特集 6・11国鉄闘争全国運動集会へ-呼びかけ人会議から

2019年7月31日

月刊『労働運動』34頁(0327号02/01)(2017/06/01)

特集 6・11国鉄闘争全国運動集会へ-呼びかけ人会議から

国鉄分割・民営化から30年―戦争と民営化に対決する新たな闘いへ―

国鉄1047名解雇撤回!

国鉄闘争全国運動6・11全国集会へ

 6・11国鉄闘争全国運動の全国集会にむけて、動労千葉、港合同、関西地区生コン支部の3労組の論議を踏まえて、4月に呼びかけ人会議が開催されました。動労千葉の田中康宏委員長の提起と各呼びかけ人からの6・11集会にむけた訴えを掲載します。

◎田中康宏(動労千葉委員長)

 この間、動労千葉と動労総連合は、3・4ダイ改、常磐線の4・1延伸に対して統一ストライキを配置し、17春闘と結合して闘って来ました。
 国鉄分割・民営化以来の転機をなす攻撃がJR再編を中心にして動いている。一方では鉄道業務をすべて外注化して労働者を転籍する雇用の破壊攻撃。他方では「戦略的ダウンサイジング」という言い方で北海道をはじめ地方ローカル線を切り捨てる攻撃が進んでいます。
 動労千葉は、具体的には、ダイ改による「系統分離」と称する内房線の削減に対して館山に焦点を当てて闘いを展開しました。館山では10年前の運転区廃止問題以来、地域での闘いが持続して取り組まれてきた。今回は、地元の方が中心に呼びかけ人となって「内房線と地域を守る会」を立ち上げ、170人で集会を行いました。
 新自由主義によって破壊されている地方の現実の中で新たに始まった変化だと感じています。第二の分割・民営化攻撃と闘う中で労働者の再結合を生み出すことに確信を持ってやってきたことは間違いなかった。
 社会を飲み込む国家的大リストラの攻撃に具体的な形で闘いが展開できることを示したい。これが3月ダイ改で追求した課題でした。大きな成果だったと思います。
 3月5日には、動労総連合の統一行動として「分社化・転籍攻撃粉砕、1047名解雇撤回」を掲げてJR東の本社抗議行動を闘いました。
 CTS(JR千葉鉄道サービス)の就業規則改悪問題では、5年でいったん全員解雇の攻撃を闘いによってひっくり返し、面談で65歳まで働く意志を示せば選別はしないと団体交渉で確認しました。
 今年1年間で動労千葉の組合員40人が60歳で退職し、CTSに再雇用されます。国鉄分割・民営化から困難な闘いをくぐり抜けてきた組合員がCTSに行きます。CTSにはすでに組合員が十数名がいます。ここで力を発揮する枠組みができれ組織拡大は間違いなくいく。絶対にCTSの過半数をとるつもりです。

JR東に申し入れ

 国鉄1047名解雇撤回闘争については、JR東日本に第3次の申し入れを行いました。
 井手文書では、JR設立委員長の斉藤英四郎が不採用名簿の作成を命じたと言っている。斉藤が命じたのか命じていないのか。そこをはっきりさせろ、この問題について団体交渉を開かないことは不当な団体交渉拒否だと申し入れました。執念深くJRを攻めていきたい。
 外注化強制出向無効確認訴訟が6月7日に結審になります。この日に集会を開催する予定です。外注化がこれからの労働運動の焦点だと思います。
 裁判でJR側は強制出向の正当性をまったく主張できなかった。また労働局が偽装請負の疑いをJRに示していたことを裁判で初めて知った。闘いはJRをギリギリ追いつめていた。裁判で、外注化を10年単位で遅らせ、JRを追いつめたことが分かり、弱点が鮮明に見えました。

共謀罪阻止の闘い

 先日、関西生コン支部と港合同の3労組で議論の場を持ちました。
 関生からは「いま必要なのは行動。特に共謀罪は労働組合にとって死活問題だ」と提起されました。国鉄闘争と一体で闘おうという議論があって6月11日の翌週には共謀罪が強行採決される情勢です。本気で考えようと。
 港合同からは、大阪市営地下鉄の丸ごと民営化計画が市議会を最終的に通ったわけですが、「こんな民営化を認めてどうするんだ」と訴えると迷惑なことのように言われる、と。この労働組合の現状を深刻に訴えていました。民営化計画が今まで市議会を通らなかったのは、地方交付税の関係などで自民党が渋ったからです。こういう現状に本当に憤っていました。
 だけどもう一方で、北海道新聞の世論調査では「国鉄民営化は国策の間違いだった」が82%に達している。民営化とか新自由主義で破壊された社会の現実に対する怒りや認識などの潮目が変わり始めています。
 内外情勢は、韓国ではパククネ政権を退陣に追い込んだ民主労総の闘いを先頭とした民衆のすばらしい闘いが展開されています。もう一方ではトランプ政権が登場し、安倍政権と一体となって朝鮮半島に対する軍事力の行使、戦争の危機が切迫しています。
 日本では、安倍政権の森友学園、沖縄基地建設、特に森友学園では典型ですが、社会のとんでもない反動化と腐敗が見えてきます。国鉄改革が生み出したものが北海道の現実で、国鉄改革と一体で中曽根以来の教育改革が生み出した典型的姿が森友学園ではないですか。ここまで問題が噴き出しながら安倍が開き直れる現状を何とか変えないといけないと思います。
 安倍政権は共謀罪を本格的に審議入りしました。絶対に通してはならないと思います。
 動労千葉は、分割・民営化のストライキで40人が解雇されました。28人の公労法解雇については組合機関紙に「誰それがストに賛成の発言をした」と載ったことが解雇理由にされました。
 ジェット燃料闘争の時も遵法闘争から始まりましたが、その時も当時の法務大臣は「動労千葉は労働組合を逸脱している。遵法闘争に刑事罰を」と記者会見で述べています。もし共謀罪があったら、文字通り〝共謀〟〝準備〟の段階で刑事罰の対象になり、方針を決定した時点で弾圧を受けていました。労働組合の立場から見ると、本当に労働組合の存在が否定されかねない事態です。危機感を強くしています。
 そう考えてみると、戦争と民営化に反対することが十数年間の2大課題でした。今度の6月集会のメインスローガンを「戦争と民営化に反対する新たな闘いに立ち上がろう」としたい。

労働運動の芽つくる

 新自由主義が生み出した社会の崩壊的現実の中における労働運動の課題を真剣に考えないといけないと思います。館山の経験なども含めて、新自由主義が生み出した社会の崩壊と、それに対する労働者の団結が、医療・教育・自治体の職場で、労働運動の再生を生み出すきっかけになります。さまざまな職場と労働者が置かれている条件と社会全体の関係の中で具体的な一歩を議論することができれば労働運動の芽をつくることはできます。
 ここを国鉄闘争の経験の中から全体に訴えたいと思います。6・11集会をこのような趣旨で開催したいと思います。

◎葉山岳夫(動労千葉顧問弁護団長)

 トランプ政権によって朝鮮戦争が行われようとしています。安倍首相はトランプの東アジアへのコミットメントを賞賛し、参戦の決意をしています。
 戦争絶対反対を貫く行動が絶対に必要になります。この闘争の中でこそ安倍を倒す可能性もあります。これは韓国の民主労総の闘いから学んだことです。
 共謀罪の攻撃は戦争の一環としてとらえることが必要です。労働組合運動を直撃する弾圧立法です。例えば政治ゼネストは違法と言われていますが、政治ゼネストの決議自体が違法行為となります。威力業務妨害・信用毀損罪・強要罪・逮捕監禁・偽証問題などの労組弾圧にも強力な武器を与えることになるのです。しかもそれが刑事訴訟法改悪による盗聴・証人隠し・司法取引による裏切り者を使って有罪をめざすことと相まって戦争遂行のための共謀罪という意味が強いのです。
 関西生コン支部の切迫感はよく理解できます。国鉄分割・民営化、共謀罪が戦争政策と一体であることに私は強い危惧を持っています。
 一審の白石判決、二審の難波判決、そして最高裁で不当労働行為を認めざるを得なかったのです。井手文書では、斎藤英四郎・JR設立委員長が不採用基準の策定を葛西に命じ、葛西がこれを作成しました。
 不当労働行為が確定したことは、彼が作った国鉄改革法23条5項の〈設立委員会の行為は新会社の行為とする〉という明文に直撃しています。「当社とは関係ない」は絶対におかしいのです。
 解雇撤回の闘いは裁判から労働運動に引き継がれました。執念深く徹底的にこだわることに意味があります。2~3回の申し入れで次の闘争とはなりません。国鉄分割・民営化の反動性、不当性、反労働者性を暴き出す闘争の一環で闘う意味には根底的なものがあります。6・11集会でもこの意味を強調していただきたい。6・11集会は朝鮮戦争切迫情勢と連動しタイムリーな企画だと思います。

◎金 元重(韓国労働運動史研究家)

 韓国では憲法裁判所でのパククネ弾劾審判の結果が出て、大きな闘いをかちとった自信、勝利感は大きいです。問題は、これからの闘争です。東京では6・11集会ですが、韓国では6・30社会ゼネストです。偶然にも同じ月に山場を迎えました。
 6・30社会ゼネストは、この間の労働弾圧、労働法改悪の労働積弊を打ち破ることを提起しています。大統領選はおそらく「共に民主党」のムンジェインが当選すると思いますが、その体制に民主労総がどう要求を突きつけていくのか。鉄道民営化を元に戻す政策を突き付けています。
 全体的には、パク政権を倒した自信から先が見えてきました。つまり単なる政権交代だけではなく社会大改革闘争、労働積弊を打ち破る闘争として6・30社会ゼネストという戦略的方針もいいのではないかと思います。
 私たちが民主労総の闘争から何を学ぶのか。館山闘争は地域住民との結合の努力の成果だと思います。今度の「ロウソク広場革命」も、民主労総独自の力ではできませんでした。より民衆的・大衆的基盤のフレームをつくることによって成し遂げられたのです。
 保守反動マスコミは、それを断ち切ろうと悪宣伝をしたのですが、民主労総はそれに乗らなかった。民主労総は遠慮しすぎという見方もあります。民主労総はかなり慎重にやりました。市民団体・社会団体・中高生まで含めた若い人たちとの結合を大事にして、無理に自分たちのスローガンを押し付けない、そういう配慮は何回か見られました。ハンサンギュン委員長の即時釈放のスローガンについても異議が出てきました。ロウソク集会で出していいのかと。その時もごり押ししないで説得的にやって敢えて引っ込める対応もしたのです。
 民主労総は委員長がいない中で大変な苦労をしながらあの闘争をやり遂げました。慎重かつ言うべきことは言うかたちで大胆な問題提起をしてよくがんばっていると思います。
 ああいう巨大な力を発揮する市民・社会団体との結合について日本でも何ができるかを大いに研究する必要があると思います。関生の「いま行動の時だ」をどうやればいいのか。葉山先生がおっしゃったように「あとは労働運動の力で」という時にその労働運動の力は伝統的な労働運動の観念だけでは制限されます。もっと違う形態はないのか。何か社会的にアピールすることも必要です。
 館山集会は私たちにヒントを与えています。マスコミも動労千葉はこういうこともやるのかと注目しているのです。今までの動労千葉とそれを支援する人たちの隊列だけでなくて、もっと広げていくことも求められると思います。
 パククネを獄に放り込み、歴史が動いた感じがあります。6・11集会には韓国鉄道労組も来てくれます。6・30社会ゼネストを見据えながら6・11集会を国際連帯集会として臨みたいと思います。

◎入江史郎(ス労自主労組委員長)

 解雇撤回と戦争反対をどう打ち出していくのか。重要な段階に来ています。主体の大きさと関係なく、安倍政権とどう闘っていくのか。6月から11月に向けて考えなければと思います。われわれの40年を超える解雇撤回闘争の経験も、がんばりきればすごい武器になると思います。
 JR東日本に対する解雇撤回闘争を具体的なかたちにして、その中で戦争反対、共謀罪反対をきちんと訴えていく。例えば6月30日に日韓で解雇撤回と戦争反対で打ち出す、北海道や九州でもその日に合わせるなどです。
 『日刊・動労千葉』の活用も大事だと思います。動労千葉は韓国・民主労総の中でも有名だし、米ILWUでも有名なのに、日本では必ずしも有名になっていない。いかに動労千葉を全国区にしていくのかが課題です。
 戦争情勢は危機だけれどチャンスでもあります。どこも戦争反対を安倍政権に対して打ち出せていない。決意がいることですが、本当に阻止するために労働者大衆にもそういう決意を求めていかなくてはならない情勢だと思います。

◎伊藤 晃(日本近代史研究者)

 日本の新自由主義は、まず労働組合をつぶすことから始まりました。本格的な民営化や外注化は80年代後半からです。その時には、労働運動をつぶしていたから、抵抗なくこの政策が進んでいるという現実だと思います。
 労働組合的主体がつぶされた理由を考えて見ますと、労働組合の再建と関連があると思いますが、中曽根が意識したわけではないと思いますが、日本の戦後労働運動の「構造」をうまく利用したと思います。というのは、組織化のやり方が労働者一人ひとりにとっては受け身なのです。つまり戦後、労働組合ができた時にはどっとできちゃった。その労働組合を40年間食いつないだわけです。それが日本の戦後労働運動です。その構造がなくなった後はどう労働運動をつくるのかでみんな苦しんでいます。
 アメリカなどはぶつされても伝統がある。その伝統でいろんな知恵が出てくる。日本の場合、戦後そういう伝統をつくらなかった。戦前と切れている。今度、国鉄闘争全国運動で本をつくるのでこれらをテキストにしながら、労働組合がいろんな形でつくられてくる歴史――戦前は一人ひとり労働者を組織する運動です――参考になるものに接近していく勉強を労働者の中でできないものか。この本をきっかけに少しお手伝いができないかなと思っています。

特集0327

Posted by kc-master