労働組合運動の基礎知識 第29回 夜勤の仮眠時間が労働時間か否か

2019年7月31日

月刊『労働運動』34頁(0324号06/01)(2017/03/01)

労働組合運動の基礎知識 第29回
 夜勤の仮眠時間が労働時間としてカウントされるか否かの問題

 (株)交通機械サービスの職場において就業規則の一方的不利益変更がなされ、従来は労働時間としてカウントされていた時間帯が、労働時間ではなく休憩時間とされて、深夜割増手当を含め大幅に賃金が下げられた問題である。
 ここには二重の違法がある。一つは、労働契約法8、9条違反であること。二つ目は、従来夜勤の仮眠時間が労働時間としてカウントされていたものを、就業規則を変更して休憩時間扱いにして、その時間帯の賃金をカットしたことである。深夜割増分の手当もなくなるので大幅な賃金カットになる。
 労働契約法は8条、9条で、労働者の合意抜きに労働条件の不利益変更をしてはならないことが明記されている。同時に、10条で就業規則の変更を周知させ、しかるべき対応をした場合は、その労働契約は変更後の就業規則によると定められている。
 これは労働契約法の最大の問題点であり、資本は就業規則の一方的変更で労働条件の不利益変更が可能であると主張する。しかし、これは裁判で争われた場合は、基本的に違法と判断されるケースが多い。この点については、以前書いたことがあるので今回は二つ目の問題に焦点を当てたい。
 結論から述べる。夜勤の合間等に、仮眠時間が設けられている場合がある。この深夜勤務中の仮眠時間のうち、実作業に従事していない仮眠時間(不活動仮眠時間)であっても、当該時間において労働契約上の役務の提供が義務付けられていると評価されるため、労働からの解放が保障されているとは言えず、労働者が使用者の指揮命令下に置かれていると言える場合であれば、労働時間に当たると判断される。交通機械サービスにおいて、従来仮眠時間帯も労働時間としてカウントされてきたのは、このように判断してきたからだ。ましてや休憩室もない状態だ。次の作業までの仮眠時間は待機時間であり、資本によって拘束されている労働時間であることは明白だ。
 最高裁判所は「不活動仮眠時間において、労働者が実作業に従事していないというだけでは、使用者の指揮命令下から離脱しているということはできず、当該時間に労働者が労働から離れることを保障されていて初めて、労働者が使用者の指揮命令下に置かれていないものと評価することができる。したがって、不活動仮眠時間であっても労働からの解放が保障されていない場合には労基法上の労働時間に当たるというべきである」と判示している(最一小判平成14年2月28日・大星ビル事件判決)。
 不活動仮眠時間であっても、労働からの解放が保障されていない場合には、使用者の指揮命令下に置かれていると評価できるので、その仮眠時間は労働時間に該当するということだ。交通機械サービスの場合、この時間帯に緊急にでも仕事に駆り出される可能性が少しでもあるならば労働時間とカウントされねばならない。
 小泉義秀(東京労働組合交流センター事務局長)