違いないと思っています。数行の決定を出すのに1年9か月も費やした。最高裁はこの棄却決定で、国鉄分割・民営化の根幹にあたる部分が不当労働行為として仕組まれたことを認めざるを得なかった。最高裁にそれを事実として確定させたことは大きい。今の国家権力の動きからしたら絶対に認めてはいけない問題であったはずです。おそらく全部覆そうとしていた。だけどひっくり返すことはできなかった。
国鉄分割・民営化を戦後最大の労働運動解体攻撃たらしめた根幹にあったのは国鉄改革法23条で、新会社JRへの国鉄労働者の異動を新規採用という形で構成したことにあった。誰を採用しようが自由だと言って組合つぶし、解雇自由、不当労働行為を解き放った。その大元とも言うべき「採用候補者名簿」の作成基準自体が「国鉄分割・民営化に反対する労働者を不当に差別する目的と動機でつくられた」となったんです。国鉄分割・民営化が根幹において国家的不当労働行為だったことを最高裁に認めさせた。その点をもっと宣伝し、以降30年間労働者を襲ったことが全部根本において崩れ落ちたんだと明らかにしていかなくてはいけない。
一方、今回の棄却決定の背後には、安保戦争法案の制定に突き進む安倍政権の姿勢、現在の情勢があります。派遣法の抜本的改悪だとか労働時間規制の解体など労働法制の最後的解体攻撃も一体で進んでいる。今回の棄却決定には、国鉄闘争を圧殺する、闘いの継続をこれ以上許さないという国家権力の意志が示されていると思います。これを粉砕していかに前に進むかということを真剣に考えなくてはいけない。とくに、6・7集会で10万筆署名を達成し、提出行動をやった途端に棄却決定が出された。闘いが無数の怒りの声と再び結合しようとしていることを恐れたんですね。
敵が闘いを恐れつぶそうとしているんだから、われわれの進む道はひとつです。闘いの旗を下ろさない。これからが本当の闘いです。
中村 決定は両方とも棄却ということで、高裁の不当労働行為を確定させたということが一番重要なポイントだと思います。後はこちらの構えです。
労働者側が資本にどう向き合うのかが問われていると思います。非正規・貧困、それでも食わなくてはいけない現実を彼らは逆手にとって、「食うためには戦争に行け」と労働者を戦争の道具にしようとしている。だからこそ労働者が一つになれる状況を労働運動として作り出していかなくてはいけない。
動労千葉は、検修業務の外注化や乗務員の労働強化の問題に対して、安全・運転保安闘争を外注化絶対反対で闘い続けている。闘いの拡大が動労総連合だ。
動労水戸も、被曝問題で福島の人たちの現実を直視して闘っているから共感を得られている。資本の凶暴化、支配の限界は、労働者が絶対反対で団結できる状況がきていると思う。
動労千葉の解雇撤回闘争で作り上げてきたものは大きな財産です。みなさんの現場での闘争の糧にしていただいて、労働者が生きられる社会を労働組合の力でつくり出そう。闘いの先頭に立ち解雇撤回達成まで、みなさんと一緒に闘い続けます。
司会 三人の話を聞いて追い詰めているのは我々の方だと思いました。
葉山 最高裁は、6・7集会も成功し、2~3年でおしまいになると思ったのにますます発展しそうだと見ているのではないかと思います。
田中 われわれの闘いは間違いなく労働運動の歴史的な地平をつくっていると思います。国鉄分割・民営化以来の闘いも、外注化・非正規職化粉砕の闘いを貫いたこの15年間の闘いも、5年間の全国運動の経験も、これまでの労働運動の歴史にないものです。この地平を生かすことができるか否か、すべてはこれからの闘いにかかっている。
石井 動労千葉労働運動はかなり急激に発展している。沖縄に行っても動労千葉青年部の北嶋君とか木科君が先頭になって「ゼネストやるんだ」と沖縄の人に訴えて、かなり呼応してきていると感じた。
動労神奈川ができたことも大きくて、環境アクセスというJRの下請け会社に動労千葉系の労働組合ができた。動労千葉にCTS(千葉鉄道サービス)から11人も入った。
そういう中で労働者の怒りが高まってきて、その結集軸に動労千葉がなり始めていることに、彼らは怯えているのではないかと思います。今のうちに決定を出しておかないと大変なことになり、ますます発展していく。戦争法案も成立させなくてはいけないし、7月駅の外注化もある。JR九州の株上場などで、国鉄分割・民営化の破産情勢が誰の目にも明らかになっている状況の中で出したのではないかと思います。
やはりJR東労組の完全な破産ということが明確になって何の力もなくなっている。駅の外注化、組合員の出向・配転に対しても何もできない。そして「動労総連合を全国に」という方針でみんな闘い始めている。
沖縄と福島の問題も大きい。自民党の支持率が福島では20%台で、支持しない人は50%台になっている。ものすごい自民党に対する怒りがある。「汚染された地域に帰れ」と露骨にやっている。福島県民の怒りに結びつくことに危機感を持って、棄却決定を出してきたと思います。動労水戸も動労千葉に10年くらい遅れましたが、全国に行こうといよいよ飛び回っています。照沼君は大阪や福島の労働学校に行ったり、いろんな所を飛び回っている。会澤君は「東労組にいた時は全然楽しくなかった。田城郁の選挙なんか全然やりたくなかった。今は休みだったらどんどん行きたい」と、ほとんどの集会に顔を出しています。「今は自分が言いたいことが言える。外注化反対とかライフサイクル反対とか、戦争反対とか言えて非常に楽しい」と。みんなも若い人が来ることによって元気になっている。彼らもそこに恐怖している。
最高裁決定は大事件だ
伊藤晃 電話で決定が出たことを知り、前触れもなしに出るのかと思いました。その時、私が感じたのは最高裁としてはある意味で意に反した決定だったかもしれないと。葉山さんも「弁護団の中でも不当労働行為をひっくり返すのではないかという意見も一部にあった」と言われました。私も、最高裁が逡巡しているのはなんとかひっくり返したいからだと思っていました。でもそれができなかったとまず始めに感じました。
こちらが出した証拠を無視できなかった。裁判所は無視しようと思えばしてくるところですが、なぜできなかったかと言えば、運動が監視しているからです。10万人署名が監視している。向こうも相当神経質に、全国で集会があちこちで行われた状況も見ていたと思います。しかも、10万筆の署名が集まったことは背後にどのくらいの人がいるかわからない。そういうふうに感じたと思います。
最高裁が思い悩んだ内容を葉山さんは推測して言われましたが、われわれの運動がどのくらい彼らを悩ましたのかを広く知らせていく必要があると思います。またパンフレットをつくりましょう。
それから国家的不当労働行為を認めざるを得なかったということは、それ以後、国鉄分割・民営化をモデルにして社会保険庁とか不当解雇をどんどんやっていった。これが全部、不当労働行為だったんだ、つまり闘おうと思えば闘えたということです。これからも続くわけだから闘えるということをパンフレットで詳しく広げていく必要があるだろうと思います。いろいろな事例やケースなどがみんな不当だったと具体的に語っていく必要があると思います。
それから僕がもう一つ感じたのは、国鉄分割・民営化はやっぱり問題だったという話ですから、新聞がどう扱うのか目を皿のようにして見たのですが、出ていませんでしたね。なぜ出さなかったのか。マスメディアはなぜこの問題を扱えないのか。国家的政策の根本に触れるからだと私は思いました。今は労働運動に関することを意識的に扱わない。労働運動が持つ意味をあらゆるメディアも軽くしていこうということがあります。これもわれわれの運動でひっくり返さないとだめだという意味でも、大いにパンフレットの作成を進めていきたいと思います。
田中 伊藤さんも言われましたが、今回の棄却決定を労働運動にとって重大な節目をなす事態だと考えなければいけないと思います。国鉄分割・民営化は不当労働行為だったと確定したこともそうですが、運動側から見てもあらゆる人たちが、われわれがこれからどういう闘いを進めていくのかを固唾を呑んで見ている。善意と悪意の両方からです。これまでの常識から言ったら「国鉄闘争はこれで終わり」と考えている。戦後日本の労働運動の歴史の半分が国鉄闘争を軸にした歴史です。われわれは、これを乗り越えてさらに前進する。そういう固い決意をこめた新たな出発点に立ったんです。
花輪 僕らは地域の運動を進めていく中で、結論は不当労働行為を認定したら原職復帰なんです。
しかし今、政府が進めている労働法制の改悪で、不当労働行為を認めても金銭解決でやろうとしている。今の労働法制に対する攻撃がここにも現れてきていると思います。労働者、労働運動の側が対決していかないと、法令論だけで争っていたんでは解決しないし、前進もしないと思います。今、労働時間もやられている。不当労働行為という点で労働組合法もやられている。こういう状況下でわれわれは闘わざるを得ないという決意を訴え、高揚させていかないと闘いになっていかないと感じています。
石井 出向無効裁判をやっていて、裁判長が急に「総括的な準備書面を出せ」と言い出した。せっかく出向無効裁判で契約書が出てきた段階だったんです。こちらが契約書の不備、これは契約違反ではないかと出しているわけです。今度は会社が契約違反ではないという反論が出るところだったんです。
動労水戸も別の裁判をやっていますが、組合員が集まって総括をやっている時に、控え室の電気を裁判所が急に消しに来たんです。今回も口頭弁論があってまた消しに来た。「なぜそんなことをするんだ」と申入書を出したんです。法曹界が労働運動を弾圧しろと意思統一したのかという感じがした。態度が豹変している。
花輪 裁判所の姿勢を先取りして役人が裁判所の顔色をみながら嫌がらせをやっていると思います。
伊藤(登) 出向無効訴訟で徹底的に敵を追い詰めているからじゃないですか。契約書問題で向こうは何も答えられない。
田中 やはり国鉄闘争は全部収束させようという意志が働いていると思いますね。
花輪 僕は国鉄闘争の推移が全体的な労働運動に影響を及ぼしていることを嫌というほど知っていますから、裁判所の方も後退した判決を出すことをためらったのだと思うんです。明らかに攻撃的に出てきている。一つひとつが向こう側の姿勢として問われていると考えると、一つひとつの案件を切り離して考えることはできないと思います。
司会 追い詰めているけれど激しい攻防になっているということだと思います。今後の闘いに向けて意見をお願いします。
国鉄闘争の旗をさらに高く
山本 最高裁はこれで結着をつけることができなかったということだと思います。同時に、私たちが「不当労働行為を認めた。これで一段落」と考えさせることを片方では狙っていると思う。だから、最高裁決定をある意味では逆バネにして、国鉄闘争全国運動の旗をさらに高く掲げ、秋の各地区国鉄集会を拡大発展させていく方向を打ち出す必要があると思います。動労総連合の闘いを大きく包むような形で国鉄闘争全国運動が全国に拡大していく。7・1駅全面外注化の前日に出してきた。「不当労働行為ではなかった」と言えなかったと同時に、冷や水を浴びせてやろうという気持ちがあったと思う。最高裁決定を闘いの糧にして、秋に全国を国鉄闘争で席巻する方針を出す必要があると思います。
UAゼンセンの逢見会長と安倍が密会している。彼らの意図は明確なわけで、そこにある意味では唯一力あるものとして抵抗できているのは国鉄闘争全国運動であり、動労総連合の闘いです。これを糧にして秋に向かっていきたいと思います。
花輪 それと一緒に、連合の会長も呼ばれて安倍と会談している。中味はわからないけれど。この辺の情勢をつかむことが大事だ。
田中 UAゼンセンの逢見と安倍の極秘会議について連合会長は不快感を示している。一応、逢見としても「軽率でした」ということになっている。しかし、動いていることはそんなレベルの問題じゃないですね。連合も明らかに手を突っ込まれているから不快感を呈している。いずれにしても総評解散に継ぐ労働運動の再編攻撃が始まっている。さしあたっては連合の明確な改憲勢力化が安倍政権の狙いで、UAゼンセンは明らかにそのために日本最大の労組として育成されてきた。これも今回の棄却決定の背後にある重大事態と言って間違いない。
国鉄分割・民営化の時に問われた問題、つまり総評解体、連合結成にかけた敵の意図が、今まさに問題になっている。しかも、全労連も含めこの事態についてすべてが沈黙している。われわれが現場に分け入って知らせなければいけない。「UAゼンセンよ、連合を分裂させよ」とけしかけられ解体の対象にされているのは、自治労や日教組の地方組織、国鉄労働運動です。
刃を向けられているのは自分たちなんだということを、一人ひとりの労働者の問題として訴えていかなくてはいけない。この問題で職場に火を着けるんです。粉砕する力は必ず現場にある。これを吹き飛ばすことができれば戦争や改憲を止めることができる。戦争法案が国会で議論されていますが、そのためには教育を支配し、マスコミを支配し、労働運動を支配し、社会のあり方を全部戦争に向けてつくり変えなければならない。最大のターゲットは労働運動です。その意味では、国鉄闘争が貫いてきた課題が今こそ問われているんです。国鉄闘争を継続していく場合、いくつかの課題がありますが一つの柱はこれだと思います。国鉄闘争を担ってきたわれわれだからこそ、これに警鐘を鳴らし、現場の問題としてリアルに訴え、闘いを組織し、それを全国的につなげることができる。
花輪 実際には不当労働行為を認めていながら職場復帰は認めない、ある意味では手続き論的な片付け方をしている。次の問題は教育の問題で、安倍は謝ったけれども日教組叩きを始めたことは明らかです。沖縄の問題でも謝った形をとっているけれど、彼のブレーンがそういう議論をしていたわけです。現場の一つひとつは非常に重要な闘いだけれど、それを末端の闘いとして歪小化してはいけない。全体的なつながりの中で考え反撃していく姿勢をとっていかないと一つひとつがつぶされていくという懸念を持ちます。
司会 10万筆署名を先頭で頑張った現場の方も参加されているので、発言をお願いします。
米山 時期も内容も非常に政治的な決定だと思いました。署名を労組回りや街頭でやってきましたが、動労千葉、動労水戸が第二の分割・民営化攻撃に外注化反対で闘い、組織拡大していることを訴えてきました。UAゼンセンの会長を10月連合大会で事務局長にすえ、安倍は「現代の産業報国会」をつくろうと躍起になっています。社会丸ごと民営化で、自治労や日教組をつぶそうとしている時、国鉄分割・民営化に反対して解雇撤回を貫き、その後の外注化・非正規職化攻撃と闘い続け、韓国の民主労総と国際連帯を発展させている国鉄闘争をどうしてもつぶしたかったということだと思います。最高裁決定は、国鉄署名運動が武器になり、新しい人たちとつながることを放置できないという敵の側の悲鳴ではと思いました。解雇撤回署名というのは労組に入りやすい武器だったので、これからどうやっていくかなと思います。
東部では国鉄闘争全国運動をすぐに立ち上げました。月1回の会議をやる中で10万筆を絶対に達成したいと目標を1万筆にして取り組んできました。決めた以上はやらなくてはいけないと、集約できていない労組にもう一度行きました。「外注化阻止・非正規職撤廃」という路線で闘っているから労組に自信を持って入っていけました。
動労千葉がストライキに入る度に錦糸町駅前と新小岩駅前で街宣してきましたが、先日60代の女性が「今ストライキをやっているのは動労千葉だけだよ」と向こうから言ってきたんです。継続は力だと思います。解雇撤回だけではなく、外注化・非正規職化に対してストライキを闘っているのはすごいと、この過程で注目されています。
パンフレットの話が出たので、それを持ってもう一回まわり「闘いはこれから。動労千葉の外注化阻止・非正規職撤廃の闘いを共々やって、安倍を倒そう」と、切り開いた地平で次元を超えた闘いに入れると思います。
動労総連合を立ち上げる
阿部 2010年4・9和解は不当労働行為を問わない和解だった。動労千葉は闘って、不当労働行為を確定させた。5年間で4・9和解と比較しても、国鉄闘争全国運動、動労千葉、全体の力が最高裁を追い込んだことが大きいと思います。
その上で、支配階級としては不当労働行為があったとしてもお金で解決するという意図です。だからわれわれは運動で返していく。不当労働行為があったとしてもお金で解決することを日本の社会に定着させる新たな攻撃を絶対に許さない。不当労働行為をやったら原状回復だと運動を展開していくことが必要だと思います。
国鉄分割・民営化は、国鉄労働運動をつぶして戦争する、解雇自由、ストライキを根絶する社会をつくるためにやったわけです。動労千葉や動労水戸が体現した運動を全国に広げることを通して、分割・民営化にかけた狙いを打ち返すことができると思っています。
やはり動労総連合だと思います。JRの他の労働組合が全く対応できない中で、動労総連合を全国各地につくることが切実に求められる状況に入っている。新潟でもJRで闘ってきた国労組合員を軸に関連企業の労働者を組織し、できるだけ早く動労新潟を立ち上げようと、連日大奮闘しています。もう一つは、新潟での8100筆の署名に協力してくれたみなさんに対する丁寧な説明、お礼も兼ねて回り、動労新潟の支持者、課題によって一緒に闘ってくれる人を組織したい。それが安倍政権を倒す近道ではないかと思っています。
もう一つは、改憲阻止1000万署名を自治労や日教組、そしてUAゼンセン傘下の組合にも入って、改憲反対ということで頑張っていきたいと思います。
花輪 今の労働運動の中で位置づけなくてはいけないのは労働者の思想性の問題だと思うのです。8時間労働制もエグゼンプションという自主的労働時間の裁量制にしていく。解雇権、財政権、金も持っている資本だから曖昧な労働時間制は結局やられていく。労働者が血を流しながら闘ったメーデーがあって8時間労働制が世界に普遍的に敷かれていった。この原点に立って労働組合は闘わないといけない。先人たちが流した血の色が赤旗だと思想性の中で訴えながら、今の攻撃に対応していくことが必要だと思うのです。
連合傘下の中にメーデーの日を遊びに行くのにちょうどいいと言っている労働者も一杯いる。そういう人たちに対しても、次々と攻撃がかかってきている現実を知らしめること、闘いがどうして必要だったのかという歴史や考え方をきちんと入れていかないとふわふわっとしたお任せ主義の労働運動では通用しない。
現実には苦しめられている現場が蔓延しているわけで、労働者の役割は何なんだ、歴史はどうだったのかを気づかせて、その中で立ち上がる労働者の組織や運動を考えていかないといけないと感じています。
司会 大事な指摘をしていただいたと思います。意見をお願いします。
葛本 神奈川です。最高裁も1年9か月後に上告棄却決定を出し、不当労働行為確定の結論だったと、葉山さんのお話を伺えてよかったと思いました。伊藤晃さんが「すぐにもパンフを」と言われました。パンフも出るということなので、支援する会三浦半島として学習会を8月末位にやりたいと思います。10万筆署名は、三浦半島の小中学校と高校の署名が大きな割合を占めています。特に高校は以前から国鉄闘争支援をしていてかなりの数が出たので、教育労働者の闘いを発展させていくことが大事だと思います。
最近、闘争団4人が各々違う仕事をしていたことを知り、あらゆる職種が国鉄にあり、そこで生活できるような社会が成立しているところだったとわかりました。全国隅々にあり安全を守っていく、だから国鉄は動いていたのだと思いました。今は外注化で仕事をバラバラに切り離され安全が切り捨てられていく、JRが鉄道会社と言えない会社になっていると思います。
動労神奈川が結成され、5人の組合で現場は3人、青年2人と中村委員長です。小さい組合ですが、神奈川として支えつつ、実は支えられつつ全体が活性化しています。三教組の役選、JP労組支部長選挙にも立候補しました。動労神奈川を支えること、自分たちの組合を階級的なものに作り変えていくことで支えるという、両方でやっていこうと全体が力を得ています。
動労神奈川の非正規の青年は、契約社員とパートに分断されています。解雇攻撃にストライキで闘い3か月延長をかちとり、私たちは「すごい、やった」と思うのです。でも、本人たちにとっては3か月雇用で非正規、生きられない現実は契約社員もパートも変わらない。低賃金で、3月ダイヤ改定以降仕事はきつくなっている。非正規であること自体をひっくり返す、社会から非正規をなくす闘いをしていかなくてはいけない。それは動労神奈川一つでできることではなくて、私たちも労働組合で闘いをやって、社会を変えていくことだと思っています。
伊藤(登) 最高裁決定は、JR・国が国鉄闘争をつぶせない中で、安倍が戦争法案を出す情勢で出してきた。10万筆署名は大きかった。国策に対して一つの労働組合が闘えばこれくらいのことはできると示した。
2010年「4・9和解」から国鉄闘争全国運動という新しい闘いが始まりました。西部は労組回りが進まなかったのですが、水道や清掃の労組で民営化の実態・現状の課題などを話し合える関係ができました。さらに、地裁判決、高裁判決をもって物販闘争の中で、国鉄改革法の暴露、10万筆最高裁署名は決定的だったと思います。交流センター・支援する会会員が、自分の職場や地域でやりだしたことが成果です。私は学校関係も回りました。組合員のいない職場も多く、学校職場の忙しさにも関わらず、全員の職場署名をはじめ、思った以上の数の職場から郵送してくれました。
先日、久しぶりに杉教組総会を傍聴しました。1987年頃まで動労千葉と同じくらいの組合員数でしたが、本当に少なくなっていました。組合員から職場の問題が次々と出されているのに、なかなか闘いにならないという怒りともどかしさがあります。組合員としての誇りが大事で、労働者性・階級性と向き合っていくことが大事だと思います。「多忙化の中で、組合の職務をこなすのが精一杯。今の組合をどうしたらいいのか」という活動家の声も聞きます。
児童館闘争も安倍と闘う路線を明確にして闘う時です。
最高裁決定に対して、最高裁が触れたくないことに塩をすり込んでも抉り出すような闘いをしないといけない。支援する会としてパンフを持って、新たに職場に入ります。
闘いはこれからだ!
司会 今後の国鉄闘争全国運動と動労総連合の両輪の闘いの課題についてお願いします。
山本 国鉄闘争全国運動の勝負の時が、秋の各地での国鉄集会だと思います。呼びかけ人にも各地に行ってもらい、国鉄闘争全国運動にかける最大のチャンスです。千葉では館山集会をやります。
二点目は、不当労働行為を認めたのでJRは雇用しろという運動をやっていくことが必要。
三点目は、動労千葉はブルジョア法的には一定の結着がついた中で次の闘いにむけて一定の整理をしていかなくてはいけないと思う。私たちは動労千葉と一体の気持ちで闘っていくことが必要だと思います。
葉山 裁判上は一応決着がついた。しかし、労働運動上は全く結着がついていない。最終的には労働運動として結着をつける。道理としてこちらは正しいわけです。不当労働行為であって、斎藤英四郎も関わっていた。難波は「国鉄改革法23条の中では、何があろうと名簿ではずされた者は絶対に清算事業団に行く」と。しかし国鉄改革法が違憲だったら吹っ飛ぶんです。JRに対して採用すべきである、JR職員としての地位を確認しろという裁判を起こして2003年最高裁判決まで行った。しかし、JRに対する申し入れや要求ができなくなったわけではない。むしろ、これからです。こだわり続ける必要があると思います。
もう一つは、動労総連合の全国的な結成、階級的労働運動の高揚という中で、非常に大きな転機が生じてくる可能性がある。特に、動労神奈川の桑原さんの雇い止めについて私が相談を受けたのですが、不当労働行為について労働委員会に申し立てし長引くと思っていたら、向こうが逆に雇い止めを撤回すると。動労千葉、動労水戸の闘いがなければ考えられないことです。これはやられ出したら大変だ、また長期の闘いになると思ったから(笑)、向こうは撤回しちゃった。その底力には確信を持っていいのではないか。10万筆というのはその現れです。動労総連合の全国化というのは、非常に大きな正しい方針だと思っています。
田中 闘いは具体的です。理念的には誰しもが「闘いはこれからだ」ということに異論はないと思うのですが、現実にひとつの社会的な力、影響力をもった闘いとして持続、発展させていくために、全国から知恵と力を結集し、議論を重ねて作っていきたい。そのために、8月23日に東京で棄却決定に対する報告・決起集会を開催します。これまで全国から寄せられた多くの支援にお礼も言いたいし、何よりもこの集会に向かう過程でこれからの闘いの方向性について徹底的に議論したい。そして、秋には全国各地で国鉄集会を開き、できる限り足を運びたい。動労総連合を全国につくろうという取り組みも各地で進んでいます。こうした取り組みの中で国鉄闘争の本格的な発展、労働運動再生への芽をつくりあげる。機は熟していると思うんですね。情勢はわれわれにとって大きなチャンスです。
これからの闘いの方向性についてですが、このタイミングで棄却決定が出されたことを逆に反転攻勢のチャンスにしなければならないと考えています。
第一に、花輪さんが強調されたことですが、不当労働行為をこれだけ明確に認定しておきながら解雇撤回を否定したことを許してはいけない。おそらく「金銭解決」の先鞭とすることを意図している。だから何があろうと解雇撤回の旗を高く掲げ続ける。これはすべての労働者の権利に係わる問題です。「解雇金銭解決」は労働組合の存在そのものの否定につながる攻撃で、それに対する反対闘争と結びつき1047名解雇撤回闘争をより大きな炎にしたい。
第二に、今国会で安保戦争法案を強行としようとする攻撃に対し、明らかにこれまでとは違う根底的な時代への危機感と怒りの声が溢れだしています。国鉄闘争がその先頭に立たなければならない。なぜなら、国鉄闘争はこの攻撃と30年間対峙し闘ってきたからです。「労働運動をつぶして立派な憲法を安置する」というのが国鉄分割・民営化攻撃だったんです。それが今まさに眼前で火花を散らしている。特に、戦争に向けた新たな労働運動への解体・再編攻撃に立ち向かう力は国鉄闘争の中にこそある。これは先程述べたとおりです。
第三に、職場で第2の分割・民営化攻撃が全面的に始まっているという意味でも、闘いはまさにこれからです。
分割・民営化体制が全部破綻しようとしています。例えばJR北海道では第三者委員会が、6割ほどの線区を廃線にしなければ経営が成り立たないという方向を打ち出している。増田レポートが都市消滅問題で打ち出した「選択と集中」「すべては救えない」という路線がそのとおり貫徹されようとしており、北海道新聞すら「本当に選択と集中路線でいいのか」という社説を書かざるを得ない状況です。
北海道だけじゃない。JR全体が公然と「選択と集中、すべては救えない」をスローガンに突き進み始めている。安倍政権も未だ公然とは言えないことをJRが急先鋒で担う構図です。その典型が福島です。葛西は、「生き残らせることができる町は広野と楢葉だけだ、後は消滅させなくてはいけない」と言い出している。その一方で、原発事故をなかったことにするため、原発のすぐ脇を走る常磐線を全線開通させる。
第2の分割・民営化攻撃はまさに国策として貫徹されようとしている攻撃です。その攻撃の最大の核心はこれまでのレベルをはるかにこえた全面的な外注化攻撃です。現在激しく進められている駅の丸投げ外注化攻撃ですが、JRは車掌や運転士まで別会社化するところまで外注化を進めるハラです。そのためにグループ企業の大再編が始まり、駅ではCTSなどの労働者に転籍が強制されている。転籍になった労働者は、もともとJRを5年で雇い止めになった労働者です。それがCTSにもっとひどい労働条件で雇われ、そして今度は転籍。こうやってJRとJR関連で働く労働者すべてが嵐の中に叩き込まれようとしている。
これは、安倍政権がやっていることの露払いです。派遣法の抜本改悪、残業代ゼロ法、解雇金銭解決を全社会に貫徹するためにJRで第2の分割・民営化攻撃が企まれている。今回の派遣法改悪で起きることは大変な問題です。全派遣労働者を対象にして「3年で使い捨てて取り替えていく」ということが日常化する。有期雇用労働者は5年をこえたら無期雇用にしなければいけないという法「改正」も2018年から具体的に動き出す。非正規の労働者が5年で何百万人という規模でクビを切られていくというかたちで運用されかねない。まさに総非正規職化攻撃です。
第2の国鉄分割・民営化とは、この歴史的な攻撃を貫徹するために、再びJRをそのモデルにしようという攻撃です。国鉄改革法ができ、その年に派遣法が施行された国鉄分割・民営化の時と同じ構図です。国鉄分割・民営化反対闘争は、外注化粉砕・非正規職撤廃闘争として、今こそ闘いの全面的な強化が求められているのです。
第四に、新自由主義攻撃が自己崩壊しようとしている状況の中、韓国ではパククネ政権の退陣を求めるゼネストが闘いぬかれています。国鉄闘争、とくに民営化・外注化・非正規職化反対、解雇撤回の闘いは、この時代に国際連帯闘争の中心的課題としてこれまで以上に大きな意味をもとうとしていることです。とくに、6月7日の集会で発表した「民営化と闘う日韓鉄道労働者共同声明」は画期的な新たな一歩です。
国鉄分割・民営化以降30年間闘ってきたこと、その全てが勝負になってきていると思っている。これまでの闘いは、これから始まる闘いの準備だったのかもしれない。いよいよ勝負のときがきたと感じています。われわれはこの10、11月にもストライキを配置して組織拡大、動労総連合の本格的な発展をめざす挑戦に踏み出す決意です。
司会 これからの闘いの方向性を明らかにしていただきました。今日はどうもありがとうございました。 (敬称略)