11・3全国労働者総決起集会に大結集しよう!

2019年9月26日

月刊『労働運動』34頁(0354号02/01)(2019/09/01)

11・3全国労働者総決起集会に大結集しよう!

田中 康宏(全国労組交流センター代表・動労千葉委員長)

■非常事態下の闘い

今年の11月集会は非常事態下での闘いです。20年以上この集会を共に呼びかけてきた関西生コン支部が未曽有の労組弾圧にさらされている。また、JRの職場でも国鉄分割・民営化の時以上と言っても過言ではない労組破壊攻撃が吹き荒れている。さらに安倍政権は、参院選を戦後初めて「改憲の是非を問う国政選挙」として強行し「国民の審判は下った」と称して秋の臨時国会に臨もうとしています。
もう一点、11月集会は民主労総ソウル地域本部との国際連帯闘争として積み上げてきた闘いでもありますが、安倍政権は〝戦争前夜〟と見まがうような韓国敵視政策を進め、排外主義を煽りたてています。16年間に及ぶ日韓連帯闘争の真価が問われています。こうした非常事態下で反撃への決意を固め、眦を決して一歩を踏み出さなければなりません。
今年の11月集会は、なによりも日本の労働者と労働運動の未来をかけて関西生コン支部を守りぬく闘いとして取り組みたい。港合同の中村委員長とも、関生弾圧粉砕を第一の課題に掲げる集会にしようと一致しました。
国鉄闘争全国運動の呼びかけ人会議でも、「20年間共に闘ってきた仲間がこうした弾圧を受けている。しかも労働組合の存在を根底から否定する攻撃だ。これに立ち向かうことができなければ日本の労働運動の未来はない」という議論の中で、弾圧粉砕に向けたわれわれ自身の呼びかけを出そうとなりました。当面11月集会に向かってどう取り組むのか、地域や職場で知恵を絞って運動やカンパを組織していただきたいと思います。

■関生支部への弾圧と闘う

関生支部への弾圧を真正面から見すえてほしい。すでに逮捕された仲間は延べ84人、家宅捜索は百数十カ所に上ります。執拗な弾圧は、大阪、滋賀、京都、和歌山へと拡大し続けています。保釈金も億を超えている。〝罪〟など存在しません。〝罪〟は正当な労働組合活動です。ストライキが威力業務妨害になり、団交は強要罪になる。抗議行動は恐喝。労働組合の権利の根幹にある民事免責、刑事免責を完全に粉砕し、労働組合を〝組織的犯罪集団〟と見なす。起きていることは戦後最大の労働運動弾圧です。こんな攻撃を許すとしたら、その時こそ改憲―戦争が現実化していく。階級全体の利益を守るためにも、本来なら大阪でも1万人規模の集会・デモを組織して反撃しなければならない。こうした攻撃に対しわれわれは何ができるのか、その構想を考えぬいてほしい。そういう決意の下に11月集会を組織していただきたい。

■JRの「労組なき社会」攻撃

起きている事態はただごとではない。JRで進んでいる「労組の存在しない社会」をつくる攻撃も、社会のあり方を一変させるような性格のものです。
この二つの攻防が、日本の労働運動の解体か再生かをめぐる闘いの最先端を形成しているということを時代認識として明確にしなければならない。われわれ自身、これまでの延長線上にものごとを考える発想にとどまっていたら、労働運動の再生や復権など空語に等しくなる。情勢はわれわれ自身の在り方について、根本から変わらなければ通用しないものになると鋭く問いかけています。

■日韓関係の歴史的緊張

いま一つの焦点、日韓関係の歴史的緊張に対しても、動労千葉国際連帯委員会で声明を発しました。韓国では予想を超えた大きな反響があり、様々な運動体から連絡がきています。民主労総ソウル本部や総連盟本部の掲示板に出されただけでなく、いくつもの一般紙が取り上げています。歴史的な攻撃が吹き荒れている情勢だからこそ、一つひとつの訴えが巨大な可能性をはらんでいます。それを組織的力に転化できるかどうか。そういう歴史的局面に立っていることを再確認したい。
一体何を目的に、どんな成算をもってこんなことをやっているのか。安倍政権は日本経済のさし迫る大崩壊の危機におびえているのだと思います。徴用工問題の大法院判決で韓国に進出している日本企業の財産が差し押さえられようとしている。それを許したら日本経済の全面的な崩壊が始まりかねない。
あまりに異常な現実を見て下さい。世界最大の財政赤字国にもかかわらず今も日銀が国債を無限に買い続け、株価まで日銀や年金機構が買い支えている。来年には日本最大の株主は日銀になる。その次は年金機構です。市場原理至上主義の新自由主義政策が行き着いたのは実はそれとは真逆の現実だった。こんなことはいつか全部崩壊します。その時が迫っている。その引き金になりかねない事態はすべて力ずくでねじ伏せるしかない。
さらには「ろうそく革命」が生み出したものへの根底的な憎悪がある。それが今起きている事態の本質ではないか。引くに引けないという論理だけで突き進む。しかし、歴史が教えているのは、戦争とはこうやって現実化していくものだということです。そのプロセスが始まっているのではないか。
日本のマスコミはこの6年余りの間に、安倍政権の激しい圧力に屈して一切の批判精神を失いました。日本の報道の自由度は国際評価でも先進国中最低線です。1965年当時は、社会党、共産党のレベルですら「認めない」と言っていた日韓条約や請求権協定ついて批判することは、日本のテレビや新聞では完全に禁句になっています。異常な事態です。

■社会の矛盾を階級対立へ

こうした状況下で、日本の労働者とくに若者を徹底的に政治から疎外させていくイデオロギー装置がはりめぐらされ、いまだ日本の労働者は団結して闘いに立ち上がる契機を見いだせていません。世界を見れば、韓国でもフランスでも香港でも、若者が立ち上がって政治的な自由、貧困からの解放、社会保障制度や人間が生きていく条件の奪還などをめぐって闘いが燃えあがっています。一見すると日本の労働者だけが立ち後れているかのように見える。それは国鉄分割・民営化攻撃によって、新自由主義攻撃がナショナルセンターの解体にまで徹底して貫徹されたことによるものです。それによって社会の矛盾が階級的対立・衝突となって現れず「仕方ない現実」のよう思わされていく。われわれはこれを突き破ろうとしているわけです。そういう歴史選択が問われていることをはっきりさせておきたいと思います。

■安倍の改憲攻撃を見すえる

安倍政権はこうした事態の中で、戦後初めて改憲の是非を問う選挙として参院選挙をやった。この事態の階級的意味を真正面から見すえる必要があります。改憲とはこれまでの統治形態を破壊するということですから、ある種のクーデターです。支配階級にとってそれを公言して選挙をやってしまった以上退路がなくなった。失敗したら政治支配が崩壊する。安倍はグラグラになりながら、情勢に突き動かされてそれをやってしまった。このことを甘く見てはいけないと思います。だから選挙の翌日には「国民の審判は下った」と言って、秋の臨時国会に臨もうとしている。実際は途方もない危機です。選挙後の世論調査でも「改憲に期待する」は3%しかいない。自民党内すらまとめきれていない。しかし、そういう事態だからこそ大反動が一気に噴き出そうとしている。日韓関係の問題も改憲攻撃と一体で仕組まれたものだと見なければいけないと思います。
繰り返し訴えてきたことですが、憲法9条に自衛隊を明記するという攻撃は、断じて単なる現状の追認というような問題ではない。「兵力維持」が社会をあげた憲法上の義務になる。今でさえ自衛官募集を拒否しているなどと言って、どれほど地方自治体や教育、マスコミが攻撃されているのかを考えたら大変なことです。これまでの社会のあり方はその隅々に至るまで覆されることになります。時代の精神がまるっきり変わり「戦争のできる国」に変貌していく。

■「働き方改革」攻撃との闘い

さらに、改めて「働き方改革」攻撃との闘いについて訴えたい。安倍自身、働き方改革一括法の成立について、「戦後最大の改革だ」と言っています。労基法を始めとした戦後的な権利関係はこれで全部潰したと勝ち誇ったように言っている。それほど重大な事態が眼前で進行しています。
今JRの職場で起きていることを見ると、その意味が鮮明に浮かび上がってきます。改めて攻撃の根底に流れる狙いは何だったのかを、規制改革会議等の議事録を参考に考えてみたい。当初から3つのことが言われていた。
第1に、「正社員改革こそ最優先課題だ」という議論です。正社員の権利が不当に保護されている現実を粉砕することを最優先課題とした。あたかも「働き方」や正規・非正規の格差を問題にしたように宣伝されていますが違うのです。正規職を粉砕することが最大の目的だった。JRは「運転士職を廃止する」と提案しましたが、運転士職はJRにおける正規職の象徴的存在です。それを打ち砕くと大上段から攻撃してきた。まさにそれこそが「働き方改革」の最大の狙いなのです。
第2は、一番目とも関係しますが「解雇法理の明確化」という議論が行われている。「2007年労働契約法制定によって、正社員の解雇は規制されているという考え方はなくしたのに、今も解雇規制が存在するかのような誤解が存在している」。それを粉砕するために解雇法理を明確化する必要があるというのです。解雇自由化です。そのために雇用を限定化すればいいというのです。雇用契約時点で職場や職種を限定しておく。それを「社会通念上相当な働き方」にする。そうすれば、その職場や職種がなくなれば自動的に解雇になるというのです。そういう形で法理を明確化する。実際、無期雇用転換(5年ルール)や外注化・転籍などを通して膨大な限定正社員、あるいは名ばかり正社員が生み出されています。
第3は、「就業規則改正法理の明確化」「社員代表法理の明確化」という議論です。労働条件の不利益変更も形式的な手続きさえ踏んでいれば「合理的と推認する」という法理を明確化せよというのです。これも07年の労契法によってそうしたはずだったのに、民主党政権下で「賃下げ等に及ぶときは高度な合理性が必要」という通達が出されたりして骨抜き化されてしまったと言って、リベンジを期しています。それは最大の核心をなす攻撃でもある。正社員を粉砕するにしても、解雇を自由化するにしても、就業規則の抜本改悪を伴うわけです。それを労働組合を完全に否定して自由自在にできる「就業規則改正法理」を作るというのです。
これはまさに今JRがやっていることです。東労組のような御用組合さえ潰して「社友会」を作る。単に一企業の労務政策としてではなく、社会システム、「労働組合の存在しない社会」のモデルを作ろうとしています。それが社会全体を覆っていく。労働組合のない企業、日教組のない学校、自治労のない自治体をつくる。労働者支配の方法の歴史的転換です。その意味でこの攻撃は国鉄分割・民営化以上の労組破壊攻撃だと言っても過言ではない。「働き方改革」はもう一つの改憲攻撃です。
こうしたことが関生弾圧や改憲攻撃と表裏一体で進んでいる。われわれはこれを「現代の産業報国会化攻撃」として見すえ、真正面から対決する闘いとして11月集会を組織する決意を固めなければなりません。
日本の労働運動は重大な岐路に立っています。持てる力の全てを尽くして階級的労働運動再生にすべてをかけなければいけない時が来たのです。

■国鉄闘争の現状

国鉄闘争の現状について少し話したいと思います。JRで働く労働者全体を子会社に突き落とし、非正規職化ないしは名ばかり正規職化する攻撃が激しく進行しています。そのために人事戦略部なる部署が作られた。そこが社員採用に向けたQ&A方式のお知らせをインターネットに載せているのですが、「駅員になりたいのですが」という質問には「グループ会社の東日本ステーションサービスにご応募下さい」と書いてある。「旅行業のをやりたい」という質問には「東日本トラベルサービスに応募して下さい」。「JRにはそのような仕事はございません」というのです。「運転士になりたい」という質問にも「エリア採用の事務職試験をお薦めします」になっている。「運転士という技術職はありません。これからは多様な仕事を経験して頂きます」というのです。つまり「JR本体には鉄道業務はありません」と対外的に表明しているのです。これが「働き方改革」「正社員改革」の正体です。
JR東日本は、一番遅れていた車両検修部門の水平分業計画を発表しました。JR本体に残るのは「規程等の見直し」「検査計画」「品質保証」「将来計画」だけです。全部丸投げ外注化していく。それと一体で「社友会」の本格的な組織化に向けた動きが一斉に始まっています。
こうした状況の中で、外注先会社であるCTS幕張事業所の職場代表選挙に勝ったこと、そして1年間の取り組みを通して職場支配権を握ったことは本当に大きな意味をもっていると思います。しかし、そうしたら敵もさるもので、最低賃金審議会の結論が出た途端に「8月1日から非正規の時給を20円~30円上げます」と突然一方的に点呼で発表した。動労千葉が要求を出す前に組合を無視してやってしまう。一ミリたりとも組合の成果にはさせない。そういう攻防に勝ち抜かないと労働組合は再生しない。同じことがあらゆる職場で起きています。一つ対応が遅れたら労働運動再生の芽をつぶしてしまう。全国の職場でこうしたギリギリの攻防をやりぬいて11月集会への結集をかちとりたいと思います。
1047名解雇撤回をめぐる裁判闘争、強制出向をめぐる裁判闘争も重要な局面を迎えています。1047名闘争では、千葉地労委が一切の審理を拒否したまま命令を出したことに対し、裁判所までが激しく追及せざるを得ない事態となり、強制出向に対しては新たな訴訟を提起し、徹底抗戦で外注化攻撃と闘い続ける決意です。

■11月集会の性格と課題

最後に、「11月労働者総決起集会」「改憲阻止!1万人大行進」の性格と課題について簡単に確認したいと思います。
第一に、《関西生コン支部への大弾圧粉砕》《JRにおける労組破壊攻撃粉砕》を前面に押したて、その闘いの下に時代への危機感や怒りの声の広範な結集を実現する集会として開催したいと思います。これこそが階級的労働運動再生への具体的展望だと訴えたい。
第二の課題は、《今秋臨時国会での改憲発議を絶対に阻止する》《「働き方改革」粉砕・非正規職だけの社会を絶対に作らせない》―この二つの課題を一つのものとして全力を尽くして訴えぬき、組織することです。
今年も、「第一部:労働者総決起集会」、「第二部:改憲阻止!1万人大行進」という構成で開催したいと思います。
改憲と戦争に突き進む安倍政権への怒りの声、新自由主義が生み出した社会の全面的崩壊への怒りの声を結びつけ、社会を変革する力をもった労働者階級の広汎な政治闘争を絶対に作りあげたい。そのためには強力なリーダーシップが必要です。全反動を引き受けて跳ね返していく。政治を労働者民衆の手に取り戻す。11月集会の取り組みの過程でそうしたリーダーシップを作りあげたいと思います。
第三の課題は、「改憲・戦争阻止!大行進」運動の新たな地平への発展をかけて、「広島教職員100人声明」運動を支え共に闘う全国運動を組織したい。また、反原発闘争、被曝労働拒否闘争の飛躍をかけて、9・22常磐線全線開通反対闘争の成功を全力でかちとる。この二つの取り組みをステップとしてこれまでの壁を破る11月集会の成功をかちとりたいと思います。
動労水戸の仲間たちが、現在のJRの困難な状況下で、被曝労働拒否の闘いを必死に闘っています。その悪戦苦闘の中に、JRの全労働者を獲得するカギがある。JRは全線開通する際の運転業務を全部原ノ町運輸区にもたせるというとんでもない計画を作っています。水戸からいわきまでが約100㌔、原ノ町はいわきからさらに80㌔くらいです。その原ノ町に40人もの配転が起きようとしています。それ自身が徹底的した労組破壊攻撃になる。攻撃の本質はますます明らかになっています。
第四の課題ですが、今年は日韓労働者の国際連帯闘争が決定的な意味を持っています。韓国からは、この情勢に立ち向かう日韓労働者の共同声明が出せないか等様々な要請が来ている。そうしたことも全力で追求し、時代への危機感を結集させたい。今年も東京―ソウル国際共同行動として、民主労総ソウル地域本部との共同の闘いとして11月集会を開催したいとの思いです。
第五の課題は、原点に返って、われわれが守りぬいてきた全ての職場・産別・地域、運動体・諸戦線のもつ力を信じ、一人ひとりの主体的な力を発揮させることです。組織化の回答は職場・現場の困難の中にしかない。自らがつくりあげてきたことの中に必ず回答はある。もっと力が眠っている。具体的な運動をもって深く結びつくこと。どんなに困難でもそのことに確信をもって闘いたいと思います。《原則的であること》と《大衆的であること》をどちらも少しもあいまいにしない。自分自身をそこに立たせて、回答は絶対に現場にあるという一点に確信をもって組織化を進めたいと思います。(8・3実行委員会発言)

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Posted by kc-master