労働組合運動の基礎知識 第14回小泉義秀(東京労働組合交流センター事務局長)共済年金と厚生年金が一元化

2019年7月31日

月刊『労働運動』34頁(0309号11/01)(2015/12/01)

労働組合運動の基礎知識 第14回
小泉義秀(東京労働組合交流センター事務局長)
共済年金と厚生年金が一元化

10月から年金が一本化

 これまで公的年金の2階部分(被用者年金)は、会社員が加入する厚生年金と、公務員や私立学校の教職員が加入する共済年金とに分かれていた。これが2015年10月から、共済年金と厚生年金が一本化された。優遇されていた共済年金の格差是正というが、ペテンだ。
 そもそも年金の額は働いていた時の収入によって決まる。多くの掛け金を支払った労働者がより多くの年金を受け取ることができる。現在、非正規の青年労働者は年金を支払うことも、将来受け取る可能性もない状態だ。その意味ですでに年金制度は破綻している。これから全労働者を非正規雇用に叩き込み、基礎年金まで株に投入している現実の中で年金制度が崩壊するのは時間の問題である。その崩壊の前に取れるところから絞り取り、矛盾を先送りしようというのが今回の一元化の本質であり、公務員攻撃の一環だ。
 今回の一元化により公務員の毎月の掛け金の算定方法が厚生年金の基準に合わせられた。その基準の月は転換期を理由に2015年6月の1カ月だけだ。これまでは「毎月の給与×1・25」が年金給付の基礎額=掛け金の基礎額だった。厚生年金の場合は一時金や交通費などあらゆる手当、残業代などすべてその基礎額に入る。したがってたまたま6月に残業手当が多かった人は6月だけ特別に収入が多い。10月~来年の8月まで毎月この6月の収入を基準として年金の掛け金を支払わねばならない。そうすると全く残業がない月もたまたま残業代が多かった月の分の掛け金を支払わねばならないのだ。そのため掛け金がこれまでより2万~3万円も増えた労働者がいる。これが来年8月まで続く。来年9月からは4~6月の3カ月の給与の平均が基礎額となるのだから今回だけひと月基準というのは不公平だ。
 年金の掛け金は共済年金も厚生年金も保険料は2004年度から毎年0・354%引き上げられ、当時13・58%(労使折半)だったものが、2017年度には上限の18・3%に達する。共済年金の人は2018年に、私学共済の人は2027年に18・3%まで上がり、統一される。しかし、これ以上上がらないという保証はない。

株安で10兆円の運用損

 アベノミクスの株高のために年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は昨年11月に基礎年金部分まで株に投入した。国内債券をこれまでの60%から35%に縮小する一方で、国内株式と外国株式をそれぞれ12%から25%に拡大。外国債券も15%に引き上げた。その結果7~9月期の運用成績は10兆円のマイナスになった。しかもこれから海外の低格付け(ジャンク)債の投資にも手を出すという。財政危機にひんしているギリシャ国債も含まれている。とんでもないことは、株式の運用で損失が出たら「保険料を引き上げて対応する」と担当者が述べていることだ(10月30日東京新聞「こちら特報部」)。安倍を打倒し、資本主義社会を転覆するしか労働者が生きる道はない。