郵政労働者の闘い スキル評価制度の撤回求め労働委員会に提訴

2019年7月31日

月刊『労働運動』34頁(0320号09/01)(2016/11/01)

郵政労働者の闘い
産別・戦線の闘い 第6回
郵政会社にスキル評価制度の撤回を求めて労働委員会に提訴

「スキル評価制度」は団結破壊の不当労働行為だ!

村山 晃(JP労組吹田分会)

教育、自治体、郵政、医療など各産別の闘い、及び「労働者階級と諸戦線の闘い」を掲載しています。

●「スキル評価制度」「無期転換制度」絶対反対

 8月30日、大阪府労働委員会に対し、「スキル評価制度は労働者の団結を破壊する不当労働行為だ。郵政会社はスキル評価制度の廃止、10月1日実施予定の無期転換制度を中止すべき」との申立を行いました。

不当労働行為救済申立書

一、被申立人:日本郵政株式会社・日本郵便株式会社

 

二、請求する救済の内容

 ①被申立人は、スキル評価制度による、労働組合への支配介入・団結権侵害をただちに止めなくてはならない。
 ②被申立人は、スキル評価による非正規職の選別的雇止めをたくらむ、「労働契約法18条に基づく無期労働契約への転換制度」の実施を止めなくてはならない。

三、不当労働行為を構成する具体的事実

Ⅰ 当事者

1)申立人
 ①申立人・平沼は、日本郵政グループ労働組合(以下「JP労組」と略称)の組合員であり、1974年に郵政省入職以来、富田林郵便局に勤務している。現在、日本郵便株式会社の従業員であり、日本郵政公社労働組合の時代に富田林分会書記長をつとめた。
 ②申立人・村山は、日本郵政グループ労働組合の組合員であり、1983年に郵政省入職以来、吹田郵便局に勤務している。現在、日本郵便株式会社の従業員であり、全逓信労働組合・日本郵政公社労働組合の時代には吹田分会書記長等をつとめた。
2)被申立人
 日本郵便株式会社は、株式会社ゆうちょ銀行・株式会社かんぽ生命保険ともに旧郵政省の郵政三事業が公社化されさらに民営化されて発足した株式会社であり、2012年10月より日本郵政株式会社をふくめた四社からなる「日本郵政グループ」が発足した。
 ①日本郵政株式会社は、2006年1月に設立され、資本金3兆5000億円、従業員数3062名、主な業務は日本郵政グループ全体の経営戦略策定等であり、筆頭株主は財務大臣である。
 ②日本郵便株式会社は、2007年10月に設立され、資本金4000億円、従業員数200516名、主な業務は郵便事業であり、日本郵政株式会社が100%の株主である。

Ⅱ 不当労働行為にいたる経過

 1)郵政の労働組合運動は、国鉄とならんで終戦直後から戦後労働運動の中心的部隊であり、激しい労使攻防が闘われてきた。
 2)全逓信労働組合(以下「全逓」と呼称)つぶしのための「生産性向上運動」(以下「マル生」と呼称)も国鉄と郵政で激しく展開され、国鉄総裁が71年の国会で謝罪し国鉄マル生がいったん挫折する中でも、郵政当局はマル生攻撃を止めることはなく、職場の怒りは78年末のブツ溜め闘争として爆発し、4億3000万通もの滞貨を生み出した。これに対して郵政当局は79年4月28日、全逓組合員8183人を処分(うち懲戒免職58、解雇3)した(以下「4・28処分」と呼称)。4・28処分との闘いは、国鉄分割民営化・総評解散・連合発足後も闘いぬかれて2004年6月に被処分者側が東京高裁で逆転勝訴をかちとった。
 3)一方、国鉄分割民営化時の中曽根元首相が「(国鉄分割民営化で)総評を崩壊させようと思ったからね。国労が崩壊すれば、総評も崩壊するということを明確に意識してやったわけです」というように、ときの政権にとって、国営企業や公的部門の民営化は、労働組合の破壊という団結権侵害を真の目的とするものとしてあった。
 4)国鉄は87年4月に分割民営化され90年に1047名解雇撤回闘争がはじまる。国鉄闘争と4・28処分撤回闘争が一体的に前進する中で、郵政当局は、93年3月に「新夜勤」を実施するとともに活動家を狙い撃ちした「人事交流」攻撃を96年9月から本格的に開始した。これに対して2000年3月には「人事交流=強制配転に反対する近畿郵政労働者の会」が申立人をふくむ61人で結成された。これらの攻撃はすべて全逓労働運動と職場の団結を根絶解体する目的のもと、2003年4月の郵政公社発足に向けて激化した。公社化にともなって全逓は日本郵政公社労働組合(以下「JPU」と呼称)と改称した。2004年には、2月「深夜勤」実施、4月「新人事制度」導入をしかけ、9月に小泉政権の「郵政民営化」閣議決定にいたった。
 5)2007年2月に4・28処分の郵政側上告が棄却され高裁の労働者側勝訴が確定した。2007年10月には日本郵政株式会社が発足し、まもなく、旧全逓と旧全郵政が組織統一し日本郵政グループ労働組合(以下「JP労組」と呼称)が結成された。
 6)民営化の実態は、人員削減、労働強化、限りない非正規化とこれを通した雇止め解雇の乱発・濫用、解雇恫喝を通した労働強化と労務支配にある。国営時代の「定員」という概念がなくなり、非正規労働の役割が補助労働的あり方から業務運行にとってなくてはならない基軸・主力的役割に転換した。郵便局の現場では非正規職(期間雇用社員、月給制契約社員、エキスパート社員など)の割合は全体の約6割を占めるにいたっている。
 期間雇用社員は、半年に一度「スキル評価」をされ、これによって賃金が決定される。だがスキル評価の基準は曖昧かつ恣意的で管理職の判断でどうとでもなる。業務上のミスがあればそれを理由にスキル評価が下げられ賃下げとなる。郵政の労務管理では「スキル」という言葉・概念が他に類例を見ない異常・異質な使い方をされている。賃下げを背景にした恫喝的な労務管理が横行している。
 7)本件で争うスキル評価制度は、民営化攻撃の渦中で全面的に展開されてきた、非正規職を主力とする深夜の強労働と一体で、正規職と非正規職、あるいは非正規職同士をバラバラに分断し団結させないための攻撃として展開されている。
 さらに被申立人は、労働契約法18条のいわゆる「無期転換」を法定実施時期より1年半前倒しで本年10月1日から実施しようとしている。これは、非正規職全員の無期転換ではなくて、スキル評価によって無期転換しない非正規職をつくりだそうとするものだ。
 8)正規社員と非正規社員が、同一の労働を行いながら全然違う賃金体系と賃金額で差別的に分断されている。このことは労働契約法20条違反として全国で提訴が相次いでいるが、個別労使関係における処遇改善の問題ではなく、正規・非正規を徹底的に分断支配しようとする団結破壊・団結権侵害の不当労働行為として断罪されるべきくわだてであり、撤廃されなくてはならない。
 9)以上のように、被申立人がスキル評価制度をもって、労働者を分断し団結を破壊しようとするのは、長年の郵政における労使攻防の総括として打ち出されたものだ。マル生でも人事交流でも深夜労働でも崩せなかった職場の団結を、人事制度・スキル評価制度・選別雇止めをもって破壊しようとする団結権の侵害であり、労働組合活動を無力化しようとする支配介入である。

Ⅲ 本件不当労働行為に該当する事実

1)被申立人は、期間雇用社員への半年ごとのスキル評価を行っているが、これは、
 ①賃金は労働条件の根幹部分であり、労使の対等な交渉で決定されるべきものであるところ、被申立人は、恣意的スキル評価によって、評価と評価結果に対抗しにくい有期雇用という雇用形態の労働者の向こう半年間の時間賃金を決めようとしており、これは労働組合の団結した闘いを支配し弱体化・無意味化しようとする支配介入の団結権侵害である。
 ②被申立人は、正規社員と非正規社員が同一の労働を行っているにもかかわらず、労働条件の差別をもって正規・非正規を徹底的に分断支配している。とりわけ期間雇用社員に対してはスキル評価制度をもって著しい賃金差別を行っている。これらのこと自体が、労働組合の団結を妨害し無力化支配介入する団結権侵害の不当労働行為である。
 ③被申立人は、正規職の組合員に非正規職の組合員の評価をさせるという、組合内での対立や不信を煽り立て、あるいは一部の組合員を被申立人の先兵に仕立てようとしており、これは労働組合に対する分断をたくらむ支配介入の団結権侵害である。
 ④具体的には、被申立人は、2016年10月からの期間雇用社員の時間給を決定するために、JP労組組合員である課長代理に対して、同じくJP労組組合員である期間雇用社員のスキル「第一次評価」を8月8日
を期限に提出させた。
 2)被申立人は、無期転換制度を2016年10月1日にも実施しようとしているが、これは、
 ①「スキル評価の結果によっては無期転換をせずに雇止めにする」という選別・分断にこそ制度の核心がある。スキル評価によって被申立人の思うがままに選別解雇できることが明記された制度であり、Ⅱの背景をみれば、被申立人がこの制度を、活動的な組合員の排除のために駆使しようとしていることはあまりも明らかだ。労組法第7条1項の不当労働行為の準備行為そのものである。
 ②よって、スキル評価制度そのものの不当労働行為性に加えて、スキル評価制度の不当労働行為性を全面展開するため10月1日実施がたくらまれている無期転換制度そのものもまた不当労働行為である。

●郵政労働者は労働法制改悪・「2018年」攻撃の反撃の先頭に立つ

 労働委員会闘争を結集軸にして職場で反撃を開始しよう。
 安倍政権は労働契約法と労働者派遣法の改悪をもって、1500万人の有期雇用労働者を2018年に向かって雇い止め解雇する攻撃に踏み切りました。
 この攻防は労働法制改悪攻撃を切り口として、労働者を「保護」し、資本を規制してきた戦後労働法制の根幹をひっくり返していく攻防です。
 戦後労働法制によって成り立ってきた社会を破壊し、「社会の結びつき」を破壊する攻撃であり、その核心に階級的団結の解体・労働組合解体を据えた攻撃であることから、一大階級決戦そのものです。
 改悪労働契約法は、5年間有期雇用で働いていた労働者に「無期雇用の転換権」が2018年4月以降に順次発生することを定めました。この「5年ルール」制定の目的は、非正規労働者の不安定雇用・低賃金等への怒りの高まりをかわし、逆手にとり、18年4月の前に全員解雇し、選別再雇用するものです。(選別の方法は試験であったり、評価であったりする)これは「第2の国鉄分割・民営化」と言ってもいいような団結破壊であり、6000万労働者の総非正規職化をめぐる攻防です。
 民営郵政はこの「無期転換制度」をJP労組中央の解雇承認―協約化という最大の裏切りを取り付け、「1年半前倒し」としてこの10月1日から実施を強行しているのです。
 では「無期転換制度」で本年10月1日以降に採用された非正規労働者はどうなるのか。
 『契約更新要件制度』を新設し、勤続4年半を超えた後の次期契約更新時に3要件をすべて満たしていれば契約更新を行うというのです。要するに、スキル評価など3要件のうちひとつでも欠いていれば契約更新しない、雇い止め解雇ということです。
 決定的なことは、JP労組中央は改悪労働契約法による「無期転換制度」を民営郵政が1年半前倒し実施にすることを、「早期に安心して働くことのできる環境整備」「雇い止め解雇をなくす」制度として評価し、自らの成果として打ち出し承認・労働協約化したことです。
 これはまさに「首切り要件の協約化」であり、労働者の選別解雇に率先して協力するという、歴史的裏切り行為です。
 郵政民営化攻撃の貫徹のために、民営郵政と一体となって職場の非正規職化を率先して推し進め、「スキル評価」をもってする非正規労働者、正規・非正規労働者の分断と団結破壊に手を貸してきたのが体制内労組―JP労組中央です。
 ここで突き出されている課題は「2018年問題」は現在の問題であるということです。安倍の「働き方改革」もってする労働法制改悪との一大階級決戦に郵政職場で先制的に入ったということです。
 民営郵政のスキルダウン・雇い止め解雇・首切り・総非正規職化攻撃の本格化にJP労組は闘わないばかりか、その先兵となるということを宣言したのが今回の「無期転換制度」―選別解雇承認です。
 正規・非正規の分断を打ち破る職場の決起はすでに始まっています。JP労組中央を打ち倒し、職場に正規・非正規の分断を打ち破る階級的団結を作り出すことの条件は満ち溢れています。
 非正規労働者へのスキル評価制度は、郵政公社時に郵政民営化攻撃―新自由主義攻撃としての労組破壊・団結破壊の根幹をなす攻撃として、正規労働者への「成果・能力給制度」の導入攻撃と一体に、体制内労組の屈服と転向を強制しながら導入されてきた制度です。
 今日的には、正規職労働者には「民営化にふさわしい制度」として「新人事・給与制度」として、全面的な成果・能力給制度が導入されています。
 正規職と非正規職、あるいは非正規職同士をバラバラに分断し団結させないための攻撃として、人事評価―成果・能力給による賃金制度が展開されています。
 なぜ、資本によって労働が「評価」されなければならないのか、労働が蹂躙され、低められること、「評価」によって労働者の協働性・共同性が解体されることへの労働者の根底的怒りは職場に渦巻いています。
 「評価」との闘いは、労働の根幹を破壊する攻撃との闘いです。労働法制改悪攻撃と真っ向から闘い抜くための環をなしているのが「労働の奪還論」です。
 あらゆる業種・職種で、いわゆる「5年ルール」に対応して「5年超える前に解雇」という攻撃が始まっています。
 就業規則改悪との闘いは動労千葉、とりわけCTSの組合員の総決起で、労働法制改悪阻止の闘いの先陣を切る闘いとして開始されています。
 その郵政版と言うべき攻撃との闘いに総決起しよう。
 労働委員会闘争は、労働者を売り渡したJP労組もろとも「無期雇用転換」―労働法制改悪攻撃を葬り去る、ゼネストを組織する闘いののろしです。
 絶対反対の旗を立てて闘いの結集軸を全国的に作り出していきましょう。
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※3要件とは

①当該契約更新時のスキル評価がB(習熟度なし)以上であること。
②当該契約更新時の評価を含む直近2回の基礎評価のどちらかかが、全て「できている」であること。
③直近半年間に懲戒を受けたまたは受ける見込みの者については、その量定や態様を踏まえ会社が契約更新をみとめること。

※「スキル評価」制度とは

 郵政公社時に郵政民営化攻撃そのものとして、成果・能力給制度導入攻撃が進む中で、正規労働者とは別に、期間雇用社員に対して6か月ごとの契約更新時に次の時間給をきめる能力給制度。基礎評価・資格給から成る。本人の自己評価から一次評価者(直属の役職者、JP労組組合員であったりもする)を経て、最終評価者は管理職。些細な「ミス・失敗」をあげつらって、スキルダウンという名の賃下げ、雇い止め解雇を好き勝手にできる極めて恣意的評価制度。