八王子西郵便局の青年の解雇撤回闘争

2019年7月31日

月刊『労働運動』34頁(0290号04/01)(2014/05/01)

八王子西郵便局の青年の解雇撤回闘争

三多摩労組交流センター
 

 

(写真 青年の未来を奪うな! 解雇撤回総決起集会【4月19日 八王子労政会館】)
 

■予告なしの即日解雇

 3月24日、八王子西郵便局当局は1ヶ月前予告もなく、突然入社1年目の青年労働者Sさんを解雇した。一片の「解雇辞令」のみで解雇予告手当もなし。彼は再三にわたって「説明してください」と食い下がったにもかかわらず、説明すらしないのだ。それどころか勝手にロッカーを開けて私物を取り出し、会議室で制服を着替えさせ、クビに掛かっていた社員証を引きちぎり、「帰れ。警察を呼ぶぞ」とまで言ってきた。こんなデタラメな解雇を許せるか!

■解雇に至る経過と反撃の開始

 昨年11月初め、八王子西局の川嵜局長と志村お客様サービス部長は、営業活動を始められないSさんを自主退職に追い込むため、1ヶ月後のロールプレイング(※)を「辞める覚悟のないロープレはあり得ない」と迫り、「(不合格なら辞めるという)一筆書け」と無理矢理念書を書かせた。そして12月4日に最後のロープレが行われ、彼は不合格とされる。志村部長は「パラサイトになるかならないかで答えろ」と迫り、悩んだSさんは、家族とも相談した末、「辞めない」と決断し、志村部長に伝えた。
(※お客に勧誘する想定で、複数の人が役を演じ、それぞれ適切に対応できるようにする学習方法の一つ。ロープレと略す)
 以来、すさまじいパワハラが始まるのだ。「辞めると言ったのに辞めない。嘘つき」と罵る。連日、Sさんの人格を破壊するような暴言、常軌を逸したパワハラ=退職強要が繰り返される。しまいには「お前は病気だ」と決めつけ、産業医に受診させて無理矢理「精神病」にすることを狙った「業務命令」まで…。
 これはブラック企業が労働者を退職に追い込む常套手段だ。青年労働者の未来がどれだけ奪われてきたことか。断じてゆるせない!

■資本に負けてなるものかという労働者魂

 Sさんは、思い悩んだ末、意を決して合同労組に労働相談に訪れた。そこでSさんは直ちに組合に加入して反撃を決意した。
 既に所持品検査によってボイスレコーダーを取り上げられていたため、とにかく管理職のパワハラの実態を、その日の内に報告書にまとめる行動に入った。彼は毎日、組合事務所に通い、報告書をまとめていった。
 八王子西局によるパワハラ解雇を跳ね返す最大の力は、解雇当該の資本に負けてなるものかという労働者魂だ。新自由主義資本の労働者を虫けら扱いすることへの怒りだ。営業成績が上がらない者は資本にとって不必要なモノでしかない――これこそ「命よりカネ」の新自由主義の本性だ。彼は人間としての根底的な怒りに燃えて、人間として労働者の誇りにかけて〈生きる〉ことを選択したのだ。

■同じような目に遭っている仲間と共に闘う

 4月19日に開催された「青年の未来を奪うな!解雇撤回決起集会」でSさんは、「自分だけの問題ではなく、これから入社してくる若い労働者や、病気で成績を上げられない人のことを考え、このまま黙っていてはならないと決起しました」「資本主義打倒の最先頭に立ちます」と決意を述べた。自分を「助けてください」から、「同じような目に遭っている仲間と共に闘う」という立場に立った。労働組合も知らなかったSさんが、確実に階級性を獲得してきている。

■追い詰められたJP資本の弱点

 3月の解雇は、当局の退職強要を跳ね返して青年労働者が決起したことに追い詰められて、日本郵便会社(株)が強行したものだ。パワハラやいじめなど、闘いを決意した青年労働者の前には無力なのだ。
 本来なら、当然にも2月中に解雇予告したはずなのに、それができなかった。執拗なパワハラに耐え抜き、退職強要を打ち返したのだ。ここにJP資本の弱点がある。2月28日の組合員通告後、Sさんが合同労組に加入したことに恐怖して解雇するところに追い込まれたのだ。たった一人の青年労働者の決起がJP資本をも脅かす存在となったのだ。

■「数字が人格」の新自由主義を許さない

 JP資本は「郵政ビジョン2021」で郵便事業で利益を上げることを放棄し、カンポ・郵貯の金融で利益を上げようとしてきた。八
王子西局の志村部長は朝礼で「数字が人格です」と放言していた。つまり営業成績(=数字)が人格を決める――成績の上がらない労働者は人間じゃないと言っているのだ。資本にとって金もうけにならない労働者は価値が無いということだ。これこそ新自由主義=ブラック企業の本性だ。
 八王子西局Sさん解雇撤回闘争は、ひとりSさんの解雇を撤回するだけの闘いではない。Sさんが受けたようなパワハラの現実は、いまや総ブラック企業化した日本社会の現実そのものだ。どれだけ多くの青年労働者がSさんのような状況に追い込まれ、自ら退職し泣き寝入りになっていることか。この青年労働者の現実をひっくり返す闘いだ。だから絶対に負けられない闘いだ。
 Sさんは何度も職場JP労組の役員に相談したが、請け合ってもらえなかった。組合員がクビ切られているのに闘わない労働組合は組合じゃない! 西部ユニオン鈴木コンクリート工業分会の4・16解雇撤回の完全勝利は、「組合が団結して闘えば、俺たちのような3ヶ月雇用でも勝てる」ことを証明した。
 階級情勢は一変した。不撓不屈の国鉄闘争が勝利の展望を切り開いている。解雇撤回、新自由主義打倒へ共に闘おう!

記事,郵政/全逓0290

Posted by kc-master