時代を解く第12回 パナマ文書暴露とは何か

2019年7月31日

月刊『労働運動』34頁(0315号10/01)(2016/06/01)

時代を解く 第12回
藤村 一行(動労千葉労働学校講師)
パナマ文書暴露 (タックスヘイブン)とは何か

(写真 2016年5月16日朝日新聞より)

 パナマ文書という情報暴露が世界を震撼させている。5月10日に世界調査報道ジャーナリスト連合(60カ国400社が参加)の発表というかたちで基本情報が公開された。情報量的には、ウィキリークスの1500倍という史上前例がない規模だ。内容は、タックスヘイブン利用者のためのパナマにある法律事務所、モサック・フォンセカ社の約40年間分の内部文書の暴露である。5月10日に公開されたデータは、この事務所を通して英領バージン諸島などに設立されたペーパーカンパニー(実体のない会社)21万社とその役員や株主(利用者側の個人や法人)の名前である。

※「租税回避」への出入口 

 タックスヘイブンを日本語にすれば「租税回避地」である。高額所得者個人や企業などが、利益を国外に移転して税金を逃れ(脱税)、資金の出所を隠し(資金洗浄)、さらに国境を越えた悪どい投機でボロ儲けしていく(国際金融投機)、そのための通過点として欠かせない地域や「国家」、それがタックスヘイブンである。このタックスヘイブンは、旧イギリス植民地や海外領を中心に全世界に広がり、ロンドンのシティやウオール街などと特別の結びつきを持っている。アメリカ国内やヨーロッパ先進国内にもほとんど同じ「天国」が何カ所もある。こうしたルートで、ヘッジファンドなど国際的な金融資本による合法・非合法の投機活動が抜け道自由の形で可能となっている。
 タックスヘイブンの存在そのものが悪である。ボロ儲けしている連中が巨額の脱税をしてさらにあくどく儲けるための抜け穴。その分がすべて「格差」と搾取の拡大、増税による大衆収奪、社会保障などの削減として労働者に襲いかかってくるのである。それ自体は合法なものだという説明などまったく認められない。タックスヘイブンを利用して一番あくどく脱税し、最大の資金を動かしているのは日本のブルジョアジーで脱税額だけでも年間数兆円と言われている。今回、イギリスのキャメロン首相、ロシアのプーチン大統領、中国の習近平国家主席、ウクライナのポロシェンコ大統領やオーストラリア、アルゼンチンの首相らの名前が出てきた。アイスランドの首相は、名前が出ただけで辞任した。

※99%の階級的怒りを

 だが一部の悪質な連中だけが問題なのではない。より重要なのは、それが今の新自由主義的な資本主義にとってなくてはならない「世界システム」の一部だということ。だから、世界の帝国主義ブルジョアジーは、ある程度の規制をかけながら批判をかわし、この仕組みを再編成しようとしている。今回の暴露はそのためのしかけである可能性が高い。
 だが世界の99%にとって絶対的な悪であるこのような制度そのものへの労働者の怒りを叩きつけなければならない。そして真に力のある労働運動の階級的な発展を作り出そう。