労働組合運動の基礎知識 第38回 「骨抜き」労働契約法18条「5年ルール」

2019年7月31日

月刊『労働運動』34頁(0333号09/01)(2017/12/01)

労働組合運動の基礎知識 第38回 「骨抜き」労働契約法18条「5年ルール」

「骨抜き」が仕込まれていた労働契約法18条「5年ルール」

 「車大手、期間従業員の無期雇用を回避 法改正、骨抜きに」というタイトルの記事が11月4日の朝日新聞に掲載され、衝撃を受けた。「トヨタ自動車やホンダなど大手自動車メーカーが、期間従業員が期限を区切らない契約に切り替わるのを避けるよう、雇用ルールを変更したことが分かった。改正労働契約法で定められた無期への転換が本格化する来年4月を前に、すべての自動車大手が期間従業員の無期転換を免れることになる。雇用改善を促す法改正が『骨抜き』になりかねない状況だ」という内容だ。
 2013年に施行された改正労働契約法で、期間従業員ら非正社員が同じ会社で通算5年を超えて働いた場合、本人が希望すれば無期に転換できる「5年ルール」が導入された。申し込みがあれば会社は拒めない。しかし、契約終了後から再雇用までの「空白期間」が6か月以上あると、それ以前の契約期間はリセットされ、通算されない。これを自動車各社が利用している。
 このように、労働契約法第18条の「5年ルール」を「骨抜き」にするために、いくつかの「仕込み」が法律の施行段階からなされていた。その一つが「同一の使用者」論だ。「通算契約期間が、同一の使用者との間で5年の契約期間が必要である」ということである。したがって、この5年の間に派遣や請負契約に変えて雇用された場合は、クーリング期間になるので、使用者が違う期間があれば、この期間はクーリング期間とみなされるので「5年ルール」は適用されない。「転換権の発生を免れる意図をもって派遣や請負という法形式を偽装した場合は、法を潜脱するものであるため、同一の使用者の要件を満たすものとして扱われる場合がある」という但し書きが法律の解釈として当時から指摘されていたが、「免れる意図」を持っているかいないかは区別などできないのでこういう法解釈は意味がない。
 もう一つは、「直近の有期労働契約の期間が1年に満たない場合は、同契約期間の半分以上の期間」がクーリング期間となるということである。例えば6か月契約の場合は3か月のクーリング期間があれば「5年ルール」を「骨抜き」にできる。6か月契約して3か月派遣契約で働けば5年の無期転換は発生しない。またこのクーリング期間はまとめて6か月である必要はないので、上記二つの「仕込み」を組み合わせると、無数の「骨抜き」パターンが成立するのである。

例①4か月―4か月―(2か月の無期契約)-4か月―(6か月の無期契約)-通産4年の有期労働契約―(転換権発生せず)-4か月契約。

例②4か月―(2か月の無期契約)-4か月―(2か月の無期契約)-通産4年の有期労働契約―(転換権発生せず)
 4か月何れの例も働いている契約期間は通算5年である。しかしその間に2か月間でも無期契約期間があると、5年ルールは成立しないのである。

小泉義秀(東京労働組合交流センター事務局長)