★10・10出向無効確認訴訟判決を弾劾する 国鉄千葉動力車労働組合
★10・10出向無効確認訴訟判決を弾劾する 国鉄千葉動力車労働組合
判決は、「働き方改革」と一体の政治的反動判決だ!
10月10日、動労総連合・強制出向無効確認訴訟の判決が出されました。外注化も偽装請負も強制出向もすべて容認する反動判決です。絶対に許すことは出来ません。
裁判内容は、私たちが会社を完全に圧倒しました。特に、大法廷で3日間にわたって行われた証人尋問では、会社側が何ひとつまともに反論できなくなるほど追い詰めました。しかし、判決文はまるで会社が好き勝手に書いたかのような内容です。
◆就業規則で出向命令できる!?
出向命令というのは、働く企業を変われという命令です。だから、労働者の合意が必要です。それを判決は、労働協約や本人の同意がなくても「就業規則で出向を命令できる」としました。「合意は出向時でなくても、事前の包括的合意で足りる」「包括的合意は労働協約だけでなく、就業規則によることもできる」という論理です。ですが、就業規則は一方的に押し付けられるもので、同意でもなんでもありません。就業規則さえあれば労働者の同意などいらないということです。まさに世界中で狙われている就業規則万能化の攻撃そのものです。
たとえ「合意なしで出向命令が出せる」としても、そのためには「合理的な目的」が必要です。会社側は、「再雇用者の雇用の場の確保」「技術継承」「コスト削減」「グループ会社と一体となった業務体制構築」などを挙げていました。しかし、なぜJR本体で再雇用できないのか。グループ会社でなければ技術継承やコスト削減ができないのか。証人尋問で会社はしどろもどろになり、まともに答えられませんでした。裁判長でさえ「なぜ分社化しなければならないのか」と質問したほどです。会社側証人はその質問にも同じことをひたすら繰り返すだけという無様な姿をさらしました。
それが判決文では突然、会社側の書面から丸々書き写したものに、「……と認められる」と付け加えて容認しました。「グループ会社全体で業務を配分するのは当然」とも判断しましたが、外注化ありき、グループ会社ありきの論理です。
結局、外注化・子会社化すること自体が目的であり、そのための攻撃なのです。そのことは、裁判結審の2日後(6月9日)に提案されたエルダー制度に関する新たな施策に表れています。これまで「再雇用には出向先が必要」としてきたのを、「JR本体にも配置する」と変更するというものです。「雇用の場の確保が外注化の目的」という会社の主張の根本が、まったくのウソだったことが明らかになりました。また、検査派出という職場には、技術継承の対象はまったくいません。今までJRで働いていた人が単に出向させられ、労務を提供しているにすぎないのです。会社がウソばかり並べていることはますますはっきりしています。
◆会社側に立ちウソとごまかし
外注化・出向による不利益については、ことごとく「甘受すべき」といっています。「定年まで出向が延長されてもJRに戻ることがなくても、不利益は通常の異動と変わらない」「実質的転籍とはいえない」「休日が減っても我慢すべき」。裁判所が勝手に判断するなと言いたい。
しかし、これは相手が追いつめられたということでもあります。裁判所がどうしても不利益だと認めざるを得ない時に、「我慢すべき範囲だ」とごまかしているのです。この言い回しが15回以上も使われています。それだけ矛盾が大きかったということです。
出向期間については、そもそも「原則3年」と説明されていました。3日間の証人尋問の中で初めて、それがウソだったことが暴かれました。しかし、判決は「はじめから10年かけて解消する計画」「当初から組合も出向解除まで10年程度かかると認識していた」「会社説明にウソはなかった」とウソばかり並べて会社を擁護しています。
それは安全問題や偽装請負でも同じです。この間、外注化が事故を次々に引き起こしています。しかし、会社の主張を鵜呑みして「外注化とは関係ない」「個人のミスだ」と決めつけています。「外注化は安全を大前提に行われている」とまで書いています。
偽装請負についても、「出向命令が違法な状態を目的にするか、その違法性が社会通念上看過しがたい重大なもの」でなければ、外注化も出向も合法と判断しました。「多少違法でも外注化していい」ということです。裁判所が書いたとは思えない、判決とも呼べない判決です。
その上で、「グループ会社は、能力を超えたり緊急の時以外は自分でやっている」から偽装請負ではないといいます。ですが、鉄道業務においては「例外」こそ日常です。そして線路がつながっている以上、一体で業務を行う以外にありません。そうしなければ安全が守れないからです。偽装請負にならざるをえない構造なのです。労働局でさえ「偽装請負の疑いが非常に強い」という指導票を出した程です。しかし、裁判所はそれをも無視して全てを合法化したのです。
CTSへのストに対してJRがスト破りを行ったことについて追及した部分では、「動労千葉のスト権を侵害するものであるか否かはともかく」と判断を逃げました。その上で「出向は動労総連合のみではない」「スト破りを目的とはしていない」として「不当労働行為ではない」という形でごまかしています。しかし、スト破りを目的にしていないとしても、スト権侵害が許されるわけではないはずです。結局、正当化する方法がなく、「判断しない」という形で逃げるしかなかったのです。
◆偽装請負でも外注化は合法
判決はウソと矛盾だらけで、あらゆるところで破綻しています。それでも外注化も出向も合法化する。それは安倍政権の「働き方改革」=労働法制の最後的解体攻撃、改憲・戦争突入に向けた攻撃と一体の、徹頭徹尾、政治的意図に貫かれた攻撃です。
すべての労働者を非正規職、最低賃金レベルに突き落とすには、外注化によって行う以外にありません。「個人請負」の全面的な拡大は、究極の外注化というべきものです。そこでは必然的に偽装請負が行われます。社会全体が偽装請負で成り立っている状態なのです。だから「偽装請負でも外注化は合法」とすることが絶対に必要だったということです。就業規則万能化の攻撃も、世界中で焦点になっている攻撃です。そこと真正面から立ち向かう闘いにもなっています。
だからこそ、裁判中は裁判長でさえ会社をまったく擁護できなかったにもかかわらず、会社主張を丸写しした判決文を書いてきたのです。ここまでしなければならなかったところに、われわれの闘いが敵をいかに追い詰めたかが表れています。私たちは「第3の分割・民営化」攻撃=全面外注化と分社化・転籍強制に対し、全力で反撃にたちあがります。そして、裁判闘争と職場闘争を一体で闘い、外注化粉砕まで闘い抜く決意です。
※第1回控訴審
2月21日10時30分~ 東京高裁825号法廷